演目紹介「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」主な登場人物、あらすじ、見どころを紹介

歌舞伎の人気演目「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」を

紹介します。



「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」について

河竹黙阿弥が書いた世話狂言で、

初演の1860年には、

「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」という

外題で発表されたものです。

「白波」がついていることからおわかりの通り、

盗賊が活躍する作品です。

同じ、「吉三」の名を持つ三人の盗賊と、

100両の金をめぐる因果話です。

黙阿弥の芝居の特徴は、

七五調の美しい台詞、

芝居を知らない方も聞いたことがあるかもしれないですね。

令和元年10月の歌舞伎座では、

七幕の通し狂言として上演されています。

全幕を見られるのは珍しいので、

ご覧になると、よりこの芝居についてわかると思います。

「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」の主な登場人物

和尚吉三【おしょうきちさ】

土左衛門伝吉の子で、おとせの兄。もとは出家だったので、付いた異名が和尚。

お嬢吉三【おじょうきちさ】

女の姿で盗みを働く盗賊でお嬢吉三と異名。五歳の時に誘拐され旅役者の一座に売られ、女方として成長した。

お坊吉三【おぼうきちさ】

武士の子であるため「お坊(お坊ちゃんの意)」の異名。名刀・庚申丸を盗まれた罪で父は切腹、お家断絶となったため、盗賊になる。

土左衛門伝吉【どざえもんでんきち】

和尚吉三とおとせの父親。

おとせ【おとせ】

土左衛門伝吉の娘。男女の双子として生まれた。夜の商売をしていて、ある時客になった十三郎と恋に落ちるが・・。

十三郎【じゅうざぶろう】

道具屋・木屋の手代。双子として生まれたが、捨てられ、八百屋久兵衛に引き取られた。おとせと恋仲になるのだが……。

八百屋久兵衛【やおやきゅうべえ】

商人。自分の子供が五歳の時に誘拐されてしまい、捨て子の十三郎を引き取って育てる。



「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」のあらすじ

三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)

河竹黙阿弥 作

序幕:大川端庚申塚の場

節分の夜更け、大川端にやってきた夜鷹のおとせは

道を尋ねられた娘に財布を奪いとられます。

この娘の正体は、盗賊のお嬢吉三。

その一部始終を見ていた御家人崩れの悪党、お坊吉三。

二人は互いの素性を明かし合い、

100両の金をかけて斬り合いを始めます。

ここへ割って入ったのは、

元は吉祥院の所化で今は盗賊をしている男で、

その名はなんと和尚吉三。

和尚はお嬢とお坊の諍いを仲裁し、

三人は同じ吉三の名を名乗る縁から、義兄弟の契りを結ぶのでした。

お嬢が奪った100両は、一旦は和尚が預かることとなります。

二幕目:割下水伝吉内の場、本所お竹蔵の場

伝吉の家に、八百屋久兵衛に伴われおとせが帰ってきます。

知らずに助けた十三郎がキュウべえの息子であることがわかり、

2組の親子は喜び合います。

しかし、おとせが持っていた財布は

実は十三郎が落としていったものでした。

伝吉は、久左衛門の話から、

十三郎が、捨てた双子の息子、

つまりおとせの兄弟であると気づきます。

そこへ、和尚吉三が家に戻り、伝吉に100両を渡そうとしますが、

伝吉はどうせろくな金ではないと受け取りません。

こっそり、仏壇に置いて和尚は家を後にします。

そこへ、おとせを恋い慕う釜屋武兵衛。

和尚が置いていったお金に気づいた伝吉は、

和尚と間違え、そこにいた武兵衛に向かって

そのお金を投げ返します。

間違いに気づいた伝吉は後を追いますが、

100両はお坊吉三の手に渡ってしまいます。

お坊は、返してくれと懇願する伝吉を斬り殺し、

去っていきます。



三幕目:巣鴨吉祥院本堂の場、裏手墓地の場、元の本堂の場

悪事を重ねた、三人の吉三は手配が回る身と

なっていました。

吉祥院に隠れ住む和尚の元へ、お坊がやってきます。

留守中の和尚を隠れて待っていたところ、

和尚が戻り、程なく捕手頭の六郎がやってきて、

お坊とお嬢を差し出したら見逃してやると

言い残して立ち去ります。

自分を差し出すようにお坊は言いますが、

和尚は二人を逃すつもりと答えます。

そして、改めてお坊の身の上を聞いていたところ、

お坊の刀の一対がないことに気づきます。

伝吉を殺した時に、落としたこの刀を

拾ったのはおとせと十三郎。

和尚のところに、

その刀を持ったおとせと十三郎がやってきて、

伝吉の敵討ちを手伝って欲しいと頼みます。

和尚は二人を裏の墓場に行かせ、

そこで、伝吉の死と100両の盗難は、

義兄弟のお嬢とお坊の仕業であると伝え、

その因果に報いて死んで欲しいと頼みます。

実は、おとせと十三郎は。兄妹なのに契りを結んだことを

知りません。

和尚はそれを知りながらも伝えることはせず、

2人を葬ることにしたのでした。

一方、自分たちのせいで

和尚の父や妹を苦しめていたことを知った

お嬢とお坊は自害しようとしていました。

そこへ和尚がおとせと十三郎の首を抱えて戻ります。

和尚は、二人にカタギになるように諭し、

100両をお嬢に久兵衛に届けるように渡し、

お坊にお嬢の脇差を渡します。

その脇差しこそが、お坊のお家断絶の元になった

宝刀だったのです。

大詰:本郷火の見櫓の場

和尚が差し出した首も偽物とばれ、

三人の吉三を捕らえようと捕手たちが取り囲みます。

全ての根源となった、

100両の金と宝刀を八百屋久兵衛に渡し、

お家再興を託すと、

三人は捕手に向かっていくのでした。



「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」の見どころ

見どころを主に3つ紹介しましょう。

観劇の参考になれば幸いです。

その1:流れるような名台詞

黙阿弥の白浪物の中でも傑作と言われる本芝居。

聞いてうっとりするような、

七五調のセリフが聴きどころです。

大川端庚申塚の場のお嬢の

「月も朧(おぼろ)に白魚の、篝(かがり)もかすむ春の空・・・。」

「ほんに今夜は節分か 西の海より川の中 落ちた夜鷹(よたか)は厄落とし 豆沢山に一文の 銭と違って金包み こいつあ春から縁起がいいわえ」 

は特に有名。

この大川端庚申塚の場が、何度も上演される所以でしょう。

その2:絡み合う因果の物語

実は、本当の親子で・・・。

実は、親の仇で・・・。

実は、兄妹だった・・・。

という、「実は」という伏線が、

絶妙に張り巡らされ、

何をどうやっても、この顛末にしかならない、

そんな見事な物語なのです。

その3:八百屋お七の趣向が随所に

「吉祥院」と「火の見櫓」は、

「八百屋お七」の趣向を取り入れた

ストーリー運びとなっています。

お嬢をお七、お坊をお寺の吉三郎、和尚を仲介役に

見立てた並びであったり、

吉三郎の吉を三人の名前や吉祥院に

掛け合わせたところ、

そして最後の櫓の太鼓をたたくところなど、

当時話題になったであろうお七の物語を

重ねあわせることができます。

「三人吉三巴白波」、上演回数も多い人気のお芝居です。

令和元年10月の歌舞伎座では通し狂言として上演もされています。

黙阿弥が描く盗賊たちの因果応報のストーリーを

名セリフとともに味わうチャンスですよ。

読んでくださり、ありがとう存じまする。