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納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」感想、ネタばれ必須あらすじと見どころ。坂東玉三郎、圧巻の舞台は見逃し注意!

観劇レポート
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歌舞伎座の納涼歌舞伎第3部を観ました。

大役者、坂東玉三郎が納涼初出演とあり、

その深い意趣も伺える、圧巻の舞台でした。

観劇中は、正直戸惑うこともあったのですが、

その後じわじわと染み入るように、感動が蘇っています。

 

 

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納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」の主な配役、あらすじと見どころ

納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」の主な配役

納涼歌舞伎は、3部制なので、1部の時間が短めです。

第3部は、18時30分開演で20時50分ごろの終演でした。

主な配役は4人です。

三上於菟吉 原作 坂東玉三郎 演出・補綴

四 新版 雪之丞変化(しんぱん ゆきのじょうへんげ)

大喜利 元禄花見踊

中村雪之丞 坂東 玉三郎

中村菊之丞 市川 中車(五役)

土部三斎

孤軒老師

脇田一松斎

盗賊闇太郎

秋空星三郎 中村 七之助

鈴虫 尾上音之助/坂東やゑ六

 

納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」のあらすじと見どころ

この作品は、昭和の初めに人気を博した新聞小説で、

映画、テレビドラマ、新歌舞伎、宝塚と、

様々な手法で繰り返し上演されているものです。

ググると美空ひばりや長谷川一夫、滝沢秀明といった名前も出てきました。

本作を通しで上演すると3時間はかかってしまうという大作、

今回は、坂東玉三郎の演出も加わり、

わかりやすく、スピーディーに進める工夫もされています。

第1幕のあらすじ

芝居一座中村菊之丞の元で、

芝居の芸を磨いている中村雪之丞。

実は、幼い頃、長崎奉行の土部三斎らによって、

両親が抜け荷の濡れ衣を負わされ、目の前で処刑されるという

暗い過去を持っています。

心の内に、その復讐の炎を燃やしながら、

役者となって、機会を待っているのです。

仇を討つために、剣の技を脇田一松斎に師事し、

また、女形としての芸道を、

師匠の菊之丞、先輩の秋空星三郎から学びながら、

江戸にまでその名が知られる役者へと成長していきます。

第1幕の見どころ

坂東玉三郎が演じる、中村雪之丞。

刀を見ると、劇中でも正気を失う、

心の病を持つ若い女方の役者です。

その雪之丞が、親の仇を討つこと、芸の道を極めることに

悩みながら、成長する様子に注目して欲しいです。

師匠役の中車、先輩役の七之助、

ともに現実では玉三郎に学ぶ役者なだけに、

その逆の姿はなんとなくコミカルで、

クスッと笑える場面もあります。

後述しますが、

星三郎と芸の道について語り合う場面は、

玉三郎の女形にかけてきた強い思いが伺え、

心が熱くなりました。

3人のセリフに、狂言回し役の鈴虫が絡み、

映像描写を交えて、テンポよく進みながらも、

セリフ一つ一つの重みを感じる第1幕です。

そうそう、オープニングの芝居が、

「伽羅先代萩」というのもオツですね。

第2幕のあらすじ

江戸の芝居小屋に呼ばれた菊之丞一座。

その客席には、雪之丞の仇である

土部三斎の姿もありました。

その姿にも心を乱すことなく、

舞台を務め上げた雪之丞。

三斎に気に入られ、家にも招かれることとなり、

復讐のチャンスと胸を踊らせます。

その計画を知った、義賊の闇太郎の助けを得て、

無事に仇討ちを遂げるのでした。

第2幕の見どころ

劇中劇、雪之丞が花形役者として

江戸で見せる芝居と、

盗賊闇太郎の助けを借りて、仇を討つ場面が、

第2幕の見どころになるかなと思います。

「雪之丞変化」本来のストーリーは、

仇討ちに主眼を置いているようですが、

この新版では、

雪之丞の役者としての芸の道を、

より描きたいのかなという思いを感じます。

中車が5役を務めている関係で、

仇討ちの場面はちょっと滑稽な演出にも

なっています。

幕が降りてからの大喜利は、「元禄花見踊」。

ここで舞う雪之丞からは、

しがらみを断ち切り、

一層役者としての道を究め、花を咲かせていく心根を

感じるのです。

この場面だけでももう一度観たいなあ~。

 

納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」勝手にベスト3

では、「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」で、

私が、最も心に残ったと思うベスト3を

紹介します。

私的見解ですので、あらかじめご承知くださいね。

ベスト1:坂東玉三郎の魅力を楽しめます

私、第一のご贔屓は坂東玉三郎です。

赤姫を演じた姿も年増を演じた姿も悪女を演じた姿も、

ぜ~んぶ大好きです。

だから、玉さまが主役として舞台に立つ芝居、

それだけで満足なんです。

7月31日の歌舞伎美人(松竹の総合サイト)に

玉三郎のインタビューが掲載されていました。

その一部、この雪之丞への視点を抜粋します。

「敵討ちも、やってしまったら無意味なもの。女方も、役者も消えていくもの。だから、華やかにしなくてはいけないという思いを込めた作品です。敵討ちではないところ、芸道の修行であったり、いろんなところでの修行が主。それで、敵討ちをしてしまったあとに、雪之丞が、そうやって生きてきたけれど、敵討ちというのはなんだったのかという芝居です」。

この言葉にあるように、

「女方」「芸の修行」は大きなキーワードなんですね。

玉三郎演じる雪之丞を通して、それをしみじみ感じました。

大喜利は、

雪之丞が迷いを乗り越え、

芸へ精進する意思を通して、生きる意味を描いたのではないか

と思いました。

そんなこともあり、観た後に、深く心に残る芝居でした。

*坂東玉三郎については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みくださいね。

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ベスト2:星三郎と雪之丞が芸について語り合う

中村七之助演じる秋空星三郎は、

雪之丞がいい役者になることを見込んで、

親身に教え、導く先輩です。

その2人が、芸について夢について、

語り合うシーンがあるのですが、

とても生き生きとした話しっぷりに、魅入られてしまうシーンです。

ここでは、今までの玉三郎の映像が、

2人の語る未来として描かれることも面白いです。

芝居はそれを演じる人によって受け継がれ、

新たに蘇っていく、

そういうことも考えたシーンです。

*中村七之助については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みくださいね。

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ベスト3:若手への期待が感じられる配役

このお芝居は、実際には4名で演じられています。

主人公は坂東玉三郎演じる雪之丞ですが、

その先輩役が中村七之助。

七之助ご自身が憧れる先輩として、坂東玉三郎をあげていて、

納涼歌舞伎第一部(「先代銘木萩」)では、

玉三郎の教えを受けながら、初役の政岡を務めています。

この芝居では立役です。

キリッとした2枚目役者を演じる姿から、

今後立女形として活躍するかも?

という期待をも見せてくれます。

市川中車は5役に挑戦です。

ご自身は、

「大変です。ぼくの限界を超えているので…なんとか頑張ります」

と気合を入れつつ演じきっている様子です。

テレビや映画では、演技派の顔を見せていますが、

歌舞伎となるとちょっと勝手は違います。

衣装や化粧を変えていても、

その役の芯を掴んで演じ分ける必要があり、

その難しさを実感しているんだろうなあと見ていて思いました。

歌舞伎役者としては遅咲きですが、

とても重要な方でもあります。

尾上音之助は、鈴虫役、

コケティッシュな役柄で暗くなりがちな芝居を明るくしつつ、

物語をつないでいきます。

このお役、とても大事です。

とてもいい味を出していて大奮闘です。

もう一人、坂東やゑ六とともに、

大抜擢なのではないかしらと思います。

そういう配役に期待が感じられ、嬉しくもなりました。

*市川中車については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みください。

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納涼歌舞伎2019第3部「新版 雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」

千秋楽は27日(火)です。

お席は若干残っているようです。

私も、もう一度観たいと思うお芝居でした。

読んでくださり、ありがとう存じまする。

*8月納涼歌舞伎第1部「伽羅先代萩」「闇梅百物語」の感想は、

こちらに書いています。よかったらお読みくださいね。

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