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8月歌舞伎座、市川猿弥、中村隼人が代役公演第3部感想!猿之助一座の底力

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令和4年8月の歌舞伎座が大変です。

主役級の役者が次々とコロナに罹患し、

特に第3部は、最高で7人の代役での上演となりました。

しかし、代役公演が大当たり、歌舞伎ファンは大喜び。

そこには猿之助一座の底力がありました。



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8月歌舞伎座第3部「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚」とは?

2022年8月歌舞伎座は納涼歌舞伎公演です。

第3部は、市川猿之助さん、松本幸四郎さんコンビが大人気の

「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚(とうかいどうちゅうひざくりげ やじきたりたーんず)」。

本水の立ち回りも宙乗りも有名古典作品のパロディも盛り盛りの

楽しいお芝居です。

あらすじを簡単に言うと、こんな感じです。

東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚(とうかいどうちゅうひざくりげ やじきたりたーんず)の簡単なあらすじ

伊勢から花火で飛ばされた、弥次郎兵衛と喜多八は孤島に到着し3年が過ぎました。

そこへ、海賊ジョニーテープと部下のジャックスワローがやってきます。

弥次さん喜多さんは、まんまと海賊船を奪い取り島から脱出に成功します。

長崎にたどり着いた弥次さん喜多さんは、

カステラ売りのオリビアの「歌舞伎役者の芹沢綾人に会いたい」と言う夢を叶えるため、

オリビアを伴って江戸をめざします。

それを知った長崎奉行の釜掛之烝(正体は海賊の取りまとめ役)は、

2人が奪った財宝を取り戻そうと後を追うのでした。

一方、弥次さん喜多さんは、途中、博打にうつつを抜かす父のせいで母を亡くした娘お夏に出会います。

お夏から、父に博打をやめてもらいたいという願いを託され、

弥次さん喜多さんとオリビアは、幽霊騒ぎをでっち上げ、お夏の父次右衛門を懲らしめます。

お夏はオリビアと同じく、芹沢綾人に会いたいという夢を持っていました。

そこで、4人は一路江戸をめざします。

湘南の浜の家族商店には、暴走族となった伊月梵太郎、五代政之助がたむろっていました。

そこで、弥次さんと喜多さんは2人と再会を果たします。

梵太郎らの夜城組は、総長シーコの鬼羅女姫組との因縁の中、

場所取りの争いで踊り比べをすることになります。

迫力のある踊り比べ、その勝敗は店長寿知喜に託されたものの、

寿知喜は、鳩の精となって飛び立っていってしまいました。

そして、弥次さん喜多さんは、

歌舞伎座が経営難のため売り払われることになったことを知り

その救済のため、歌舞伎座に向かいます。

歌舞伎座では、オークションの真っ最中。

江戸の豪商に混じって、ルソンから来た大富豪の緑波奈々夫人は

出される宝物に満足がいきません。

歌舞伎座随一とされる天照大神の心臓のかけら、

それを取り出すと弥次郎兵衛が持っていたペンダントとそっくり。

ペンダントはかけらと一体となり、

天照大神が登場します。

そして、歌舞伎座を復活させると、

弥次さん喜多さんに、歌舞伎座の復活を世に知らしめよと言います。

元の身分に戻ることにした梵太郎・政之助とともに

弥次さん喜多さんは、空高く羽ばたいていきました。

と言うストーリーです。

しかし、

代役でキャストが大幅に変わったため、

ところどころ演出にも変更がありました。



東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚の配役は?

本来のキャストは次の通りでした。

弥次郎兵衛  松本幸四郎

総長シー子  坂東新悟

子分ジャック 大谷廣太郎

芳沢綾人   中村隼人

旗持ちトラ  市川男寅

親衛隊長タカミ 中村鷹之資

旗持ちオタマ  中村玉太郎

伊月梵太郎/娘オリビア 市川染五郎

五代政之助/娘お夏   市川團子

下剃虎奴    市川青虎

家族商店店長寿知喜 市川寿猿

特攻隊長ムネ  澤村宗之助

海賊王ジョニー・テープ 松本錦吾

緑婆奈々夫人  市川笑三郎

天照大神    市川笑也

父次右衛門   市川猿弥

釜掛之丞    片岡亀蔵

ザブエル    市川門之助

副支配人つる紫 市川高麗蔵

喜多八     市川猿之助

これが8月20日、21日には次のような配役となりました。

弥次郎兵衛  市川青虎

総長シー子  坂東新悟

子分ジャック 大谷廣太郎

芳沢綾人   市川門之助

旗持ちトラ  なし

親衛隊長タカミ 中村鷹之資

旗持ちオタマ  中村玉太郎

伊月梵太郎   市川猿弥

娘オリビア   市川笑三郎

五代政之助   中村隼人

娘お夏     市川笑也

下剃虎奴    市川猿四郎

家族商店店長寿知喜 市川寿猿

特攻隊長ムネ  澤村宗之助

海賊王ジョニー・テープ 松本錦吾

緑婆奈々夫人  市川笑三郎

天照大神    市川笑也

父次右衛門   市川猿弥

釜掛之丞    片岡亀蔵

ザブエル    市川門之助

副支配人つる紫 市川高麗蔵

喜多八     市川猿之助

8人が代役となったのです。

22日からは、松本幸四郎さんが復帰して代役は5人となりました。

しかし、注目の若手、市川染五郎さんと市川團子さんが

そろってコロナ離脱となり、

ここが大幅なイメージチェンジとなったのです。



8月歌舞伎座第3部代役公演を観た感想

私が感激したのは、8月22日でした。

幸四郎さんが復活した日です。

一番、気になっていたのが、

市川染五郎さんの梵太郎を市川猿弥さんが務めたことです。

どう見ても、全くタイプが違うのにどうなっちゃうんだろう?

と思っていました。

まあ、事前にツイッターからは、称賛の声しかなかったので

猿弥さんに関しては心配はありませんでした。

感想を5つこちらに紹介します。

感想①代役、全く気にならない!芝居としての完成度が高い

まず一人目の代役が、オリビア役の市川笑三郎さん

迫力のあるお嬢様でしたが、もともとお綺麗な女方なのでそこは違和感はなし。

続くお夏さんも、市川笑也さんが美しく仕上げていらっしゃいました。

初めからこの二人でもいいんじゃない?

と言うくらいハマっていましたが、

お嬢さんにしては、貫禄がありすぎましたね。笑

特に、家族商店での踊り比べ、

オリビアとお夏がハタキを藤に見立てての

藤娘の踊りは感激しました。

この2人の踊りが観れるとは、、と眼福に酔いました。

そして、一番話題になった、梵太郎役の市川猿弥さん。

周りからは、天童よしみと言われていました。

白塗りの美少年メイクで出てくるので、

それがまたギャップ甚だしいのです。

ご本人は、至極真面目に梵太郎を演じていましたが、

周りから、

「その顔どうしたの」といじられまくりでした。

猿弥さんは、ぽっちゃり型なのですが、

演技も身のこなしもキレがあってうまいんです。

だから、踊りも軽々と見せていました。

そのペアが中村隼人さん。

若者のなりは、違和感ないのですが、

猿弥さんとのコンビになるとちょっとユーモラスな一面も見られました。

本役を見ていないので、比較しようがありませんが、

代役でもちっとも違和感なく、楽しむことができました。

感想②鬼羅女姫組のギャル3人が素晴らしい!!!

家族商店で、夜城組と張り合うギャルグループの鬼羅女姫組

この女性たちも、めっちゃインパクトがありました。

まず、衣装とかつらとメイクが江戸前ギャルで新しい感じ。

総長シーコは、坂東新悟さん。

いつもは、健気な娘役がお似合いなのですが、

シーコ大当たりです!

とんこつラーメンの鼓を下げての道成寺がハマりました。

あれ誰?と思った、キレッキレの動きと生意気な表情、

親衛隊長タカミ、

急いで名前をチェックしたら、中村鷹之資さんでした。

わお、初めて見ました女役。

渋谷にいそうな、ヤンキーぽさと思い切りの良い踊りっぷりに見惚れました。

もう一人が、旗持ちオタマ。

童顔だけど、キツイ言葉と勇ましい立ち姿?

玉太郎さんの女方もどっちかというと可愛いお嬢さんのイメージ、

真逆のオタマは、なぜかいつもより踊りも上手に見えました。

代役ペアで話題になっていなかったので、

女子の踊り比べは前のめりで見ていました。

シーコについていきたいです!

感想③市川寿猿さんに対する愛が暖かい

市川寿猿さんは、澤瀉屋の最長老です。

92歳でなおも舞台に立つ姿には、多くのファンが惹きつけられています。

そして、何よりも若旦那が大好き。

若旦那、猿之助さんも寿猿さんが大好きで、

いつもイタズラを仕掛けるのだそうです。

舞台上でもたまにそれは見られます。

私が観劇した日には、

「92歳で現役の歌舞伎役者、市川寿猿さんだ~」という場がありました。

実はその翌日、NHKのニュースに寿猿さんが取り上げられたということで、

翌日の猿之助さんのセリフは、

「今朝、NHKに出ていた有名人!」ということだったそうです。

毎月の舞台には、寿猿さんの役がしっかりとあります。

それを見る猿之助さんの姿に寿猿さんへの温かい愛が感じられます。

今月は、ゴンドラで宙乗りまで・・・

寿猿さん、いつまでもお元気で舞台に立ち続けてくださいね。

https://twitter.com/Na11_Nutmeg/status/1562008226581090305

 



感想④猿之助一座は鍛えられている

この代役を決めたのは猿之助さんということです。

市川染五郎さん、市川團子さんという、

今売り出し中のイケメンペアが出られないということで、

猿之助さんは、「やらない」ではなく「続ける」ために

どうするかを頭をひねったそうです。

そこで、抜擢されたのが市川猿弥さん、市川笑也さん、市川笑三郎さん、市川青虎さんです。

彼らは、市川猿翁さんのお弟子さんでもあり、

一般家庭から歌舞伎役者になったというハンデを

猿翁さんの元で修行する中ではねのけていきました。

彼らに対する、猿之助さんの信頼感も厚いのです。

代役ならこの人に任せておけば大丈夫!!

という選択をしたことで、当初の演出をガラリと変えて違うお芝居への仕立て直したのだそうです。

梵太郎役の市川猿弥さんは、

「どうしたらいいのですか?」と猿之助さんに尋ねたそうです。

そこでの猿之助さんの答えが、

「白塗りをしてギャグに走って」だったとか・・・。

代役本人は、きっちり役を演じますが、きっちりやればやるほどおかしみが出てしまう猿弥さん。

このギャップも彼の実力です。

松本幸四郎さんの代わりを2日間務めた市川青虎さんも

猿之助さんのそばで、演出補をしていたから

難なく(?)代役を務め切ったのだと思います。

日頃の信頼感、チームワーク、そして芸の修行が猿之助一座の強さなのですね。

私はお芝居とは関係ないところで、感激しきりでしたよ。

感想⑤セリフかアドリブかわからないギリギリのおかしさ

私が感激した日は、これはセリフなのか?アドリブなのか?

という場面がたくさんありました。

南蛮の衣装を着た喜多さんが、

かぼちゃパンツを胸にまでズリ上げて着ているのを見た弥次さんが、

真似をしてパンツをずり上げるシーン。

旅の途中で、

「少し休まねえか」という弥次さんに対して、

「おめえ二日も休んだじゃないか、俺は大変だったんだよ」という喜多さん。

鳩の精の寿猿さんが、

「猿弥、隼人、代役がんばったね」と声をかける場面。

客席からは笑いも漏れますが、

これはどこまでがセリフなんだろう??と笑いながら頭をひねっていました。

このお芝居だからこそ、それが許されるのだと思いますが、

純粋に、観ている人を楽しませたい!!

その精神が、強く伝わってくるお芝居だったと思います。



 

8月歌舞伎座第3部「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚」の代役公演はなぜ成功したのか?

突然の代役、演出変更でも

「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚」はかえって話題を呼び、

代役だからつまらない、、という声は一切聞かれない、大成功を収めました。

ツイッターでは、観に行った人が、今日はこうだった!と

観劇した感想がたくさん上がっていました。

なぜ成功したのか?

読売新聞の記事では、

「ピンチをチャンスに変えるには、滅多に観られないものにしよう」

と考えた配役だったと猿之助さんがインタビューに答えていました

変更を考えてから、1日の稽古で幕が開きます。

それをやり切れる実力者が一座にいるというのも

思い切った変更を可能にしたのでしょうね。

役者だけではなく、衣装や床山、囃子方も

たった1日の準備で本番に合わせてきたそうです。

まさに総力戦!

弥次喜多のストーリーは、

「芝居を見ている間は人の悩みや社会の困難さも忘れて幸せになってほしい」

これを芝居に関わる人がやり遂げた結果が大成功につながったんだと思います。

私は、このテーマを総力で実現していたという感動も覚えたお芝居でした。

納涼歌舞伎、8月歌舞伎座第3部「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚」の代役公演、

めったにない貴重な舞台を観られたなあと感激でした。

ぜひ、多くの方に見ていただきたいです。



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