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9月歌舞伎座公演(2021)の感想と演目紹介

公演情報
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9月歌舞伎座公演(2021)は、3部構成で上演です。

その演目や感想について紹介します。

昨年までと違うのが、秀山祭の言葉がないことです。

病気療養中の中村吉右衛門さんが、監修できないということなのでしょうね。

寂しい気持ちでいっぱいですが、

見所は多いので、楽しみにしたいと思います。



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9月歌舞伎座公演(2021)のスケジュール

9月歌舞伎座公演は2日(木)~27日(月)の上演です。

但し、第2部に出演予定の中村隼人さん、中村歌昇さんなど

舞台関係者5名がコロナウイルスに罹患したことがわかり、

6日まで休演となりました。

7日(火)からは、

関係者全員の陰性が確認されたとのことで、

代役を立てて再開する運びとなりました。

よかったよかった~

第2部の代役は、

中村隼人 →  中村錦之助

中村歌昇 →  中村種之助

となりました。

親子、兄弟での代替わり、順当なところと思います。

詳細は、以下のパラグラフで説明していますので

参考になさってくださいね。

上演時間は以下の表の通りです。

第1部 11時開演 演目 上演時間
一 お江戸みやげ 11時〜12時5分
二 須磨の写し絵~行平名残の巻~ 12時20分〜12時46分
第2部 14時10分開演
一 近江源氏先陣館 盛綱陣屋 14時10分〜16時5分
二 女伊達 16時20分〜16時35分
第3部 18時開演
東海道四谷怪談 18時〜19時30分
東海道四谷怪談 19時50分〜20時10分

 



9月歌舞伎座公演(2021)第1部の演目と感想

第1部は、6世中村歌右衛門さんの20年際、

7世中村芝翫さんの10年祭ということで、

お二人所縁の演目と配役になっています。

しっとりとした人情芝居と、舞踊の二本立てです。



9月歌舞伎座公演(2021)第1部の演目、あらすじ、配役

一、お江戸みやげ(おえどみやげ)

【配役】

お辻   中村 芝翫

おゆう  中村 勘九郎

阪東栄紫 中村 七之助

角兵衛獅子兄 中村 福之助

角兵衛獅子弟 中村 歌之助

小女みの 中村 玉太郎

女中お長 中村 梅花

お紺   中村 莟玉

鳶頭六三郎 中村 松江

常磐津文字福 中村 福助

常磐津文字辰 中村 東蔵

【あらすじ】

梅がほころぶ湯島天神の茶店では、

常磐津文字福と角兵衛獅子兄弟が和やかに話をしています。

店では、人気役者の阪東栄紫が支度の真っ最中、

その栄紫と恋仲のお紺は、妾奉公に出そうと目論む継母文字辰から逃れ、

匿ってもらっています。

そこに、結城紬の行商人、お辻とおゆうがやってきました。

仕事を終え、大好きなお酒を一杯と明るいおゆうに比べ、

倹約家のお辻はお金の計算に余念がありません。

気が大きくなったおゆうは、

茶店の女将さんに芝居の席を取ってもらい、

お辻を誘って芝居見物をすることにします。

その芝居に出ていた阪東栄紫に一目惚れしたお辻、

一席設けて対面することになりました。

それもこれも、お酒が入ると後先考えられなくなる性分、

栄紫を前にすっかり舞い上がってしまいます。

そこに、お紺が逃げ込んできます。

強欲な文字辰は、お紺を妾へ出すと一点張り、

栄紫は、ちゃんとお金は払うから結婚を認めて欲しいと

頼みます。

しかし、まだ駆け出しでお金を工面できない栄紫を見て、

文字辰と六三郎はお紺を連れて行こうとします。

それを見ていたお辻は、

有り金を全て差し出し、これで二人の仲を許すようにと言うのでした。

すっかり酔いが覚めたお辻とおゆう。

商売で稼いだお金を栄紫とお紺を助けるために

使ってしまったお辻は、

これも一生の中で一度の贅沢と言います。

そこへ、お辻を追いかけてきた栄紫、

助けてくれたお礼をともっていた手ぬぐいを差し出します。

その手ぬぐいを手に、これが私のお江戸みやげと

お辻はそっと呟くのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

懸命に働いて生きてきた田舎の女が、

女としての喜びをしみじみと訴える場面が

心を打つ人情ドラマです。

 

 

二、須磨の写絵(すまのうつしえ) 行平名残の巻

【配役】

在原行平  中村 梅玉

海女村雨  中村 児太郎

海女松風  中村 魁春

【あらすじ】

須磨の浦に流されている在原業平は、

当地の美しい海女姉妹、松風、村雨とすっかり馴染んでいます。

ある時、業平は罪を赦され、都へ帰ることになりました。

しかし、そのことを言い出せないまま、

業平は別れの歌を松の枝にかけ、

去っていくことにします。

・・・・・・・・・・・・・

流された業平の悲哀と姉妹の業平への恋慕を

味わい深く表現した舞踊劇です。



9月歌舞伎座公演(2021)第1部「お江戸みやげ」「須磨の写し絵」の感想

9月3日(金)に観劇しました。

劇場の1階席の入り口には、

中村歌右衛門さんと中村芝翫さんの遺影が飾られ、

手を合わせる人もいらっしゃいました。

第1部は、そのお二人の記念祭ということで、

7世芝翫が得意とした「お江戸みやげ」と

6世歌右衛門が得意とした「須磨の写し絵」を、

所縁ある親族やお弟子さんたちが演じました。

「お江戸みやげ」のお辻は7世芝翫の当たり役で、

息子である当代がつとめあげました。

倹約家だけど、お酒が入ると人が変わってしまうお辻、

一目惚れした役者栄紫のために全財産を投げ打ちます。

その栄紫に甥の中村七之助さん、

お辻と同じ行商の女おゆうにやはり甥の中村勘九郎さん。

角兵衛獅子の兄弟は

芝翫の孫にあたる中村福之助さんと歌之助さんです。

子供、孫に恵まれた芝翫さんらしい、

一族あげての顔ぶれにほのぼのする座組です。

そして一際拍手を浴びたのが、

リハビリを続ける中村福助さんです。

初日のニュースでも、

「福助が歩いた!」と話題になっていました。

舞台復帰されてからも、

右腕と両足が十分に動かせず、

座ったまま、立ったまま、左腕を少し動かすだけの

お役でしたが、

この芝居の常磐津文字福では、

セリフも多く、さらに立って歩くという姿も見せたのです。

立ち上がる際には、福之助さんが少し手を添えていましたが、

舞台の奥に向かって、しっかりとした足取りで歩いて行かれました。

右脚を引きずっている様子も見られたものの、

客席からは姿が見えなくなるまで、ずっと拍手が続いていました。

大向こうさんがいらしたら、

成駒屋、成駒屋、の声がひっきりなしにかかっただろうなあと

想像してしまいました。

お紺役の中村莟玉さん、

その継母の文字辰役の中村東蔵さん、鳶頭に中村松江さん、

茶店の女中に中村玉太郎さん、

こちらは、6世中村歌右衛門ゆかりの役者さんたちです。

先代の遺した芸を子孫たちが大事に演じ、

技を継承していくのも歌舞伎の醍醐味と思いました。

お芝居は人情ドラマということで、

お辻とおゆうのかけあいに笑ったり、

栄紫との語らいにほっこりしたり、

心が温まる楽しい作品でした。

こういうお芝居は、情をどう見せるかが見所かなと思うのですが、

その点では型通りかなと感じました。

面白かったんだけど、感情移入する場があまりなかったのが残念、

人情ものってわかりやすいだけに深みを出すのは

役者の力量にかかってくるようです。

「須磨の写し絵」は、

6世歌右衛門の松風が当たり役ということ、

ただ、この演目は上下とあって、

下の場で松風が業平恋しさに狂っていく姿が

見所なのだそう。

だから、こちらも綺麗だけど、平板な印象でした。

業平の公家としての品やクールな感情表現は、

さすがの梅玉さんという感じです。

海女の姉妹に中村魁春さん、中村児太郎さん。

控えめな村雨に比べると情の強い松風の踊りや表情は、

執着が感じられ、別れた後の狂いが

予想させられました。

個人的には、児太郎さんの女形に

強さと秘めた情を見てとれたのが

収穫でした。

華やかで大きな役がお似合いなので、

これからが楽しみな女形です。



 

9月歌舞伎座公演(2021)第2部の演目と感想

9月6日まで休演となった第二部。

松本幸四郎が盛綱を演じる盛綱陣屋は、

入院療養中の中村吉右衛門さんも得意とした芝居です。

本来ならば、初代中村吉右衛門さんゆかりの演目を上演する秀山祭が

催されている9月の歌舞伎座です。

吉右衛門さん不在ですが、甥の松本幸四郎さんが

その分もしっかり務めたいと意欲を語っているのが印象的でした。

9月歌舞伎座公演(2021)第2部の演目、あらすじ、配役

一、近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)

【配役】

佐々木盛綱  松本 幸四郎

高綱妻篝火  中村 雀右衛門

和田兵衛秀盛 中村 錦之助

盛綱妻早瀬  中村 米吉

信楽太郎   中村 隼人 → 中村 錦之助

高綱一子小四郎 尾上 丑之助

盛綱一子小三郎 坂東 亀三郎

北條の臣   中村 吉之丞

北條の臣   澤村 宗之助

竹下孫八   大谷 廣太郎

古郡新左衛門 松本 錦吾

伊吹藤太   中村 歌昇 → 中村種之助

北條時政   中村 又五郎

盛綱母微妙  中村 歌六

【あらすじ】

頼朝亡き後、源氏一族の争いに巻き込まれた

近江佐々木家は、兄盛綱と弟高綱が敵味方に分かれて戦うこととなります。

ある戦で、盛綱の嫡子小三郎は初陣を飾り、高綱の子息小四郎をいけどる手柄を立てました。

館に戻った盛綱は、母微妙に、小四郎に切腹をすすめて欲しいと頼みます。

敵の子息である小四郎が味方の手に渡ると、

どんなことになるかわからないと案じてのことでした。

微妙は、小四郎に切腹するように話すのですが、

今一度母さまに会いたいとすがる可愛さに心が揺らぎます。

そこへ、北条から使いが来て、

高綱の首実検をするよう盛綱に申し付けます。

首桶を目にした小四郎は、

父様と叫ぶと、その場で刀を腹に突き刺します。

小四郎のその最後を見た上使は、高綱の首と納得して帰って行きます。

しかし、その首は高綱のものではなく、

高綱が死んだと見せかけるための偽首、

それを的に信じさせるために、小四郎は命を絶ったのでした。

小四郎の死を嘆く母の篝火、微妙ら、

盛綱は、また戦場で会う日を心で誓うのでした。

二、女伊達(おんなだて)

【配役】

木崎のお光    中村 時蔵

男伊達中之島鳴平 中村 萬太郎

同  淀川の千蔵 中村 種之助

【あらすじ】

桜満開の吉原にやってきた、女伊達のお光。

そこに、威勢のいい男伊達が掴みかかりますが、

逆にお光にいなされます。

お光は、惚れた男を恥じらいながらも語り踊ると、

そこに先の男伊達が仲間を連れて戻ってきます。



9月歌舞伎座公演(2021)第2部「盛綱陣屋」「女伊達」の感想

「盛綱陣屋」に関しては、

幸四郎さんが叔父の中村吉右衛門から受けた教えを守り

演じる心を見せていること、

小四郎役の尾上丑之助くんの演技が

非常に楽しみな演目です。

「女伊達」に関しては、

中村時蔵さんが、すごく似合いそうなお役なので、

見るのを想像するだけでワクワクしてきます。

両方とも観劇したら書き加えますね。



9月歌舞伎座公演(2021)第3部の演目と感想

第3部は、レジェンドコンビといっても過言ではない、

片岡仁左衛門と阪東玉三郎の「東海道四谷怪談」

こちらも36年ぶりの共演だそうです。

時間の関係上、2幕4場の上演ですが、

レジェンドが演じる舞台はリアルでした。

9月歌舞伎座公演(2021)第3部の演目、あらすじ、配役

東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん) 四世鶴屋南北 作

四谷町伊右衛門浪宅の場

伊藤喜兵衛内の場

元の浪宅の場

本所砂村隠亡堀の場

【配役】

お岩/お花  坂東 玉三郎

直助権兵衛  尾上 松緑

小仏小平/佐藤与茂七 中村 橋之助

お梅     片岡 千之助

按摩宅悦   片岡 松之助

乳母おまき  中村 歌女之丞

伊藤喜兵衛  片岡 亀蔵

後家お弓   市村 萬次郎

民谷伊右衛門 片岡仁左衛門



【あらすじ】

塩冶家の浪人、民谷伊右衛門は傘貼りの内職をしながら生計を立てています。

妻のお岩は同じく塩冶家の家老職だった四ッ谷左門の娘です。

左門は、公金を横領した伊右衛門に愛想をつかし、

娘のお岩を連れ戻すのですが、

それに腹を立てた伊右衛門が、殺してしまいます。

また、お岩の妹お袖は、佐藤与茂七の許嫁でしたが、

横恋慕した直助権兵衛が、与茂七を殺してしまいます。

大切な人を亡くしたお岩とお袖の姉妹は、下手人とは知らず、

伊右衛門と権兵衛に仇を討ってもらうことを頼りにするのでした。

お岩は、男児を出産しますが産後の肥立ちが悪く、

身体を壊してしまいます。

そんなお岩に、冷たく当たり散らす伊右衛門、寒々しい夫婦関係です。

ある日、下僕として使えていた小仏小平が、

主人のためにと伊右衛門が大事にしていた薬を盗んだことが発覚します。

小平は捕まり、両手指を折られて押入れの中に押し込められます。

そんなところへ、

隣家の伊藤家より、乳母のおまきがやってきて、

お岩の出産祝いにとお酒や上等の産衣を渡します。

折悪く、借金取りもやってきて、すぐに金を返せとのやりとりとなるのですが、

おまきが一両を立て替えたことで難を逃れます。

また、おまきはお岩の地の道を整えるためにと

粉薬を置いて帰ります。

やつれた表情のお岩に頼まれ、

伊右衛門は仲間二人を連れ、薬やお祝いのお礼に伊藤家へ行くことになりました。

留守を守るのは按摩の宅悦とお岩です。

宅悦がおかゆを用意する間、

お岩はいただいた薬を拝むようにして、丁寧に飲み干します。

ほどなくして、手のしびれや体の火照りなど、

体に違和感を覚えたお岩は横になります。

この薬は、実は毒薬だったのです。

伊藤家でもてなしを受ける伊右衛門は、

主人の喜平から孫のお梅が伊右衛門に一目惚れしたので、

嫁にもらってほしいと頼まれます。

伊右衛門にすれば、お岩という妻がいるのですぐには首を縦には触れません。

しかし、喜平から、先ほど届けた薬は顔が崩れる毒薬であること、

高家に縁のある喜平に仕官の口利きをしてもらうことで、

お岩を追い出し、お梅を嫁に迎えることを承諾するのです。

そうとは知らないお岩、

部屋の灯りをつけた宅悦は、お岩の顔が醜く変わっていることに驚きます。

鏡を見せられても、信じられないお岩、

そこに伊右衛門が帰ってくるなり、

今夜金が要りようになるからと、

家にあるものを出すようにお岩に言いつけます。

家には何もない、というお岩に向かって、

暴言を吐き足蹴にする、なんとも冷酷な態度をとるのです。

お岩の着ている羽織りものや赤ん坊にもらった産衣、

そして部屋に吊った蚊帳までをむしり取るように手にすると、

伊右衛門はお岩の悲痛な声には耳も貸さずに出て行きます。

出て行く途中、宅悦に会った伊右衛門は、

お岩に不義を仕掛けるように脅します。

お梅を家に迎えたい伊右衛門は、お岩を追い出す口実が欲しいのです。

刀で脅された宅悦は渋々と家に戻ります。

そして、お岩に同情したふりをしながら言いよるのですが、

さすがは武士の娘、

そこはきっぱりと断り、脇差しで逆に宅悦をねじ伏せます。

そんなお岩を不憫に思う宅悦は、

先の薬が毒薬であり、お岩の面相がひどく崩れていることや、

伊右衛門は伊藤家の言い分をのんで、お梅と祝言をあげることを

お岩に訴えます。

お岩は、伊右衛門の裏切りを知り、怒り狂います。

そして、伊藤家に意見をしに行こうと、

お歯黒をつけ髪を梳きます。

しかし、毒に犯されたお岩の髪は梳くごとに抜け落ちていきます。

伊右衛門への、伊藤家への恨みが募るお岩、

止めようとする宅悦と争いになったはずみに柱に刺さっていた脇差しに

首を刺し、そのままお岩は息絶えます。

帰ってきた伊右衛門は

お岩の死を知り、離縁の手が省けたとばかり、

押入れにいた小平は全てを聞いていたためその場で殺され、

お岩との心中に見せかけ、戸板に二人を縛り付けて川へ流してしまいます。

どこまでも残忍な伊右衛門・・・。

そこへ、伊藤家よりお梅が嫁入りしてきます。

お梅と見届け役の喜平が床についた後、

伊右衛門は、お梅をお岩と見誤り首をはねてしまいます。

それだけじゃありません、

喜平も小平が「薬くだせえ」と見誤り、殺してしまいます。

お岩、小平の恨みが伊右衛門に取り憑いたのです。

隠亡堀では、すっかり落ちぶれた

お弓とおまきが、仇の伊右衛門を探しています。

伊右衛門が、訪ねてきた母と話をしているのを聞きつけたお弓ですが、

あっさりと伊右衛門に川へ蹴落とされます。

そこへ、鰻取りになった権兵衛が現れます。

同じ悪を重ねる仲間同士、

二人が共に釣りをすると、

お岩が貼りついた戸板を釣り上げてしまいます。

裏を返すと、小平も、、、、。

そのまま川へ落とすと気味悪げな様子の2人。

夜の闇が増す中、

小平の妻お花、死んだと思われた佐藤与茂七も現れます。

与茂七が持っていた書付を権兵衛が拾い、

権兵衛が持っていた鰻かきは与茂七に渡ります。

だんまりの中、幕が降ります。



9月歌舞伎座公演(2021)第3部「東海道四谷怪談」の感想

いやあ~~参りました!

レジェンドコンビ、凄すぎます、ってこれじゃ感想がわかりませんね。

でもこの一言なんです、

片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さんの

伊右衛門とお岩がそこにいるだけで

完結してしまうくらいの舞台ということです。

この舞台を観て、私は初めて、

ストーリーが芝居を作るのではなくて、

役者がいるからストーリーになるということを実感したのです。

そのくらい、玉三郎さんはお岩さんで、

仁左衛門さんは伊右衛門でした。

あまりにもリアルなふたりの人物描写に目が釘付けになり、

あの時代の出来事を目撃した気分にさせられました。

華やかな仇討ち劇「忠臣蔵」には入れなかった、

落ちこぼれ浪人たちが、

生きるために悪に染まり、身を滅ぼしていく様は、

忠臣蔵の正義以上に

どこにでも見られそうな人間の悲劇だと感じました。

この芝居の見所は多く、

どこを語ればいいんだろうという感じです。

そもそも、片岡仁左衛門さんが演じた伊右衛門が

めちゃくちゃ冷酷で卑劣で残忍で、

そのくせ色男で、

地獄の底まで落ちるにふさわしいダークな奴。

DV、殺人、横領と犯罪に頭までどっぷり浸かっているのに、

イケメンというだけで存在を許されているのが

本当に憎たらしいです。

念のために付け加えますが、

私は仁左衛門さんファン、

そのファンにしてこの印象なのですよ。

だからこそ、

お岩さんの恨みに現実感が増すんですよね。

お岩さん自体は、武士の娘です。

だから、貧しくても具合が悪くても、

誇り高く、言葉や所作に乱れがありません。

DV夫ですが、父の仇を討ってくれると信じているので

(本当は本人が下手人です)、

恨みつらみを言わずに我慢して、立てているのです。

この前提がきっちり描かれているからこそ、

お岩の執念がリアルに迫ってくるのだと思います。

この芝居の見所にあげられる、

薬を大切に飲み干す場面、

面相が崩れても身だしなみを整えようと髪を梳く場面。

そのどちらも、お岩さんの心情が伝わるから、

怖さよりも哀しさを感じました。

このお芝居は、奇抜な演出や早変わりで、

観客を魅了する仕掛けが多いことでも有名です。

でも、9月の2幕では、その仕掛けよりも、

2人の演技が作るリアルな虚の世界を堪能することができます。

芝居ってこうだよな・・・

舞台仕掛けも、背景も、何もなくても

そこに存在する二人の所作や関わりだけでも

世界観が伝わってくるものなんだなあとしみじみ思いました。

感想が、にざ玉コンビ賞賛に走っていますがご容赦ください。

宅悦役の松之助さん、

小平役の橋之助さん、

伊藤家の面々などもいい仕事をしています。

初日を待たずに、全日程。全席売り切れという快挙、

千穐楽までレジェンドコンビの名演に心を鷲掴みにされる人

たくさん出そうです。

このお芝居の重みをひしひしと感じました。

歌舞伎座の9月公演は、それぞれ見て損のない素晴らしい芝居と思います。

コロナ対策も厳しめですので、観劇される方は、

その対策に協力してご覧いただければと思います。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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