歌舞伎座3月公演(令和8年)は、通し狂言が2種類です。
昼の部は、「加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ」、
夜の部は「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ」。
どちらもダブルキャストで見どころも多いです。
その歌舞伎座三月大歌舞伎について、
演目やキャスト、スケジュール、さらには観劇後の感想までを
一気にまとめてお伝えします!

歌舞伎座3月大歌舞伎の演目、配役、簡単なあらすじは?
先にも書いたとおり、3月歌舞伎座公演は、
昼も夜も通し狂言が並びます。
こいつぁ春から・・・と言いたくなっちゃう
素敵なお芝居を楽しみたいです。
ではまず、昼の部から。
3月大歌舞伎昼の部の演目、配役、簡単なあらすじは?
1。通し狂言加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)
骨寄せの岩藤
河竹黙阿弥 作・加賀山直三 補綴
【配役】・・・ABダブルキャスト
岩藤の霊/鳥井又助 A:坂東巳之助
B:尾上松緑
二代目尾上 A:中村時蔵
B:中村萬壽
花房求女 中村 萬太郎
梅の方 坂東 新悟
花園姫 市川 男寅
安田の若党勝平 中村 虎之介
又助妹おつゆ 中村 莟玉
蟹江主税 中村 歌之助
又助弟志賀市 中村 種太郎
奥女中宮越 中村 歌女之丞
奥女中関屋 澤村 宗之助
蟹江一角 坂東 亀蔵
松浪主計 中村 松江
望月弾正 中村 芝翫
お柳の方 中村 扇雀
安田帯刀 中村 又五郎
多賀大領 7尾上菊五郎
【簡単なあらすじと見どころ】
発端 多賀家下館奥庭の場
岩藤によるお家乗っ取り騒動の終結から5年たち、
多賀家では総領の多賀大領は側室のお柳の方に入れ込み、
それを諌める忠臣花房元女は、大領の怒りをかいます。
さらに、家宝の香炉も盗まれてしまい、
それを取り返すために家を出てさすらいの身となっています。
序幕 浅野川々端多賀家下館塀外の場
浅野川々端の場
浅野川堤の場
求女の家来、鳥井又助は、
主人を助けるために、
弾正の命令を受け、側室お柳の方を
亡きものにしようと企みます。
しかし、敵の方が一枚上手で、
弾正から預かった、求女の短刀で
お柳の方が乗った輿を遅い、
乗っていた女性を殺害します。
しかし、これは弾正の策略で、
乗っていたのは正室梅の方。
又助はそうとは知らず、正室梅の方を殺めてしまいますが
ちっともそのことに気づきません。
川に飛び込んで逃げた又助、
刀の鞘を落としたことに気づきます。
その鞘は、家老安田帯刀が広い、
求女のものと気づいて密かに持ち去ったのです。
二幕目 八丁畷三昧の場
花の山の場
一方、岩藤を退治したことで
二代目として中老尾上の名を継いだお初は、
自害した尾上の祥月命日のお墓参りへ出かけます。
その帰りに、ふと、岩藤にも回向をと思い付き
念仏を唱えたところ、
恐ろしいことに土手に散らばっていた岩藤の白骨が寄せ集まり、
岩藤の亡霊が現れるのでした。
二代目尾上が手にした観音像を岩藤に向けると
岩藤は消えてしまいます。
しかし、その観音を狙うものたちが、、、
暗闇の中、尾上の観音は安田帯刀の手に渡ります。
岩藤は、殺された無念を果たそうと
満開の桜が咲き誇る山の上を
ふわふわ宙を飛んで去っていきます。
三幕目 多賀家奥殿草履打の場
多賀大領の娘の花園姫は病で床に臥しています。
尾上がその平癒祈願から戻ったところに、
望月弾正が上使としてやってきます。
病床の姫の代わりに
弾正に対応する尾上に対し、
お家に悪事を働く悪者と決めつけます。
その時
なぜか辺りが急に薄暗くなります。
そこに姿を現したのが岩藤の亡霊です。
岩藤は、尾上が手にした祈願には
姫の不幸の願うと書かれているのだと言い、
尾上を草履で打ちすえます。
そこに帯刀から観音像が戻り
尾上は観音像でその悪霊を追い払うのでした。
気づくと、また元の弾正がいる部屋
弾正は、姫に婚礼の準備をと
尚も強く言い張ります。
四幕目 鳥井又助内切腹の場
鳥井又助の家には、主人の求女が身を寄せていました。
妹のおつゆは、求女に心を寄せており
病が治る高額な薬を手に入れるために
身を売ることを考えます。
そこに家老の安田帯刀がやってきます。
帯刀の話から、
又助は、自分が謝って梅の方を手にかけたこと、
その咎が求女に向けられていることを知ります。
その話を聞いていた求女からも
人非人、勘当とも言われ絶望します。
目が不自由な弟の志賀一は
箏の師匠から褒められた曲を兄のために弾きます。
又助は、梅の方殺害の証拠になった刀は
主人である多賀大領のものだったことを思い出し、
主人の成敗を受けるつもりで志賀一が弾く箏の音を聞きながら自害します。
そこに帯刀、おつゆも戻り、
苦しい息の根から又助が語った全てから
弾正の謀反が明確になりました。
帯刀は、求女の帰参と妹弟の将来を約束し、
又助は安心して息を引き取ります。
大詰 多賀家下館奥庭の場
お柳の方は、弾正の子をみごもってました。
その子を多賀家の跡取りにして
夫の弾正とお家を乗っ取る計画だったのです。
それを知った帯刀、
お梅の方の殺害も弾正夫婦の仕業とばれ、
お柳の方は潔く罪を認めて自害します。
一方、悪事がバレた弾正は
帯刀、求女らによって成敗されます。
岩藤も尾上の持つ観音像の力に勝てず
元の骸骨に戻ります。
悪党が成敗され、花園姫の病も治り
多賀家は平和を取り戻すのでした。
このお芝居は、「鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」の
後日談として書かれたものです。
今年の1月に、国立劇場で上演された
「鏡山」では、初代尾上を中村時蔵さん、
お初(2代目尾上)を8尾上菊五郎さんが
演じていました。
今月の「加賀見山再岩藤」では、
その中村時蔵さんがAプロで2代目尾上を演じます。
初役だそうで、Bプロの中村萬寿さんと親子競演という
なかなかに興味深い尾上対決が見られそうです。
3月大歌舞伎夜の部の演目、配役、簡単なあらすじは?
一、壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)
今井豊茂 作
【配役】
帝 中村 梅玉
女御 中村 雀右衛門
大臣 坂東 彦三郎
大臣 中村 歌昇
女御 坂東 新悟
大臣 大谷 廣太郎
女御 中村 種之助
大臣 中村 橋之助
女御 市川 男寅
女御 市川 門之助
女御 市川 高麗蔵
大臣 河原崎 権十郎
女御 市村 萬次郎
大臣 大谷 友右衛門
女御 中村 魁春
【簡単なあらすじと見どころ】
歌舞伎座の文様としても使われている
鳳凰にちなん大舞踊劇。
平安時代の王朝の雰囲気を醸し出す
豪華で華やかな舞踊の世界を楽しみたいものです。
ここに、人間国宝の中村梅玉さんや、
中村雀右衛門さん、中村魁春さん、
期待の中堅役者が出揃っているのが
少しもったいない気もしています。
舞踊もいいけど、お芝居も見たいなあ
二、通し狂言三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)
河竹黙阿弥 作
【配役】・・・ABダブルキャスト
お嬢吉三 中村 時蔵
お坊吉三 中村 隼人
和尚吉三 A:尾上 松緑
B:坂東 巳之助
手代十三郎 市川 染五郎
伝吉娘おとせ 尾上 左近
釜屋武兵衛 市村 橘三郎
八百屋久兵衛 嵐 橘三郎
土左衛門伝吉 中村 歌六
堂守源氏坊 中村 吉之丞
長沼六郎 市川 男女蔵
【簡単なあらすじと見どころ】
序幕 大川端庚申塚の場
節分の夜、夜鷹のおとせは拾った100両を懐に
夜道を歩いていたところ
美しい娘に道を尋ねられます。
親切に案内していたところ
盗賊の本性を表した娘に金を奪われ川へ突き落とされます。
この娘こそお嬢吉三と呼ばれる盗人。
その様子を籠の中から見ていた
お坊吉三もやはり盗人で、
その100両の取り合いになります。
止めに入ったのが和尚吉三、
三人は同じ名を持つものとして義兄弟の契りを交わします。
二幕目 割下水伝吉内の場
本所お竹蔵の場
伝吉の家に、八百屋久兵衛に助けられたおとせが
帰ってきます。
そこには、久兵衛に助けられた十三郎がいました。
おとせが持っていた100両は
この床を共にした後に十三郎が忘れていったものでした。
伝吉は九兵衛の話から
十三郎はおとせの双子の兄だと気づきます。
しかし、恋したう二人を見て何も言うことができません。
そこへ和尚吉三は二人から預かった100両を
伝吉に渡そうとしますが、
ろくな金じゃない、と受け取ろうとしません。
和尚吉三だと思って投げ返したところ、
別の相手だったことに気づき、
伝吉はそのあとを追いかけます。
それを拾ったのは、釜屋武兵衛でした。
さらに、武兵衛からお坊吉三がその金を奪い取ってしまいます。
伝吉は、取り返そうとしますが、
お坊吉三は無慈悲にもその伝吉を斬り去っていきます。
三幕目 巣鴨吉祥院本堂の場
裏手墓地の場
元の本堂の場
吉祥院に住む和尚吉三にお坊吉三が会いにきました。
留守中の和尚吉三が戻って程なく、
捕手頭の六郎がやってきて、
お坊吉三とお嬢吉三を捕まえたら見逃してやる
と告げました。
六郎が帰ってから、お坊吉三の話を聞いていると
お坊吉三の短刀がないことに気が付きます。
その短刀は、伝吉を斬った時に落としたのです。
そこに、おとせが十三郎を伴ってやってきました。
斬り殺された伝吉の仇をとってほしいと
兄の和尚吉三に頼みにきたのです。
和尚吉三は詳しい話は裏の墓地で聞くと
二人を行かせ、後から向かいます。
和尚吉三はお坊吉三が父の伝吉を殺したことに気が付きました。
そして、おとせと十三郎は互いに知らず、
兄妹の関係で愛し合っていることにも気が付きました。
このままだと畜生道に落ちてしまうと思った和尚吉三は、
義兄弟であるお嬢吉三とお坊吉三を助けるため
首をくれと懇願するのでした。
一方、お堂にはお嬢吉三も隠れていました。
お坊吉三は、自分が手にかけたのは和尚吉三の父だと知り、
二人して自害すれば和尚吉三は見逃してもらえる
と互いに死ぬことにしました。
そこへ帰ってきた和尚吉三の手には
身代わりにするおとせと十三郎の首がありました。
和尚吉三は、二人にかたぎになって生き延びろと諭し、
お嬢吉三に久兵衛に渡すように100両を
お坊吉三にお嬢吉三の脇差を渡します。
実は、お嬢吉三こそ八百屋久兵衛の子であり、
お嬢の持っていた脇差こそ、お坊吉三のお家が断絶の元となった宝刀だったのです。
和尚吉三は首を持って六郎の元へ走ります。
大詰 本郷火の見櫓の場
浄瑠璃「初櫓噂高音」
火の見櫓の下では、
追い詰められたお嬢吉三とお坊吉三が
奮闘しています。
和尚吉三も首が偽物とバレたことで
同じように捕手に囲まれてしまいました。
一瞬の隙を見て逃げ出した時
八百屋久兵衛に会うことができ、
出来事の発端となった100両の金と
お坊吉三の家の刀を渡します。
そして、三人は雪の中捕手に向かって走っていくのでした。
昔のハリウッド映画「明日に向かって撃て」のラストシーン、
ブッチとサンダンスが敵の中に向かっていくところ、
それを思い出させる三人吉三のラストシーンです。
このお芝居は、白浪ものの一つで
三人の同じ名を持った盗人の絡みあう因果が切ない名作。
悪党が主人公なんだけど、
そうなってしまうあれこれに身悶えしてしまうお芝居です。
和尚吉三を尾上松緑さん、坂東巳之助さんのダブルキャストが
話題でもあります。
3月歌舞伎座公演のスケジュールは?
歌舞伎座の3月大歌舞伎公演は、
3月5日(木)が初日で26日(木)が千穐楽となります。
休演日が11日(水)と19日(木)です。
昼の部は学校団体が入る日がありますが、
昼夜ともに貸切公演はないようです。
しかし、注意しなければならないのは
この公演は昼夜共に主役がダブルキャストなことです。
こちらに表にしたので参考になさってください
| 演目 | 役名 | Aプロ | Bプロ |
| 昼の部「加賀見山再岩藤」 | 岩藤・鳥井又助役 | 坂東巳之助 | 尾上松緑 |
| 二代目尾上役 | 中村時蔵 | 中村萬壽 | |
| 夜の部「三人吉三巴白浪」 | 和尚吉三 | 尾上松緑 | 坂東巳之助 |
A,Bの日程については、こちら(歌舞伎美人より引用)をご覧ください。

歌舞伎美人HPより引用
そして、上演スケジュールはこちらです。
幕間の時間をうまく利用して、
歌舞伎座での観劇を楽しんでくださいね!
| 昼の部 | 11時開演 |
| 通し狂言:加賀見山再岩藤~骨寄せの岩藤 発端・序幕 | 11時~11時46分 (幕間20分) |
| 通し狂言:加賀見山再岩藤~骨寄せの岩藤 二幕 | 12時6分~12時31分(幕間20分) |
| 通し狂言:加賀見山再岩藤~骨寄せの岩藤 三幕 | 12時51分~13時18分(幕間35分) |
| 通し狂言:加賀見山再岩藤~骨寄せの岩藤 四幕・大詰 | 13時53分~15時20分 |
| 夜の部 | 16時30分開演 |
| 壽春鳳凰祭 | 16時30分~16時47分(幕間25分) |
| 通し狂言:三人吉三巴白浪 序幕・二幕 | 17時12分~18時30分(幕間35分) |
| 通し狂言:三人吉三巴白浪 三幕・大詰 | 19時5分~20時20分 |
歌舞伎座3月公演の観劇レビュー!
3月歌舞伎座の歌舞伎公演も、昼夜共に観劇します。
懐の都合上、A,B全てとはいかないのですが、
観劇した感想はこちらに書いていきます。
観劇予定の方は、ネタバレ注意です。
観劇未定の方、こちらを参考に劇場へ足をお運びいただけると嬉しいです。
3月大歌舞伎昼の部の感想
「加賀美山再岩藤」を3月17日に観劇しました。
こちらもAプログラムで
岩藤と鳥井又助の二役を坂東巳之助さん、
2代目尾上役を中村時蔵さんで観てきました。
感想を幕ごとに書いていきます。
発端は:お家乗っ取りプロジェクト!まずは噂を流せ!
発端は前回のお家騒動から5年経った
多賀家の様子を
口さがない腰元たちが噂する場面から始まります。
ここでは、多賀家当主が側室に入れ上げてる
って側室のお柳の方への意地悪な見方を
お家乗っ取りを企む弾正一味が
正室梅の方を悪く思わせようとするのです。
お柳の方は、しおらしく
梅の方が主人の言いつけを破ってたしなめられたと言い
さらに、その心持ちを推量して嘆いてみせるのです。
腰元たちは、すっかりお柳の方をいい人と信じ込み、
梅の方を嫉妬に狂った厄介者と決めつけてしまいます。
つまりは心理戦ですね、
噂話の好きな女性の習性を利用して
自分たちの味方を増やす作戦、まずは首尾よくスタートといった発端でした。
お柳の方の中村扇雀さんは、
腹の底に何か持ってそうな感じでした。
中村芝翫さんの弾正が悪のパワーを発揮して
存在感を示していました。
芝翫さんは、悪い人やるとより大きく見えますね。
悪人タイプなのかもしれません。
序幕:鳥井又助の悲劇の幕開け
鳥井又助はこのお芝居のもう一人の主人公。
身分が低い家来で
忠義心は厚いけど残念ながら知恵が浅い。
弾正に騙されて、罪を犯すエピソードが描かれます。
つまり彼の悲劇の幕開けの場ともいえます。
そんな又助は坂東巳之助さんにぴったりなお役、
弾正の口車に乗って、自分は主人の役に立ったと
意気揚々としているのです。
悪人のことをつゆほどにも疑わない、
そしてそれを知って利用する悪人弾正。
「バカと刀は使いよう」というセリフに
ムカムカしましたが、
世の中はそういう理不尽が溢れているなあと
時代が変わっても
大衆の想いはきっと同じなんだろうなと思いました。
この幕で登場する中村又五郎さんの安田帯刀が
すごく良かった。
思慮深く、中立の立場で物事を見られる器が大きい家老です。
梅の方殺害の現場で拾った刀の鞘を見て
下手人を見抜き、でも、真相を知るまでは
それを自分の胸に収めておく、
かっこいいご家老様でした。
二幕目:岩藤復活!最強の執念お化け
このお芝居の中でも随一の見どころと言えるのが
この二幕目です。
主人公の岩藤と二代目尾上がやっとここで登場します。
尾上は、岩藤にも成仏してほしいという思いがあり
念仏を唱えているのに、
それをきっかけに、岩藤が復活するのがなんとも皮肉なことです。
とはいえ、バラバラのお骨が
徐々に集まって人型を作り
そこから岩藤が現れるのはまさにエンタメ!
これを江戸時代の人が考えたというのがすごいことです。
おどろおどろしい、幽霊岩藤も巳之助さんピッタリ!
巳之助さんは、魔性のものが本当にお似合いです。
それに対峙する中村時蔵さんの2代目尾上、
こちらは正統派のいい人。
続くだんまりは、岩藤&又助を除いたメインメンバーが
入り乱れての動きがワクワクしました。
歌舞伎独特の様式で、
現実というよりもイメージの中での大立ち回りが
繰り広げられている感じでした。
そして場面変わって、岩藤もう一つの見どころ。
傘をさして、ふわふわと桜のお山の上を飛んでいく場面、
幽霊なのにファンタジックで大好きな場面です。
三幕目:草履打ち、再び・・・
この幕はとても不思議な場面が続きます。
多賀家のお姫様がおそらく岩藤の祟りで
病に苦しんでいるところ。
その平癒の祈祷をするために
あの「草履」と祈念の書がシンボルのように目を引くんです。
そして、上使として訪れた弾正、、、が
尾上のことを責め始めると
それがいつの間にか岩藤の姿に変わっているのです。
そして、姫の病は尾上のせいだ、と
草履で尾上を打ち据える、、、
「加賀美山旧錦絵」で繰り広げられた
おぞましいあの場面が再現されます。
私的には、中村時蔵さんが
1月は国立劇場で、2月は歌舞伎座・梅ごよみの中で
そして今回も、頭を叩かれるお役についていることが
不憫でなりません。
岩藤、ますますパワーアップ!
というところで助けに現れるのが安田帯刀、
やっぱり頼りになる人なんですね。
このかたもこのお芝居のキーマンです。
四幕目:又助の悲劇、妹弟の嘆きに胸が引き裂かれる思い
この幕は、又助の侵した罪が明らかになります。
弾正に騙され、手柄を立てたと思っていたのが
実は正室を殺めてしまった、、、という
恐ろしい謀反を働いたことになってしまっていたのです。
それを告げに来るのが家老の安田帯刀。
その話を聞くと、それまで忠実に仕えていた
主人の求女にも「人非人」と愛想を尽かされ、
縁を切られてしまうのです。
又助には妹と弟がいて、
妹は求女を助けるために遊郭に身を売ります。
弟は盲人で、まだ幼い年頃。
でも、自分がしたことは、いくら騙されたことと言っても
その罪を無かったことにはできないのです。
武士らしく、裁きを受けると我が身に刀を突きつけるのですが、
そこでやっと申し開きを聞いてもらうことができます。
家老にしても罠と知りつつも主人の正室を手にかけた相手を
許すわけにはいかない。
その疑いがかかった者も、どんな沙汰になるかわからない、
それを又助が自害することで
弾正の謀反の証拠となり、お家も求女の帰参も叶うという
なんとも理不尽な結末になるのです。
この幕では、中村種太郎くんの志賀一の演技が
ピカイチでした。
お箏も上手に弾けてたし、声もよく出ていました。
帯刀を演じた又五郎さんのお孫さんです。
又助兄弟の悲劇性が高まったのはそのせいもあるのかしら
なんて考える余裕はなく
ただただ涙が流れる一幕でした。
大詰:あっという間に大団円、オヤジ様は尊かった
そして大詰め、弾正とお柳の方の策略がバレて
弾正が退治されて、、、というくだりは
非常に見所がありました。
しかし、その後があっという間に全て片付いてしまった
というのがちょっとだけ不満です。
時間の都合もあると思いますが、
岩藤せっかく復活したのに
「骨になりました」の報告で終わり。
蟹江兄弟、退治しましたも報告で終わり。
もう少し、岩藤の最後を見せて欲しかったなあと思う一方、
多賀大領役の7代目尾上菊五郎さん(通称オヤジ様)は
存在感がありました。
この方が舞台に立つだけで
見る価値があると思わせてくれるのがすごいんです。
声にハリがあるし、
動けないけど立っているだけでオーラ半端ない。
最後に、大俳優を持ってくるのも歌舞伎座ならではですね。
主役の岩藤も又助もいない大団円、
不思議な感じもしますが、お芝居を楽しめて良かったです。
松緑さん、萬壽さんバージョンも見てみたかったな。
3月大歌舞伎夜の部の感想
3月歌舞伎座公演(2026)の夜の部を、
初日の5日に観劇しました。
毎月初日は、特別な賑わいで
歌舞伎座も華やかになるのですが
開場前に並ぶことなく、
イヤフォンガイドもトイレも
すいすいと済ませることができました。
ふと、周りを見ると
3階席でも空席が目立ちます。
ルパンも曽根崎心中もある中だし、
いい演目、いい役者とはいえちょっと地味かも
こんなに客の入りが悪い初日って大丈夫かしらと
思ってしまいました。
では演目について感想を書いていきます!
三人吉三は長いので2つに分けます。
壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)は・・・
1つ目の演目は「壽春鳳凰祭」、
たった17分と短い舞踊劇ですが
幹部クラスの大勢の役者さんの群舞ということで
期待していました。
結論から言うと、がっかりでした。
初日のせいというのもありますが、
バラバラ、チグハグという印象を覚えました。
振りもあっていないし、
気持ちも乗っていない感じがするし、
見た目は華やかで綺麗だけど
祝う気持ちも、恋の喜びや嬉しさも
ほぼ伝わってこなかったです。
誰がどう、、とは書きたくないのですが、
動きがギクシャクとロボットみたいな方もいらして
みていて不安になる場面もありました。
たったの17分だけど
こんなに密度の濃い17分を観られて幸せ
そんな気持ちにすることはできないのかなあ。
これは今月の構成の問題もあるかもしれませんが
ワクワクする気持ちが冷めていくような
そんな17分になってしまった気もしています。
ピンポイントで見ると
いいなあ、素敵だなあという場面もあったのですけど、
総体的には残念な気持ちの方が強かったな。
これが、千穐楽に向けて改善されることを祈ります。

松竹サイトより引用
三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)序幕・二幕の感想
三人吉三は、河竹黙阿弥の名作、
七五調のセリフや登場人物の描写など
見どころも多いのですが、
なんといっても入り組んだ「因果応報」を
エピソードを絡めて回収していくストーリー展開にも
大きな魅力がある演目だと私は思っています。
だから、そのお芝居を通しでやってくれるのは
すごく嬉しい!
私が観劇したのは、尾上松緑さんが和尚吉三を演じたAプログラムでした。
今回の配役は割と私好みです。
お坊がイケメン中村隼人さん、
お嬢が綺麗で凄みの出せる実力派女形時蔵さん、
土左衛門伝吉に脇ならなんでもお任せ人間国宝歌六さん、
悲劇のカップルおとせと十三郎に
めっぽう売り出し中の綺麗どころ、左近さんと染五郎さん。
面白くないはずがないという
私個人的には100点満点つけたいくらいの配役です。
花道から、おとせが出てきて、お嬢が声をかけて
お金をゆすりとって、お坊がそこに口を出して斬り合いとなり、
和尚の口添えから義兄弟の契りを交わす大川端!
流れるようにストーリーが進み、
「月は朧に白魚の。。。」の名セリフで
どっぷり芝居に引き込まれました。
この幕に出揃った登場人物は
ここでは明かされないし
本人たちもわかってないけど、
皆、親の因果を背負っての今を生きている人たちです。
歌舞伎は何回観ても面白いと思える理由の一つが、
毎回新たな発見があることです。
今回の私の発見は、彼らの背負う「因果」が
この後の芝居でその報いを受けていくのだということを
強く実感したということ。
お嬢吉三は八百屋お七の格好をしているけど
実は八百屋の息子だったとかね。
お坊は無茶な因縁をつける盗人だけど、
刀を試しているのかもとかね。
序幕だけで、これほどワクワクできてしまいました。
第二幕目は、伝吉の家、
ここは夜鷹の元締めでもあることを匂わせる
3人の夜鷹のやりとりが面白かったです。
三人吉三の大川端の斬り合いをパロったやりとり、
結構好きな尾上緑さん、と他のお二人で
陰惨な場面のまえに笑わせてくれてありがとうって感じです。
ここでは、三人吉三の意外なつながりが
伝吉と尋ねてくる八百屋久兵衛の間で交わされます。
序幕で川に突き落とされたおとせを助けたのが八百屋久兵衛、
その久兵衛の養子である十三郎を助けたのが伝吉、
そして二人は夜鷹と客として出会い
愛し合うようになってしまいます。
互いに知らぬことですが、実は十三郎は伝吉が昔捨てた息子、
つまり二人は兄妹なので、近親⚪︎⚪︎という恐ろしい関係。
また、伝吉は和尚吉三の父、
和尚が父のために渡そうとした金は因縁の100両です。
短い間に物語の主要な因縁がこの場に集まるのです。
ここで苦悩を見せるのが歌六さんの伝吉、
やっぱり独白がうまいなあ、、、
このお芝居、七五調のセリフが聞きどころなのですが、
全てが耳に心地よいとは言い難いです。
機械的に節を回しているようにも聞こえることがあり、
そうなると何を言いたいのかが入ってこないのです。
しかし、歌六さんのセリフは心の中にずんずん入ってきます。
そのお役としての言葉だから響くのだと思いました。
この幕切れは、
和尚だと思って投げつけた金を受け取ったのが別人と知って
伝吉が追いかけるのですが、
それをゆすりとったお坊吉三に無惨に殺されしまう場面です。
この時に、お坊が伝吉の人相から、
悪党の匂いを嗅ぎ取ったことで
容赦ない仕打ちともなってしまうのですが
その陰惨さが滲み出ていてドキドキしながら見ていました。
証拠となる小柄(こづか)が、おとせ、十三郎の手に渡る場面も
絡まった因縁がひとところに吸い寄せられる不気味さを
感じながら見ていました。
黙阿弥大先生すごいお芝居ですよ〜と
心の中で叫んでしまいました。

松竹サイトより引用
三人吉三巴白浪三幕・大詰の感想
三幕目からは、いよいよ悲劇のラストシーンへと突入していきます。
観客側で見ている私には、
なんとかも連れた糸を解いて、
皆が幸せになってくれないか、、と願うのですが、
この物語はそれを許してくれません。
どう足掻いても、最終場面に突き進むしかないのです。
吉祥堂に和尚を訪ねてきたお坊吉三、
須弥壇に隠れているところ、
同じく和尚吉三を尋ねてきたおとせと十三郎の話を聞いて
自分が手にかけた伝吉が和尚の父だったことに気づきます。
和尚も二人の話を聞いてそれに気づきますが、
さらに伝吉が昔お坊の父を殺し庚申丸を盗んだことで
お家断絶のきっかけを作ってしまったことや、
お嬢が盗んだ100両は十三郎のものであったことなど
因果の報いが一気に押し寄せていることにも
胸が張り裂ける思いでいるのです。
今まで何回かこのお芝居を見てきて、
今回はその因果の解消を一手に和尚が引き受けようとしていることを
より強く感じました。
そして、地蔵裏での殺戮になるのですが、
おとせと十三郎がお揃いのぶち模様の襦袢を身につけているのを見た時、
ゾワゾワと背筋に寒気が走りました。
ああ、伝吉が昔殺した犬の呪いか、、、、。
一方、その和尚の胸の内を知らないお坊とお嬢は、
自分たちがしでかしたことで
和尚の家族を不幸せにしてしまったと信じています。
そのため、二人で死のうとするのですが、
この二人のやりとりが、
男同士にも関わらず、
男女の心中のようにも見えるのが歌舞伎らしいと思いました。
時蔵さんのお嬢は、男が女装しているとわかってるのですが、
女形だけあって、女性のようにも見えるのです。
禁断の何かに足を踏み入れたような気にさせる
お坊とお嬢の対話も印象深い場面でした。
そして、互いに命を・・・というその時に
和尚が走り戻ってきます。
そうして、お嬢とお坊に死んではいけない、と
これまでの因果を語り、
堅気になって生き延びるように話すのです。
2人にはしなければならないことがあります。
お坊は、庚申丸を将軍家に返してお家の復興を願うこと、
お嬢は、十三郎が失った100両を義父(お嬢の父)の八百屋久兵衛に返すこと、
和尚の手にはおとせと十三郎の首がありました。
なんとも残酷な、、と思うところですが、
真実を知って嘆く姿を見るよりは
夫婦として死なせてあげたいという和尚の慈悲も
あったのだろうなあとただただ悲しい運命に涙です。
そして一気に雪のラストシーンへ。
木戸を挟んでお坊とお嬢と和尚が揃います。
八百屋久兵衛も現れ(なんたる偶然!できすぎだけど笑)、
三人の懸案は全て晴れました。
あとは命の終わりまで共に、というラストです。
三人の盗人、
だけどそうなったのも不幸な偶然が重なった結果、
その運命を丸ごと受け入れ潔く死に花を散らす
三人の吉三の姿はとても美しく気高く悲しみに満ちていました。
派手さはないお芝居でしたが、
見どころをしっかりと見せてくれました。
大満足の観劇でした。

松竹サイトより引用
お読みくださりありがとう存じまする。
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