#若手歌舞伎役者リレーインスタライブは、
中村橋之助さんの発案に中村米吉さんがサポートすることで実現した
インスタグラムでのライブです。
若手歌舞伎役者の真面目な芸談や、プライベートなお話を
6~70分間、みっちり話してくださいました。
アーカイブは今後残らないということなので、
記憶が新しいうちに、覚えている限りのお話をこちらにまとめておきます。
若手歌舞伎役者リレーインスタライブとは?
11月12日(金)から25日(木)まで、
国立劇場や歌舞伎座に出演している役者さんたちが
代わる代わるに出演し、芝居を中心にお話を聞かせてくれた
インスタグラムでのライブ発信。
発案したのは中村橋之助さんということです。
橋之助さんは、国立劇場の「熊谷陣屋」にご出演されていて、
歌舞伎座に若手が揃っていることもあり、
そこに出演されている中村米吉さんに声をかけ、
先がどうなるかわからないと言いながら、インスタライブを発信したのです。
いつ終わるか、、といっていたライブでしたが、
なんと、13日間に渡り、次々と役者が指名され、
想い想いに語っていらっしゃいました。
歌舞伎を盛り上げたい、
そう願う若手歌舞伎役者の熱意がしみじみと伝わってくるライブでした。
終盤は、11月の歌舞伎座で、
「花競義士顔見世(はなくらべぎしのかおみせ)」で、
若手の活躍の場を作ろうと奔走された市川猿之助さんと松本幸四郎さんも
出演してくださいました。
どの回も有料級の情報を惜しみなく披露されたとても素敵なライブでした。
アーカイブで残すのは11月末までということなので、
今後は見られなくなりそうです。
そこで、以下に、各回で話されたことの一部をピックアップして
紹介させていただきます。
ちなみに、写真は、スクショタイムで撮影しました。
若手歌舞伎役者リレーインスタライブまとめ(日付ごと)
中村橋之助&中村米吉 11月12日
第1日目は、言い出しっぺ?の橋之助さんと米吉さんのライブでした。
実は、私はこの日、国立劇場で中村橋之助さんが解説を務めた夜の部を
観劇してきました。
熊谷陣屋がめちゃくちゃ良くて、多分中村芝翫さんのお芝居で
一番いいと思えたお芝居でした(私見です)。
そこで、橋之助さんがライブをやるとおっしゃっていたので、
どんなものかと見てみたのですね。
ライブでは、コロナ禍で思うように興行ができない歌舞伎界、
なかなか観客が戻らない現状をなんとかしなくては、
という思いが感じられました。
それとともに、
それぞれの劇場でのお芝居の特徴が語られました。
国立劇場は、中村芝翫さんが主演の「熊谷陣屋」です。
これは、芝翫型という、現在出回っている團十郎型とは違う型の
演出が特徴的です。
橋之助さんがいつかやりたいお役の一つが「熊谷直実」だそうです。
以前、研修会で務めたこともあるそうですが、
その時に指導してくださった片岡仁左衛門さんが、
くに(橋之助の本名は国生)は、
芝翫型を継承するから、違う方を学ぶといいということで
團十郎型を演じたのだそうです。
その時の思い出として、
「死ぬんじゃないか・・・」という気持ちがあったとか。
仁左衛門のおじさまに夜遅くまでお稽古をしてもらう日々、
前の月の襲名舞台でも、父が演じる芝翫型の「熊谷陣屋」に
同じ軍治役で出ていたんだそうです。
やりたい役て、台詞などを全部覚えていただけに、
ノリやセリフの言い回しが違う團十郎型を演じるに当たって、
それを抜くのが大変だったということなんですね。
観ている方は、あそこが違う、ここが違う、と言いつつ楽しんでいましたが、
演じる方にとっては型の違いがそれだけ大きな影響を与えるのだと
私も聞いていてびっくりしました。
歌舞伎座は、第三部に若手勢揃いの「花競義士顔見世」です。
中村米吉さんは、とても解説がお上手で、
この演目についてもわかりやすくお話ししてくださいましたよ。
企画意図は、「十二時忠臣蔵」、
討ち入り前夜から討ち入りまでの24時間を描く趣向の芝居を
ダイジェスト版よろしくカットしてスピーディーな展開に
演出し直した演目だそうです。
私は、このお芝居のことをよく知らなかったので、なんだろう?
と思って観に行っていたのですが、
忠臣蔵の外伝、「南部坂」「土屋主税」を下敷きに
作っているとのことです。
忠臣蔵を知らなくても、面白く観てもらえるだろうとのことでしたが、
知っているとさらに面白く観ることができました。
米吉さんは、小浪を演じていますが、
相手役の力弥がまだ21歳の中村鷹之資さんで、
自分が年上なので若く見せなきゃ、、と女形ならではのお悩みを
冗談に交えて話していました。
この先、続くかわからない、、と言うことでしたが、
最後の友達紹介は、タモリさんをちょっとパロっての展開。
笑えて、聞きどころのあるライブだなと初日ながら
期待を感じました。
坂東新悟&中村玉太郎&中村米吉 11月13日
第2回目は、仕切り役で米吉さんが残り、
坂東新悟さんと中村玉太郎さんの対談でした。
この二人は10歳差です。
歌舞伎界では、10歳差は珍しくありませんが、
この年代でのこの差はちょっと大きく感じられたのかな?
玉太郎さんの話を聞き出そうという趣向が感じられました。
玉太郎さんの本名は、綾人さん、通称あっくんだそうです。
若手の方の中では、
子役のイメージだったそうですが、
実際に中学3年生まで子役を務めていたのだそうです。
2019年のスーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」で
小栗六郎を務めていらしたのですが、
狂気を持った繊細な若者、という役所を
とってもカッコよく演じていらして印象に残りました。
あの時で、18歳だったんですね~~
少年というイメージでした。
ポケモンが好きで、
ポケモン太郎なんて、あだ名をつけられたりしていましたね。
いつかやりたいお役は、「鏡獅子」なんだそうです。
初演の時は、
中村屋のおじさまから胡蝶を教わった、という
とても羨ましい経験をお持ちなんですね。
当時の相手は千之助さんだったということ、、、
二人とも可愛らしかっただろうな~と想像できます。
胡蝶はその後も
市川海老蔵さんと中村勘九郎の時、
全部で3回も演じていらっしゃるのだそうです。
このお役は、まさしくお子さんが踊るお役、
子役のイメージが強いというのがうなずけました。
最近は、オグリでも披露していた笛を習い始めたということです。
ほとんど、玉太郎さん話題のライブでした。
尾上右近&中村隼人 11月14日
3回目は尾上右近さんと中村隼人さん。
2大イケメン、この日は目の保養でしたね~~。
(あ、他の日がイケメンじゃないということではないですよ!)
右近さんのテンションがめちゃくちゃ高くて、
お互い話すと、プツプツと回線が途切れるという状況も発生しちゃうほど。
後日米吉さんが、
「燃えながら走っている消防士のような右近さんと受け止める隼人さん」と評していて、
まさにその通り!って思えるトークライブでした。
隼人さんは、「花競義士顔見世」で、塩冶判官と槌谷主税を演じていらっしゃいます。
まず忠臣蔵の塩冶判官はすべての発端となった人物、
その役を務めるということは、
大序だけであってもそれを背負って演じることなんだと
肝に命じていたそうです。
槌谷主税は後半の主要人物、猿之助さんに教わりながら務めたそうですが、
舞台袖で見ていて、愛のあるダメ出しをくださるとのこと。
これは羨ましいですよね。
右近さんは、忠臣蔵を演じることで、
その人たちの鎮魂になれば、、という思いもあると話していました。
その右近さんは、
だんだん素直になってきたと自覚していらっしゃるんですって。
10月は師匠でもある尾上菊五郎さんとの共演、
忘れられない一ヶ月だったと振り返っていましたね。
八百屋お七、素晴らしい演技だったなって思いました。
そういえば、この時も二人は共演して、
お互いに想い合う間柄だったのでした。
右近さんは、毎日感激のあまり、
電車で帰りながら号泣していたのだそうですよ。
菊五郎さんや先輩役者からは、
「モテたいとか、喜んでもらいたいとか、うまく見せたいとかいう煩悩がなくなったら役者は終わり。モテたいは芸人にとって大事なこと。」と
言われたことが心に残っているということ。
それに対して隼人さんも、
「相手役に好きになってもらえるというのを毎回目指している」と。
「男同士だけど、役に入ったらそうではないから、全部好きになってもらえるような人物になりたい。芝居でも楽屋でも。」
とお互いにモテる役者であることをめざすっていいことだよな~と思いました。
まだまだ若いし、イケメンだし!
片岡千之助&中村歌之助 11月15日
4回目は、片岡千之助さんと中村歌之助さんの大学生コンビでした。
お二人とも同じ青山学院大学に在籍されていて、
歌之助さんが2年生、千之助さんが4年生です。
実はお二人は、中学時代もハンドボール部の
先輩と後輩だったらしいです。
いきなり、ハンドボール部話に花が咲き、
中等部に遊びに行こうか、、なんてところまで広がってました。
千之助さんは、11月は第2部でおじいさまである片岡仁左衛門さんと
連獅子に出演されています。
私も観ましたけど、すごく厳かで神々しい獅子のお姿でした。
美を追求する、というねらいもあったみたいですね。
千之助さんは感無量といった感じで、
おじいさまとの共演についてお話ししていらっしゃいました。
歌之助さんは、私は意外だったのですが、
歌舞伎が大好きなんだそうです。
これからやりたい役として、いろいろやりたい!
と声を高らかに宣言していました。
カッコいいお役に出会うとあれもこれもと思うそうです。
そして、猿翁さんのお芝居が好きとのことで、
同じ外伝つながりで、「菊宴月白浪」をやりたいのだそうです。
このお芝居も始めて聞いたのですが、
忠臣蔵の悪役である、斧定九郎が主人公なんだそうで、
実は忠臣であったというお話のようです。
お二人は、よっちゃん(歌之助の本名よしお)、まーくん(千之助の本名まさひろ)と呼び合い、
とても親しそうでした。
最後のスクショタイムもチラシがないからといって、
デジタルで見せる若者っぷりが印象的でした。
中村歌昇&中村福之助 11月16日
5回目は、中村歌昇さんと中村福之助さんです。
ここはちょっと歳の差ありますね。
歌昇さんは大人の立場?
私は聞き役だから、、と自分のことはあまり語らず、
福之助さんの話を引き出していらっしゃいました。
福之助さん、天然?と思うくらい素直なんですか、
ちょっとつかみどころのないイメージも・・・
なんと、B型だそうでちょっと納得。
歌昇さんも同じくB型なので、最後はB型ポーズでした。
たけおさん(歌昇の本名)、むね(福之助さんの本名むねお)と
呼び合い、
福之助さんが歌昇さんを信頼している様子も伝わってきました。
歌昇さんが度々感心していたのが、
福之助さんの真面目さです。
ご自身では、うまくないと思っているようで、
毎回演じる度に音声や映像をチェックして、修正して舞台に立っているとのこと。
私もそれを聞いてびっくりしました。
一見、チャラいお兄ちゃんに見えちゃうのですが、
芝居に対してはこと真面目ですね~~。
11月は、赤垣源蔵役です。
舞台で一人で立つ場が多く、
結構な大役なんですよね~~
それでも、あまり緊張はしないんだそうです。
歌昇さんは由良之助役で、
それこそ、中心人物。
特に、南部坂では渾身の演技だったので、その感想を聞きたかったのですが、
あまり聞けずにちょっと残念でした。
最後にボソリと呟かれた自分の話、
「我々のちょっと上の世代はとんでもない人の巣窟だからさ、それもすごくありがたいし、なんとか食らいつきたいと思う。」
上と下に挟まれているのが、歌昇さんの立ち位置なんだなと感じました。
そして、両方を見て、そこから学ぶ貪欲さもちらりと見えました。
中村壱太郎&坂東新悟 11月17日
6回目は、中村壱太郎さんと坂東新悟さんです。
2人はともに女形ですが、それ以上の共通点が、
唯一の平成2年度生まれの同級生ということです。
子供の時から顔を合わせていて、
お稽古も一緒だったというから、仲がよい様子が伝わってきました。
11月は、壱太郎さんが使った後の楽屋を新悟さんが使うということで、
時々羊やらコウノトリやらが隠されているのだそうです。
新悟さんが発信しているインスタからも
気のおけない間柄というのが伝わります。
壱太郎さん、ちょっと宇宙人、という印象があるようで、
このインスタライブ期間にもちょくちょく話が出ていました。
ビルゲイツ並みの忙しさ!ってすごいお人だなあって思いましたよ。
さて、女形二人の話のポイントは、11月のお役への想いです。
壱太郎さんは、第一部の「神の鳥(コウノトリ)」にご出演。
「歌舞伎座というでかい劇場で踊るということは、大きく踊ること、届けという思いがないと届かないと感じた」ということでした。
子役の松本幸一郎くんが、
「広い歌舞伎座で、幸一郎くんが頑張って羽ばたいているのが可愛いな、勝手に母性が出てくる。」ということも話していました。
新悟さんは、2役です。
大序の足利直義、一番くらいの高い役ということで、
結構緊張しているようでした。
「歌舞伎座の芯にどっかと座ることはないけど、それをビビっちゃいけない。
自分が一番偉いと思って、やらなきゃ。忠臣蔵のお役は、決まりごとが多いので、それをきっちりこなす。」
とおっしゃってましたね。
後半の槌谷邸では、お園の役で、
これは壱太郎さんも演じたことがあるということ。
電話でアドバイスなどを求めたらしです。
お二人ともに女形だから、共演は難しいよね~と言いつつ、
最後まで話が止まらない同級生コンビのライブでした。
中村隼人&中村米吉 11月19日
休演日で1日空いた7回目は、
中村隼人さんと中村米吉さん。
このお二人は、はとこ同士、ということでした。
冒頭から、小川家の話で大盛り上がり・・・
なんでも家の大きさでは、
西の片岡家、東の小川家といわれるそうです。(ほんとかな?笑)
現在歌舞伎役者では(敬称略)、2人の他に、
中村歌六、中村時蔵、中村錦之助、中村又五郎、中村獅童、
中村梅枝、中村萬太郎、中村歌昇、中村種之助、
子役で、小川綜真(歌昇長男)くん、小川大晴(梅枝長男)くん、小川陽樹(1月に初お目見えの獅童の長男)くん、とすごい面々です。
立役から女形、子役まで揃っているので、
小川一座で芝居ができる、と大喜びでした。
私も、小川一族の幅の広さにびっくりしましたよ~~
お二人は、「忠臣蔵」メインに、
とても深いお話を披露してくださいました。
6年ほど前に、国立劇場が、「仮名手本忠臣蔵」の通し上演をした時、
日頃上演されない2段目もあったそうです。
その時に、隼人さんが力弥、しゅうちゃん(米吉本名しゅうへい)が小浪を演じたのだそうです。
隼人さんは、決まりごととして、
塩冶判官は4段目で腹を切ったら黙って帰る、というものや、
力弥役の役者が判官役の役者の楽屋に、切腹用の刀を黙ってもらいに行き、
それを持って舞台に出るというものを教えてくださいました。
昔の歌舞伎役者は、それほどまでに忠臣蔵に関して強い思いを持っていたのだなあと
実感した裏話でした。
米吉さんは、小浪を澤村田之助さんに教わったのだそうです。
とは言っても、当時も50年ぶりの上演ということで、
白黒の映像を頼りに田之助さんのところに伺ったら、
初めはご本人忘れていたんだそうです。
映像を見たら思い出して、いろいろなことを教わったと
懐かしそうに話していらっしゃいました。
二人のお話からは、
歌舞伎役者は、お役が決まると、先輩に教えを請いに行くことが
普通にあるんだなと知りました。
私は、親(師匠)から学ぶと思っていたのですが、
結構、いろいろな範囲で、自分から学びに行く様子が
この二人以外にも度々出てきていたので、
そういうことを知れたのも面白いと思いました。
隼人さんは、立役として正統派のお役を次々とこなしている印象があります。
そのせいか、米吉さんからは、
相手役を取っ替え引っ替えして、、と責められて(冗談ですよ)いましたが、
お二人が大きいお役で、共演されるのを
今後は楽しみに観ていきたいなあと思いました。
中村橋之助&中村歌之助&中村莟玉 11月20日
8回目は、中村橋之助さん、中村歌之助さん兄弟に、
11月はお休みの中村莟玉さんが加わってのライブになりました。
莟玉さんが想像以上によくお話しされたので、そこが意外でした。
9月によっちゃんこと歌之助さんが20歳になったということで、
何か変わったことはないかと2人に聞かれていました。
一番はお酒、と言ったら、
橋之助さんと莟玉さんのお酒談義になってしまい、
まあまあ二人はお強いらしく、それで盛り上がっていました。
歌之助さんは、まだ美味しいと感じるところまではいかないようです。
甘いお酒なら飲める、って言っていたので、
やっぱり初々しいわあって、おばさんは思っちゃいました。
その次が大学の話、歌之助さんは3兄弟でも成績が優秀なのだそうです。
橋之助さん曰く、お母さま(三田寛子さん)が、
「こんな素晴らしい成績見たことがない」と
わざわざ2人の兄達に見せに行ったくらいだそうです。
役者をしながら学業との両立は大変なようですが、
今はがんばって行っているそうです。
リモートになったのも、後押ししているようですね。
ちなみに上のお二人は、休学中だそうです。
そして、変声期の役者の話になりました。
この話題は濃かったです。
役者さんは男の子さんですから、
変声期というのが嫌でもやってきます。
これになると、声が出なくなるのだそうです。
橋之助さんは、これで苦しんだらしく、
出る場所を見つけて声を出していたら、変なくせがついてしまい、
今年、坂東玉三郎さんのお稽古で、そのくせを注意されたそうです。
声にまつわる話の中で、じいんときたのが、
故中村勘三郎さん(橋之助さん曰くリーパパ)のお話、
声がよくて、芸が上手ければ鬼に金棒だけど、
声だけいいと、そこに頼るので芸が身につかない。
声が出ない分、芸に磨きをかけるのでそれが大事なんだと教わったそうです。
橋之助さんは、おっきいにいに(勘九郎さん)とちっちゃいにいに(七之助さん)を尊敬しているそうですが、
中村屋で教わったことが、とても身にしみているんだろうなと感じさせられるエピソードでした。
中村福之助&中村玉太郎 11月21日
8日目は中村福之助さんと中村玉太郎さんです。
スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」で共演したこともあるお二人、
初めに、四天王の話となりました。
ちょうど、玉太郎さんが国立劇場の熊谷陣屋で、
四天王役で出演されています。
女形が続いていたとのことで、
久しぶりの武士、しかも義経の警護をする役目ですから、
圧を感じさせなくてはいけない、と
結構大変な思いをしたそうです。
セリフも一言だから、逆に難しいと・・・
私は、座ってるだけだから楽じゃん!て思っちゃいますが、さにあらずなんですね。
四天王のセリフは、義経のセリフ、そういう心がけも必要だそうです。
そして、この役は、熊谷と義経に挟まれ、
どちらも勉強できるいい役なんですって。
福之助さんも四天王の経験があるということ、
襲名の時に、芝翫さんの熊谷で務めたそうです。
その時の義経が、中村吉右衛門さんだったんですって!!
出始めの
「やあやあ熊谷、敦盛の首、持参には及ばず」の声が素晴らしかったと
鮮明に覚えているのだそうです。
あの時の四天王は忘れられない、とおっしゃってました。
若手の中では、何かと話題に出たのが、この四天王です。
立役にとっては、必ず通る道、のようですね。
その後は、2人がどんな役をやりたいかということや
最近の稽古での思いが話されました。
今後やっていきたい役として、
福之助さんは、最初は主役とか興味なかったらしいですが、
色々な人が演じるのを見るにつけ、
自分も演じるにつけ、
やってみたいという気持ちが起きてきたそうです。
玉太郎さんは、やりたい役として
女形をやってみたいと、
八百屋お七をあげていました。
また、勧進帳の義経役にも憧れているとのことでした。
若者らしい、ざっくばらんな会話が続いた後、
最後にちょこっとポケモン話、
そして、福之助くんの愛犬メンマちゃんも登場!
あまりの可愛さに目が釘付けになりましたよ。
尾上右近&中村種之助 11月22日
9日目は、尾上右近さんと中村種之助さん、
お二人はかけがえのない友人同士ということです。
そもそもの関係から話が始まり、
プライベートなことからお芝居についてと
幅広い話が聞けました。
笑っちゃったのが、一緒に旅行に行った時の話。
帰ってきたら、右近さんの母親が迎えにきて、一緒にご飯を食べたそうなんですけど、
その時に種之助さんは、
「ケンケンとはしばらく大丈夫です」と言ったらしい。
つまり、当分右近さんとの旅行はお腹いっぱいです、って意味。
何があったんだろう?と訝りつつも
笑えたエピソードでした。
ちなみに、右近さんのご本名が研介なのでケンケン、
種之助さんのご本名が暁久なのであきちゃん、と
愛称で呼び合う仲の良さも披露してくれました。
コメントからも、2人の会をやってください、という要望があったようです。
二人ともその点は考えているらしく、
やりたいものがたくさんあって、大変そうな印象でした。
右近さんが、あきちゃんのエピソードを紹介したい、と言って
素敵なお話をしてくださいましたよ。
第2回の研の会の時に、
種之助さんと米吉さんを招いて、対談をしたのだそうです。
それを活字にして出そうとしたら、
結構赤裸々に話しすぎて、これは活字ではヤバイとなったんですって。
とっても明るく楽天的に見える右近さんですが、
実は根暗で落ち込みやすい性格だそうで、
その時もかなり落ち込んで、二人に連絡したそうです。
その後、種之助さんから個別ラインできたメッセージが、
「あなたの会に参加すると決めた時点で、それはもう乗りかかった船だから、浮かぼうが沈もうが最後まで付き合いますよ。」というもの。
これは泣けますね~~~
そんな右近さんの性格を知っているからこその言葉、
種之助さんの懐の深さに感動するエピソードでした。
私にとって、種之助さんのイメージは、「性格俳優」なんです。
ちょっとひねったお役とか、エキゾチックな個性のお役を
難なくこなしている人というもの。
技量があるということかもしれませんが、
まだまだ摑み取れない方なので、これからも見ていきたいなって思いました。
市川猿之助&尾上右近&中村米吉 11月23日
10日目は、なんと市川猿之助さんが登場です!
兄と慕う尾上右近さんと中村米吉さんが
市川猿之助さんから素敵な話をたくさん引き出してくださいました。
猿之助さんは、なぜか、
真っ暗闇の中でマスクをしてのご出演。
なぜに、このスタイル?と首を傾げた方も多かったのではないでしょうか?
「花競義士顔見世」は、猿之助さんの演出です。
その意図を尋ねられ、次のように答えていらっしゃいました。
季節的には忠臣蔵であったこと。
昨年、松本幸四郎さんがオンライン配信の図夢歌舞伎で
大幅にカットした芝居を製作していました。
猿之助さんもお出になられていましたが、
やはり、「仮名手本忠臣蔵」は、完成された芝居だけに、
下手にカットすると屋台全体が崩れると感じたそうなのです。
だったら、カットするよりも、
忠臣蔵の外伝で日頃上演されていない作品もあることから、
南部坂、槌谷邸などをつなぎ合わせてできないかと
考えて作ってみたそうです。
義経千本桜も、義経はちょこっと出るだけで、
外伝をつなげて通しにした作品とも言えます。
そのイメージがあったようですね。
この日のライブは、
まるで猿之助塾といった感じで、
右近さん、米吉さんが、
猿之助さんの言葉一言一言に真剣に耳を傾ける、
といった内容でした。
私も聞いていて、驚いたり深く頷いたりと
アーカイブも見直すほど濃い内容で感動しました。
若手からすると、
猿之助さんらが若い頃に、何を感じて何を吸収していたのかが
すごく気になるところらしかったようです。
その質問に対しては、
「僕らがそんな時は、もちろん顔見世でそんなことはできなかった。」
とまず事実を述べ、その上で、
「できる、できないで言えば、あなたたちは恵まれている。
それだけ、今は役者がいない。昔に比べて、その分は悲劇。でも何がプラスで、何がマイナスかわからない。」
とそれをどう捉えるのか、という問答のような意見を述べられました。
確かに、
猿之助さんやその上の世代で、
座頭を任せられる役者は、それほど多くないと思います。
国宝級の大幹部たち、その下の世代がいまひとつ手薄に感じるのは、
大黒柱となるべき、
12代目市川團十郎さん、18代目中村勘三郎さん、10代目坂東三津五郎さんが
早逝されたことにも影響はあるのでしょうね。
猿之助さんのおじさま、お父様である
市川猿翁さん、市川段四郎さんも
舞台から遠のいて久しいです。
猿之助さんの言葉には、今の歌舞伎界が抱える難題が
垣間見えると感じました。
そして、右近さんから究極の質問、
「兄上にとって歌舞伎ってなんですか?」
それに対しては
「生活手段」と即答。
ここも、まさしく猿之助さんらしい、理想ではなくて現実を語るんです。
「だってそうでしょ、コロナになって、役者、スタッフさんが明日の暮らしをどうしようと思ったよね。ただ。好きだけじゃない、それを生業として食っていくということなんだよね。僕らはそれをコロナかで自覚した。これ(歌舞伎)によって仕事を得て、おまんまを食っているんだってね。」
あまりにもリアルな回答だけど、
昨年のコロナによる5ヶ月に渡る休演は、
歌舞伎役者の命を直撃したと思える非常事態でもあったんですよね。
その時期を経験したからこそ、
今、歌舞伎をどうしていけばいいのか、、を
歌舞伎に関する方達は、若手も含めて真剣に考えるきっかけになっているんですよね。
中身がぎっしりと詰まった濃厚なライブでした。
猿之助さんのご登壇に、感謝しかありません。
そして、この場を作ってくださった、米吉さん・右近さんにも
感謝です。
松本幸四郎&中村隼人&中村米吉 11月24日
12日目は、松本幸四郎さんの登場です!
幸四郎さんは、ご自身のインスタアカウントを持っていないため、
奥様である園子さんのアカウントで参加!
なんと、タキシードで登場、、、
前日の猿之助さんの暗闇インスタとのギャップがすごすぎる。
幸四郎さんは歌舞伎界きっての不思議ちゃん、
演技力も舞踊力も抜群なのですが、
いつもトークはすっとぼけています。
この日も、出演中の「花競義士顔見世」の役について、
大詰めで清水大学の大立ち回りの場面について、
なんでみんな僕に立ち向かってくるのか、、と
苦情が出ました。
「みんなの目的は、高師直でしょ。
だったら、僕のところは通り過ぎればいいのに。
なんなら、あそこにいるよって教えてあげるから
命ばかりは助けてよ・・・」
確かに舞台では、大学をぐるりと囲んで、義士が立ち向かって行きました。
それは芝居の見所だったのに、
「教えてあげるから放っておいて」には笑いました。
幸四郎さんは、2役を演じるのですが、
大序では、高師直を切りつけたところで舞台がせり上がり、
次に若狭邸への転換までわずかな時間で着替えるという早業も見せています。
それは、下に次の衣装を着込んでおくということで、
せりが上がった瞬間に上の衣装を脱いで、次の場を演じているとのことでした。
歌舞伎役者さんの工夫はすごいなあと思ったところでした。
若手からの一問一答には、キラリと光る答えがありました。
それを2つこちらでは紹介したいと思います。
「見果てぬ夢とは一言でなんですか?」と聞かれ、
「世界中の人が日本に歌舞伎を観にくる。世界中の人が歌舞伎をやる。」
と答えていらっしゃいました。
歌舞伎演出は世界でも通用する手法だから、
外国でも日本のエンターテイメントとしてその手法を取り入れて欲しい、
今は日本にしか専用の劇場はないけど、
ブロードウェイでも歌舞伎がロングランしているのが夢、と
とても壮大なことを淡々とお話しされていました。
幸四郎さんがおっしゃると、そうなりそうな気がするから不思議です。
妄想を実現させる力は半端ないですからね。
その流れから、とんでもないアイデアを出すときの気持ちも聞かれていました。
それに対しては、私は予想外だったのですが、
きちんと具体的に考えてアイデアを出すということでした。
やる以上は決断が必要だから、
特にどれが正解かはわからなければ、決めるしかないということでした。
そして、決めたらブレずに、人を巻き込んでいくということもおっしゃっていました。
すっとぼけた話をした後に、
こういう真面目なことをお話しするのも幸四郎さんの魅力ですね~。
これからの歌舞伎界を牽引するリーダーは、
やはり松本幸四郎なのではないか、、て思いました。
ここまで、真剣に話を聞き行ったところで、
「実はさ、下ジャージなんだよ」と立ち上がって、
タキシード × ジャージ姿を見せてくださいました。
笑えます~~クハハハハ
明るい幸四郎さん、とっても素敵でした。
中村橋之助&中村米吉 11月25日
最終日のコンビは、初めに戻って
中村橋之助さんと中村米吉さんでした。
13日間を振り返っての反省や学びを中心に、
出演してくださった方たちもポイント参加しての対談ライブでした。
振り返りとして、インスタライブの限界についても語られました。
インスタは、フォロワーにしか届かないから、
それ以上の人たちに届けることが難しいということ、
歌舞伎がわからない人、まだよく知らない人に
歌舞伎は難しくないと伝えたかったそうです。
自分たちの発信で、少しでも劇場に足を運んでくれる人を増やしたい、
そういう思いもあったそうです。
このライブの効果か、
客席は日に日に埋まって行ったようですけど、
それだけではまだ足りないという思いもあったのでしょうね。
歌舞伎が滅びるかもしれない、、と危惧する
先輩役者さんもいらっしゃいます。
だから、歌舞伎の家に生まれた自分たちが
それを絶やさぬようにできることをやっていきたいのだ
という思いに私はとても感動しました。
だから、13日間のライブをこうやって私なりにお伝えしたくて
ブログ記事にまとめました。
歌舞伎は日本の財産です。
難しい、わからない、と背を向けずに、
ちょっと試してほしいなあって思います。
今は、初心者のための幕見席がないのが残念なところ、
これが復活したら、また気軽に来られる人も増えるんじゃないでしょうか。
このライブを取り仕切る、米吉さんのエンターテナー性にもびっくり!
最終日には、お着物で、笑点よろしく、
座布団の差し入れもあったほどでした。
米吉さんは、ご自身が出演されない時も
チャットで様々なフォローをしていらして、
素晴らしいリーダーシップを発揮していらしたんです。
可愛いお顔に騙されちゃダメ!
実は冷静で分析能力の高い仕切り屋さんなんだって実感しましたよ。
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13日間に及ぶライブで、若手役者さんたちの思いを聞き、
本当に感動しました。
こんなに情熱を燃やしてがんばっているんだから応援しよう!
て、千穐楽に「花競義士顔見世」観に行ってしまいましたよ。
ライブを見て、役の思いを感じつつ楽しく拝見させていただきました。
これからも、若手が歌舞伎を引っ張っていってくれることを期待して、
舞台を観に行こうと思います。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
工事は近日中に完了します!
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