歌舞伎座の夏が始まります!
8月花形歌舞伎、4ヶ月ぶりに幕が開くのです。
出演者、スタッフ、お客様も総入れ替えで、
コロナ感染拡大を徹底しての再開です。
その8月の歌舞伎座花形歌舞伎についてお伝えします。
歌舞伎座8月花形歌舞伎2020の演目・上演時間・配役・簡単あらすじ
8月花形歌舞伎は、前代未聞の4部制です。
これは、一幕の上演時間を短くして、
幕間に人の総入れ替えと消毒・換気を図るためだそうです。
その4部制のスケジュールは、
次の通りです。
歌舞伎座8月花形歌舞伎2020の演目・上演時間
演目 | 上演時間 |
第1部 | |
連獅子(れんじし) | 午前11時〜11時56分 |
第2部 | |
棒しばり(ぼうしばり) | 午後13時45分〜14時27分 |
第3部 | |
義経千本桜 吉野山(よしのやま) | 午後16時15分〜17時15分 |
第4部 | |
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店 | 午後19時〜19時59分 |
歌舞伎座8月花形歌舞伎2020の配役・簡単あらすじ
次に、それぞれの演目の配役と簡単なあらすじを紹介します。
第1部 連獅子(れんじし)河竹黙阿弥 作
〈配役〉
狂言師右近後に親獅子の精 片岡 愛之助
狂言師左近後に仔獅子の精 中村 壱太郎
浄土の僧遍念 中村 橋之助
法華の僧蓮念 中村 歌之助
〈簡単なあらすじと見所〉
霊地清涼山の麓にある石橋。
狂言師の右近と左近が石橋の由来や、
文殊菩薩の使いである霊獣獅子の親子の伝説を踊って見せます。
その後に、親獅子と仔獅子の精が現れ、
親獅子は仔獅子を崖下へと追い落とし、
駆け上ってくるのを待つのです。
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愛之助の親獅子に、壱太郎の仔獅子です。
上方系の踊りが見られるのかな?
この演目は、親子や同じ一門で踊られることが多いので、
その家ごとに特色があります。
今回は、お家は違うので、
松島屋(片岡愛之助の家)の型がメインになるのかなって思います。
第二部 棒しばり(ぼうしばり)岡村柿紅 作
〈配役〉
次郎冠者 中村 勘九郎
太郎冠者 坂東 巳之助
曽根松兵衛 中村 扇雀
〈簡単なあらすじと見所〉
無類の酒好き次郎冠者と太郎冠者。
主人である曽根松兵衛が留守になる度、
こっそりと酒を盗み飲んでいました。
これに手を焼いた松兵衛は、ある日、一計を案じ、
次郎冠者を棒に縛りつけ、太郎冠者の後ろ手を縛って外出します。
両手をふさがれてしまった二人でしたが、
苦心の末、何とか酒にありつき、さらには興に乗って、ほろ酔い気分で踊り出します。
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狂言をもとに歌舞伎舞踊化された作品です。
棒に縛られたまま、
酒を飲みあったり、踊ったりする場面が
なかなかに楽しい演目です。
私は、18代目中村勘三郎と10代目坂東三津五郎のコンビが見せるこの演目が大好きでした。
その息子である、勘九郎と巳之助が踊ることが
とても灌漑深いのです。
第三部 義経千本桜 吉野山(よしのやま)
〈配役〉
佐藤忠信実は源九郎狐 市川 猿之助
逸見藤太 市川 猿弥
静御前 中村 七之助
〈簡単なあらすじと見所〉
桜が満開の吉野の山中を、
静御前は義経のもとへと向かっています。
お供の忠信は、途中姿を消すものの、
静が初音の鼓を打つと、どこからともなく現れます。
そこへ、追ってきた鎌倉方の早見藤太が
静を奪おうとするのですが、忠信に手もなく追い払われるのです。
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義経千本桜の中から忠信と静御前の段。
猿之助の忠信は、当たり役の一つです。
静御前が七之助なので、
見た目の華やかさに、うっとりしそうな舞台になりそうです。
第3部を観劇しました。内容や感想はこちらからどうぞ
https://kabukist.com/hanagata3bu2020-3904
第四部 与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店 三世瀬川如皐 作
〈配役〉
切られ与三郎 松本 幸四郎
妾お富 中村 児太郎
番頭藤八 片岡 亀蔵
和泉屋多左衛門 市川 中車
蝙蝠の安五郎 坂東 彌十郎
〈簡単なあらすじと見所〉
赤間源左衛門の留守の密会がバレて、
全身に刀傷を受け、生死の境をさまよった与三郎と、
木更津の海に身を投げたお富。
3年後、命をとり留めた与三郎は「切られ与三」の異名をとり、
ならず者になっていました。
兄貴分の蝙蝠安と鎌倉の源氏店の多左衛門の妾宅に
強請(ゆすり)に入ったところ、
死んだものと諦めていたお富とばったり再会するのです。
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ちょっとノワール系の芝居です。
世から見捨てられたような悪たちの
切ない恋物語・・・と言っちゃあ可愛すぎかな?
情感たっぷりのセリフが聞きどころ見どころです。
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歌舞伎座の感染対策やチケットについては、
こちらをお読みください。
歌舞伎座8月花形歌舞伎の初日観劇レポート&感想
8月1日が、8月花形納涼歌舞伎の初日です。
この5ヶ月間、人気がなく、何の案内もなかった歌舞伎座に、
初日の幕があがりました。
この日が来るのを待っていました。
8月花形歌舞伎初日!歌舞伎座の様子はどうだった?
11時の開演前から、
ツイッターに
「初日おめでとう」
のメッセージが続々と寄せられていました。
もちろん、私もあげました。
役者さん、スタッフさん、ファンの方まで
本当にこの日を待っていたんだなあという思いがひしひしと伝わってきました。
ここでの情報
⑴ 感染対策は強力である
⑵劇場内は寒いらしい
⑶幕開けに役者のアナウンスが流れる
よし!これを確かめに行くぞ!
第1部、初日に観劇。
泣いた。素晴らしかった。
舞台に上がった壱ちゃんを見ただけで涙出た。
壱太郎さん、愛之助さんも感極まった表情で拍手を受けてらしてとても印象的だった。#八月花形歌舞伎 pic.twitter.com/H7rc8FSE31— Ms.Z (@middle_of_numa) August 1, 2020
歌舞伎座八月花形歌舞伎公演第三部「吉野山」初日公演終わりました!
今月は飛沫対策としてこのようなマスクをして勤めております。一月どうぞよろしくお願い申し上げます。
(撮影 清元美一郎君)#歌舞伎座 #八月花形歌舞伎 pic.twitter.com/Kq0y007vnA— 清元 瓢太夫 (@hisago_kiyomoto) August 1, 2020
ついに5ヶ月ぶりの歌舞伎公演!
今頃幕が開いた頃でしょうか!!初日おめでとうございます!!
今月はお休みですが
無事に千穐楽を迎えられるよう
お祈り申し上げます!!#八月花形歌舞伎 #歌舞伎座 pic.twitter.com/acAtHyRyBE— 市川 卯瀧 (@Utaki_Ichikawa) August 1, 2020
8月花形歌舞伎、歌舞伎座入場手順と劇場内の様子
きました、久しぶりの歌舞伎座観劇。
最後に見たのが2月21日の夜の部でした。
あれから、5ヶ月と10日もたっています。
「本日初日」
「八月花形歌舞伎」
ののぼりが下がり、絵看板も入っていました。
ああ、始まったんだ。。。とそれだけでうるうるします。
今までは、劇場前は人込でごった返していましたが、
その頃の半分くらいの人の数。
座席数が限られていることや、幕見席がないこと、
開場時間が早く、外で待っている時間が短いことが
その理由かなあと考えました。
開演40分前に開場となり、粛々と人が中に入っていきます。
入り口は、3列に分かれていて、入場時の密を避けるため、
足元に立ち位置のマークがありました。
入り口前には、歌舞伎座入場時の注意事項も書いてあります。
入場時の手順は!
①手指の消毒(自分で)②サーモグラフィーで体温チェック(スタッフが)③チケットを見せる④チケットをもぎって指定の箱へ入れる(自分で)⑤台の上の無料パンフを取る(自分で)↓ 8月9日には以下のように手順が変更になっています *チケットが消毒液で汚れてしまうという不満の解消かも?①サーモグラフィーで体温チェック(スタッフが)②チケットを見せる③チケットをもぎって指定の箱へ入れる(自分で)④手指の消毒(自分で)⑤台の上の無料パンフを取る(自分で)
歌舞伎座内の様子は!
お土産やさんは開いていましたが、
お弁当はなし、売店は1階で飲み物だけ販売。
筋書き売り場も、番頭さんの席もなく、
ロビーは静かなものでした。
いつもは、人にぶつかりそうな勢いで、動いているのですが、
そんな気配は全くありません。
劇場内、トイレなど、いたるところに手指消毒用のアルコールが設置されていました。
座席は、前後左右をひと席空ける配置になっていて、
そこには朱色の帯がかかっていました。
見た目を損なわない配慮に感心しました。
ロビーの座席も、間を開けています。
場内には、話し声も控えてくださいというアナウンスがあり、
座席についているお客さまは、
話も控え目で静かに開演を待っていました。
開演が近くなると、定式幕が客席の方に膨らんでいます。
舞台上も換気をしているせいなのでしょうかね。
最前列のお客さまには、希望があればフェイスシールドを
貸し出しますという表示もありました。
いつになく静かで厳かな様子の劇場でした。
そして、噂通りに寒かったです。
これは仕方のないことなので、
上にはおるものと足元にかけるもの
この両方があるといいと思いました。
初日にいらっしゃる方は、
この日を待っていたファンの方だと思うので、
歌舞伎座や贔屓の役者に最大限の協力をする
心持ちなんだろうなと思います。
因みに、
第3部は完売だったそうです。
第4部も見る限り、空席は見当たらなかったなあ。
芝居がはねた後は、
係員の誘導で順番に席を立ちました。
帰りも密を防ぐという気配りですね。
そうそう、その案内も
大きな案内板で図示してあり、
ストレスなく劇場のルールを守って、
観劇することができました。
東京都内ではありますが、
安全が確保されている安心感を持つことができました。
8月花形歌舞伎第4部「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」源氏店の感想
開演前、役者からのアナウンスがあると聞いていました。
第1部は片岡愛之助、第2部は中村勘九郎、
第3部は市川猿之助、第4部は松本幸四郎からでした。
歌舞伎座の幕が久方ぶりに上がる喜びと
歌舞伎座の万全の対策やお客さまへのお願いを
丁寧な言葉で案内する内容でした。
そのアナウンスに対しても
客席からは惜しみない拍手が上がります。
一つ一つがしみじみとすることばかりです。
そして幕が上がりました。
第4部「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」源氏店です。
温かい拍手の中芝居が始まりました。
大向こうはないので、静かなのですが拍手がなかなか止まない。
役者のセリフが始まって、やっと静かになっていきました。
舞台上には、片岡亀蔵と中村児太郎です。
児太郎演じるお富は、元深川の芸者で、
情婦との密会がパトロンにばれ、
情夫は身体を切り刻まれ、
自らは海に身を投げた過去を背負っています。
それを今のパトロンである太左衛門に助けられ、
囲われの身となっているのです。
その背景を滲ませる艶っぽさ、
髪をまとめる、白粉をはたく、
その仕草が色っぽくて見惚れてしまいました。
亀蔵演じる番頭は、お富に言いよるのですが、
上手くかわされます。
このやりとりに、「ソーシャルディスタンス」とか、
「直接持ってはいけないんだよな」とか、
今の世相を風刺するセリフが混じっていて、
笑いも誘うのです。
紅をつけてくれと言われて、
それは近すぎ、、と長い棒を取り出して、
その先に紅筆をつけて紅を塗る、
という演出もいつもは見られません。
伝統芸能、とは現代の風潮もうまく取り入れて
発展していくものです。
こういう場面を見ると、
ああ、歌舞伎だなあと嬉しくなります。
さて、この芝居の肝は、
松本幸四郎演じるお富の元情夫、与三郎と、
坂東彌十郎演じるコウモリの安が
お富のところにやってきて金を無心するくだりにあります。
この2人が花道から登場した時も、
拍手が劇場内を包みました。
包む、というようなイメージなんです。
丁寧で温かい心のこもった拍手でした。
コウモリ安の与太者ぶりを
弥十郎がうまく表していたと思います。
見た目、汚れてます。
これもガラガラです。
お金をせびるんだけど、悪いというより愛嬌も感じられる、
どうしようもない不良オヤジってところかな。
そこに、
「百両もらっても帰れねえ」と入ってくる与三郎。
安とは対極、お白粉と刀疵と着崩した着物が
また色っぽい「悪」な感じ。
与三郎は、元は大店のお坊ちゃんなので、
悪くなっても品は残しているんです。
それが、安とは大違い。
3年ぶりの再会が妾宅とは、
どうにも納得いかない与三郎の苛立ち、
会えて嬉しいはずなのに、
負い目を感じ、葛藤するお富。
どこかしら思いを残している様子が
台詞やちょっとした所作にみられ、
もどかしい気持ちになりました。
そのやりとりの最中、
お富のパトロンである太左衛門が帰ってきます。
これは市川中車、そう香川照之です。
与三郎に、お富をやってもいいが、
まずはこの金で商売でも始めろと諭します。
もちろん、素直には聞き入れませんが、
金を持って2人はその場を去るのです。
実は妾と言いながらもパトロンはお富には一切手を出していない
という設定なんですね。
それを不審に思う与三郎なのですが、
その理由が最後に明かされ、お富が涙に暮れて幕がおりました。
59分という上演時間。
細かいところまで、丁寧に作られた
満足いく舞台でした。
全て集中して見ていたので、
芝居のちょっとした工夫に気づけて
歌舞伎の底力を実感するお芝居だと思いました。
とにかく観られて、この場に来られて感無量でした。
これからご覧になる方にも
この幸せ感を味わっていただけることを願っています。
読んでくださりありがとう存じまする。
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