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4月歌舞伎座木挽町のあだ討ち感想(ネタバレあり)

観劇レポート
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4月歌舞伎座大歌舞伎で上演されている新作歌舞伎「木挽町のあだ討ち」、

上演が決まった時から話題だったし、

特別ビジュアルが出た時の染五郎さんが美しすぎたし、で

絶対に観たいと思っていました。

昨日観てきたので、その感想を3つに絞って書いていきます。

ネタバレなので、その点はご了承くださいね。

歌舞伎のあらすじはこちらにまとめているのでよかったらこちらも参考にどうぞ

木挽町のあだ討ち:歌舞伎のあらすじ、登場人物、原作との違い
木挽町のあだ討ち、新作歌舞伎として2025年4月に歌舞伎座で上演されます。直木賞も受賞した小説、しかも舞台が江戸の木挽町、森田座という芝居小屋です。歌舞伎化にはぴったりの作品、それが歌舞伎になってどんな作品になったのか?木挽町のあだ討ち(歌...

 

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新作歌舞伎木挽町のあだ討ちの感想

4月8日に歌舞伎座で新作歌舞伎「木挽町のあだ討ち」を観てきました。

事前に原作を読んでいたので、

登場人物を役者さんに当てはめながら、すっかり観劇気分になっていました。

先に書きますが、

原作と歌舞伎とでは構成が大きく違います。

原作は、登場人物が総一郎という伊納家の江戸番を務める武士に、

あだ討ちの様子や自分の過去、菊之助との関わりを聞いていくというストーリー展開になっています。

歌舞伎は、時系列に出来事を見せていくというストーリー展開になっており、

総一郎も登場しません。

その上での感想として、印象に残ったことを3つ書いていきます。

木挽町のあだ討ち(歌舞伎)感想:役者さんがうまくはまっている

まずは、主人公の菊之助が市川染五郎さん、ということで、

このビジュアルからして見るのが楽しみになりました。

先にも書きましたが、配役が出てから原作を読んだので、

頭の中でその役者がストーリーを語っていたせいか、

観る前からこの人たち、ピッタリハマっているんじゃないって思ってました。

だから、誰も違和感なく、スムーズにその世界に入ることができました。

中でも特筆したいのが次の4名です。

染五郎さんの菊之助はビジュアル的にはピッタリで、

初々しい前髪の侍が、父の死から仇討ちに出ることになり、芝居小屋での生活を重ねる中で

人間的に成長していく様を感情豊かに見せてくれたと思います。

作兵衛と出会った時の仇ではなく家族と会えた時のような喜びよう、

久蔵夫婦に寺子屋の小太郎を当てて、自分が死んだ方が孝行だったのではと苦悩を見せる様、

豊かな感情表現に笑ったり涙したりで楽しませてもらいました。

ただ、仇討ちへの葛藤があまり迫ってこなかったのはちょっと残念でした。

作家の篠田金治に松本幸四郎さん、この人は上手いので、こんなことを言うのも恐縮ですが、

芝居愛が常から滲み出てるあたりが金治そのものって思えました。

四場の「俺に任せろーっ」てあたりからがこの方の本領発揮でしたね。

仇役の作兵衛には市川中車さん。

こう言う役は、この方お得意だと思います。

薄汚れてて、実直すぎるくらいで、私利私欲がないのに、

なぜか菊之助の父を殺した仇となってしまう人。

そこには、この方だからこその事情があったんだけど、

その裏事情が原作では最後までは明かされないんだけど、

作兵衛との出会いで全て明かされてしまいます。

だからこそ、菊之助は仇討ちへの葛藤を深めるのですが、残念なのはその葛藤がそれほど深く描かれていなかったってことはあります。

でも、作兵衛のキャラはとても魅力的にも映りました。

もう一人は、我らが猿弥ちゃんこと市川猿弥さんの木戸芸者一八です。

原作ではもう少し小柄で暗い面もありそうなんだけど、

歌舞伎の一八は福々と幸せそうに見えます。

逆にその方が芝居では救われたと言うのもあります。

本当に芸達者な方なので、どの場面でも愛嬌を見せつつ、菊之助を案じている様子が伝わってきました。

他の方々も熱演されていて、私はとても楽しむことができました。

 

 

木挽町のあだ討ち(歌舞伎)感想:久蔵夫婦との絡みに号泣

思いがけずに号泣しちゃったのが、2幕あいてすぐの久蔵の家での場面です。

久蔵と与根の間には一人息子がいたのですが、体が弱く、久蔵が武家の仕事を請け負っている時に病で亡くなってしまうのです。

その描写も悲しいのはもちろんなんだけど、

森田座の看板役者の市川團蔵に頼まれて小太郎の切り首を作ったことを

涙ながらに話す久蔵や与根の心情がグッときちゃってね、、、

気がついたらこっちも涙ボロボロでした。

なんで2人がこの話をしたのかというと、

小太郎の切り首に寄せて、自分が命を差し出すことが親孝行じゃなかったのか、

と菊之助がずっと抱えてきた悩みを口にしたからなのです。

子に死なれて孝行などと思う親はいない、と自分たちが、子を亡くしてどんなに辛かったかを説くのです。

この切り首がまた綺麗なお顔でして、余計に二人の話とオーバーラップして、泣きに泣いたひと場面でした。

周りでも、鼻啜る人多かったですね。

 

木挽町のあだ討ち(歌舞伎)感想:あだ討ちの見せ方に臨場感!

木挽町、つまり森田座の前で、菊之助が仇討ちを果たす場面、

原作では何度となく語られる描写ですが歌舞伎では、第五場のみとなります。

芝居仕立てに二人が斬り合うのですけど、それはとても迫力がありました。

ここが面白いところで、本当の仇討ちは地味だから、

人目につくように、記憶に残るように、演出した仇討ち場面なんですね。

芝居の中で芝居を見せている面白さは秀逸なトリックみたいでワクワクしました。

原作だと、この描写は短いので、想像するしかないのですが、

三次元で演じられると、色合いも動きも音も相まって、

すごい臨場感のあるあだ討ちの場面だなって思いました。

原作よりは血は少なめです。

木挽町のあだ討ち(歌舞伎)感想:残念だったところ

唯一、歌舞伎版で残念だったところは、

全体に平板だったってことです。

場面場面は面白いのですが、

そこに緩急がもっと欲しかったですね。

歌舞伎って、だんまりや本筋とは外れたエピソードが入ることで、

物語全体に躍動感が出たり、感動が増したりすることがあるんですよね。

丁寧にストーリーを追ってそのストーリーに頼った演出になっていないかなあって言うのが

一つだけ残念なところでした。

寝ちゃうくらいの場面があってもいいのが歌舞伎なんじゃない、って私は思っているところもあります。笑

新作歌舞伎木挽町のあだ討ち配役

私が観劇した、歌舞伎座四月大歌舞伎の配役を最後に紹介します。

伊納菊之助   市川 染五郎

篠田金治    松本 幸四郎

伊納家の下男作兵衛 市川 中車

ほたる     中村 壱太郎

佐野川妻平   中村 種之助

木戸芸者五郎  中村 虎之介

道具方秀吉   中村 吉之丞

衣裳方栄二   澤村 宗之助

菊之助母妙   中村 芝のぶ

鶴屋南北    松本 錦吾

木戸芸者一八  市川 猿弥

伊納清左衛門  市川 高麗蔵

小道具方久蔵  坂東 彌十郎

立師与三郎   中村 又五郎

久蔵女房与根  中村 雀右衛門

お読みくださりありがとう存じまする。

歌舞伎版木挽町のあらすじは、こちらにまとめていますので、どうぞお読みください。

木挽町のあだ討ち:歌舞伎のあらすじ、登場人物、原作との違い
木挽町のあだ討ち、新作歌舞伎として2025年4月に歌舞伎座で上演されます。直木賞も受賞した小説、しかも舞台が江戸の木挽町、森田座という芝居小屋です。歌舞伎化にはぴったりの作品、それが歌舞伎になってどんな作品になったのか?木挽町のあだ討ち(歌...

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