「封印切」(6月大歌舞伎昼の部)感想、あらすじ、見所も。仁左衛門の忠兵衛は至高!秀太郎、孝太郎、愛之助、松嶋屋の芸に惚れ惚れ

6月14日に、歌舞伎座で「封印切(ふういんぎり)」を観てきました。

とにかく、片岡仁左衛門の主人公忠兵衛が観たかった!

ふわふわした坊ちゃんが、身の破滅に追い込まれるまでのストーリーを堪能しました。



「封印切」とはどういう演目?あらすじと見所

6月の歌舞伎座、夜の部の新作歌舞伎が話題ですが、

昼の部もなかなかのラインアップで、観たい作品ばかりです。

その中で、選んだのが「封印切」。

これは一幕だけでも歌舞伎の面白さが詰め込まれた作品、

人気が高く何度も上演されています。

では、この「封印切」について簡単に紹介しましょう、

「封印」とは?

飛脚屋というのは、江戸時代、お金をお屋敷に届ける人たちのこと。

主人公忠兵衛は、この飛脚問屋の養子です。

このお金は、私的なものではない、

預かっている公金である、という証拠に、

紙に包んで公印(封印)がされています。

封印を切るということは、

公金を横領するということ、

すなわち、死罪に値する大罪なのです。

「封印切」のあらすじは?

「恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい、あるいは、こいのたよりやまとおうらい)」のなかの一幕。

独立して上演されることが多いものです。

文楽の「冥途の飛脚」を歌舞伎化した作品、

そちらとは演出が違うところもありますことを知っておいてくださいね。

飛脚問屋の養子忠兵衛と、井筒屋の遊女梅川は恋仲です。

忠兵衛が身請けの手付金50両を支払っているため、

早く後金を払ってもらって一緒になりたいところです。

しかし、忠兵衛にはお金を作る算段はありません。

そんな時、井筒屋の女将おえんのはからいで、

梅川と忠兵衛は会うことができました。

しかし、間が悪いもので、

そこに現れたのが丹波屋の八右衛門、

自分が、梅川を身請けすると言ってくるのです。

忠兵衛が手付金を払っているから、

と断られた八右衛門は、腹いせに忠兵衛の悪口を言い始めます。

初めは我慢して聞いていた梅川、

そして2階に隠れていた忠兵衛。

とうとう、我慢できずに飛び出して、口争いになります。

その諍いの中で、

忠兵衛は懐に持っていたお金の封を切ってしまうのです。

この金で身請けをと、梅川始め井筒屋の面々は大喜び。

しかし、公金横領は死罪、

忠兵衛は、梅川に一緒に死んでくれと言って、

先のない道へと踏み出すのです。

「封印切」の見どころは?

その1:「和事」を味わえる

この作品は、「和事」と言って、

上方(関西)歌舞伎の型や台詞回しが独特です。

和事は柔らかみを身上とする役どころのこと。

中でも「やつし」という、優美で上流階級の若者が、

身を持ち崩してみすぼらしい姿になる演目が、

特徴的です。

その2:忠兵衛と八右衛門の口争い

梅川を巡って、2人は口争いを繰り広げます。

八右衛門が、忠兵衛を追い詰めていく悪口やあおりと、

八右衛門に対抗しようと言い訳を口にする忠兵衛のやりとりに注目です。

八右衛門が嫌な奴であればあるほど、

罪を犯す忠兵衛への情が増していくのですから、

ある意味、八右衛門という役者の芸も大事なんですね。

噂だと、このやりとりは、ほとんどアドリブなんだそうです。

我慢に我慢を重ねた忠兵衛が、絶対に手をつけてはいけないお金を、

出さざるを得ない状況に追い詰める、

この場面は、悪役八右衛門の見せ場でもあります。

その3:忠兵衛、封を切る

歌舞伎では、諍いの中で、封が切れてしまい、

愕然とする忠兵衛を描く演出となっています。

この瞬間、それまで情けないボンボンが、

一線を超えて罪を犯すことを覚悟する、

その表情や所作は見逃せません。

あ、ダメだよ、まだ引き返せるよ、やめておけ、

って観ている私は言いたいのですが、

切れてしまった封と忠兵衛は元には戻れません。

そのやるせなさも含め、この場面の忠兵衛には注目です。



「封印切」感想、仁左衛門、秀太郎、孝太郎、愛之助、松嶋屋の芸が光る

仁左衛門の忠兵衛は至高の芸

さて、以上のストーリーで主人公忠兵衛を演じたのが、

十五代目片岡仁左衛門です。

人間国宝で、大御所役者。

二枚めで、セクシーで、年齢を感じさせない若々しさに、

おばさん(私もそうです)たちは、メロメロです。

この方は舞台に立つだけで、その役になり切ってしまいます。

恋する若者のにやけた表情、

打つ手のない悩みにくれる表情、

そして、侵してはならない罪に足を踏み入れたときの、

悔やみ、覚悟、破れかぶれになっていく表情の変化、

その場に忠兵衛がいるとしか思えないんですね。

4階の幕見席からでも、その様子はしっかりと観て伝わりました。

ト書きがなくとも、その情景を演技だけで表現する、

片岡仁左衛門の忠兵衛は至高の技と言えると思います。

それだけで、観る価値ある一本です。

*片岡仁左衛門については、こちらにも書いています。よかったらお読みくださいね。

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「封印切」秀太郎、孝太郎、愛之助、松嶋屋の芸に惚れ惚れ

6月歌舞伎座の「封印切」では、

遊女梅川を片岡孝太郎(仁左衛門の息子)、八右衛門を片岡愛之助(秀太郎の養子)、

井筒屋おえんを片岡秀太郎(仁左衛門の兄)が演じています。

松嶋屋オンパレードといった風です。

つまりは、上方の芸を持つ家の役者が揃う舞台、

ということもあり、一体感ある見応え十分な舞台だったと思います。

孝太郎の梅川は、美しく儚く悲劇的。

愛之助の八右衛門は、いやらしく憎らしい敵役。

秀太郎のおえんは、懐が深くて年増の貫禄たっぷり。

みなさんが見事にハマっていました。

夜の部の「月光露針路日本」に出演している、

八嶋智人さんのツイッターにもこんな評が書かれていました。

『恋飛脚大和往来~封印切~』を観劇で感激🎵仁左衛門さんの若さ‼️しなやかさ‼️カッコいい❤孝太郎さんの美しさも❤秀太郎さんファンになりました」

ほんと、その通り!

って思っちゃいました。

松竹のチャンネルから、その一部が見られることを発見。

https://youtu.be/apb6vHQT7C8

いい舞台に出会うと、本当に嬉しいです。

読んでくださり、ありがとう存じまする。

*6月の歌舞伎座情報はこちらにも書いてますよ~。参考になれば幸いです。

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