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義経千本桜鳥居前・渡海屋・大物浦の感想10月歌舞伎座(2025)

観劇レポート
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10月歌舞伎座公演、通し狂言「義経千本桜」の

第一部Aプログラムを

10月6日(月)に観劇しました。

市川團子さんの佐藤忠信、中村隼人さんの平知盛が初役!

坂東巳之助さんのご長男緒兜くん初お目見えと

おめでたいが続く舞台。

若い役者さんたちの体当たりの演技と

それを受け止め大きな場へ転じさせるベテランの味と

うまく噛み合った素晴らしい舞台でした。

*2025年10月歌舞伎座公演「義経千本桜」についてはこちらにまとめています。

10月歌舞伎座公演「通し狂言義経千本桜」まとめ!演目、配役、スケジュール(2025)
令和7年の歌舞伎座公演は、三代名作の通し上演シリーズ第3弾!通し狂言「義経千本桜」です。この作品は、私が最も好きなお芝居なので、とてもワクワクしています。この10月歌舞伎座公演について、義経千本桜の魅力や簡単なあらすじ、配役、上演スケジュー...

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義経千本桜鳥居前は團子の忠信と笑也の静御前!

鳥居前は、義経一行が都落ちをする途中

後を追ってきた静御前との別れ、

静を悪党から守る佐藤忠信の活躍が見どころです。

源義経には坂東巳之助さん、

白塗りの凛々しい武者ぶりが品格と威厳をも

醸し出していました。

実の兄より追われる身である嘆かわしさ、

卿の君を失い、今また静との別れの悲しさ、

その境遇をしみじみと感じさせていました。

静御前を演じるのは市川笑也さん、

年齢を感じさせない、美しさに目を見張ります。

義経恋しの気持ちが熱烈に伝わってきて

置いてかれちゃうシーンは可哀想すぎました。

その静を見つけて連れて行こうとする鵜の目鷹六の前に

颯爽と現れたのが市川團子さん演じる佐藤忠信、

この場は荒事のしつらえで、

めっちゃたくましい男っぷり、

一瞬、二世市川猿翁さんが若返って現れたのでは?

と目を疑いました。

普段は細くて華奢な團子さん、

太い声と大きな動きで

忠信の武者ぶりを大熱演!

身体のキレがいいのでとにかくカッコよかった。

三部の狐忠信、実の忠信と

3種類の忠信を見せてくれますが、

この忠信が一番かっこいいかも。

ここでは、あまり狐っぽさを出さないのですが、

敵をやっつける時はちょっと術を使ってましたね。

その活躍が認められて

源九郎義経の名と鎧をいただくのですが、

それを恭しくおしいただく姿も忠義一途な感じでした。

それと中村橋之助さんが演じる弁慶が

この場では義経に叱られるちょっと情けない役、

これもいい感じですね。

彼も早くもっと大きなお役で舞台に立ってほしいなあ。

30分という短い演目ですが、

華あり、憂あり、勇ましさありで楽しめる演目でした。

義経千本桜渡海屋はベテランが支えが頼もしかった

義経千本桜の渡海屋、

ここは初役の中村隼人さんをがっつり支える

ベテランの存在が心強いと思った場でした。

舟が必要だから、先客の予約を譲れと

押し込んでくる相模五郎と入江丹蔵に

坂東亀蔵さんと尾上松緑さん。

片岡孝太郎さん演じるお柳とのやり取りや

銀平にやり込められて魚づくしの負け惜しみも

テンポよく楽しませてくれました。

隼人さんの銀平はかっこいいし、

しっかり型をなぞっているのですが

やっぱりまだサイズの違う服を持て余しているように

見えてしまいます。

それを補うのが若々しいハリのある声とお姿、

若手はこれが大事だなって思います。

思いっきりやってみる、

それを周りが受け止めてより大きく見せてくれる、

そんな舞台だったなあって思いました。

義経千本桜大物浦は隼人の平知盛、大熱演に拍手!

大物裏は、碇知盛でも知られる

知盛のダイナミックな最後が印象強いお芝居です。

中村隼人さんは、銀平・平知盛を片岡仁左衛門さんから

教わったとのことで、

おそらくそれに忠実に演じているんだろうなと思えるものでした。

それは決して悪いことじゃなくて、

歌舞伎って先輩から芸を継承しながら、

自分の積み重ねの中で自分らしい解釈を見出して

自分なりの演技を作っていくところが魅力だなと思うのです。

だから、初役の中村隼人・平知盛が見られたことに感激です。

渡海屋から大物浦まで幕間がなく、一気に上演!

これは役者さんたち大変だろうなあと思いつつ

観客も2時間近く集中するので大変です。

前半は、公家の衣装に着替えた

局たちと安徳天皇が知盛の勝戦を願うところ、

しかし目の前で旗色が悪くなり、

相模五郎の旗色悪しの凶報。

そして、入江丹蔵覚悟の最後を見届け、

局たちも次々と海に身を投げます。

そして、天皇にも海の底には都があると

仏に祈る涙のシーン。

初お目見えの守田緒兜(坂東巳之助さんのご長男)くん、

素晴らしかったです。

あの、重いだろうお衣装を身につけ、

大きな声で難しいセリフを難なく言いこなす、

これはいい役者さんになるかなって

おばちゃんとしては嬉しくなっちゃいました。

義経に身投げを止められ、

戻ってきた平知盛と義経たちの出会いの場も感動的でした。

血まみれの知盛が迫力満点でかっこいいのも付け加えておきます。

でも、やはりそれぞれ敵と争ってきた知盛と義経が

安徳天皇を守ることでそれぞれの思いを共有し、

お互いを許し合う場面、

「昨日の敵は今日の味方」という知盛に

やっと心の平穏が訪れた感じがしました。

それを見守って自ら命を断つ典侍の局(孝太郎さん)の

儚くも美しい散り際も感がい深いです。

義経一行はまだまだ苦難が続くのですが、

碇を巻きつけ海に身を投げる知盛の姿を見届け

その場を後にします。

なんとも言えぬ無常感です。

劇場に虚しく響く法螺貝の音、

それは滅びる平家とともに義経一行の未来を

包み込む悼みの音にも聞こえました。

若手とベテランの力がうまく噛み合った、

情感のあるお芝居だったなあと思います。

お読みくださりありがとう存じまする。

 

第三部「吉野山」「川連法眼館」の感想はこちらに書いています。

義経千本桜、澤瀉屋の型を市川團子が繋いだ川連法眼館の場の感想!10月歌舞伎座公演(2025)
10月(2025年)の歌舞伎座は、松竹創立130周年記念の通し狂言「義経千本桜」です。三部制で特に第三部は、A(澤瀉屋型),B(音羽屋型)のダブルキャストで、どちらも見比べたいところ。早速Aプロの市川團子さん主演の舞台を観てきたので感想をま...

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