新国立劇場の9月歌舞伎公演(2025)は「仮名手本忠臣蔵」の
二段目と九段目です。
3月に、歌舞伎座で通し狂言として、
大序から大詰めまでを上演したのですが、
二段目、九段目は割愛されていました。
それを観られることができるのは嬉しい!
ここでは、新国立劇場9月公演「仮名手本忠臣蔵」の概要や感想、
スケジュールや安くチケットを買う方法についてお伝えしていきます。
9月新国立劇場歌舞伎公演は忠臣蔵
国立劇場が改装のため最後の公演を行ったのが
2年前の10月でした。
私は、あの国立劇場がとても大好きだったので、
何年か待てばまたここで歌舞伎が観られると信じていました。
しかし、いまだに工事は着工されず、
日本の伝統芸能を継承し保持する役目のある大事な施設は
国から蔑ろにされたままです。
日本政府が、日本国民の精神的な文化拠点を
見捨てたのではないかと憤りすら覚えることがあります。
それでも、各種伝統芸能公演だけは
場所を転々としながら行っています。
今回は、初台にある新国立劇場の中劇場です。
半円形の劇場で、バレエやミュージカルには
適しているかもしれません(専門家じゃないのでわかりません)が、
歌舞伎公演に関しては不適だなあと一ファンでも感じるものです。
あ、あ、国立劇場の愚痴になってしまいました。
ま、そこで行われるのが
歌舞伎3大名作と言われる「仮名手本忠臣蔵」より
二段目と九段目を取り出してのお芝居です。
上にも書きましたが、
3月に歌舞伎座の通し狂言では割愛された段でもあります。
とはいえ、討ち入りへの布石となる
大切な段なのでここを取り上げるのは
国立劇場はみる目があるなって思ったところです。
生意気言ってますね、すみませんです。
新国立劇場の忠臣蔵、配役と簡単なあらすじ
新国立劇場で9月に開催される「仮名手本忠臣蔵」の
配役と簡単なあらすじです。
〈配役〉
加古川本蔵 中村 梅玉
本蔵妻戸無瀬 中村 扇雀
大星力弥 中村 虎之介
一力亭主寿助 中村 寿治郎 (休演)
本蔵娘小浪 中村 玉太郎
由良之助妻お石 市川 門之助
桃井若狭之助・大星由良之助
中村 鴈治郎
中村梅玉さんの本蔵、中村扇雀さんの戸無瀬、
中村鴈治郎さんの若狭之助と由良之助も初役とのこと。
年季は入ってる皆様ですが、
フレッシュな気持ちでの演技が楽しめそうです。
もちろん若手コンビも初役だよね。
〈簡単なあらすじ〉
ではここからは、各段の簡単なあらすじを紹介します
二段目 桃井館力弥使者の場
加古川本蔵の家では、
主人の桃井若狭之助が、
鶴岡八幡宮の兜改めで高師直から
意地悪な仕打ちをされたことを
腰元たちが噂として話しています。
そこへ部屋に入ってきた戸無瀬は
おしゃべりを嗜め、下がらせます。
そんな折、塩冶家から使者として
大星力弥がやってきます。
力弥の許嫁である小浪にその場を任そうと
戸無瀬は仮病を使ってその部屋を去ってしまいます。
力弥の到着を迎える小浪は
恋しさを隠しきれずにウキウキしています。
とはいえ、使者からの言葉を聞くという大役、
果たそうとするところへ
加古川本蔵が入ってきます。
力弥は、本蔵に明朝の登城時刻を伝え去っていきます。
【9月歌舞伎公演】好評上演中🏮
『仮名手本忠臣蔵』
二段目 桃井館力弥使者の場若狭之助の短慮を心配する本蔵。
戸無瀬に促され、許婚の力弥から判官の口上を受けた小浪は…。新国立劇場中劇場にて、27日(土)まで開催。
📸舞台写真https://t.co/d1WruMVHDo
🌐公演情報https://t.co/MawKQIYLpM pic.twitter.com/tWEGfBUWaD— 国立劇場 (@nt_tokyo) September 9, 2025
二段目 松切りの場
桃井若狭之助は何か思い詰めた様子でいます。
そして、部屋に言伝に来た本蔵に
辱めを受けた不満を話します。
それに対し、本蔵は刀を抜くと
松野枝をバッサリと切り落とし、
こうすればいいと伝えます。
何かを決意した若狭之助がその場を去ると
本蔵は急いでお金や供物を用意し、
馬を引くようにいうのです
【9月歌舞伎公演】好評上演中🏮
『仮名手本忠臣蔵』
二段目 桃井館松切りの場高師直との諍いを腹に据えかねた若狭之助は、家老の加古川本蔵に、ある決意を打ち明けます。
新国立劇場中劇場にて、27日(土)まで開催。
📸舞台写真https://t.co/d1WruMVHDo
🌐公演情報https://t.co/MawKQIYLpM pic.twitter.com/1iKGqpttVf— 国立劇場 (@nt_tokyo) September 10, 2025
九段目 山科閑居の場
一力茶屋から酔った由良之助が
茶店の男集、女衆を連れて帰ってきます。
なぜか、彼らは雪玉を転がしています。
その雪玉を庭まで運ばせると
由良之助は家に入ります。
しばらくすると、
家に女の二人連れがやってきて
入れて欲しいと声をかけます。
由良之助の妻、お石が家に入れると
二人は戸無瀬と小浪でした。
許嫁の娘との結婚を促す戸無瀬に対し、
お石は家柄が釣り合わぬと
話に応じません。
何が釣り合わないのかと尋ねると、
高師直に賄賂を送った心根が
武家として釣り合わないというのです。
話も早々にお石は奥へ入ってしまいます。
取り残された戸無瀬と小浪は
絶望のあまり自害しようとします。
そこへ虚無僧の尺八の音が聞こえ、
正気に戻った二人に
お石が引き出物を差し出せば結婚を許す
と言いに戻ってきました。
大喜びの二人ですが
引き出物に、この三方に「本蔵の首」を載せて
差し出せと言われ言葉を失います。
そこに先ほどの虚無僧が入ってきます。
その正体は本蔵でした。
悪口を叩き、無作法な振る舞いをする本蔵に
力弥も出てきて止めようとします。
しかし、そこでも罵られて
力弥はやむなく槍で本蔵を刺します。
本蔵は避けることなく
自らその刃にかかるのでした。
そして苦しい息の中で
小浪と力弥の結婚を認めてくれるよう願うのです。
本蔵は、主人の短慮を止めようとお家のために
師直に若狭之助に内緒で賄賂を渡します。
そのおかげで嫌味の矛先が塩谷判官に向いたこと、
殿中の刃傷で、相手が死ななければ軽い罪で済むと思い
判官を抱き止めてしまったこと。
そのため、本願を果たせず切腹に追い込んでしまったことを
悔いており、由良之助らの仇討ちに
手を貸したいと考えていたのでした。
そして、小浪を通じて
高家の家の間取りを差し出します。
由良之助は、
本蔵の本意を知り、裏庭を見せます。
そこには、雪で作った墓がありました。
尚も案じる本蔵に
由良之助はこれさえあればと
力弥と小浪の祝言を許し
早々に支度をして仇討ちへと出発します。
とはいえ、2人に与えられた時間は一晩だけです。
それでも願いを遂げた本蔵は満足そうに息を引き取り、
由良之助は旅立っていきます。
【9月歌舞伎公演】
舞台写真を公開しました📸✨https://t.co/d1WruMVHDo
「忠臣蔵」屈指の名場面に、主な出演者がすべて初役で挑む舞台は必見👀
初台・新国立劇場中劇場で開催。
チケット好評販売中!
公演は27日まで。🌐公演情報https://t.co/MawKQIYLpM pic.twitter.com/bBNxzlFOc8
— 国立劇場 (@nt_tokyo) September 8, 2025
地味ではありますが、
由良之助らが仇討ちへ出発するきっかけとなったのが
この段なので、
観られることはより忠臣蔵の世界を楽しめると思いました。
全段通してのあらすじはこちらにまとめています。

また、忠臣蔵の登場人物相関図はこちらです

新国立劇場忠臣蔵の感想:2025年9月公演
新国立劇場9月公演「仮名手本忠臣蔵」、
8日に観劇しました。
お芝居から外れますが、
私は本来の国立劇場が好きだったことと
新国立劇場は伝統芸能の様式に則ってないことから
この劇場で歌舞伎を観ることは好きではありません。
なので、国立劇場主催の公演からは遠ざかってますが
このお芝居は観に行ってよかったと思います。
なぜなら、あまり上演されることのない
二段目と九段目を見ることができたからです。
知らなかった穴を埋める、
それもお芝居を見る楽しみでもあります。
と前段はここまで
お芝居のよかったところを3つ感想としてあげます。
本蔵(中村梅玉)の心情が伝わる好演
この公園で一番印象に残ったのは、
加古川本蔵を演じた中村梅玉さんの腹の芝居です。
通常の忠臣蔵は
塩冶家が中心なので、本蔵の物語は
それを立体的に彩る伏線と見ていました。
でも、二段目、九段目と切り取ったところで
中心人物が本蔵に移ったと思います。
実は彼も、高師直に人生を狂わされた被害者でもあるのですが
塩冶家から見たら、
塩冶判官へ高師直の意地悪が向いたのは
加古川本蔵が主人の桃井若狭之助、さらにはお家を守るために
賄賂という手段で高師直の気持ちを収めたことも原因に見えました。
さらには、塩谷判官が殿中で刃傷という行為に及んだ時に
判官を抱き止めたことで本懐を遂げられぬうちに
切腹の沙汰となったことも恨みを買う一因でした。
そのため、心ならずも加古川本蔵も塩冶家の仇となってしまったのです。
これは苦しいですよね・・・
主君のために致し方ないことなのに
それが他のお家を滅ぼすきっかけとなってしまった。
しかも、愛する娘はその塩冶家の筆頭家老
大星由良之助の嫡男と許嫁の関係にあります。
娘の思いを遂げさせたいという親の願いも
自身の忠義により叶えられなくなってしまったのですから。
おそらく二段目の本蔵はそこまで未来は見えていなくて
殿の気持ちを収めて(松の枝を切る)から、
大事に至らないように細心の注意を払っての
大きな賭け(賄賂を渡す)に出たのでしょう。
ここでは忠義一筋のできる家臣としての
心情が伝わりました。
九段目では、自分の命を捨てることで
主人に背くことなく、
娘の本意を遂げさせ、かつ、塩冶家への詫びをする。
その決意の現れが、梅玉さんの本蔵から伺えました。
彼もまた、忠義一筋であり、
愛する主君や家族のために命を使う
悲しいけど尊い生き方をした武士でした。
その生き様や想いがひしひしと伝わる
梅玉さんの本蔵に感動しました。
【9月歌舞伎公演】
『仮名手本忠臣蔵』
中村梅玉(加古川本蔵)「仮名手本忠臣蔵に初めて出たのは何十年も前の話で、それ以来十何役経験して、いよいよ今回本蔵という役に初めて挑戦することになりました。本蔵の忠臣である部分を大切に演じたいです。」
🌐公演情報https://t.co/MawKQIYLpM pic.twitter.com/DYfVYJio94
— 国立劇場 (@nt_tokyo) August 22, 2025
小浪(中村玉太郎)と力弥(中村虎之助)が健気
忠臣蔵には、お軽と勘平に代表される
悲劇のカップルも登場します。
この小浪と力弥もその一組です。
本人たちにはどうしようもない現実に
若い二人の思いは無惨に引き裂かれます。
でも、そんなことにめげずに
恋心を押し通すのが小浪という娘です。
この人と決めた相手への思いを翻すことなく
この想いが成就しないのならば命を捨てることも厭わない、
それこそ武士の娘と、母戸無瀬が褒める場面があります。
二段目の小浪はお嬢様で、恋したう力弥との対面に
心を躍らせる初々しさにキュンとなりました。
九段目では、先にも書いたように
自分の思いを通そうとする凛とした強い心情を見せていました。
中村玉太郎さんの小浪、とても可愛くて素敵でした。
相方の力弥は中村虎之助さん。
この方の出番は少ないのですが、
小浪にそれだけの思いを募らせる素敵な若者っぷりを
見せてくれました。
抑えた心情と行儀の良い立ち振る舞い、
九段目では、父と共に仇うちに立つ強い意志が
見られました。
凛々しい若武者として存分に楽しませていただきました。
口上人形の演出が嬉しい
仮名手本忠臣蔵は、大序の前に口上人形が
登場する人物と役者を紹介するという習わしがあります。
今回のお芝居では
その口上人形を2体登場させて
大星家と加古川家の関係について説明してくれました。
そして、なぜこういう悲劇が起きたのかの
背景についてもわかりやすく簡潔に
伝えてくれたので
お芝居に入りやすかったと思います。
こういう演出は国立劇場ならではかもしれません。
ちなみに、人形の声はその場では紹介されませんでしたが
私の勘では、
中村虎之助さんと中村玉太郎さんではないかと思います。
お二人ともメインのキャラなので、
あの扮装で声を出してるのかな?
などと想像してしまった私です。
以上、印象に残った感想でした。
【9月歌舞伎公演】
『仮名手本忠臣蔵』二段目・九段目上演前に登場する口上人形の声を担当するのは、中村虎之介と中村玉太郎✨
二人の掛け合いにも、ご注目ください!初台・新国立劇場中劇場にて開催。
チケット好評販売中!
公演は27日まで。
🌐公演情報https://t.co/MawKQIYLpM pic.twitter.com/gG5Ay6eF9r— 国立劇場 (@nt_tokyo) September 5, 2025
9月歌舞伎公演(新国立劇場)のスケジュール
国立劇場の9月歌舞伎公演は
9月5日が初日で27日(土)が千穐楽です。
休演日が10日(水)と18日(木)です。
上演スケジュールは下の表の通りです。
幕間はありますが、
劇場内での飲食はできないので
ロビーで召し上がっていただくことになります。
その点、ご注意くださいね。
開演 | 13時 |
二段目 | 13時~13時50分 幕間25分 |
九段目 | 14時15分~16時5分 |
新国立劇場歌舞伎のチケットを安く買う方法は?
なんと、新国立劇場の歌舞伎公演チケットを
約半額で買えるサービスがあると知りました。
それは、e+というチケット販売会社が取り扱っている
【得チケ】優待販売というものです。
私は、国立劇場のチケットサービスでチケットを購入していますが
そこではこの紹介をしてくれません。
ちょっとずるいな、と後から知って思いました。
でも、客席が空いているよりは埋まっていて欲しいと思うので
ここで紹介させていただきます。
チケットの詳細は画像の通りです(e+公式サイトより借用)
そして、こちらからそのサービスに行くことができます。

国立劇場に関しては、こういう情報が今後も出るかもしれないので
注目していきたいと思います。
お読みくださりありがとう存じまする。
コメント