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桜姫東文章 歌舞伎:あらすじ・登場人物・見どころについて

歌舞伎演目
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「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」は、

4世鶴屋南北の手による歌舞伎の人気演目です。

美しい桜姫にまつわる輪廻の糸、悪党との恋から転落人生など、

見所の多い作品です。

登場人物の関係性も複雑なので、これを把握して観劇することをお勧めします。



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桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう):歌舞伎演目とは

桜姫東文章とは、4世鶴屋南北が書いた歌舞伎演目で、

7幕9場で構成されています。

初演は文化14年(1817年3月)で、江戸の河原崎座にて上演されました。

お家騒動を縦軸に、

桜姫にまつわる恋愛?ジェットコースター的人生?を横軸に

作られた物語。

早変わりや濡れ場、怪談話など、退廃的な雰囲気を残しつつも

見所の多いお芝居となっています。

タイトルになっている「東文章」とは、

隅田川物の一つであることを知っておくとなるほどって感があります。

「東方面に流された(さらわれた)系の物語」って意味だそうです。

 



桜姫東文章の登場人物

桜姫(さくらひめ)

吉田家の息女。生まれつく左手が開かない。家宝が盗まれお家取りつぶしとなる。出家を願うものの、盗賊権助に犯され、恋に落ち、権助と夫婦になりたいと願うものの売られて女郎にまで落ちぶれる

清玄(せいげん)

長谷寺の高僧。桜姫が、修行僧の時に恋仲にあった白菊丸の生まれ変わりと知り、つきまとう。

白菊丸(しらぎくまる)

清玄が修行僧の時に恋仲にあった稚児。互いに香箱の蓋に名を書いて形見とし、それを握り心中を図るが、清玄が躊躇している間に先に飛び込んでしまう

釣鐘権助(つりがねごんすけ)

二の腕に釣鐘の刺青を入れた小悪党、盗みに入った時に会った桜姫を犯して逃亡。その後、桜姫と夫婦になるが女郎屋に売り飛ばす。その正体は盗賊信夫の惣太(しのぶのそうた)といい、姫の家が取り潰されるきっかけを作っていた

残月(ざんげつ)

長谷寺の僧で清玄の弟子だが、なり変わって出世しようと目論む。長浦との不義が発覚し流される。

長浦(ながうら)

桜姫に仕える局だったが、残月との不義が発覚し、吉田家を追放される

入間悪五郎(いるまあくごろう)

桜姫の元婚約者だが、権助とともに吉田家の乗っ取りを企む悪人

松井源吾(まついげんご)

吉田家の家臣だが悪五郎と手を組み、乗っ取りを企む

有明の仙太郎(ありあけのせんたろう)

鳶頭だがその正体は、吉田家の中心である粟津七郎(あわづしちろう)。家宝の探索とお家再興に扮装する。

葛飾のお十(かつしかのおじゅう)

仙太郎の女房で、吉田家の中心軍助の妹。桜姫の身代わりになる。

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桜姫を中心に、桜姫に恋慕する清玄、利用しようと企む権助、お家乗っ取りを企む悪人とそれを阻んで再興を図る忠臣たち。

実は、実は、、が多いのでややこしいのですが、この関係をしっかり理解してかたお芝居を見ると、

この演目の落とし所もなるほど~と思えるのではないでしょうか。



桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)のあらすじは

では桜姫東文章のあらすじを幕ごとに紹介します。

発端 江ノ島稚児ケ淵の場

修行僧の清玄は稚児の白菊丸と道ならぬ恋に落ち、心中しようとします。

ともに名前を書いた香箱の蓋と箱を形見にと交換し、

入水をしようとするのですが、

白菊丸が先に飛び込んだのを見送った清玄は踏ん切りがつかず、

そのままそこに残ってしまいます。

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つまりは一人死に損なってしまうということです。

このことが、後日吉田家のお家騒動と絡んでくるのです。

序幕第一場 新清水の場

17年後、吉田家の息女桜姫、

美しいのだが、生まれつき左手が開かないという障害を持っています。

その桜姫は出家をしたいと申し出、家臣たちを困らせます。

それには理由があります。

父である吉田家の当主と弟の松若丸が殺され、

家宝の「都鳥の一巻」も盗まれてしまうのです。

このことでお家の断絶は免れず

しかも自分よりも身分の低い男との縁談もあり、

この世に生きる望みを失ったのです。

そこへ、長谷寺の高僧である清玄が通りかかります。

17年前、心中に失敗して生き残ったあの清玄です。

姫のことを哀れんだ清玄は、

「十念」というお経を唱えることにします。

南無阿弥陀・・と唱えていると、

なぜか姫の左手が開き、中から香箱の蓋が現れます。

そこにはなんと、「清玄」の名が書かれているではないですか。

それを見た清玄は、その蓋が17年前に形見として

白菊丸が握りしめたまま入水した形見であること、

姫は白菊丸の生まれ変わりであることに気づき、愕然とします。

さて、皆が去った後、

お家乗っ取りを企む入間悪五郎が、

桜姫との縁組を進めることを求める手紙を

仲間の悪党釣鐘の権助に託すのでした。

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桜姫、華やかな桜の花を背景に艶やかに登場します。

しかし、背景とは裏腹に希望をなくし出家を願う哀れな姿も見せてくれます。

何も知らない桜姫と恋人の生まれ変わりと知って愕然とする清玄との出会いが

印象的な場面なんです。



序幕第二場 桜谷草庵の場

出家の準備のため、草庵にいる桜姫。

そこに、悪五郎からの手紙を持った権助がやってきて

桜姫の出家を思いとどまらせようとします。

落とし噺を交えて、姫や腰元たちを笑わせているうちに、

うっかりと腕にある釣鐘の刺青を見せてしまいます。

それを見た桜姫は、腰元たちを下がらせ、

権助に驚くことを告白します。

1年前に、忍んできた盗賊に犯されてしまった桜姫、

誰か知らぬその相手との子までなしてしまったのですが、

その男のことが忘れられず、自分の腕にも同じ刺青をしていたのです。

出家を取りやめ、お前の女房になりたいと

抱きつく桜姫。

そんなこんなな場面を

僧の残月に見られてしまいます。

慌てて逃げる権助、

怪しい男探しが始まりますが、桜姫は相手が誰か言いません。

しかし、そばにあった香箱の蓋から

清玄ではないかと疑われてしまうのです。

清玄は。桜姫を庇って罪を引き受けます。

桜姫も寺を汚した罪で身分を奪われて追放されてしまいます。

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まさかの展開が起こるこの場、

権助と桜姫のイチャイチャシーンは見所の一つです。

若干17歳でそんな過去を持っている桜姫、

哀れと思うのですが、権助に恋い焦がれるという理解できない構造。

それも、世間に疎いお姫様だから、、、ということで説明しちゃうのが歌舞伎の凄いところですね。

 

二幕目第一場 稲瀬川の場

稲瀬川の土手で、追放された清玄と桜姫が途方にくれています。

姫が生んだ赤子も捨てられてしまいます。

清玄は、この際だから一緒になろうと桜姫に迫ります。

それを拒む桜姫、そこに悪太郎がやってきて

自分の館に拉致しようとします。

それを防ごうと、弟の松若丸と中心の七郎が悪太郎一味と争います。

その騒ぎの中、桜姫は逃げていきます。

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真っ暗闇のだんまりの場面、

歌舞伎の演出の一つで、お互いに見えない中でのつかみ合いなど

様式でその雰囲気を伝えてくれます。

二幕目第二場 三囲土手の場

それから数日後、三囲神社の鳥居の前に、

落ちぶれた風体の桜姫と清玄がやってきます。

しかし、あたりは暗がりのため、お互いに気づきません。

清玄がようやく焚いた火の灯りで、

近づこうとするのですが、雨に消されて二人はまた離れていきます。



三幕目 岩淵庵室の場

小さな地蔵堂の庵に、追放された残月と長浦が住んでいます。

古ぼけた部屋に似合わない振袖があるのですが、

これは長浦が桜姫からもらったもので、手放せずにそばに置いているのです。

庵の部屋には、病に侵された清玄が横になっています。

そこに、赤ん坊の供養をしたいと若夫婦が訪れます。

地蔵堂で供養というところですが、

なぜか夫婦喧嘩が始まり、清玄が連れている赤子(桜姫の子)が

泣き出します。

それを哀れに思った、若奥さんがその赤子を連れて帰ります。

実は、この若奥さんは桜姫の家臣軍助の妹でした。

残月と長浦は、邪魔な清玄をトカゲの毒を無理やり飲ませて殺そうとします。

立ち寄った権助を穴掘りに雇い、死んだ清玄を埋めようとします。

そんなところに女を連れた男がやってきます。

男は、人売りで途中で拾った女を女郎屋に売ろうとしていたのです。

が、その女の美貌にいいよる残月、よくよく見るとそれは桜姫です。

それに気づいた権助は、俺の女房だと言って、残月も人買いの男も追い出します。

恋しい権助に会えた桜姫、

しかし、情の薄い権助は、桜姫を女郎屋に売ることにします。

商談のために桜姫を残して権助が出かけると、

死んだと思っていた清玄が息を吹き返します。

しかも、顔はトカゲの毒で半分がただれているのです。

生き返った清玄は又しても姫を口説きにかかりますが、

恐怖のあまり桜姫は立ちすくみ、もみ合ううちに再び清玄は死んでしまいます。

そこへ権助が帰ってくるのですが、

なぜか権助の顔もただれているのです。

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清玄が壮絶な死を2回も遂げるおどろおどろしい場面の連続。

落ちぶれた桜姫は見る影もないものの美貌とお姫様らしさをとどめています。

悪人どもが集まってお互いを潰し合うという本当に黒い場面の連続です。

鶴屋南北が描く人の業が絡み合う見せ場でもありますね。



四幕目 山の宿権助住居の場

権助は山の宿(いまの浅草あたり)の長屋の家主になっていました。

なぜか、赤子(不義でできた自分の子)を預かることになってしまう。

一方の桜姫は、女郎屋では腕の釣鐘の刺青から、

「風鈴お姫」と呼ばれる人気女郎になっていました。

しかし、姫には清玄の幽霊が付いて回るため、

客が君わるがり、女郎屋も手を焼いて清玄に返しにくるのです。

返された桜姫の代わりにと、清玄は預かっていたお十を代わりに差し出します。

先も出てきましたが、この女性は桜姫の家臣軍助の妹で、

桜姫を守るために、女郎に売られて行くのです。

もちろん、権助はそんなことは知りません。

お姫様の上品な言葉と女郎の下品な言葉を使って、

よくわからないことを話す桜姫、

お姫様の浮世離れっぷりはそのままに落ちきった哀れさもかもし出します。

そんな時に家主の寄り合いに呼ばれて権助が家を出て行きます。

幽霊が出たら、この刀できるようにと刀を渡して行くのです。

そしてお約束のように、現れる清玄。

その清玄から、権助は清玄の弟で信夫の惣太という悪党であること、

そばにいる赤子は桜姫の子であることを告げられます。

驚く桜姫、そこによった清玄が帰ってきます。

清玄が落とした手紙を読むと、

それは、惣太から松井源吾へ宛てた手紙で、

頼まれた通り、当主を殺して家宝を奪ったというようなことが

書いてあったのです。

よった勢いで、権助も、

自分が桜姫の父と弟を殺し下方を奪った当人であることを白状します。

桜姫は、運命のいたずらにおののきながらも、

敵の子である赤子と権助を殺します。

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この演目の大きな見せ場がこの場面にもあります。

あとで説明しますが、

桜姫が上品言葉と下品言葉を使い分けて語る場面です。

それに加えて、物語の真相が明かされ、

ねじくれ曲がった運命が一挙に引き戻される場面でもあります。

可愛さ余って憎さ百倍?

真実を知った桜姫の大胆な行動にとても驚く場です。

 

大詰め 三社祭礼の場

三社祭で賑わう、浅草雷門。

父と弟を殺した悪人を打ち取り、家宝を取り戻した桜姫と家臣一団。

桜姫らを追う捕手も現れる中、

下方も取り戻した上はお家再興と一団は名乗りをあげるのでした。

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三社祭の華やかな場面と、

一団勢揃いの大団円は、

それまでのおどろおどろしいストーリーを一蹴する華やかさに満ちています。

終わりよければ、、、って言っていいのかな?

と私としては迷うのですが、

まあ見目の綺麗な幕切れは、やはり気持ちがいいものだなあって思います。



桜姫東文章の見所は?

鶴屋南北の独特な世界観を表した物語、

ここにも他にはない見所があります。

伝統的な側面からちょっとミーハーな側面まで、

3つの見どころをお伝えしますね。

桜姫東文章の見所1:隅田川物

歌舞伎の演目には、「隅田川物」と呼ばれるものがあります。

これは能に由来する舞踊劇なのですが、

いくつかお約束事があるのです。

この物語は、都の公家の子息梅若が、人買いにさらわれ隅田川までやってくるが

そこで病のため死んでしまい、後を追ってきた母である斑女の前が狂い舞うという悲しいもの。

それとは違う内容のものでも次の共通点があると隅田川物といわれるそうです。

①梅若丸・松若丸が出てくる

②都鳥という文言がどこかで使われる

③使えるお家が取り潰しに合う

④梅若丸が隅田川のほとりで悪人に殺される

⑤軍助、七郎という家来が出てくる

確かに桜姫の物語にもこれらは通じますね。

隅田川物には、ほかにも、

「雙生隅田川(ふたごすみだがわ)」

「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)」

などがあります。

見比べて見るとその共通点がわかるかもしれませんね。

桜姫東文章の見所2:ないまぜの世界観

ないまぜって何?って思われるかもしれませんね。

これは、お芝居の脚本を作るときに、

全く違う内容・ストーリーのものを、

2作品以上混ぜて、新しい脚本を作るという意味だそうです。

私は、ないものを混ぜて作るのかと思っていたら、

「縄」のようになうからきている言葉だそう、

要は、2つのお話の筋を混ぜる事という意味なんだそうですけどね。

ちなみに、「桜姫東文章」は「清玄桜姫物」と「隅田川物」の2作品を

撚り合わせて混ぜ込んで作られた作品ということだそうです。

また、この作品の最大の見せ場として、

女郎屋から返された桜姫が、

お姫様の上品言葉と女郎のお下品言葉を

一つのセリフに混ぜ込んでいう場面があります。

これもないまぜとして有名だそうです。

そのセリフの例として、

「自らをみくびってつきまとうか。世に亡き亡者(もうじゃ)の身をもって、緩怠至極(かんたいしごく)エエ、消えてしまいねえよ」

というものがあります。

このうち、どれがお姫様言葉かわかりますか?

ちょっと難しい言い回しの「自ら」「艦隊至極」がそれに当ります。

こんなチャンポンな言葉を、さらりと美しいお顔で語る桜姫、

ありえない設定だらけのお姫様ですが、

かなり魅力的だなあと思います。



桜姫東文章の見所3:T&T応援団とは?

桜姫と権助を誰が演じるか?

で芝居の面白さも変わっちゃうかもしれませんね。

ここに出てきたT&Tってどなたのことかわかりますか?

T(孝夫:今の仁左衛門)とT(玉三郎)、

つまりは、にざたまで~~~す。

この2人の共演が、あまりにも美しく爽やかだったということから、

昭和50年に草の根的に発生した、

「孝夫と玉三郎が共演する南北作品の上演を応援する会」のことなんです。

役者自身の後援会とは別に、

作品を鑑賞した学生や若いOL、

まあ女性たちの間で発生した組織。

キャーキャーいうファンではなくて、

2人の世界観を舞台として評価しようという心持ちが伺える現象だなあって思います。

ええ、私も、勝手ににざたま応援団です!



 

さて、歌舞伎演目「桜姫東文章」についてお伝えしてきました。

ちょっと不可思議な世界の作品ですが、

退廃的なムードと南北のおどろおどろした業のぶつかり合いを

たっぷりお楽しみいただけるといいんじゃないかなって思います。

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読んでくださり、ありがとう存じまする。





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