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「野田版桜の森の満開の下」(シネマ歌舞伎)感想。中村七之助の美しさと芸達者な役者たち

観劇レポート
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これが歌舞伎?と見紛う、豪華絢爛な舞台。

背景に流れるオペラのアリア。

2018年8月の歌舞伎座で上演された、

「野田版桜の森の満開の下」が、

映画になって蘇りました。



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「野田版桜の森の満開の下」とは?

現代演劇を代表する鬼才野田秀樹の話題作。

坂口安吾の小説を下敷きに戯曲化された舞台作品で、

野田秀樹率いる劇団での上演で人気を博した作品です。

それを歌舞伎で作っちゃおうと言って実現したのが、

平成29年8月の歌舞伎座納涼歌舞伎ででした。

「野田版」歌舞伎は、故十八代目中村勘三郎が、

新しいスタイルの演劇を目指しタッグを組んで創った、

古典と現代劇を融合させた新たなスタイルの表現です。

第4作目となったのが、この「野田版桜の森の満開の下」なのです。

歌舞伎座で好評を博したこの作品を、

シネマ歌舞伎として鑑賞できるとは、現代に生まれた恩恵でもあります。

美しく妖しく、そして魅惑的な舞台です。

そのストーリーは、

天智天皇が世を収める時代のこと、

ヒダの国の王の下に、3人のヒダの匠が呼ばれます。

集まった3名人、耳男、マナコ、オオアマは、

それぞれの正体と本心は隠したまま、王の話に耳を傾けます。

王の願いは、娘の夜長姫と早寝姫を守るために

仏像を彫って欲しいというもの、

3年の期間を与えられ、3人は個々の思惑に則り、

仏像を彫るのでした。

そして、その期限でもある日に起きる出来事とは・・・。

権力争いを背景に、人の心の浅ましさ、醜さ、美しさが

交錯し、物語はクライマックスへと進むのです。

ストーリーは荒唐無稽なところもあり、

何がどうしてどうなると論理的に説明するのが難しいです。

それでも、圧倒的な色彩と音楽に彩られた美しく妖しい世界は、

ロジックを超えイメージへ感情へと訴えてくる作品でした。



野田版歌舞伎は、野田秀樹、十八代目中村勘三郎の絆が生んだ!

先にも書きましたが、

1998年に催された、現代劇役者と歌舞伎役者とのワークショップから、

このストーリーは始まりました。

野田秀樹演出の歌舞伎舞台を作るという試みは、

2001年の「野田版 研辰の討たれ」で実現します。

次は、「桜の森の・・・」という約束をしたところで、

かなわぬまま勘三郎はこの世を去りました。

当時は、自分はヒダの王を演じ、若い役者に耳男、夜長姫、オオアマなどを

演じさせてはどうかという話もあったとか・・・。

その息子である、中村勘九郎が耳男、中村七之助が夜長姫を務めたことは、

勘三郎にとっても願ってもないことだったでしょうね。

この「桜の森の・・」は4作目ですから、

2人の絆が歌舞伎という世界にも種を蒔き、

新たなスタイルの歌舞伎を作り出していることにも感動を覚えます。

加えて、シネマ歌舞伎というものにも

勘三郎は好意的に評価をしていたそうです。

そういうことも踏まえると、この機会がまた特別なものとして感じられます。



 

「野田版桜の森の満開の下」の中村七之助、狂気を孕んだ姫の美しい笑顔にクラクラします

この作品で、夜長姫を演じるのが中村七之助です。

俗物ではない美しさが七之助の演技には漂います。

夜長姫は、美しくも残酷な姫君、として表現されることが多いようです。

確かに、美しいです。

そして、酷なセリフも多いです。

でも私が感じたのは、圧倒的な無邪気さです。

子どものような無邪気さと残酷さ。

だから、生々しさや恐ろしさを感じません。

ちっちゃい子が笑いながらアリを踏み潰すように、

夜長姫も人の生き死にを笑うのです。

七之助の演技力、

子どもの無邪気さの中に、ほんの一瞬見せる怜悧な表情(桜の神が宿ってるのでは?と疑うシーンです)、

これらを自然に演じ分けていることに脱帽します。

もちろん、美しさも格別で、

この役を演じるのにこれほどぴったりな役者はいないなあと

思えます。

強いていうなら、これができる人はあとは、若き日の玉三郎かな。

私にとっては、最近気になる役者さんなので、

歌舞伎の舞台での七之助ワールドも楽しみなところです。

*七之助さんについてはこちらもどうぞ

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「野田版桜の森の満開の下」芸達者な役者が魅力的

善と悪、静と動、彩と無彩、ボリュームと沈黙・・・

多彩な要素を入り混ぜたこの舞台をより一層魅力的に見せているのが、

役者の芸です。

歌舞伎は、型が大事、伝統に裏打ちされた型を徹底的に身につけることで、

歌舞伎の芝居は完成します。

さらには、それらはどういう形にも変容し本質を演じる力にもなると思います。

この作品に登場する役者は、若い方も多いのですが、

どなたもそのキャラクターをしっかりと作っていて、

舞台の中に吸い込まれるようでした。

野田秀樹の脚本の素晴らしさがあることは、いうまでもありませんけどね。

そこで、登場人物紹介もしたいと思います。

耳男:中村勘九郎

舞台狭しと駆け回る、体当たりの演技が、翻弄される男の悲喜を表しています。

夜長姫:中村七之助

美しさと狂気、この世のものではない存在感が素晴らしいです。

オオアマ:市川染五郎当時(現松本幸四郎)

尊大で権力に酔う男、野望のためには卑怯な手も臆せず使う。実悪な色男がハマっていました。

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ヒダの王:中村扇雀

王としての尊厳を称えつつも、夜長姫には翻弄される弱さも見せます。

マナコ:市川猿弥

したたかだけど技には熱い。この方あってのこの役ではないかと思えるほどの演技力。

閻魔大王:坂東弥十郎

物語の裏で物語を進める陰の社会の大ボス。でもユーモラスで憎めない。

早寝姫:中村梅枝

素直で純情なお姫様。騙されていることに気づかないお嬢っぷりがぴったりです。

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エナコ:中村芝のぶ

出演する場面は少ないもののすごい存在感でした。

 

シネマ歌舞伎は、月イチで今年いっぱい様々な作品を見せてくれるそうです。

DVD販売もあるようなので、見逃した方はこちらをご利用いただくのもいいかと思います。

読んでくださりありがとう存じまする!

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