歌舞伎名作「弁天娘女男白浪」その見所、あらすじ、名台詞、5人の登場人物まで教えます!

今日は歌舞伎の名作の1つ、「弁天娘女男白浪」をお伝えします。

このお芝居について知らない人でも、

「弁天小僧」とか「知らざあ言ってきかせやしょう・・・」

なんて言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?

艶やかで、テンポよくて、キレッキレのセリフが多い、

人気のお芝居です。

「弁天娘女男白浪」とはどんな演目なの?

この作品は世話物(町人文化や暮らしに根ざした内容)という種類に

分類されます。

原題は、「青砥稿花紅彩画(あおとぞうし はなの にしきえ)」といい、

全三幕九場から成ります。

原作は二代目河竹黙阿弥、1862年に江戸で初演されています。

この中で、第二幕の弁天小僧が活躍する(?)、5人男の口上がある場を上演されることが多く、

その場合は、「弁天娘女男白浪(べんてんむすめおのしらなみ)」と

称されることが多いです。

さらに、主人公の弁天小僧を、尾上菊五郎が務める場合に限って、

「音菊弁天小僧(おときくべんてんこぞう)」という題に変わることがあるそうです。

というのも、この役は代々音羽屋のお家芸として受け継がれてきたという経緯があります。

ちなみに、白浪というのは盗賊のことです。

中国の盗賊団白浪族に語源があるという不思議な縁です。

私も通しで見た記憶はなく、

ほとんどが、二幕の「浜松屋」「稲瀬川」での上演でした。

印象が強いのは、やはり「浜松屋」でのたかりがバレて、

弁天小僧がお姫様から悪党へ様変わりするところ。

稲瀬川の土手にずらりと並んで口上を述べるところです。

この二場だけでも楽しめるし、

歌舞伎の様式美がぎゅっと凝縮されているので、

初心者には特におすすめしたい演目です。

「弁天娘女男白浪」のあらすじ

ここでは、第二幕のあらすじのみ紹介しますね。

「浜松屋」

鎌倉雪の下にある呉服屋「浜松屋」へ、早瀬主水の息女お浪と若党四十八が、婚礼の衣装を見に訪れる。

様々、見た後に立ち去ろうとする娘に、番頭が「懐に入ったものを出すように」と言い、赤い鹿の子のキレを引っ張り出す。

これは盗人と寄ってたかって打ち据えたところで、その裂は他の店で買った物ということが判明する。

そこで怒った四十八、お嬢さんの額に傷までつけられ、店主に100両を要求する。

ことを穏便に済ませようと、100両渡したその時に、玉島逸当という侍が現れる。

早瀬主水にはお浪という息女はいない、また腕にちらりと見えた彫り物からすると、どうやら男のようだと、2人の悪事を見破る。

バレたとわかった2人はその正体(盗賊の、南郷力丸と弁天小僧菊之助)を現し、傷の膏薬代として20両を受け取り去っていく。

*実は玉島逸当というのは、盗賊の頭。

ここに押し入るために下見に来たのでした。

「稲瀬川」

日本駄右衛門率いる盗賊団を捕らえるために、追っ手が5人の盗賊を、稲瀬川の土手で待ち伏せしていた。

そこに現れた5人男、一人一人悠然と名乗りをあげ、捕手と立ち回るのでした。

*その後再会を約束し、5人はそれぞれ逃げて行く。

と、大体は立ち回りの見栄でツケがなり、幕が降ります。

この5名がそれぞれ異なる衣装での見得は、艶やかでかっこいいのです。

「弁天娘女男白浪」の見どころと名台詞

では、これからご覧になる方のために、見所を3つ紹介します。

その1:力丸と菊之助のかけあい

南郷力丸は、漁師崩れの海の男という設定です。

弁天小僧の兄貴分、という役割を演じていますが、

骨太で偉丈夫、悪の凄みもあります。

初めは、お嬢様に付き従う若い家来として、

品のあるところ、お嬢様への気配りなどを見せますが、

一転して悪の正体を表すと、あれこれ言い立ててお金を騙ろうとするその言い草たるや、

って姿を見せます。

対する弁天小僧菊之助は、初めは武家のお嬢さま。

婚礼を前に恥ずかしそうに織物を見立てる姿は、

どう見ても初々しいお嬢さまです。

それが、バレたとなると、ガラリと目つき言葉遣い、態度が豹変します。

友禅染めの黒地振袖をほどき、浅葱と緋の段鹿子、緋縮緬の長襦袢を肩に引っ掛け、

桜の刺青を見せながらキセルをふかすふてぶてしさ、

そのミスマッチぶりがかっこいいのです。

帰り道道の坊主が割りは、2人の愛嬌も垣間見え、

盗賊だけど、いっぺんでファンになってしまう、魅力をたたえたコンビなのです。

その2:黙阿弥芝居の魅力

河竹黙阿弥という劇作家が書く芝居の特徴として、

目と耳に訴えてくるその魅力があります。

まずは台詞です、七五調のリズムが快いセリフやスカッとする啖呵。

思わず、拍手を打ちたくなります。

お囃子などの御簾音楽も、登場人物によって違えるという細かな工夫。

そして、目にやきつく鮮やかな色合いの衣装と化粧。

浜松屋で菊之助が片肌脱ぐシーンは本当に色彩華やかな錦絵のよう。

そして稲瀬川では、それぞれ図柄が違う衣装を身につけ、

一人一人が名乗りをあげるのです。

弁天小僧は菊と琵琶・白蛇(出自江ノ島の弁財天を利かせた)のデザイン、

忠信利平は雲と龍。

赤星十三郎は星と鳳凰、南郷は荒々しく雲と稲妻・雷獣、

そして親分格の駄右衛門は、統率力を表す磁石と碇綱・立浪の図案となっています。

オペラグラスで一人一人をじっくり観察するのも楽しいですよ。

その3:名台詞

5人の口上はそれぞれエキサイティングなのですが、

ここでは有名な弁天小僧のセリフ、

男とバレて悪態をつく「知らざあ言って・・・」を紹介します。

知らざあ言って 聞かせやしょう

浜の真砂と 五右衛門が

歌に残せし 盗人(ぬすっと)の

種は尽きねぇ 七里ヶ浜

その白浪の 夜働き

以前を言やぁ 江ノ島で

年季勤めの 児ヶ淵(ちごがふち)

江戸の百味講(ひゃくみ)の 蒔銭(まきせん)を

当てに小皿の 一文字

百が二百と 賽銭の

くすね銭せぇ だんだんに

悪事はのぼる 上の宮(かみのみや)

岩本院で 講中の

枕捜しも 度重なり

お手長講と 札付きに

とうとう島を 追い出され

それから若衆(わかしゅ)の 美人局(つつもたせ)

ここやかしこの 寺島で

小耳に聞いた 祖父(じい)さんの

似ぬ声色(こわいろ)で 小ゆすりかたり

名せぇ由縁(ゆかり)の 弁天小僧

菊之助たぁ 俺がことだ

七五のリズム、おわかりになりますか?

舞台は鎌倉ということで、

鎌倉や湘南の地名がそこここに出てくるのも面白いですね。

「弁天娘女男白浪」に出てくる魅力的な5人男

では最後に、5人の盗賊を一人ずつ紹介しましょう。

まずはリーダー、日本駄右衛門(にっぽんだえもん)。

親と生き別れになって身を持ち崩したという過去、また実の子を捨てた過去もあります。

その子というのが、「浜松屋」の御曹司なんですけどね。

睨みと低い声で唸るような台詞回しが頭の風格を醸し出しています。

~重鎮の役者さんが演じることが多いです~

次に主人公の「弁天小僧菊之助(べんてんこぞう きくのすけ)。

江ノ島の弁財天の稚児出身のため、この名で呼ばれる、美形の若者。

賽銭をくすねたり盗みを働いたりするだけでなく、娘に化けて美人局(つつもたせ)も働く。

見た目が美しく、セリフも小気味好い、

とても魅力的なキャラクターです。

~音羽屋のお家芸でもありますが、立役も女形も共にこなせる役者が演じることが多いです。~

その兄貴分の、南郷力丸(なんごう りきまる)。

出自は漁師、弁天小僧の兄貴分として2人で悪事を働くが、日本駄右衛門に誘われて盗賊の道へ入る。

押しの強い兄貴分という感じ。

~声と態度がデカイ、そんなタイプとして演じられることが多いです~

赤星十三郎(あかぼし じゅうざぶろう)

優しい風情の色男。元は、武家の小姓だったが、忠義のために100両を盗み捕まえられる。

仕えていた家の姫の身投げを目撃し、自らも死のうとするが、忠信利平と出会い盗賊になる。

~優男ということで、女形の役者が演じることが多いです~

忠信利平(ただのぶ りへい)

元は、赤星の家来筋だったが、日本駄右衛門の手下となる。赤星十三郎の境遇を聞き、

助けようとするが、仲間にと頼まれ、そのまま一味に入れた。

~知的でスマートな役として演じられることが多いです~

簡単ではありますが、私も大好きな演目「弁天娘女男白浪」の紹介でした。

繰り返しますが、見て楽しい、聞いてワクワク、場の空気に魅了される素敵な芝居です。

初心者の方でもわかりやすい筋立てなので、

ぜひ一度ご鑑賞ください。

オススメで~す。

読んでくださり、ありがとう存じまする。