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歌舞伎「新薄雪物語」のかんたんなあらすじ、登場人物、見どころなど

歌舞伎演目
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歌舞伎演目「新薄雪物語」。

人形浄瑠璃で初演を迎えた演目を歌舞伎化した作品。

時代物の名作で、陰謀に巻き込まれた若い男女を、

その親が命をかけて救おうとする場面が大きな見所となっています。



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歌舞伎「新薄雪物語」の主な登場人物

はじめに、主な登場人物を紹介します。

幸崎伊賀守(さいざきいがのかみ):薄雪姫の父、大膳の企みから娘を守ろうとする

 

葛城民部(かつらぎみんぶ):執権、思慮分別に富み温情ある捌きを見せる

秋月大膳(あきづきだいぜん):幸崎家、園部家の失脚を企む。薄雪姫に横恋慕する

腰元籬(こしもとまがき):薄雪姫に使える腰元

奴妻平(やっこつまへい):左衛門に使える。大膳の手下と大立ち回りを見せる

薄雪姫(うすゆきひめ):伊賀守の娘、左衛門と恋に落ちる

園部左衛門(そのべさえもん):園部兵衛の息子、薄雪姫と恋に落ちる

刎川兵蔵(はねかわへいぞう):幸崎家の使い

団九郎(だんくろう):刀鍛冶、大膳の企みで刀に細工する

来国行(らいくにゆき):刀鍛冶、園部兵衛からの依頼で奉納する刀を打つ

吉助/来国俊(きちすけ/らいくにとし):刀鍛冶、国行の息子、名を隠して正宗に弟子入りする

五郎兵衛正宗(ごろうべえまさむね):団九郎の父、刀鍛冶

松ヶ枝(まつがえ):幸崎伊賀守の奥方

梅の方(うめのかた):園部兵衛の奥方

園部兵衛(そのべひょうえ):園部家の当主、左衛門の父



歌舞伎「新薄雪物語」のかんたんなあらすじをみじかく!

通し狂言、ここでは、

「花見」「詮議」「広間・合腹」「政宗内」の場面についてかんたんなあらすじをお伝えします。

「花見」:陰謀の発端となる清水寺

満開の桜が咲き誇る清水寺。

幸崎伊賀守の息女薄雪姫は花見に訪れました

薄雪姫に仕える腰元の籬と左衛門の家来である奴妻平のとりなしで、

刀を奉納に来た園部兵衛の子息左衛門と出会います。

一目で恋仲となった2人は、、後日の再会を約束して別れます。

その時の姫からの艶書には、「刀」の字の下に「刀の絵」

その下に「心」で、「忍」となり、忍んで逢いにくるようにとありました。

これが悪事に使われてしまうんです。

一方、刀鍛冶の団九郎も現れ、

左衛門が奉納した刀に謀反の疑いとなるやすり目を入れます。

これを、左衛門の供で来ていた刀鍛冶の来国行が見咎めますが、

秋月大膳の手裏剣によって殺されてしまいます。

実はこの企みは、大膳が幸崎・園部両家を失脚させようとする陰謀だったのです。

国行を探して現れた妻平、そこへ、大膳方の水奴たちが取り囲みます。

妻兵は、水桶や傘を手に襲いかかる奴たちを、大立廻りで蹴散らします。

 

2人の恋の始まりが陰謀の発端にもなるという、

悲劇の幕開けなのです

「詮議」:謀反の疑いに困惑する若いの男女

謀反の疑いがかけられてしまった左衛門と薄雪姫は幸崎邸で忍び会います。

母の松ケ枝は、2人の恋をかなえるから、

今は耐えるようにと諭します。

そこへ、詮議のため、主の幸崎伊賀守が

六波羅探題の執権葛城民部と

秋月大膳、園部兵衛を伴って帰ってきます。

左衛門と薄雪姫が手を携え、天下重複を諮ったのでは、

と葛城民部から問い質されます。

疑いの原因となったのは、

六波羅探題に奉納した(来国行が打った)刀に、

謀反の印となるヤスリ目が入っていたこと。

それに加え、秋月大膳が密かに入手した、

薄雪姫からの艶書を取り出し、

「刀の下に心と書いてあるのは、謀反の証拠」と

言い立てます。

申し開きの機会をもらうものの、

あらぬ疑いに、左衛門と薄雪姫は、

無実を証明する手立てがなく困惑するばかり。

その場に証人となる来国行の死骸も運び込まれ、

益々窮地に立たされます。

死骸の様子を調べた民部は、大膳の陰謀と悟りますが、

それも証拠とは言い難い。

左衛門を幸崎家へ、薄雪姫を園部家へ預けて

それぞれの家で詮議したいという

父親たちの申し出を受け入れます。

葛城民部は、左衛門、薄雪姫に

若さゆえの不始末を諭し、

2人の親にその身を預けるのでした。



「広間・合腹」:2人の父親の苦悩と覚悟

薄雪姫を預かる園部家では、

園部兵衛の奥方梅の方がその世話をしています。

兵衛は、今回の一件を大膳の陰謀と察していますが、

証拠がなく、薄雪姫が六波羅に捕らえられ責め殺されてはと案じ、

館から落ち延びさせます。

そこへ幸崎伊賀守からの使者である刎川兵蔵が訪ねて来ます。

左衛門が謀反の件をすべて白状したので、

伊賀守が清水寺に奉納した件の刀でその首を打った旨を伝え、

姫の首も同じ刀で打つようにと申し伝えます。

その刀を見た兵衛は何かを察したように奥へ戻ります。

やがて伊賀守が首桶を手にして現れます。

しかし、なんということか・・・

その後を追うように左衛門も現れるのです。

動揺する伊賀守、

「迷ったか、成仏しろ、消えろ」と、

左衛門を追い返します。

兵衛も首桶を携えて現れます。

そして二人が首桶を開けると中にあったのは、首ではなくて嘆願書。

二人のもった首桶は、預かった互いの子を逃がした言い訳として、

親の命を差し出すためのもの。

伊賀守に、支度はできてるかと問われ、

兵衛が着物の前を開くと、そこには血が・・。

伊賀守も同じく・・・。

問題が発覚してから気持ちが晴れなかったが、

今はスッキリしたと、

梅の方に笑うように申し付けます。

涙をこらえ笑う梅の方、

そこに兵衛、伊賀守も加わり、

痛みをこらえての三人の大笑い。

駆けつけた松ケ枝も共に、

兵衛、伊賀守の出立を見送るのでした。

「正宗内」:刀鍛冶の秘伝をめぐる父子の葛藤

大和国にある刀鍛冶の五郎兵衛正宗の家。

来国行の子国俊は、父から勘当された後、

刀鍛冶の修業のため、吉介と名を変えて奉公しています。

吉介は正宗の娘のおれんと恋仲ですが、

おれんの兄である団九郎は、秋月大膳の悪事に加担する身です。

団九郎は父の正宗から刀鍛冶の秘伝を盗み出そうとしていますが、

吉介を国俊と見抜いていた正宗は、

師匠の孫である国俊に風呂の湯加減から刀の秘伝を教えます。

一方、刀鍛冶の細工場では団九郎が湯加減の様子を探ろうと

湯の中に手を入れたところ、その手を切り落とされます。

父に諭された団九郎は、逃げてきた薄雪姫を助けようとするのでした。



歌舞伎「新薄雪物語」の見どころベスト3

通し狂言として見どころはたくさんあるのですが、

その中から3つ紹介します。

その1:奴妻平の大立ち回り

「花見」の場で、奴妻平が、大膳の家来を相手に

大立ち回りをします。

水奴ということから、水桶を持ったり、傘を持ったりの立ち回り。

所々の決めの場面では、

幾何学模様のような美しい形の見得がみられます。

桜の清水寺を背景に、

赤い着物の水奴と颯爽とした妻平が見せる

目にも鮮やかな立ち回りです。

その2:民部の颯爽とした捌き

「詮議」の場面で、

薄雪姫と左衛門への嫌疑は、

秋月大膳の企みであると、執権葛城民部は気づいています。

しかし、確たる証拠がなく、それを言い切ることもできません。

左衛門、薄雪姫をいたわるように諭し、

二人の親の訴えを汲み取り

温情ある評定を行う民部のような役を

捌き役と言います。

これは立役の重要な役柄で、

この役を演じる役者の任も試されるものです。

同様の役に、「伽羅先代萩」の細川勝元役、

「阿古屋」の畠山重忠役などがあります。



その3:悲しい三人笑いの場

「広間・合腹」のクライマックスは、

この芝居通しての大きな見所と言えます。

我が子の助命嘆願のため、蔭腹を切る、二人の父親。

幸崎伊賀守と園部兵衛、そして兵衛の妻の梅の方、

三人が苦痛をこらえて大笑いするシーンです。

陰謀と知りつつもそれを晴らせず、命を絶つ悲痛さ、

それを苦痛で顔を歪めながら、

その思いを笑いで表現するこのシーンは、

ググッと苦しくなるほどです。

いかがでしたか?



 

「新薄雪物語」、子が親のために命を投げ出す芝居は

歌舞伎の中でもいくつかあるのですが、

その逆を描いたものはあまり見当たりません。

伊賀守、兵衛、親が子を思う情愛、

そして、政宗、団九郎父子の葛藤が見ものと言える演目です。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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