「歌舞伎」は難しい、と思っている方多いようですね。
そこで、私が「歌舞伎とは?」を初心者の方にもわかるように
簡単に説明していきましょう!
ここでは主に、歌舞伎とはなにか、その歴史や魅力を簡単に説明します。
また、おすすめの演目。役者についても紹介しますね。
歌舞伎とは?歌舞伎の歴史は?
歌舞伎とは?いったいどういうもの?
歌舞伎の言葉の由来は「傾く(かぶく)」です。
元祖は、出雲の阿国(いずものおくに)と言われる女性が、
今日で奇抜な格好をし、開放的な歌や踊りを披露したところから
始まったと言われています。
これを「かぶき踊り」と言ったんですね。
この「かぶき」が「かぶく」からきているのです。
戦乱の世が終わった開放感を表していたと言いますが、
この彼女に倣って、派手な服装や奇抜な様相で歌ったり踊ったりする者や
常軌を逸した言動で周囲を仰天させる者のことを
「傾奇者(かぶきもの)」と読んだそうです。
今でいうと、誰だろう?
私のイメージは、忌野清志郎さんとか、プリンス(残念ながらどちらも故人)とか。
女性だとレディ・ガガとか・・・。
既存の常識にとらわれず、世の流行を取り込み、人を楽しませる、
そんな精神が長い年月をかけ今の歌舞伎にも受け継がれているのです。
発祥当時は、「歌舞妓」という表現でしたが、
女性の踊りが風俗的に悪しとされ禁止されてからは、
「歌舞伎」という表現に変わってきたそうですよ。
ここには、歌や音楽、舞踊、芝居という要素が込められています。
これは今の歌舞伎に通づるもので、
この3つを成り立たせる総合芸術として現在の歌舞伎が存在します。
だから、歌舞伎を見るときは、
お囃子の音楽や、歌舞伎舞踊、そして役者の芝居、
これらを合わせて見ると、「これが歌舞伎」と感じることができると思います。
歌舞伎の歴史について簡単に説明!
歌舞伎は、約400年間続く伝統芸能です。
始まりは、戦国の終わり、、、そこから現在に至るまで、
さまざまに形を変えて続いてきたんですよ。
現在の歌舞伎の原型は、だいたい江戸時代に上演されていたものです。
では、その400年をザザ~~っと振り返ってみましょうか。
簡単にわかればいい、って方は、この下の表をご覧くださいね。
いつ頃? | 何があったの? |
1603年ごろ
出雲の阿国から若衆歌舞伎 |
京都の四条河原などで、出雲の阿国が男装をして踊理、人気を博した。
その後阿国一座は京都や江戸でも興行を始め、これが「かぶき踊り」と呼ばれる。 しかし、風俗的によろしくないとされ禁止。代わりに女装した少年が舞台に上がる「若衆歌舞伎」が登場するが、これも禁止となる |
江戸:元禄時代頃(1688~)
初代市川團十郎登場 |
庶民文化が盛んとなり、江戸では初代市川團十郎が、上方では坂田藤十郎が登場する。
竹本義太夫、近松門左衛門らの活躍も。 |
江戸:享保時代頃(1716~)
今の歌舞伎に近いスタイルに! |
義太夫狂言が登場。3大名作「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」が生まれる。
下座音楽も種類が増え、舞踊劇の演目も増えていく |
江戸:文化文政期頃(1804~)
歌舞伎の円熟期!鶴屋南北、河竹黙阿弥登場! |
2人の大作家、鶴屋南北と河竹黙阿弥の登場で、歌舞伎は円熟期を迎える。怪奇話、庶民の生活を描いた演目も人気を博す。 |
明治時代
天覧歌舞伎から、歌舞伎役者の地位も向上 |
天皇皇后の前で披露する、天覧歌舞伎が行われる。それにより、役者の地位も向上していく。
それまでは、座付きの作者による作品が多かったが、それ以外の作者の手による「新歌舞伎」も作られ上演される。 |
昭和時代:戦後 |
歌舞伎の歴史:歌舞伎のはじまり(1600年ごろから)
歌舞伎のはじまりは、阿国という女性が始めた「かぶき踊り」であるといわれています。
1603年の「慶長日件録」というものに、女院御所での芸能の記録として登場するそうです。
この頃、阿国たちは四条河原あたりで興行をしていたとされていて、
京都南座にはその石碑が建っていました。
かぶき踊りとは、傾き(かぶき)者が茶屋で女と戯れている様子を踊った風俗的な踊りだったようで、
その流行に合わせて、当時あった女性や少年の芸能集団が、かぶき踊りを取り入れるようになったとも言われます。
実際には、軽業のようなものもあったみたいですけどね。
その後、遊女にも広まり、遊女屋では遊女歌舞伎が全国的に広まっていったらしいです。
他にも12歳から18歳くらいまでの若衆(少年)たちの若衆歌舞伎というのも盛んになってきます。
この若衆にも風俗的な役割があったようで、
遊女や若衆たちをめぐっての刃傷沙汰も起こるようになり、
幕府からはこれらの興行の禁止令が出されてしまうのです。
伝統芸能「歌舞伎」のイメージとはちょっとかけ離れていますね。
女性、少年主体の芸能は危うい香りもしますよね。
多くの庶民が楽しめる、大衆演芸となるのは、この後の時代からのようです。
歌舞伎の歴史:大衆演劇としての始まり(元禄期:1600年代後半から)
江戸の元禄期には、歌舞伎が大衆演劇としての形を作っていったと言われています。
この頃は、「野郎歌舞伎」と言い、成人男性が役者として活躍していました。
近松門左衛門を始め狂言作者が登場したり、
歌舞伎の基本となる7役、すなわち立役、女形、若衆、親仁(年配の男性)、敵役、花車方(年配の女性)、道化方が、出揃ったとも言われています。
また、史実を人命や時代を変えて芝居化する風潮はこのころから始まったとされています。
赤穂事件(歌舞伎では忠臣蔵として有名な仇討ち事件)の影響もあったようですね。
江戸では、芝居小屋が整えられ、江戸四座と言われる、中村座、市村座、森田座、山村座、での興行が行われました。
役者では、荒事という荒々しい立ち回りなどを見せる芸を得意とした市川團十郎や、
上方の坂田藤十郎(和事の祖と言われる)、芳沢あやめ(女方)などが人気を博しました。
一般の庶民が、江戸や京都で芝居を楽しめる基盤ができたのがこの時代なんだと思います。
歌舞伎の歴史:舞台の発展(1700年代中旬~)
この時代に、歌舞伎舞台が発展していきます。
1718年に初めて、歌舞伎の劇場に屋根がついたそうです。
それまでは、劇場はあっても天井はなかったってことですね。
それに伴って、舞台にも変化がおきます。
せり上げや廻り舞台が開発されたことで、
高さや奥行きを意識した芝居も行われるようになり、
今に見られる歌舞伎ならではの舞台演出が発明されていったそうです。
ストーリー性も意識されるようになったり、義太夫狂言も発生したりと
人形浄瑠璃から派生した芝居も生まれてきます。
三大歌舞伎と言われている、
「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」もこの時期に生まれています。
江戸では、舞踊劇が盛んになり、「京鹿子娘道成寺」も初演されました。
今でも名作として楽しんでいるお芝居は、
この時代に生まれたのかと思うとすごい歴史の重みを感じてしまいますね。
歌舞伎の歴史:江戸歌舞伎の全盛期(1800年代~)
この時期になると、歌舞伎の中心地が江戸へと移っていきます。
鶴屋南北が登場し、江戸歌舞伎の多くの作品を残しました。
特に、世話物と言われる分野も人気となります。
1832年には、7代目市川團十郎が、現在の歌舞伎十八番の原型となる「歌舞妓狂言組十八番」を剃った紙を観客に配りました。
この十八番は、1840年ごろに勧進帳が加わり、現在のものに固定化されたそうですよ。
成田屋が歌舞伎界では格上にランクされるのは、このような歴史が背景にあるのですね。
しかし、良いことばかりではなく、この時代には幕府の弾圧も起きます。
天保の改革では、7代目團十郎が江戸から追放されたり、
役者同士の付き合いや装いにも規制がかかったりと暗雲も立ちこめます。
芝居小屋も、堀の外(猿若町)に移管されたりということもありましたが、
逆に芝居小屋が集結したことで、役者の行き来なども容易になり、
歌舞妓興行が安定し、江戸歌舞伎の全盛を誇ることになったそうです。
幕末から明治の初めにかけては、
河竹黙阿弥が登場し、名作を次々と送り出し、
明治の歌舞伎の基礎を築いたそうです。
歌舞伎の歴史:明治時代
明治に入ると、新政府から高い身分や外国人の鑑賞に堪えるもの、それまでの狂言(作り話)ではなく、現実に即した芝居をと、要求が出されます。
演劇改良会といい、日本が文明国であることを示すことを目的とした会が発足し、
その勧めで天覧歌舞伎が実現します。
このことは、歌舞伎が後世に残る演劇となるため、役者の地位向上のために重要な意味があったといいます。
また9代目市川團十郎が活歴物と言われる、歴史に忠実な芝居を作ったり、
腹芸を世に出したりということもありました。
これにより、大げさな身振りや台詞なしに、目・表情で演技する型もうまれたのだそうです。
これらは、当時はあまり受け入れられなかったそうですが、
今、顔芸と言われて話題になっているとおり、歌舞伎の基礎としては定着したといいます。
1889年には歌舞伎座が建立されます。
市川團十郎、尾上菊五郎、市川左團次が名優としてこの舞台で活躍したそうです。
大正に入ると、江戸三座は、だんだんとその勢いを失っていきますが、
6代目尾上菊五郎、初代中村吉右衛門らがその中でも絶大な人気を誇りました。
1800年代末には、新歌舞伎というジャンルも生まれます。
このため、近代の背景が使われたり、座付きの作者以外の劇作家の作品が上演されたりと
劇場外からの影響も受けるようになってきました。
文明開化の波を歌舞伎も受けていますが、
それでも歌舞伎らしさを残しつつ新たなものを受け入れ発展していく様が、
歌舞伎の真髄なんだなあということを実感できる時代の出来事だと思います。
歌舞伎の歴史:第二次大戦後~
様々なものを受け入れ興行を続けてきた歌舞伎でしたが、
第二次世界大戦の激化に伴い、劇場の閉鎖や上演演目の規制などがかかりました。
終戦後も日本の民主化を旗印に、「仇討ち」「身分社会」に関する演目の上演が禁止となります。
しかし、マッカーサーの副官であるパワーズ氏の進言により、古典演目への規制が解除され、
戦後の歌舞伎興行も少しずつ始まるようになりました。
1953年、日本で初めてテレビ放送が開始された時、作られた番組が歌舞伎だったそうです。
日本人の心には、歌舞伎が必要だったんだなあと実感します。
しかし、その後テレビなどの普及や娯楽の多様化により、
一時期歌舞伎の火が消えそうになってしまいます。
1950年代、関西歌舞伎の不振や小劇場の閉鎖ということも起きました。
しかし、1960年代に入ると人気役者の登場により、歌舞伎は息を吹き返します。
海外での公演も行われるようになりました。
歌舞伎本来の伝統様式が重要とされ、1965年には重要無形文化財に認定されます。
国立劇場も創設され、伝統狂言が次々復活公演の名で上演されるようにもなります。
歌舞伎の歴史:現在、そしてこれから
1900年代末には、スーパー歌舞伎も登場し、
2000年に入ると、歌舞伎の劇場以外での公演や新たな興行スタイルも生まれます。
現代劇の作家、演出家による歌舞伎公演も作られるようになりました。
2009年にはユネスコにより、無形世界文化遺産としても登録されました。
2020年、大名跡である13代目市川團十郎白猿の襲名を前に、
新型コロナウイルスの世界的蔓延により、
歌舞伎も劇場を封鎖し長期間にわたり公演が中止になるという事態が起きました。
しかし、その渦中においても、インターネット配信を用いた新たな手法によって
歌舞伎を上演しようという試みが始まりました。
図夢歌舞伎、無観客配信、オンデマンドなどは、
歌舞伎を愛する役者、スタッフが生み出した新たなジャンルと言えるでしょう。
そして、新しい生活様式に則り、今までとは違ったスタイルでの公演も再開しています。
1600年に端を発した歌舞伎という芸能は、
今後も伝統を守り、新しいものを取り入れながら発展していくと信じています。
歌舞伎の演目について簡単に説明(時代・世話・松羽目・舞踊)
歌舞伎のお芝居は今全部で700くらいあるみたい。
それらを分けかたはいくつかあるのですが、
内容によって4つの種類に分けることができます。
歌舞伎演目の種類「時代物(じだいもの)」
歴史上の人物や出来事に関する歴史劇です。
作られたのが江戸時代だから、
それよりも前の時代のストーリーが多いです。
武家社会の事件を時代や人名をちょこっと変えて
ストーリー仕立てにしている作品が多いですね。
人形浄瑠璃の人気演目を、歌舞伎に書き換えた作品もあり、
それらは、義太夫の語りに乗ってストーリーが進むこともあり、
「義太夫狂言」とも呼ばれています。
時代物の中では、特に、武家社会のお家騒動、源平合戦に関する題材が、
当時から人気が高かったようですよ。
ヒーローが多いのも魅力なのかなあと思います。
「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」
「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」
「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」
「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」
「加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」など
歌舞伎の演目の種類「世話物(せわもの)」
江戸時代の市民の生活を描いた演目が世話物、
当時の人にとっては、まさにリアルドラマ。
今の私たちから見ると、
江戸時代にタイムスリップしたような気にさせられる
情景描写が魅力な演目です。
実際に起きた事件や心中などをテーマに取り扱っていたり、
義理人情や、任侠の世界が取り上げられたりすることもあります。
ちょっとセンセーショナルな場面も飛び出すこともあります。
その時代のことだとリアルすぎる場合は、
時代物のようにちょっと違う時代に置き換えて創作することもあるようです。
「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」
「神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)」
「曽根崎心中(そねざきしんじゅう)」
「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」など
歌舞伎の演目の種類「松羽目物(まつばめもの)」
松羽目とは、能の舞台を模した舞台装置のこと。
能や狂言を下敷きに、歌舞伎に書き換えた演目のことです。
江戸時代に、初めて上演された松羽目物が「勧進帳」ということです。
その後、明治の高尚な文化を求める声もあいまって、
格式高い松羽目物の舞踊が多く作られたそうです。
現代でも背景が能舞台の演目は、
この松羽目物に分類されます。
「勧進帳(かんじんちょう)」
「身替座禅(みがわりざぜん)」
「船弁慶(ふなべんけい)」など
歌舞伎の演目の種類「舞踊・所作事(ぶよう・しょさごと)」
演目の中の舞踊的な部分を所作事といいます。
舞踊そのものを意味する場合と、舞踊と演劇が混じったものを意味する場合があります。
役者が音曲に合わせて巻い踊りながら物語を表現していきます。
音楽の役割も重要で、曲によって、
義太夫、常磐津、清元、長唄などの種類があります。
元は劇中の一場面だったものが独立して演目となっているものもあります。
「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」
「鷺娘(さぎむすめ)」
「藤娘(ふじむすめ)」
「お祭り(おまつり)」
「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」など
歌舞伎の演目おすすめ 3大名作、舞踊、スーパー歌舞伎
それでは数ある演目の中から、オススメ演目を紹介します。
おすすめ演目:歌舞伎3大名作は必見!
「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」
悲劇の右大臣、菅丞相(菅原道真)の失脚から流罪までを軸に、
所縁ある三つ子の松王丸・梅王丸・桜丸の交錯する人生を描いた名作です。
菅丞相は、15代目片岡仁左衛門の当たり役でもあり、
この方を超える役者はまだ見当たらないです。
4段めの「寺子屋」は人気演目で、独立した作品として上演されることも多いです。
この作品だけを見るのも歌舞伎らしさを味わうことができますよ。
https://kabukist.com/sugawaradenju-1278
「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」
赤穂事件を下敷きにした仇討ち物語です。
時代を足利の時代として、浅野内匠頭が塩冶判官、大石内蔵助が大星由良之助、
吉良上野介が高師直と読み替えています。
殿中での刃傷沙汰から無念の切腹、お家取り潰しとなった塩冶判官の家来たちが
大星由良之助の元復讐を果たすストーリー。
特に人気が高いのが6段目の勘平切腹の場と7段目の祇園一力茶屋の段です。
https://kabukist.com/tyushingura-3400
「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」
源頼朝と義経の対立を背景に、西国へ落ち延びる義経一行の旅を縦軸に、
平知盛、いがみの権太、狐忠信を主人公にしたエピソードを絡めた
壮大な物語です。
通し上演も行われていますが、先述の3人を主人公にした段を始め、
どこを取っても見所がいっぱいの演目です。
度々上演されるので、観る機会も多いと思います。
おすすめ演目:初心者にもわかりやすい5つの演目
3大名作以外で、初心者が楽しめる演目を5つ選びました。
本当はもっとあるのですが、わかりやすさと醍醐味を重視しています。
「勧進帳(かんじんちょう)」
これぞ歌舞伎!といえる歌舞伎十八番の名作です。
安宅の関を通ろうとする源義経一行を止めようとする関守冨樫。
何としても通りたい一行は、弁慶が白紙の勧進帳を読み上げたり、厳しい問答に答えたりと
冨樫ら役人を納得させようと奮闘します。
いざ通らんとした時に、見咎められた義経を、金剛杖で打ち疑惑を晴らそうとする弁慶、
その主従の絆に心打たれた冨樫は、関を通し、酒を振る舞う、という物語です。
この一幕で、弁慶役の役者は、様々な演技、舞を披露し、
最後は飛び六方という豪快な引っ込みを見せます。
弁慶役者と言われる所以がこの役の難しさと華やかさにあります。
弁慶と冨樫の緊迫したやりとりと、後半の舞、
最後まで目を離せない見どころ満載の一幕です。
私が、歌舞伎初心者に必ずオススメするのがこの「勧進帳」です。
https://kabukist.com/kanjintyou-436
「連獅子(れんじし)」
勇壮な2頭(3~4頭もあり)の獅子の気振りで有名な演目です。
前シテは狂言師が親子の手獅子を持ち、
獅子が子を千尋の谷に突き落とし這い上がっていた子を育てるという伝説を演じます。
間狂言として、2人の僧の軽妙なやりとりが入って、後シテが、獅子の登場となります。
親子、師弟が演じることが多いです。
仔獅子を演じられるのは、子役も含め若い役者となっていて、
これでもかと芸を見せつける親獅子に食らいつく仔獅子の必死さ、
その親子対決(?)ともいえる獅子の舞に見入ってしまう一幕です。
これも、初心者にはオススメの演目ですよ。
「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」
こちらは、大笑い必須のお芝居です。
初めて見る歌舞伎は楽しい方がいい!と思うのでこちらを紹介します。
神田八丁堀に住む弥次郎兵衛と喜多八コンビが、
お江戸からお伊勢を目指す道中記です。。。が、
最近は、松本幸四郎&市川猿之助がタッグを組み、
年ごとの流行りものを取り入れ、
趣向を凝らした芝居を構成しています。
原作からは、大きく外れ、
ブロードウェイに行ったり、地獄に行ったり、トランプとプーチンが出てきたりと
毎回喜劇として楽しんで見ています。
歌舞伎の大衆演劇としての真骨頂を、この作品から見ることができると思っています。
DVDやシネマ歌舞伎で見ることもできるので、
難しいものより笑いたい~~という方にはおすすめです。
2019年8月の観劇記録も書いているのでどんなの?と思った方読んでみてください。
https://kabukist.com/noryo2bu-1241
「神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)」
これは、世話物から選んだ演目です。
ストーリーとしては、何かと気になる鳶の衆と相撲取りが
顔をつぶされた、、ってんで意趣返しをする、
つまり鳶対力士の喧嘩というものなんです。
見てる方は、なんでそんなことで腹を立てて命がけで喧嘩をしようとするんだ?
って思っちゃうのですが、そこが江戸っ子の心意気なんでしょうね。
選んだ理由は、江戸っ子魂の人情芝居の前半を役者で楽しみ、
後半の大人数の大喧嘩の場面を見ものとして楽しむ、
静と動の歌舞伎が詰まった演目という点からです。
江戸時代の庶民の生活や習慣、価値観など
タイムスリップした気分になれるのも
歌舞伎の醍醐味だと思います。
あと、江戸っ子の啖呵がかっこいい~ってのも
聞いて感じていただきたいな~。
こちらも観劇の感想があるので、よかったら読んでみてくださいね。
「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」
こちらも成田屋十八番にある人気の演目です。
この作品を進める理由は、とにかくカッコよくて美しいから。
歌舞伎は虚構の世界です。
だから、現実を超えた「美」を体験するのも一つの楽しみ方、
そのための演目としてピッタリなのがこちらの助六なんです。
こちらは、成田屋独特のしきたりもある演目なので、
ぜひ、市川海老蔵、もうじき市川團十郎白猿の舞台を観たいものです。
ストーリーの主軸は、曽我五郎と十郎兄弟の復讐なのですが、
吉原を舞台に、傾城をはべらせ喧嘩を売る助六のかっこよさと、
居並ぶ美しい傾城たちを堪能していただければと思います。
私は、先代の團十郎さんと坂東玉三郎さんの助六を拝見していますが、
ほ~~~とため息しか出ない美しくも華やかな舞台でした。
詳しい説明はこちらをご覧くださいね。
おすすめ演目:新しい歌舞伎
平成に入り、次々と新しいスタイルの歌舞伎が生まれています。
その中からもいくつかご紹介しますね。
スーパー歌舞伎とは?
3代目市川猿之助が創発した、
歌舞伎の伝統的な様式に新しい演劇の手法を加え、
よりわかりやすく見せるエンターテイメント性の高い
新しい歌舞伎です。
始まりは、1986年初演の「ヤマトタケル」。
これは、梅原猛氏が創作に深く関わっています。
宙乗りや派手な立ち回り、大水を使った演出、
そして音楽、舞踊の魅力もたくさんつまっていますので、
「これが歌舞伎?」と古典の演目との違いに驚く方も多いようです。
私も初めて観たときは、
あまりにもわかりやすくて華々しくてびっくりしました。
2014年には、4代目市川猿之助が、
それまでのスーパー歌舞伎をさらにバージョンアップし、
スーパー歌舞伎Ⅱとして上演しています。
市川猿之助を中心に、澤瀉屋一門やそれ以外の若手の役者を起用し、
演じる機会が増えています。
こちらの動画の説明がわかりやすいです。
今後、観る機会がありそうな3本を紹介します。
スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」
2020年、スーパー歌舞伎Ⅱとして「ヤマトタケル」が上演される予定となっていました。
新型コロナウイルスの影響により、その機会はなくなってしまいましたが、
いずれ、世間が落ち着いたら実現すると思います。
日本神話にある、ヤマトタケルの波乱に満ちた生涯をきらびやかな衣装や、
大掛かりな舞台演出やケレンの聞いた演技で見せる骨太なストーリーです。
宙乗りがとても有効に使われた芝居でもあると思っています。
シネマ歌舞伎にもなっていて、DVDも発売されています。
スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」
スーパー歌舞伎史上、最もインパクトが強かったのが、この「ワンピース」ではないでしょうか。
言わずと知れた、国民的大ヒットマンガです。
この世界を歌舞伎で表現する、、というのはかなりのチャレンジだったのではないかなって思います。
だって、誰もが知っていて、大好きな方がたくさんいて、
それぞれのイメージを持っている中での歌舞伎化ですもの。
当の猿之助さんも、これをどういうイメージで作ったらいいか悩んだ、、
とおっしゃっていました。
それを吹っ切ったのが、ゆずが作った主題歌「TETOTE」を聞いた時だそうです。
自分の思いのままにやってみようと思えたのだそうです。
もちろん、このチャレンジは大成功です。
ストーリーは、囚われた兄エースを救うために
脱出不可能と言われている海底監獄インペルダウンへ向かいます。
そこで、エース救出のために戦うものの、
肝心のエースは処刑のために海軍本部へと移送されてしまいます。
エースを救おうとするルフィや、白ひげ海賊団が集結し、
頂上決戦を迎える・・・というもので、
最後は、涙涙なので、、、ここには書きません。
シネマ歌舞伎で観ることができますよ。
https://kabukist.com/onepiece-526
スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」
2019年に初演されたお芝居です。
スーパー歌舞伎としてもあった作品を、4代目猿之助さんがプラッシュアップ!
若手歌舞伎役者を起用して、スピード感、エンタメ感たっぷりな
心踊る作品となっています。
ストーリーは、武芸に秀で、何者にも縛られない生き方を謳歌する小栗判官が、
仲間共々地獄に落とされ、今までの生き方の罰として、
身体が腐る病の身でシャバに戻され、多くの人の情けを受けながら、
心を改めていくというものです。
新橋演舞場で2ヶ月公演の後に、博多座、南座(コロナにより中止)でも
上演を果たした話題作です。
あまりにもざっくり過ぎる説明で、もっと詳しく知りたい方はこちらに書いてあるのでお読みくださいね。
超歌舞伎「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」
人気歌舞伎役者中村獅童が、仮想アイドル初音ミクと共演する
最先端の通信・映像技術を駆使した歌舞伎です。
今までに4作品ほど作られていますが、最も多く上演され人気が高いのが、
「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」です。
これは、「義経千本桜」の世界を基に、
佐藤忠信と美玖姫の軍物語(いくさものがたり)の踊りや、
美玖姫が自ら唄う鼓唄(つづみうた)に合わせての舞、
さらに青龍と美玖姫のやりとり、忠信と青龍との立ち回りなど
ハイテンポで進むエンターテイメントです。
ペンライトを持って、大歓声で応援するのも話題になっていますね。
20代の若者を歌舞伎に取り込んだ革新的な作品です。
詳しいことを知りたい方はこちらもお読みくださいね。
新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」
2019年最大の話題作が、「風の谷のナウシカ」の歌舞伎版でした。
原作全7巻の壮大なストーリーを、前後編に分け、
1日で通し公演を行ったものです。
チケットはほぼ完売し、涙を呑んだ方も多かったのですが、
シネマ化され、その後オンデマンド配信もあり、
益々話題を広げた作品となりました。
人気の女方尾上菊之助がナウシカを、中村七之助がクシャナを演じ、
あのコミックの世界を立体感ある舞台に再現してくれました。
歌舞伎でどうなの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
歌舞伎独特の演出効果や表現方法が功を奏し、
超感動の舞台になっていました。
あらすじやその他の配役などは、こちらにも書いてありますのでお読みくださいね。
歌舞伎役者の社会、家の序列について簡単に説明
歌舞伎役者の序列が気になる方も多いようですね。
歌舞伎役者のお家は、梨園と呼ばれ、血縁で連なる一門が芸を継承しています。
「成田屋」「音羽屋」「中村屋」は、その中でも特に格式が高いと言われています。
「成田屋」は、現在当主は市川海老蔵さんです。
江戸の歌舞伎成立ごろから、
荒事を得意とした人気役者市川團十郎を祖先に持つお家(血縁は途切れたこともありますが)、
歌舞伎十八番は七代目市川團十郎が制定(一部修正あり)したものが、
今でも成田屋特別の演目となっているほど、
歌舞伎界では特別なお家となっています。
「音羽屋」は、現在当主は、江戸世話物の神、と言いたい尾上菊五郎さんです。
「中村屋」は、父の十八代目中村勘三郎亡き後、その息子の中村勘九郎さんと中村七之助さんが支えているお家です。
代表的なお家を3つあげましたが、まだまだ他にも魅力的なお家はあります。
そうは言うものの、今の歌舞伎界で一番格が高い役者は、
市川海老蔵さんではなく、坂田藤十郎(成駒屋)さんです。
年齢や経験、名前の大きさも格付けには関わってきます。
因みに、坂田藤十郎という名前も、歌舞伎成立の頃から伝わっている名前なのです。
役者のお家や格(名前の大きさ)によって、大きな舞台で演じられる役は決まっており、
独特な序列があることも歌舞伎社会の特徴だと思います。
この格が、人気と重なる場合もあればそうでない場合もあり、
人気があってもお家の格が高くないと、
なかなか大役を務めるのは難しくなっちゃうんですよ。
また、先ほど血縁について書いていますが、
現在、芸養子として一般家庭から歌舞伎界へ入り活躍していらっしゃる方も多いです。
この、歌舞伎界の格付けや屋号についてはこちらに詳しく書いてあるのでお読みくださいね。
歌舞伎役者おすすめの10人は?
では、多くの歌舞伎役者さんの中で、
是非観ていただきたい役者さんを10名紹介します。
正直なところ、10名ではたりないのですが、
今観ておいたほうがいい方を中心に選んで(順不同です)みました。
おすすめの歌舞伎役者① 十五代目片岡仁左衛門
片岡仁左衛門さんは、華があり演技が凄い。
演じる役が神がかって見えてしまう凄い役者さんです。
何をみても、みてよかった!と思えますし、見た目がカッコイイのもおすすめポイント
昭和19年3月14日生
父:十三代目片岡仁左衛門
松嶋屋
おすすめの歌舞伎役者② 五代目坂東玉三郎
坂東玉三郎さんは、個人的にはベスト1なのです。
常に美しく、進化しつつ、目を奪わずにはいられません。
美意識、プロ意識も高く、そのあり方にも憧れます。
養父:十四代目守田勘弥
大和屋
おすすめの役者③ 七代目尾上菊五郎
江戸っ子、粋、というと頭に浮かぶのが尾上菊五郎さんです。
時代物や舞踊物もお得意ではありますが、
やはり、江戸時代の生活を濃く表現した世話物狂言の至芸は右に出る方がいないでしょう。
昭和17年10月2日生
父:7代目尾上梅幸
音羽屋
おすすめの歌舞伎役者④ 二代目中村吉右衛門
中村吉右衛門さんは、鬼平などでも有名ですが、
歌舞伎はどの舞台を見てもうまいなあと思わせる役者さんです。
先代の古典の技を後進に伝えることも熱心な方です。
昭和19年5月22日生
養父:初代中村吉右衛門、実父:初代松本白鸚
播磨屋
おすすめの歌舞伎役者⑤ 十代目松本幸四郎
松本幸四郎さんは、コロナ禍でも図夢歌舞伎を立ち上げるなど、
常に新しい歌舞伎を模索し挑戦している役者さんです。
これからを牽引する方でもあり、ぜひ観ておきたい方です。
昭和48年1月8日生
父:2代目松本白鸚
高麗屋
おすすめの歌舞伎役者⑥ 四代目市川猿之助
半沢直樹で全国区に名前が広まった市川猿之助さん、
歌舞伎の世界の猿之助さんは、立役も女形も巧みでもっと魅力的です。
型にはまらない役者として常に新しい芸を楽しませてくれる方です。
昭和50年11月26日生
父:四代目市川段四郎
澤瀉屋
おすすめの歌舞伎役者⑦ 二代目中村七之助
中村七之助さんは、今最も綺麗と言われている女方です。
女方はやはり旬の役があると思うので、
今の美しさを堪能したい役者さんなのです。
昭和58年5月18日生
父:十八代目中村勘三郎
中村屋
おすすめの歌舞伎役者⑧ 四代目中村鴈治郎
中村鴈治郎さんは、上方ならではの色気がある役者さんです。
芸域も広く、お殿様から醜女まで演じ、
舞台を沸かせる方だなと思っています。
昭和34年2月6日生
父:四代目坂田藤十郎
成駒屋
おすすめの歌舞伎役者⑨ 六代目中村東蔵
中村東蔵さんは、人間国宝なのですが、演じるのは主に脇役です。
立役、女方、どちらも巧みに演じ分け、
舞台を引き締め、質を上げられる、貴重な存在だと思っています。
昭和13年1月21日生
養父:六代目中村歌右衛門
加賀屋
おすすめの歌舞伎役者⑩ 十一代目市川海老蔵
市川海老蔵さんは、超人気で有名なので紹介も必要ないくらいかな~。
とてもカッコイイし華があります。
歌舞伎の舞台では、歳をとってからが楽しみなんじゃないかと思っています。
昭和52年12月6日生
父:十二代目市川團十郎
成田屋
女方に興味がある方、女方だけを集めたベスト15についても読んでみてくださいね。
まとめ
・歌舞伎とは、1600年ごろに人気となった大衆芸能を発端に、長い年月をかけて磨かれてきた総合芸能です。
・歌舞伎は、音楽、舞踊、演技を組み合わせた、独特な舞台演出や役者の演技が見どころです。
・歌舞伎の演目には、時代物(歴史的な事件などを基にしたもの)、松羽目物(能や狂言を基にしたもの)、世話物(江戸時代の生活を基にしたもの)、所作事(舞踊劇)などがあり、近年は新たな趣向を取り入れた作品も生まれています。
・歌舞伎役者の家は、梨園と言われ、家や名前の大きさにより序列も存在します。
・歌舞伎を見ることは、役者の芸を見ることでもあるので、お気に入りの役者さんを見つけると楽しいです。
長文、読んでくださりありがとう存じまする。
歌舞伎に興味を持ってくれる人が、もっともっと増えたらいいなあ~。
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