2月の歌舞伎座公演、第三部は、17世中村勘三郎の追善公演です。
孫にあたる、中村勘九郎と中村七之助は、
勘九郎の息子、勘太郎・長三郎と共演。
中村屋の魅力を楽しめる素晴らしい公演でした。
その感想を書いていきます。
中村勘九郎、息子2人と共演の2月歌舞伎座公演
令和3年2月の歌舞伎座公演、
第三部は17世中村勘三郎丈の追善公演です。
前半は、「奥州安達原~袖萩祭文~」。
勘三郎が得意にしていた盲目の袖萩と袖萩の夫安部貞任を、
中村七之助と中村勘九郎が演じます。
加えて、袖萩の娘お君を勘九郎の次男、中村長三郎くんが演じました。
後半は、「連獅子」。
中村勘九郎さん、中村勘太郎くんの親子共演。
これは、中村屋にとってはお家芸と言えるほど、
踊り込まれた演目ですね。
9月は、中村勘九郎さん、中村七之助さん兄弟の連獅子に
感動したところ、
今回もとても楽しみな演目です。
2月公演の概要はこちらをご覧ください。
中村勘太郎くん、中村長三郎くんについてはこちらもご覧ください。
中村勘太郎、史上最年少9歳「仔獅子」に大きな拍手 https://t.co/pwf6PJKdvG
— kabukist (@kabukist1) February 17, 2021
中村勘九郎、息子勘太郎の連獅子がすばらしすぎる!
中村勘九郎、息子勘太郎の連獅子は、
公演発表から話題を呼びましたね。
私も、とても楽しみにしていました。
中村屋一家のドキュメンタリー番組で、
コロナ自粛中に、
勘太郎くん、長三郎くんが、
勘九郎さんから連獅子の稽古をつけられたという話題を
見ていました。
その舞台をこんなに早く見られるとは!!
とても大きな拍手で幕が開きました。
劇場にいる人たちが期待しているんだなあということが伝わってきました。
仔獅子は運動量が多く、
スピーディーな動きも特徴です。
その中に、親への思いやひたむきな挑戦心を表現するので、
難しい踊りだと思っています。
驚いたことに、勘九郎さんと勘太郎さん、
ピタ、ピタッと決まるところで
見事に所作が合うのです。
まだ身体もできあがっていない分、
勢いにはかける場面もありますが、
この年齢でこれだけ踊れるのかっ!!
ていうほど見事な踊りを見せてくれました。
勘太郎くんは、まじめな性格だなって思っているのですけど、
基礎、基本を踏まえて身につけていることや、
きっちりと振りを押さえているところに
そのことがうかがえました。
勘九郎さんの親獅子の動きも日頃以上の大きさ、迫力を持って
舞台を圧倒していました。
連獅子は中村屋のお家芸とも言っていて、
中村勘九郎さんも七之助さんも、
お父様の故18世中村勘三郎さんから
骨身に染みるほどの教えを受けていると聞いています。
そのDNAが現在の勘九郎さんと勘太郎さんへ
受け継がれているんだろうなあ、と
中村屋の伝統芸が今後もっと育っていく期待を感じさせる舞台でした。
観客の拍手も一層熱く、大きく、歌舞伎座内に響き渡っていました。
中村勘九郎、息子長三郎は中村七之助と袖萩祭文で泣かせる!
前半は、「奥州安達原~袖萩祭文~」、
このストーリーは、
親の望まぬ結婚をして感動された袖萩が、
切腹を命じられた父に会おうと屋敷を訪ねるところから始まります。
袖萩も夫とはぐれて、苦労の末、盲目となり、
落ちぶれた姿になっています。
その娘お君は、孝行娘、母の困りごとを察知し、
自分をさておいて母のために何かをしようとする健気な姿に、
なんども泣かされました。
前半は、袖萩と、父・母との葛藤と
お君の母親を思う気持ちが重なるようで、
ひしひしと胸に迫るものを感じていました。
父の平傔仗直方役は、中村歌六さん。
娘を思いながらも、武士としての立場がそれを許さない、
その複雑な胸中が、言葉の端々に感じられました。
母の浜夕役は中村東蔵さん、
勘当したとはいえ、可愛い娘と孫、
表立っては言えない思いを、
感情豊かに表現されていて、涙を誘いました。
七之助さんの袖萩は、落ちぶれていても
凛とした佇まいに武士の娘らしさが漂います。
敗れた三味線で、切々と思いを歌う場面や、
孝行な娘に何もしてやれない母の無念さを訴える場面では、
胸に迫る思いがしました。
雪が降る中、会うに会われぬ悲しい運命の親子の心情に、
ぐぐっと涙がこみ上げる前半、
後半はガラッと変わり勇ましい義家と安倍兄弟の対面。
勘九郎さんの桂中納言から、
安倍貞任へのぶっ帰りも見ものでしたよ~。
ガラリと人相も言葉遣いも変わって、
復讐の念に燃える貞任ですが、
袖萩やお君へ見せる思いに、
抑えた情愛も感じられました。
涙なしではいられない、見応えのあるお芝居でした。
中村勘九郎、中村七之助の祖父7世中村勘三郎とは?
17世中村勘三郎丈は、
1909年に3代目中村歌六の三男として生まれました。
母は、歌六のお妾さんであったこともあり、
幼い頃は肩身の狭い思いをしていたようです。
父の歌六に仕込まれたものの、
父の亡き後は、長兄の初代中村吉右衛門に師事し、
女方としての修行を積んでいきます。
その後、何かと目をかけてもらっていた
6代目尾上菊五郎にも師事し立ち役も含め、芸域を広げていきました。
奥様は、6代目菊五郎の長女久枝さん、
その後、めきめきと力を発揮し、
1950年、17代目中村勘三郎の名を踏襲することになります。
これは、江戸時代から耐えていた名前ということなので、
現在の中村屋は、この17代目勘三郎から発していると言えるのです。
女方も立役も当たり役が多く、絶大な人気を誇った名優です。
中村屋の歴史については、
こちらにも書いていますのでよかったら読んでみてください。
2月歌舞伎座公演は、2月27日(土)が千穐楽です。
ぜひ、ご覧になることをお勧めします!
読んでくださり、ありがとう存じまする。
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