8月花形歌舞伎(2021)歌舞伎座公演の感想

8月花形歌舞伎が8月3日(火)に初日を迎えました!

2021年もコロナ禍での開催となり、3部制で夏らしい演目が揃いました。

その演目のあらすじと感想を書いていきます。

心配なのは、先月29日に新型コロナ感染が確認された

市川猿之助さんの動向です。

代役として坂東巳之助さんが務めることになっていますが、

病状や、復帰の目処も気になるところです。



ページコンテンツ

8月花形歌舞伎2021第1部の感想

8月花形歌舞伎第一部は、

市川猿之助さんの6役早替りが見どころの

猿翁四十八撰の内「加賀美山再岩藤」です。

猿之助さんのコロナウイルス感染が発覚し、

坂東巳之助さんが代役を務めています。

その演目情報と感想についてお伝えします。

8月花形歌舞伎第1部「加賀美山再岩藤」の感想

8月花形歌舞伎第1部演目と配役

「加賀美山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)岩藤怪異篇(いわふじかいいへん)」

多賀大領   市川猿之助→坂東巳之助代役

御台梅の方

奴伊達平

望月弾正

安田隼人

岩藤の霊

鳥居又助  坂東巳之助→中村鷹之資

安田帯刀  市川男女蔵

蟹江一角  中村亀鶴

花園姫   市川男寅

蟹江主税  市川猿四郎

局能村   市川寿猿

局浦風   市川笑三郎

お柳の方  市川笑也

花房求女  市川門之助

二代目中老尾上 中村雀右衛門

猿之助さん休演のお知らせ、寂しい気持ちで見ました。

「加賀美山再岩藤 岩藤怪異篇」の簡単なあらすじ

この演目は、「鏡山旧錦絵」の後日談で、

成敗された局岩藤の亡霊が恨みを晴らそうとするエピソードを中心に

河竹黙阿弥が描いた作品です。

3代目市川猿之助(2代目猿翁)さんが、

台本に手を加えて上演し、人気演目に仕立てたものです。

多賀家当主である大領は、正室梅の方がありながら、

側室のお柳の方にご執心。

それを諌めた忠臣の花房求女は追放されます。

その帰参を願っている鳥居又助ですが誤って、正室の梅の方を殺めてしまいます。

これは、お家乗っ取りを企むお柳の方とその兄の望月弾正が仕組んだ罠でした。

一方、5年前に局岩藤からの恥辱を受け自害した尾上の仇を討ち、

その名を継いだ2代目尾上(元は召使いのお初)。

尾上の祥月命日の墓参りの帰りに、

岩藤の回向をと思いつき、念仏を唱えます。

すると、恐ろしいことに、

土手に散らばっていた岩藤の白骨が寄せ集まり、

岩藤の亡霊が現れます。

亡霊岩藤は、殺された無念を果たそうとするのです。

多賀大領の娘花園姫は

原因不明の病で伏せっています。

尾上がその平癒祈願から戻ったところに

望月弾正が上使として現れます。

病床の姫の代わりにと対応した尾上、

弾正は、お家に対する悪事の張本人と決めつけます。

しかしどういうわけか急に当たりが暗くなり、

岩藤の亡霊が現れます。

岩藤は、尾上が書いた祈願には

姫の不幸を願っているという岩藤は、

尾上を草履で打ち据えます。

その悪霊を鬼子母神像の力で吹き払うと元どおり、弾正のいる部屋に戻ります。

局浦風の元に鳥居又助がやってきます。

そして、求女の帰参のためと弾正に促され、

お柳の暗殺を企んだところ、

梅の方を殺めてしまったと告げにくるのです。

又助は自分の罪を告白し、心残りは生き別れた妹と言い、

その場で切腹します。

隣の部屋からお柳の方が出てきて、

自分こそがその妹であると又助にいいます。

そして、恐れ多いことをしたと自分の罪を後悔し、

きっと良い方へ向かわせると又助を看取るのでした。

ことを焦った弾正は、

自ら多賀大領へ刃を向けます。

しかし、そこにいたのはお柳でした。

実は、お柳と弾正は兄弟ではなく夫婦でした。

我が身を犠牲にしたお柳の働きで弾正は倒れます。

しかし、まだ岩藤の亡霊がしつこく残っていました。

岩藤は、恨みを晴らそうと尾上らに襲いかかりますが、

正気を取り戻した多賀大領の手した鬼子母神像によって

元の骸骨に戻ります。

悪党どもが成敗され、晴れて帰参の叶った求女、

病が治った花園姫、

多賀家は平和を取り戻すのでした。

これにておしまい。

バラバラになった骨が集まって岩藤の姿が現れる場面、

傘をさしてフワフワと飛んで行く場面、

おどろおどろしいようでちょっとファンタジーな場面が見どころですね。

一人6役という早変わりがどう描かれるかも

観てのお楽しみです。



8月花形歌舞伎第1部「加賀美山再岩藤」の感想

市川猿之助さんの休演により、配役が変わっております。

私が観に行ったのは、8月13日でした。

休演日明けだったので、猿之助さん復帰かも!と

期待していましたが、まだでした。

坂東巳之助さん、6役を歌舞伎座の本公演で観るという

滅多にない機会に当たりました。

感想を一言で述べると、

巳之助さん大健闘の舞台、といったところです。

6役の早変わりも素早かったし、

想像以上に岩藤の出来がよかったので、それだけで満足したという。笑

今の巳之助さんのご経験や実力では、歌舞伎座本公演の一人主演は難しい、

代役ではあれ、それを演じきったということに感動しきりの舞台でした。

では、もう少し詳しく感想を書いていきます。

まずは、巳之助さんの6役について。

全ての役の心根を出せているかというと

それはまだ難しいかもというところですね。

しかし、その中で秀逸と思ったのが岩藤と奴伊達平です。

スーパー歌舞伎ワンピースではボン・クレー、

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」ではミラルパを演じ、

怪演という言葉がふさわしい独特な存在感を見せつけてくれました。

こういう癖のある役、人間味のある悪を

演じさせたら他に類を見ないキャラを描き出す力に長けているんだなあと

しみじみと思い出したのが岩藤です。

怪奇、執念、恨み、悪というものを孕んだ亡霊として

リアルに描いていると感じました。

死んでるくせに憎たらしい、

過去の仕打ちにしつこく恨みを抱く、そんな亡霊です。

自分も相当なことやったでしょうよ、って突っ込みたくなる

ちょっとした愛嬌もあるのが巳之助さんらしさかな。

一点残念だったのが、女性としての色が感じられなかったこと。

もうちょっとネチっとした女の恨み感があってもよかった。

猿之助さんは女形も演じられるので、

ここに女というキャラも入るんですよね。

だから、伊達平は、本来の持ち味ではないかと思える

ダイナミックさと明るさと闊達さが見られてよかったです。

反対に、よくわからない人物が多賀大領でした。

全ての発端はこの方なんですけど、

どうもよくわからない人物で最後までいっちゃいました。

それでよかったのかもしれないけど、

この人だけなんか借り物のようにいるイメージ、

6役は演じ分けとともに人物描写も重要です。

その点は、今後のお楽しみにしておきます。



第1部「加賀美山再岩藤」猿之助バージョン感想

市川猿之助さんが、無事に歌舞伎座第一部に戻っていらっしゃいました。

私も、慌ててチケットを買い足し、

26日(木)に観劇することができました。

そこで、猿之助さんバージョンの感想を書いていきます。

一言でいうと、前回観た巳之助さんバージョンとは

違う作品て印象を受けました。

別のものなので、比較のしようがないってことです。

ただ、猿之助さんの岩藤は圧巻でした。

ここだけは、他の追随を許さないと思いました。

6役の早変わりがありますが、

私は猿之助さんの女形が好きなので、

梅の方(ちょっとしか出ないけど)の

出番がよかったなあ。

お柳の方と一緒に立つと、

女っぷりでは引けをとるのですが、

身にまとう空気感や言葉遣いに、

品格の良さと誠実な人柄が際立つように見えました。

一瞬なのに、その佇まいだけで人物像をイメージさせるのが

さすがだなあと思いました。

多賀大領はお殿様

望月弾正は悪人

奴伊達平は奴

安田隼人は武士

御台梅の方は殿様の正室

岩藤は元局、亡霊

全部役の種類が違います。

これを演じ分けるって、

つくづく一晩で身につけた坂東巳之助さんは素晴らしいと思いました。

巳之助さんの場合は、伊達平のキャラが好きでした。

猿之助さんは、やっぱり岩藤がいちばんいいです。

悪い奴で亡霊なのに、このお芝居の主人公ですね。

ただただ、殺された恨みを晴らす(悪いのは自分なのに)だけなのに、

なんなの、あの存在感といい、豊かな表情といい、

魅力たっぷりなんです。

亡霊だけど女性ですね。

ネチネチしたいじめっぷりとか、ふわふわで見せる茶目っ気とか、

それがあるからこそ余計に怖いなあ岩藤、って思えました。

巳之助さんの鳥居又助は、

彼のキャラにぴったりのお役ですね。

自然に手足が動いている、という感じがしました。

忠義に厚いけど、ちょっと浅はかではめられちゃうんです。

根はいい人、って思え、

その顛末の悲しさがしみじみと伝わりました。

ざっくり過ぎますが、

以上が猿之助バージョンの感想です。

人が変わっても、芝居の根っこを捉えて

お客様を感動させる歌舞伎役者はすごいなあと

つくづく感じた「加賀美山再岩藤」でした。

そうそう、なぜか今日は、

ストーリーの流れがわかりやすかった。

なんでだろう?



今回、おもだかや~ずからは、

お柳の方の市川笑也さん、局浦風の市川笑三郎さん、

そしてご高齢ながら元気な姿が嬉しい局能村の市川寿猿さん。

彼らの存在は頼もしいですね。

お柳の役どころはおのお芝居でも重要なところ、

心情の変化が見せ所ではないかと思いました。

中村鷹之資さんが鳥居又助、

正義感があるものの弾正に騙されて梅の方を殺めてしまい、

その罪を背負って自害します。

言ってみれば、間接的にお家騒動解決のきっかけを作った方。

出番は少ないけれど、苦しい息の下で見せる誇りと正義感が

大事な方ですね。

2代目尾上には中村雀右衛門さん。

今回の舞台では、岩藤の毒々しさを引き立てるお役として

全体を引き締めていたと思いました。

クライマックスの亡霊岩藤による草履打ちは、

痛々しさと悔しさが伝わってきました。

多賀家のお家騒動を2回続けて解決するという

ある意味ヒーローですね。

ストーリーの中でもどういう状況でも軸をぶらさない意思の強さも

かっこいいと思いました。

他に、良い家老安田帯刀役に市川男女蔵さん、

正義感溢れる武士花房求女に市川門之助さん、

悪い家老蟹江兄弟役に中村亀鶴さんと市川猿四郎さん、

この方達もしっかり脇を締め、お芝居に厚みを添えていました。

花園姫役の市川男寅さん、最近女方が多いですが、

なかなか可憐なお姫様です。

もともと、通しで上演するお芝居なので、

かなり短くまとめられているとのこと。

その分説明不足で分かりづらさも感じますが、

エンターテイメントとして楽しいお芝居だと思います。

花形歌舞伎らしい、若者大活躍の楽しいお芝居。

観に行って本当に良かったと思っています。



8月花形歌舞伎2021第2部の感想

8月花形歌舞伎第2部は、中村屋兄弟中心の演目が2つ。

落語を原作にした怪談噺の「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」と

舞踊劇「仇ゆめ(あだゆめ)」です。

8月花形歌舞伎第2部の演目と配役

「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)豊志賀の死(とよしがのし)」の配役

豊志賀   中村七之助

お久    中村児太郎

新吉    中村鶴松

噺家さん蝶 中村勘九郎

伯父勘蔵  中村扇雀

「真景累ヶ淵 豊志賀の死」の簡単あらすじ

江戸の後半から明治にかけて活躍した

三遊亭圓朝の人情噺に基づき芝居化された怪談です。

結構な大作ですが、その中の「豊志賀の死」が花形歌舞伎で演じられます。

根津の七軒町に住む富本節の師匠豊志賀、

20歳ほど年が離れた出入りの煙草屋新吉といい仲になります。

しかし、弟子の若いお久と新吉の仲を疑うようになり、

豊志賀の顔に腫れ物ができ、それがだんだんと増していきます。

しかし、豊志賀は嫉妬から逃れられず、

看病に疲れた新吉は、お久と逃げる決心をします。

寿司屋の2階でそんなことを相談していると、

そこに豊志賀が現れ、新吉に恨み言を言います。

しかし、どうやらお久にはそれが見えていない様子。

驚いて家に戻ると、叔父から豊志賀がきていると言われる新吉。

叔父に説得され、豊志賀の世話をすると新吉は決意し、

帰るための駕篭を叔父が呼びに行きます。

すると、七軒町の噺家が豊志賀が死んだという知らせを持ってきます。

駕篭を連れて戻ってきた叔父とともに、

奥の部屋を覗くと、そこに寝ていたはずの豊志賀がいません。

2人は、あれは幽霊だったかと、驚いて・・・・

男女の愛と嫉妬から複雑な心情を描く怪談話です。

嫉妬から女性の顔が醜くなるというのは心理的な描写だなあと思います。

そもそも、因縁が回り回って、縁者が不幸になっていく

怪談というのは人の怨念が作っていることを実感します。

怖いというよりも業を哀れと考えてしまいますね。

「仇ゆめ(あだゆめ)」の配役

狸    中村勘九郎

深雪太夫 中村七之助

舞の師匠 中村虎之助

揚屋の亭主 中村扇雀

「仇ゆめ(あだゆめ)」の簡単あらすじ

仇ゆめは、狸を主人公にした舞踊劇です。

壬生寺のほとりにの野原に住んでいる狸は、

島原の深雪太夫に恋をしています。

その思いを叶えたいと思う狸は、

太夫が憧れている舞の師匠の姿に化けて恋心を伝えます。

狸が化けているとは知らない深雪太夫は大喜びです。

連れ舞いをする二人ですが、

そこに本物の師匠が現れて困惑する深雪太夫です。

話を聞いた亭主は、

壬生寺近くに住むたぬきの仕業と見破り

罠をしかけます。

まんまと罠にかかってしまったたぬきは、

亭主らに散々に打ちすえられます。

一方深雪太夫は、

師匠がもうすぐ江戸の妻子の元に帰ると告げられます。

失意の深雪太夫は、野に出て、

瀕死のたぬきに会い、

最後の情けをかけるのでした。

狸の恋物語、

本当の自分ではない姿で告白するってちょっと切ない感じがしますね。

人間でも、狸でもだれかを恋する思いは変わらないのですね。

うまくいくといいのになって思うけど、

やっぱり狸が恋人っていうのも、私は困っちゃうな。

8月花形歌舞伎第2部「真景累ヶ淵 豊志賀の死」「仇ゆめ」の感想

8月花形歌舞伎第2部は、中村屋兄弟が中心に、

怪談噺と舞踊劇を見せてくれました。

勘九郎さん、七之助さんの他に、児太郎さんや鶴松さん、扇雀さんが

揃ってのお芝居は気持ちをくすぐられる魅力がありますね。

まずは「真景累ヶ淵 豊志賀の死」の感想です。

20歳も歳下の新吉への執着から

顔が醜く腫れ上がるという病に苦しむ豊志賀。

それを甲斐甲斐しく看病する新吉ですが、

豊志賀に恨み言や泣き言を聞かされ

縋りつかれて、すっかり辟易してしまいます。

冒頭の2人のやりとりに、のっぴきならない関係性が見て取れました。

新吉「うんざりだよー」

豊志賀「お願い私を捨てないでー」

という両者の心の声が、

頭の中にこだまするようでした。

七之助さんの豊志賀のしつこいこと、めんどくさいこと、

こんな人にすがられちゃ、たまんないよね、

と、新吉が哀れにもなります。

その、哀れっぽさをぷんぷん漂わせた

鶴松さんの新吉が想像以上によかったです。

素でも兄弟のような2人だけあって、

絶妙なかけ合いが楽しいです。

七之助さん、鶴松さんの見どころが多く、

勘九郎さんはいつ出てくるんだ?と

待ちに待ってたら、

後半少しだけの登場でした。

噺家の役だけあって、

軽ーくて、テンポいい会話が

後半のまったり感を引き戻してくれました。

執念に取り憑かれるように

呆気なく亡くなる豊志賀ですが、

幽霊となって出てくる時の

存在感の薄さが気味悪い印象。

前半の粘っこさとはまた違うところに

よりインパクトを感じました。

鶴松新吉の振り回されっぷりは、

見ててイラッとするほどで、

それだけに最後のオチが効いてるなと感じました。

児太郎さんは、お久にはちょっと大きくて、

嫉妬されるような娘とは違うイメージで

もったいない気がしました。

いつか、豊志賀も演じてほしいです。

怪談だけど、それほど怖くない、

哀れで可笑しいお芝居でした。

「仇ゆめ」は、始めと終わりのギャップが大きすぎて、

最後はとてもしんみりとしてしまいました。

たぬきの恋物語、

初めは美しい深雪太夫に恋したたぬきが

なんとも可愛らしいんです。

たぬきとは知らない深雪太夫も、

お師匠さまからの告白に有頂天、

2人(?)の周りにハートマークが飛び交う、

微笑ましくも楽しい舞踊でした。

勘九郎さんは、美しい七之助さんが大好き、

2人の仲の良さが際立つ舞踊だったと思います。

でも、たぬきってバレちゃうんです。

そうしたら、

こんなことは許せんとばかりに、

たぬきを騙してなぶり殺しにしてしまうという

ストーリー展開に私はショックを受けました。

ネタバレになりますが、

最後は、深雪太夫の腕の中で生き絶えるのです。

人間に恋などしなければ、

今でも野原でのびのびと暮らせていたのにと

その夢を踏みにじる人間の業に私はガッカリしたのです。

これってもしかして、

たぬきを例えにしただけで

身分違いの恋を戒めているものなのかしら、なんて思ってしまいました。

自分の本能に忠実で、憎めないたぬきを勘九郎さんが好演。

見る人の心を奪うのが上手な役者さんになられたなあと

しみじみ思い観ていました。

だからこそ、最後が本当に切なくて、悲しくなってしまいました。

お師匠さんは、中村虎之助さん。

お父様の中村扇雀さんとの共演でもありました。

ちょっとドライですっきりとしたイケメン師匠が

似合っているなあと感じました。

目には美しく楽しい前半と、切なく悲しい幕切れと

心に残るお芝居でした。



8月花形歌舞伎第3部の感想

8月花形歌舞伎第3部は、松本幸四郎さんの「義賢最後」を始め、

若手役者の競演「伊達競曲輪蛸富」、成長著しい染五郎さんと團子さんの「三社祭」。

夏の夜の打ち上げ花火のような演目です。

8月花形歌舞伎第3部の演目と配役

「義賢最後(よしかたさいご)」の配役

木曽先生義賢  松本幸四郎

九郎助娘小万  中村梅枝

下部折平実は多田蔵人幸綱 中村隼人

待宵姫     中村米吉

太郎吉 小川大晴・小川綜真

進野次郎    大谷廣太郎

九郎助     松本錦吾

矢走兵内    片岡亀蔵

葵御前     市川高麗蔵

幸四郎さんの義賢は初役、

太郎吉役は、中村梅枝さんのご長男の大晴くん(偶数日)と

中村歌昇さんのご長男の綜真(奇数日)くん。

この顔ぶれが楽しみです。

「義賢最後(よしかたさいご)」の簡単あらすじ

この演目は、「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)の前半部分にあたります。

木曽義賢の壮絶な最後を立ち回りで見せる人気の演目です。

平家全盛の時代、源氏再興を密かに志す、

木曽先生義賢は病で館にこもっています。

その館に百姓の九郎助が娘の小万と孫のタロ吉を連れて訪れます。

小万の出奔した夫、奴の折兵がいないか尋ねに来たのです。

義賢は、折兵が源氏の武将多田蔵人幸綱であると見抜き、

平家打倒に向けた本心を打ち明けます。

義賢は平家に仕えているものの、

奇異なことから源氏の白旗を手に入れ、

これをもとに旗揚げを企んでいたのです。

そこへ、平家の使者が訪れ、

源氏の白旗を渡せと言います。

そんなものはないとシラをきる義賢ですが、

兄義朝の髑髏を踏めと言われ、

兄の仇である長田太郎を斬り捨てます。

義賢は、幸綱らに後を託し、九郎助には正室葵御前を、

小万には白旗を預け、単身平家の打ち手に向かっていくのです。

大勢の打ち手相手に奮戦虚しく、義賢は壮絶な最後を遂げるのでした。

激しい立ち回りや、直立のまま倒れこむ「仏倒れ」など、

義賢と打ち手が見せる様式美にうっとりの演目です。

前半の発端の場面から後半の動きの激しい場面まで、

目を離せない見所満載なのです。



「伊達競曲輪蛸富(だてくらべくるわのさやあて)」の配役

不破伴左衛門 中村歌昇

名古屋山三  中村隼人

茶屋女房お新 坂東新悟

イケメン3人の配役にワクワクします!

「伊達競曲輪蛸富(だてくらべくるわのさやあて)」の簡単あらすじ

桜の花が咲き誇る吉原、

不破伴三右衛門と名古屋山三は、

すれ違った際に、お互いの刀の鞘が当たったことから、

斬り合いとなります。

茶屋の女房、お新が止めに入りますが、、、。

若手3人の様式美に則った、

目に美しい演目ですね~。

「三社祭(さんじゃまつり)」の配役

善玉 市川染五郎

悪玉 市川團子

成長著しいイケメンコンビ、

若々しい踊りが見られそうです。

「三社祭(さんじゃまつり)」の簡単あらすじ

宮古川(隅田川)のほとりで

網を打つ漁師に、

善玉と悪玉が乗り移り、

動きの激しい踊りを見せます。

*詳しくはこちらもお読みください。

「三社祭(さんじゃまつり)」は歌舞伎でも人気の演目です。 2人の漁師が清元が奏でる三味線や唄に合わせて、軽やかに舞う舞踊劇。 な...

歌舞伎の基本は舞踊と言われます。

何かとコンビと目されることの多い

染五郎さんと團子さんは、花形歌舞伎の常連になりつつあります。

そのお二人がこの舞踊でどんな姿を見せてくれるのかが楽しみです。



8月花形歌舞伎2021第3部「義賢最後」「伊達競曲輪蛸富」「三社祭」の感想

第3部は、3つの演目です。

どれも役者さんも楽しみだし、演目も興味深いものばかり、

ワクワクしてしまいます。

8月8日に観劇しました。

「義賢最後」は、討ち死にを決意した

義賢の壮絶な最期が見どころ、

だから始めからそれを期待して

前のめりで観ていました。

見た目はとても華やかなんですけど、

設定が設定だけに、重苦しい空気を感じました。

幸四郎さんの義賢は初役ということで、

並々ならぬ意欲が伝わってきました。

冒頭の九郎助が娘小万と孫の太郎吉を連れ、

婿の折平に会いに来る場面。

綜真君の太郎吉が、リトル歌昇!

と呼びたくなるくらい歌昇さんにそっくりで、

可愛さに目を奪われました。

初お目見えでは、下を向いちゃってたんだけど、

今回はちゃんと顔を上げ、はっきりセリフも言えてました。

成長する姿が見られるって嬉しいですね。

このお芝居は、歴史物です。

平家全盛時に源氏の生き残りとして、

心の中でいつかは源氏再興を願いつつ平家の元で生きながらえている義賢。

その武士としての信念や誇りを

抑えた台詞回し、堂々とした立ち振る舞いを通して

幸四郎さんが表していらっしゃいました。

討ち死にを覚悟し、待宵姫や葵御前との別れも、

心を残さない様子を見せるのですが、

最後にまだ見ぬ子への無念さをにじませる場面では、

義賢の人間味の深さを感じさせられました。

誇り高く己の正義を守り通した義賢の最後、

仏倒れという見せ方に滅びの美を思いました。

他に特に印象に残ったのは、脇を固める役者さんたちが

若いながらも力をつけていることです。

小万の凛々しい美しさ、

男顔負けの武者っぷりにはびっくりしました。

演じる梅枝さんの古典的な美しさとしなやかな強さが

小万をリアルに描いていたと思います。

この後、白旗を持った片腕になるのか、、と

その後の姿も目に見えるようでした。

隼人さんの幸綱は清々しく白塗りが似合うイケメンで、

待宵姫との並びがお似合いでした。

葵御前は高麗蔵さんで、

義賢よりも貫禄があるように見えもしましたが、

そこはベテラン、抑えた演技に役の格が感じられました。

この座組みでまた演じることもあるかもしれません。

幸四郎さんはじめ、若手の活躍が嬉しいお芝居、

今後が楽しみになりました。

「伊達競曲輪蛸富」は錦絵のようでした。

歌昇さん演じる不破は、堂々とした押し出しを、

太い声での台詞回しやギラッとした目が印象的な化粧で

表していました。

対する隼人さんの名古屋は、スラリとした凛々しい立ち姿と

キレのよい台詞回しでさっぱりとした色気を感じさせるいい男を

見せてくれました。

喧嘩の仲裁に入る新悟さんさんのお新、

華やかさはないもののキリッとした女房ぶりが

2人の間でいいバランスをとっていました。

見ているだけで眼福な一幕でした。

「三社祭」は、昨今8月の花形歌舞伎常連となった

市川染五郎と市川團子共演です。

2人とも現役高校生で、

現代ボーイズらしく顔が小さくて手足が長い。

歌舞伎役者の体型も今後こうなっていくのかなと

未来に目を向けたくなるコンビです。

まず、顔を見た瞬間、プッと吹き出しそうになるのを堪えました。

2人ともイケメンという印象があったので、

コケティッシュな化粧がツボにはまっちゃいました。

それでも、舞台狭しとばかりに縦横無尽に踊りまくる、

若くて威勢のいい踊りには見惚れました。

この2人は、千穐楽になるにつれ、もっと良くなるに違いないです。

もう一回観たいなって思わせる二人の舞踊でした。

第三部は、満足感でいっぱいです。

これはお代わり必須の舞台ではないかと思いました。



8月花形歌舞伎2021のスケジュール

8月花形歌舞伎のスケジュールはこちらの表を参考にしてください。

第1部 10:20開場 演目 時間
加賀見山再岩藤

岩藤怪異篇

序幕

11:00-12:02
幕間 15分間
加賀見山再岩藤

岩藤怪異篇

二幕目・大詰

12:17 -1:05
第2部 13:50開場
真景累ヶ淵

豊志賀の死

2:30-3:30
幕間 15分間
仇ゆめ 3:45-4:42
第3部 17:20開場
源平布引滝

義賢最期

6:00-7:25
幕間 15分間
伊達競曲輪鞘當
三社祭
7:40-8:23

まだまだ東京都内は新型コロナウイルス感染がおさまりません。

休憩中もおしゃべりを避け、

場内のマスク着用、飲食禁止などのルールに従って

安全に感激を楽しみましょう。

読んでくださり、ありがとう存じまする。