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「一條大蔵譚」(11月歌舞伎座公演第三部)の感想

観劇レポート
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2020年11月の歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎、

第三部は、「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」でした。

志村けんさんのバカ殿様のモデルになったとも言われる、

大蔵卿の物語を観てきたので感想などを紹介します。



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歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」を見てきたよ!

11月23日(祝)にやっと「一條大蔵譚」を観ることができました。

奇しくも、国立劇場の第二部公演が千穐楽まで中止とニュースが

流れた日のことでした。

歌舞伎を観られる幸せを味わった観劇ともなりました。

歌舞伎座タワー地下の木挽町広場では、

今月の公演の舞台写真が販売されています。

人気の役者の写真は、売り切れという表示も見られました。

祝日なのに、まだまだ空席が目立つ劇場を寂しく思いましたが、

歌舞伎はコロナに負けず生き残ってるぞって

頑張っている人たちに励まされる思いがしました。

この「一條大蔵譚」は、通常「檜垣」「奥殿」が

セットで上演されることが多いのです。

それだと、ちょっとお芝居は長くなるけど、

大蔵卿のつくり阿呆がより強いインパクトを残すのです。

でも、このご時世、今回のお芝居は「奥殿」だけでした。

う~ん、ちょっと寂しいなあと思ったのは、

私だけではないでしょうね。

仕方ないんだろうな、、って思いながらも、

空席が目立つ原因の一つになっているかもしれません。

やはり、お芝居は一期一会、

観るときにはできるだけよい状態で観たいと思うのです。

このお芝居だったら、やっぱりセット上演、

「奥殿」も良かったので、前段がついていたら

もっと物語や登場人物に共感できただろうなあと

思わずにはいられませんでした。

それでは、このお芝居についての紹介と感想を書いていきます。



歌舞伎「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」について

〈配役〉

「奥殿の場」

一條大蔵長成  松本 白鴎

吉岡鬼次郎   中村 芝翫

女房お京    中村 壱太郎

八剣勘解由   松本 錦吾

女房鳴瀬    市川 高麗蔵

常盤御前    中村 魁春

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〈簡単なあらすじ・見どころ〉

平家全盛の世のこと、

源義朝の妻であった常盤御前は、

平清盛の寵愛を受けた後、公家の一條大蔵卿の元に

嫁いでいます。

一條大蔵卿は、阿呆と噂が高く、

常盤御前も源氏再興を諦めているのではと

かつての源氏の一人、吉岡鬼次郎と女房お京が、

屋敷に忍び込んで、その本意を探ろうとします。

しかし、常盤御前は楊弓遊びにふけるばかり。

お京の手引きで、常盤御前の部屋に入れた鬼次郎は、

なぜ、敵方に嫁いでいるのか、源氏再興の心はないのかと詰め寄ります。

それを聞き流す常盤御前に業を煮やし、弓で打ちつけます。

止めようとするお京、

しかし、常盤御前は、忠臣、あっぱれと鬼次郎を褒めるのです。

実は、楊弓の的の下には平清盛の姿絵、

子どもたちの安否を気遣い、

本心を隠し密かに源氏再興の時を待っていたというのです。

それを聞き、喜ぶ鬼次郎たち。

そこへ、大蔵卿の家臣である勘解由がやってきて、

その事実を清盛に伝えると言います。

勘解由は、阿呆と言われる大蔵卿を裏切り、

影で清盛と手を組んで家を乗っ取ろうとしていたのです。

そこに、颯爽と現れた大蔵卿の長刀により、

勘解由は斬り捨てられます。

阿呆と見えた大蔵卿も、それは世を偲ぶための芝居だったと明かします。

そして、鬼次郎に源氏再興の願いとともに、

重宝友切丸を与えます。

夜明けとともに、また阿呆に戻る大蔵卿、

鬼次郎らはその想いに感謝し源氏再興を誓うのでした。

詳しいあらすじはこちらです。

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歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎第三部「一條大蔵譚」の感想

それでは、11月23日(祝)に観劇した感想をまとめて紹介します。

上演時間は、16時45分~17時35分、約50分間です。

だから、「奥殿」だけなのね、、、。

もうちょっと尺を伸ばして、「檜垣」が一部入るとよかったなあ。

これは心の声ですけどね。

それでは、印象に残ったベスト3を紹介します。

ベスト3:中村芝翫の鬼次郎がスッキリ気持ちいい

吉岡鬼次郎、花道を小走りで走って颯爽と登場します。

この「颯爽」という言葉がぴったりの武士っぷりが、

とてもよかったです。

常盤御前の凋落ぶりを見て、血気にはやって詰め寄る心情や、

本心を知って、急に恥じ入り後に引くところも

鬼次郎という人物像を明確に描いていたなあって思いました。

声もよく通ってセリフも聞きやすかったな。

中村芝翫さんには、真面目な役者というイメージがあって、

いつももう少し余裕が欲しいなあと思うんですけど、

こういう正義漢は合うなあと見ていて気持ちよかったです。

真面目な人はこうやって、役を身につけていくのでしょうね。

また一回りいい役者になっていくなってちょっと嬉しく思いました。

ベスト2:女方3人、魁春、高麗蔵、壱太郎の三様の魅力

このお芝居には、3人の女方が出演しています。

常盤御前に中村魁春、女房鳴瀬に市川高麗蔵、

このベテランに混じってお京役は中村壱太郎です。

この壱太郎さん、なんとも言えない女っ気を醸し出すのがうまいです。

若いけれど、ベテランの胸を借り?

堂々としたお京を演じていました。

夫のため、源氏のために大蔵家に入り込むしたたかさと

常盤御前を守ろうとする心持ちが感じ取れました。

若いからね、後ろを向いた時のうなじが綺麗で、色気あるなって思いました。

市川高麗蔵さんは、裏切った夫を恥じて、自害するお役。

気づくと死んでて、あれ?って思ったんで

もうちょっと見せ場があるとこの方の良さも生きたのになあとちょっと残念。

そして、中村魁春さんの常盤御前は貫禄そのものです。

見えないところの手や表情の芝居がうまいなあと、

今回まじまじと見てしまいました。

常盤御前は、夫の仇に身を任せ、そこから大蔵卿に横流しにあい、

本心を隠しながらも芯がある難しい役だと思うんですよね。

中村魁春さんは、いるだけでそのお役になれる、貴重な役者さんですね。

女方の共演は見応えがあって大好きです。



ベスト1:松本白鸚の大蔵卿、もうちょっと観たかった・・・

松本白鸚さんの一條大蔵長成は、

つくり阿呆ではありますが本心は誇り高く地力に優れた方です。

その2パターンを瞬時に演じ分けるのが

このお芝居の醍醐味だと私は思っています。

その演じ分け、本当に見事なんですよね。

奥殿は、颯爽とした姿で出ていらして、

途中にちょっと阿呆味をにじませて、

最後は阿呆というより狂気の人を出し切っていて、

圧巻の一言だなあと思いました。

だからこそ、前段のまるっきり阿呆な姿を見たかったのよね~~。

それを見ると、もっとこの方の演技力に

引き込まれたと思うので、なんか残念でもありました。

それでも、この方のこのお役が見られるのは、

貴重な体験だと思うのでベスト1です。

コロナウイルス感染拡大が止まらない今、

こうやってお芝居が観られることが

もしかしたら奇跡的に幸せなのだろうなって思った一幕。

無事に千穐楽を迎え、来月の初日が開けることを、

心よりお祈りしています。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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