プペル歌舞伎を見てきたので感想を書きました。
市川海老蔵さんと西野亮廣さんがタッグを組んだ新しい歌舞伎として評判ですね。
歌舞伎としてどうなの?と観る前は思っていましたが、見た後は色々考えましたよ。
そんなことや、あらすじ、見どころも紹介します。
プペル歌舞伎の感想、思っていたよりよかった
プペル歌舞伎とは、市川海老蔵さんが
西野亮廣さんの絵本「えんとつ町のプペル」のミュージカルを見て、
ぜひ、歌舞伎化したい!という思いから実現した新作歌舞伎です。
タイトルは
「プペル〜天明の護美人間〜」です。
これは、天明の大飢饉の時代の出来事として創作されています。
浅間山の噴火や、老中田沼意次は史実にある出来事や人物ですが、
それ以外の人物や出来事は創作です。
割合でいうと98%くらいは創作じゃないかな〜
それでも、はるの仕事である「屋根葺」は実際にあった仕事だし、
浅間山噴火により異常気象や天候不順が続いたことなど、
時代背景としてお芝居の内容にもマッチさせているなあと感心しましたよ。
悪役として登場する田沼意次は、
賄賂政治家として悪評があった方でもありますね。
飢饉の時に、田沼は土地改革を行なったようですが、
お米を配ったのかどうかは調べ切れませんでした。
ここはフィクションなのかな?
さて感想、思ったよりもよかった・・というところです。
歌舞伎ライズされたおとぎ話といった感がありました。
そもそも、なぜ市川海老蔵さんが「プペル」なんだ?
と、新作歌舞伎に意欲を見せる海老蔵さんの姿勢に、
疑問も感じていました。
團十郎という大きな名前の襲名を前に、
成田屋の家の芸に磨きをかけるとか、
もっと古典を魅せられる舞台をやっていただきたい〜と
いう気持ちも大きいです。
ちょっと話題作りに走ってないか?という印象も若干ありました。
それが、観る前の感情ですね。
観ているときは、
なぜか心がざわざわさせられました。
なんで、ハルがプペルを匿うのか?
なんで、熊八が殺されなければならないのか?
なんで、田沼意次はプペルを捉えたいのか?
そこがちっとも腑に落ちず、
ストーリーの中に入れなかったんです。
しかし、その謎がだんだんと明らかになり、
一つ一つの謎が解けると
伏線が物語のテーマをより強く浮かび上がらせていると思えました。
そして最後は父と子の心が通い合うハッピーエンド。
星空輝く中での二人の幸せそうな姿には、
とても感動したんですよ。
ただ、熊八とハル父子が、
海老蔵とぼたん・勸玄の姿に重なり、
新作歌舞伎なのか、堀越親子劇なのか
それは疑問として残りました。
夢を信じない、権力者のいうままに踊らされている、
そういう物語の設定は、
今の時代にも通じる課題です。
元々歌舞伎は、江戸庶民のための娯楽でもありました。
だから、当時の人が好む題材や当時話題になったことが
芝居の中に盛り込まれていたんです。
実は、弱い者、異端の者を蔑む芝居の筋は、
私にとっては胸が痛むものでした。
しかし、現代の人にとってはそこは共感できるポイントなのかもしれません。
プペル歌舞伎は、
現代の課題をおとぎ話に仕立てて見せる舞台。
想像以上に良医舞台だったと思いました。
ただし、カテコが多すぎ!なのはちょっとね〜
プペル歌舞伎のあらすじ
プペル歌舞伎のあらすじをざっくりとですがまとめました。
若干ずれているところはごめんなさい・・
あやふやな記憶に頼っているものですから、笑
絵本やミュージカルとは違うストーリーなのかな?
私はどちらも見ていないので知らないけれど、
ファンタジックでラストは心温まるお話だなって思いましたよ。
序幕 第1場 江戸の町(盆踊り) 第2場 同 (土手)
浅間山の噴火で空が真っ黒な雲に覆われている江戸。
人々は、飢饉に苦しみ、希望も忘れてしまっています。
しかし、暗い雲の上に星があると信じている熊吉、
何者かに襲われて命を落とします。
その魂(心臓)がゴミの山の中に飛んでいくと
そこに現れた龍の動きに巻き込まれるようにゴミが周りに集まり、
そこから一人の男が現れます。
ゴミから出てきた男、
盆踊りで賑わう江戸の町に紛れ込みます。
不意に現れた、汚いなりの男に町の人は興味を持って絡みますが、
触れた腕が異様に伸びるので
「バケモノ」と口々に騒ぎ出します。
そこに老中の田沼意次が現れます。
飢饉の最中、お米を配られている町の人たちは
田沼に頭が上がりません。
田沼の命令で
共侍たちも、風紀を目指すものとして
その男を捕まえようとします。
しかし、その男を匿う女の子(ぼたんさんバージョン)が現れます。
祖父玄と暮らす屋根葺のハルです。
その男と友だちになってほしいと頼むと
男にプペルという名をつけます。
追っ手から逃げるプペル、ハルたち。
そこへ泥棒の次郎吉も加わったからさあ大変!
町は混乱に包まれます。
土手では暗闇の中、手探りで怪しいものを捉えようと
皆が動き回る中、
舟に乗り込んだ、玄さん、ハル、プペルは川を下って逃げていきます。
第二幕 第一場 屋根葺小屋 第二場 屋根の上 第三場 元の屋根葺小屋 第四場 ゴミの山 第五場 次郎吉の棲家
追っ手から逃げた、玄、ハル、スーさんらが暮らすのは
屋根葺の仲間が暮らす長屋の小屋
怪しいものを連れてきたハルに対し、
屋根葺の取りまとめ役甚兵衛は
皆に迷惑がかからなければ、、という条件で
プペルを長屋に入れるのを許します。
早速、屋根の上に登って仕事をするハル、
ハルは子供ながら、父親譲りの屋根葺の名人なのです。
ハルは、プペルに
暗い空の上にある星の話を聞かせます。
それは、亡くなった父熊八が話していたことです。
ハルは、父親のたばこ入れを屋根の上から落としてしまい、
それを探していることも告げます。
ハルを残し、屋根から降りたプペル。
甚兵衛さんが仕事中屋根から落ちたという知らせが入り、
それは誰かに狙われたのでは、、と。
プペルを匿ったとばっちりを受けたのではないかと
皆が口々に言う中、
プペルはその場から追い出されてしまいます。
ゴミの山を漂う、プペル。
ゴミの中に、ハルが落としたたばこ入れを必死に探します。
そのうち、ふと自分の身体の中からそれを発見!!
なぜ、自分が持っているのだ???
泥棒の次郎吉の棲家にやってきたプペル、
いや、それは死んだはずの熊八でした。
なぜか生き返った?熊八は、
次郎吉に雲の上にいく舟を探すように頼みます。
元の飲み仲間のいうこと、
しぶしぶ次郎吉は聞き入れます。
第6場 江戸の町(大木戸) 第7場 同 (役所) 第8場 江戸の空
玄とハルは、怪しいものを匿ったことを詮議されます。
そんなものは知らない、と言い張る玄さんですが、
そこに現れたのがスーさん。
実は、スーさんは百地玄蕃という田沼の手先でした。
町に戻ったプペル、じゃなくて熊八は、
田沼らの思惑を邪魔する者として
目をつけられていたのです。
初めは、
雲の上に星があると言い張るハルをあざ笑っていた町の人たち、
しかし、はつや泰三らがそれは本当だというのを耳にすると
だんだんと昔のことを思い出し始めます。
それは田沼らにとって不都合なこと、
企てを邪魔するハルらを処刑しようとした時、
正気に戻った町の人、熊八、次郎吉らによって救い出されます。
次郎吉が見つけてきた熊八が作った空飛ぶ舟、
町の人たちの助けを得て空へと舞い上がります。
舟の上には、熊八とハル
満点の星を見上げる二人はとても幸せでした。
歌舞伎プペル〜天明の護美人間〜の見どころベスト3
プペル歌舞伎の見どころを3つ紹介したいと思います!
プペル歌舞伎の見どころ:舞台美術が素晴らしい
入場して目にするのが、江戸のまちの祭りの風景、
ここからおとぎ話の世界へ入っていくんだなあって感じがします。
元々、歌舞伎は幕が閉まっているものですが、
新作劇は、こうしてステージを見せておく場合もあります。
お芝居の冒頭の龍踊りのセットや、
ゴミの山のセットも素晴らしいものでしたが、
圧巻はラストシーンですね。
舟に乗って、
満点の星空の中語り合う熊八とハルのシーン。
このライトを使った星空の演出がとても美しい。
プペルの世界観を魅力的に表した舞台美術が素晴らしいと思いました。
プペル歌舞伎の見どころ:子役、市川ぼたんの熱演
ハルは、市川ぼたんさんと堀越勸玄くんが
交代で務めます。
歌舞伎は女性が舞台に出ることはほぼありません。
子役でたまにあるかな〜
私は、ぼたんさんのハルを観ました。
そして思いました。
彼女は舞台女優ですね。
舞台で演技するのが楽しくて仕方ない、っていうオーラを感じました。
海老蔵さんのインタビューでは、
きっちりと務めたいタイプと書いてあり、
だからかもしれませんが
そのお役になりきって演じている姿に感心しました。
欲を言えば、
もっと役の性質を深く掘り下げた表現は欲しいと思いました。
そうすることで、
プペルの存在意味も強く伝わっただろうし、
終盤の感動ももっと大きかったと思います。
これは、演技の問題か、本・演出の問題か、、
私は後者かなあって思いました。
歌舞伎は様式・型で情景や心情を表現する演劇です。
子供が前面に出ることは少ないので、
その型も当てはまらないのかもしれませんが、
そこは、受け継がれてきたものを丁寧に見ていけば
ヒントになるものがあると思うんですよね。
また、ベテランの演技や経験からの知恵もあると思うんですよね。
そういう点、
せっかくの子役が表面的な演技しかできないのは
残念だなあと思ったところです。
プペル歌舞伎の見どころ:歌舞伎演出が楽しめる
お芝居でひときわ盛り上がったのは
海老蔵さんの早変わりでした。
見慣れていると、ここで変わるなっていうのはわかるんですが、
歌舞伎に初めて触れる方達には新鮮な演出だと思います。
そういう、歌舞伎ならではの見せ場があったのもよかったです。
すっぽんの使い方や、舞台のせり上がり、
回り舞台などなど。
江戸時代の人たちの知恵と工夫が
今でも生きていることに歌舞伎の力を実感していただけたら嬉しいな。
幕開けの、熊八の魂(心臓)がふわふわと宙に浮いて
そこに龍が絡みついて、、というのも
虚構と現実をないまぜに表現する歌舞伎演出の特徴です。
スーさんが田沼意次の手下だった!
というのも、ぶっ返りという
「実は・・・」をいう演出なんですよ。
歌舞伎ってすごいよなあって
知ってても思えるのはすごいことですよね!
プペル歌舞伎の出演者紹介
最後に、プペル歌舞伎の出演者です。
演出は藤間勘十郎さん
配役は、
プペル/熊八/田沼 市川 海老蔵
スーさん実は百地玄蕃 市川 男女蔵
はつ 中村 児太郎
ハル 市川 ぼたん・堀越 勸玄(交互出演)
藤林監物 市川蔦之助
松吉 大谷 廣松
泰三 市川 九團次
次郎吉 大地 洋輔(ダイノジ)
甚兵衛 片岡 市蔵
よね 市川 斎入
幸兵衛 市村 家橘
玄 市川 右團次
太鼓 辻 勝
*太鼓もすり替わっていましたね。結構好きな演者なので嬉しかったです。
プペル歌舞伎、物議を醸しておりましたが、
観たことで色々感じることもありました。
行ってよかったです。満足しています。
読んでくださりありがとう存じまする。
*プペル歌舞伎の前評判などはこちらにも書いています。
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