歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」2024は、12月の新橋演舞場、2月(2025年)の博多座で上演されています。
松本幸四郎さん、尾上松也さんダブルキャストで、魅力ある極悪人ライを観られることも話題であります。
その「朧の森に棲む鬼」2024のあらすじやネタバレ感想、登場人物などを一挙に紹介します!
2025年はシネマ歌舞伎にもなるので、要注目なお芝居です。
朧の森に棲む鬼の初演は劇団新感線
「朧の森に棲む鬼」という作品は、2007年に劇団新感線により初演されました。
当時も新橋演舞場だった、ということで2024年はお帰りなさい公演だったとも言えますね。
演出はいのうえひでのりさん、脚本は中島かずきさん、主演は市川染五郎さん、つまり現松本幸四郎さんです。
2007年バージョンでは、
マダレに古田新太さん、ツナ役に秋山菜津子さん、シュテン役は真木よう子さん、
キンタが阿部サダヲさん、シキブは高田聖子さん、という豪華な布陣でした。
いのうえ歌舞伎と名が付いてはいるものの、
劇団☆新感線のお芝居です。
当時1歳の市川染五郎さんが出演する場も考えられたそうですが、
ギャン泣きされて諦めた、というエピソードもあったんですよ。
今でも、劇シネとして観ることができるそうなので、上演の機会があったら、ぜひ行かなきゃって思います。
👹いよいよ明日‼️開幕🌳
明日の初日を前に
公開舞台稽古と囲み取材を
おこないました📸歌舞伎ならではの魅力がたっぷり詰まった#歌舞伎NEXT『#朧の森に棲む鬼』
皆様のご来場をお待ちしております😆💕#新橋演舞場 #博多座 pic.twitter.com/AHaJrnaciW— 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』公式 (@kabukiNEXT_obr) November 29, 2024
朧の森に棲む鬼2024のあらすじは?
朧の森に棲む鬼は、約3時間半の大作で、第一部と第二部の上演です。
第一部のあらすじ
大国エイアンは、小国オーエを支配せんと戦いを繰り広げていた
落武者狩りをしていたライとキンタが紛れ込んだ森、
それは古くからの神が魔物になるという朧の森。
止めるキンタを振り切って、森の奥に進んだライは、
朧の三人の魔物たちと会う。
魔物たちはライに生き血と引き換えに望みを叶えると誘いかけた。
ライの中には、一国の王になるという野望が芽生え、
「俺が俺に殺される時に、この命をやろう」と答える。
契約を結んだ魔物は、ライにオボロの剣を与える。
そして、この顔を持った者たちに出会った時
お前の運命が変わると予言も受けるのでした。
森を出たライは、エイアン国の将軍、ヤスマサと会い、殺します。
さらに、現れたオーエ国の長シュテンに、
その名を語りエイアン国の内部を撹乱すると約束します。
シュテンはその言葉に偽りのないよう、ライと、血人形の契りを交わすのでした。
エイアン国に入ったライとキンタは、ラジョウの市場で取り締まりに訪れた
将軍ツナと検非違使ショウゲンを巧みにあしらう顔役マダレの腕に惚れ込みます。
得意の嘘で、マダレを仲間に加えたライとキンタはマダレと義兄弟の契りを交わして、仲間に取り込みます。
一方、エイアン国の宮廷では、ヤスマサ軍の敗北に意気消沈するイチノオオキミを愛人のシキブが慰めています。
そこに、残りの四天王 ウラベ、サダミツ、ツナが訪れます。
夫を亡くしても気丈に振る舞うツナ、
そこにヤスマサからの使いとしてライがやってきます。
言葉巧みに、王やツナに取り込むライのことを、信頼してしまいます。
それを面白くないサダミツは何かを企んでいます。
ツナにヤスマサの偽の手紙を見せ、ツナの下で検非違使となったライとキンタ。
シキブは自分にも何か伝言があるはず、とライを問い詰めます。
ライはシキブにも、ヤスマサはシキブを慕っていたと嘘をつき、シキブの信頼も勝ち得るのでした。
サダミツは密偵アラドウジを使って、ライとマダレがグルだと知る、
しかし、逆にライにツナを襲撃した汚名を着せられて殺されてしまいます。
その手柄から、とうとうライも将軍へとのしあがるのでした。
そんな時、シュテンが現れ、ライの動きに対して怒りをぶつけます。
その上、血人形の効果を見せつけ、オーエ国のために働くことを言いつけ、姿を消します。
ライはその傲慢な態度に怒りを隠しません。
第二部のあらすじ
ツナは毎晩のように、ライがヤスマサを殺す夢にうなされています。
そんなツナを我が物にしようとするライでしたが、ツナは断固拒否!
しかし、揉み合ううちに着物の袖が破れ、二の腕の蛇の刺青を見られてしまいます。
それは、武家の娘として育ったツナに幼い頃から刷り込まれた武門の教えの一つでもありました。
拒絶されたライは、しばらくウラベと共におーえ国へ出陣することを告げ、部屋を出ていきます。
ツナが誘拐された兄に代わって、家を継いだことを知ったライは、
マダレに腕に蛇の刺青をしておくように言います。
出陣したライは、オーエ国の反撃に遭い苦戦するウラベを見捨てます。
ウラベ軍を全滅させたライに対して、シュテンは喜んで、ライをオーエ国のしかるべき地位に迎えようといいます。
しかし、ライがねらうのは大国エイアン。
程なく、シュテンの元に、オーエ国がライの軍に攻撃され、壊滅したとの知らせが届きます。
怒るシュテンは、血人形を取り出し、制裁を加えようとします。
血人形には、ライの血が塗られている、、、
ライは、一撃にするのではなく目を狙え、とシュテンを焚きつけます。
その言葉通り、血人形の目を刀で斬ると
目を押さえて苦しみ出したのはキンタでした。
兄貴と信じてついてきた自分をライが裏切ったと知ったキンタは
ライに斬りかかりますが、反対に斬り捨てられます。
そして、シュテンを捕まえエイアン国へと連れ帰るのでした。
オーエ国を滅ぼしたと、エイアンの宮廷は喜びに沸いていました。
そんな時、シキブはライを国王にし自分はその妃になるために、オオキミを毒殺します。
そこへ、戦況の報告のために訪れたライとマダレは、オオキミが毒殺されたことを指摘、
疑いの目がかかるシキブは毒杯を煽ってこときれる。
これもライが仕組んだことだったのです。
マダレは、国王不在のエイアン国を嘆き、ライを王に据えてはどうかと提案する。
ライは、ツナと共にこの国を収める、と言うがツナはそれを辞退します。
そして、ひと月オオキミの喪に服した後に、国民からライを国王へと声が上がるだろう、
自分はその時に新しい王に仕えたい、今はシキブの喪に服すと告げて部屋を出ていきます。
ツナは、自分を襲ったのが誰なのか?を確かめるために、牢に行き、
そこにいたアラドウジから、ライが黒幕であったことを知ります。
後を追ってやってきたライに、悪の報いを受けさせる、と言うが、マダレの腕の刺青を見せ、生き別れた兄だと嘘をつくライ。
しかし、シュテンから、ライがヤスマサの手紙を捏造し、ツナを利用するために近づいたことを話すと、
ライは、ヤスマサは裏切り者だったことを明かす。
自らの命を断とうとするツナ、
それを救ったのはマダレでした。
実は、マダレはツナの本当の兄、腕の刺青は幼い頃から入っていたものだったのです。
マダレとツナがライを倒そうとする最中、二人を逃すため、シュテンが間に入ります。
血人形に、ライの血と自分の血をつけ、血人形の契りは完成したといいながら絶命するのでした。
牢を抜け出したマダレとツナは、オボロの森でライと対戦します。
「俺が俺を殺さない限り、俺は死なない」と魔物との契約をたてに、引こうとしないライ。
そこへ現れたのが、失明したものの命を助けられたキンタでした。
兄と慕うライに裏切られたことで、キンタもまた、ライへと刃を向けます。
魔物との契約は、血人形の契りは、ライはどうなるのか、、、
朧の森に棲む鬼2024のキャストは?
朧の森に棲む鬼の歌舞伎版のキャストは次のとおりです。
ライ/サダミツ 松本 幸四郎(ダブルキャスト)
ライ/サダミツ 尾上 松也(ダブルキャスト)
ツナ 中村 時蔵
シキブ 坂東 新悟
キンタ 尾上 右近
シュテン 市川 染五郎
アラドウジ 澤村 宗之助
ショウゲン 大谷 廣太郎
マダレ 市川 猿弥
ウラベ 片岡 亀蔵
イチノオオキミ 坂東 彌十郎
登場人物は多いのですが、メインのキャストは新橋演舞場12月公演と
博多座2月公演とは同じ顔ぶれになっています。
2007年の新感線バージョンを見て、このお芝居に憧れていた、
という若手役者さんたちが出演されていることで
お芝居の活気というかエネルギーはとても強いと感じました。
朧の森に棲む鬼のネタバレ感想
「朧の森に棲む鬼」は、12月の新橋演舞場公演を観劇しました。
たまたま、1階の花横席が取れたので、
その迫力たるやに圧倒された3時間半でした。
長いけど、ストーリーがどんどん進むので、長さは気にならず、
あっという間に終わっていたというイメージです。
主人公のライは、自分の舌先三寸で落武者狩りから国王へとのし上がっていく男。
この嘘で誰かをいい気持ちにすることで自分の地位を作り、邪魔者を落としていく、
策略的に絶妙と思える嘘なのです。
私は嘘つきはダメって信念があるので、
この嘘に塗れた男のストーリーにはざわつく場面がたくさんありました。
もちろん、戦争中の国の話なので、策略や陰謀は普通にあるのですが
ライの嘘はそれとは違う感じがしました。
相手が自身でも気づいていない欲望や願いを引き出し、
それを自分のために利用するのです。
だから、相手はころりと騙され、ライのために持てるものを捧げようとします。
このお芝居の登場人物たちは、そのライの嘘に乗せられ、多くが破滅していくのですが、
その中でも自分の真を貫いた人物たちもいます。
特に印象深い人物が、キンタとツナです。
キンタは、ライのたった一人の弟分で、自分が理解者である、と自認しています。
育ちも頭脳も人より劣るコンプレックスを、その「ライの弟分」という立場にいることで
埋めようとしていると私は感じました。
だから、ライのどんな悪行にも口を出さず、ひたすら尽くそうとします。
でも、ライは、そんなキンタをも自分を守るために利用するのです。
前半でシュテンと血人形の契約をするときに、ライはこっそりキンタの血を使います。
この時は、無意識だったかもしれませんが、いざとなったら自分の身代わりにしようという計算も働いていたのでしょう。
そして、その場面になったら、シュテンに
「一気にやらずに目からやったら、、」と煽ります。
ここはちょっと考えものの場面でした。
もしかしたら、悪人ライの心の中に、どこかキンタを守る気持ちが働いたのかもしれません。
その後、キンタを刀で切り捨てるのですがとどめを刺すことはしませんでした。
これも無意識だと思うのですが、利用することや騙すことはできても、
自分の手で命を奪うことには抵抗があったのではないかと思います。
その一瞬の判断が結果として、ライの命を奪うことになるので、この場面は重要な場面だと思います。
もう一人はツナです。
武家の娘、女頭領として生きてきたツナには、決して折れない信念があります。
それが「正義」なんだと思いました。
夫ヤスマサを失っても毅然として将軍職を務める姿や、
ライの様々な誘惑にも流されず自分の考えで行動する姿、
さらには、自分が利用されていたことを知った時は自らの命を断とうともしました。
同じ女性として、カッコいいと言わざるを得ない、存在感を誇る女性です。
様々な謀で、巧みに人を騙し、操り、思うようにのし上がっていったライですが、ツナだけは落とせなかった。
このことがライの破滅へとつながるのです。
そう振り返ると、キンタの純粋な信頼感とツナの圧倒的な正義感、
その前にはどんな嘘もかなわなかったということになります。
ライは、芝居の中でどんどんその表情を変えていきます。
最初はただのワルの不良だったのに、最後は王の衣装を身につけた鬼と化していました。
観劇後の後味はあまりよくないのですが、不思議に惹きつけられるキャラクターであり作品だと思います。
今年はシネマ歌舞伎のラインアップにも上がっているので、
シネマで再度、幸四郎さんバージョンと、松也さんバージョンを観たいと思っています。
博多座で『朧の森に棲む鬼』が開幕! | 情報☆キック https://t.co/Ac5sDBBAiX pic.twitter.com/nqcDrqyfCR
— (株)えんぶ (@enkick) February 7, 2025
朧の森に棲む鬼、歌舞伎と劇団⭐︎新感線との違いは?
「朧の森に棲む鬼」の2007年の新感線バージョンと、2024年の歌舞伎バージョン。
どう違うのかというと、年月的にも17年経っていますから、
シナリオや演出はさらにブラッシュアップされていると思います。
加えて、演じるのは歌舞伎役者なので、その感覚も違うでしょう。
しかし、私が最も大きな違いと感じるのは、
エンターテイメントとして見せるお芝居と
歌舞伎の伝統的な手法を用いたお芝居というところではないかと考えます。
歌舞伎には、歴史物という演目の種類があります。
この「朧の森に棲む鬼」はフィクションですが、
ある国で起きたお家騒動とも見てとれるのです。
衣装もですが、主要登場人物の名前が、土蜘蛛シリーズに登場する人物とも被っているので、
歌舞伎ファンにとっては抵抗なく見ることができました。
また、歌舞伎役者は伝統的な様式美の中で、お芝居を演じているので、
新作であっても、新感線出会っても、
その軸はブレないんだなあってことをお芝居を見ながら感じたこともあります。
歌舞伎ファンにとっても楽しめるエンタメでありますが、
歌舞伎を知らない演劇ファンにとっても楽しめる歌舞伎エンタメなのではないでしょうか。
二月の博多公演もなかなか評判が良いようです。
私は、博多には行けませんので、シネマになるのを心待ちにしています。
興味ある方は、ぜひ一度ご観劇ください。
お読みくださり、ありがとう存じまする。
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