9月2日(月)京都南座で、「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」が
初日を迎えました。
京都南座は、先月の超歌舞伎に続いて、
またもや関西では26年ぶりとなる話題の舞台です。
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」
について紹介します。
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」のあらすじ、主な配役、上演時間
では、初めにあらすじを紹介します。
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」のあらすじ
序 幕
浅草観音額堂の場
按摩宅悦内の場
浅草観音裏地蔵前の場
同 田圃の場
*塩冶浪人の伊右衛門は、
妻のお岩を連れ戻された恨みと、
自らの御用金盗みの悪事を知られたことから、
舅の四谷左門を殺害します。
一方、同じく塩冶浪人であり、今は薬屋の直助は
お岩の妹お袖に横恋慕しています。
しかし、お袖は佐藤与茂七という許嫁がある身、
そう簡単に心を許しません。
家が苦しいお袖は、
夜になると地獄宿で夜の勤めもしています。
そこで、直助に迫られるのですが、
新たにやってきた客に呼び出されて、
難を逃れます。
その客というのは、なんと許嫁の与茂七でした。
初めは、お互いの事情も知らず責めるのですが、
誤解が解けると、夫婦としてのよりを戻します。
腹が収まらないのは、直助です。
仲睦まじく帰った2人の後を追いかけます。
与茂七は、浪人仲間の奥田庄三郎から、
塩谷の家老大星由良之助からの、
高家討ち入りを示す廻文状を受け取ります。
その支度へとかかる与茂七は、
庄三郎の勧めのまま、衣服を取り替え出発します。
そこに、嫉妬に狂った直助が現れ、
与茂七と間違えて庄三郎を惨殺します。
ともに、人殺しの伊右衛門と直助。
父を探しに来たお岩と与茂七を探しに来たお袖、
2人の変わり果てた姿に嘆き悲しみます。
そこへ、伊右衛門と直助は何食わぬ顔をして、
姉妹を騙し、敵討ちを約束するのでした。
二幕目
雑司ヶ谷四ッ谷町伊右衛門浪宅の場
伊藤喜兵衛内の場
元の伊右衛門浪宅の場
*やがて伊右衛門の子を産んだお岩は
産後の病に苦しみます。
そんなお岩を伊右衛門は毛嫌いし、
悪口を言ったり、暴力を振るったり、
挙げ句の果てはお金や物をせびる始末。
そんな折、隣家の伊藤喜兵衛宅から、
血の道に効くという薬をもらいます。
その他にも品やお金の援助を受け、
伊右衛門は、周囲の勧められるまま、
伊藤家へお礼を告げるために向かいます。
届けられたという薬を飲み、
その恩に感謝するお岩、
しかし急に高熱を発し、
顔が腫れ上がってしまいました。
実は、その薬はお岩の顔を毒薬で醜くして
伊右衛門と離縁させ、
孫娘のお梅と添わせるという、喜兵衛の企みでした。
その企みを知った伊右衛門は、
高家への仕官の口利きを条件に、お梅との結婚を承諾します。
真実を知ったお岩は、
伊藤家や伊右衛門への恨みを口にし、
伊藤家へ向かう身支度をするのですが、
それを止める宅悦ともみ合ううちに、
刀で喉をきり、絶命してしまいます。
そこで伊右衛門は、情死に見せかけるため、
お岩の死骸と、
薬を盗んだ罪で捕らえていた小者の小平の亡骸を
同じ戸板に打ち付け、川に流します。
やがて、お梅が嫁いできますが、
お岩の怨念に惑わされ、
伊右衛門は喜兵衛とお梅を殺してしまうのでした。
三幕目
砂村隠亡掘の場
*伊右衛門と権助が隠亡掘で再会します。
直助は、権兵衛と名を変えて、
お袖と夫婦同然になっており、
鰻を捕らえて生活していたのです。
伊右衛門の相変わらずの悪人ぶりに、
高家の仕官が叶ったら、自分にもその分前を、
と言って去っていきます。
そこに戸板が流れつき、お岩と小平の怨霊に
恨みの言葉を言われ、
その恐ろしさに戸板を放り投げます。
そこに現れたのは、与茂七と小平女房のお花。
暗闇の中で探り合います。
大詰
蛇山庵室の場
*その後も伊右衛門はお岩の怨霊に悩まされ続け、
病の床についています。
お岩の命日に、
再びその怨霊が現れ、母のお熊や仲間の長兵衛らを
とり殺してしまいます。
改めて執念深い怨みを思い知らされる伊右衛門、
ここに、与茂七とお花が再び現れ、
仇の伊右衛門を討ち果たすのでした。
劇場パンフレットに掲載されている、
人物相関図です。
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」主な配役
民谷伊右衛門 片岡 愛之助
お岩/佐藤与茂七/小仏小平
中村 七之助
直助・権兵衛 市川 中車
お岩妹お袖/小平女房お花
中村 壱太郎
按摩宅悦 片岡 千次郎
乳母おまき 中村 歌女之丞
舞台番/伊藤喜兵衛 片岡 亀蔵
後家お弓 市村 萬次郎
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」の上演時間
通し狂言 東海道四谷怪談の上演時間
【昼の部】
序幕 | 11:00-11:55 |
幕間 30分 | |
二幕目 | 12:25-13:55 |
幕間 20分 | |
三幕目・大詰 | 14:15-15:00 |
【夜の部】
序幕 | 16:30-17:25 |
幕間 30分 | |
二幕目 | 17:55-19:25 |
幕間 20分 | |
三幕目・大詰 | 19:45-20:30 |
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」の見どころ、七之助が見せる3役早変わりも注目
関西での上演が26年ぶりとなる本作。
十八代目中村勘三郎がコクーン歌舞伎で上演し、
超話題ともなった本作。
その意思を継いだ中村七之助、上方歌舞伎の片岡愛之助、
芸達者な市川中車の三人の演技に注目です。
見どころ1:歌舞伎の面白さが存分に楽しめる演出の数々
忠臣蔵の世界を背景に、
時代に翻弄される市井の人々の暮らし、
陰惨な殺人と死霊の恨みを描いた怪談物の傑作。
その舞台では、
毒を飲まされたお岩が、櫛で髪をすくたびに、
毛が抜け落ちる有名な「髪梳き」の場面。
戸板に縛られた男女ふたりの遺体を
ひとりの演者(中村七之助)が
早替えで見せる「戸板返し」。
さらに恐怖をあおる演出「提灯抜け」など、
歌舞伎ならではの仕掛けがたっぷりなのです。
見どころ2:中村七之助の3役がすごい!
今回中村七之助は、
主人公お岩の他に、
妹お袖の許嫁佐藤与茂七、
小者の小仏小平という3役を
初役で演じ分けています。
祖父も父も、演じて喝采を浴びたこれらの役、
七之助独特の美しさが相まって、
より儚げにより恐ろしく映ることでしょうね。
戸板返しの早替えには、早くも高い評価の声が上がっていますよ。
見どころ3:主役3人の意気込み
七之助だけでなく三人とも初役でした。
公演まえのメディアより、三人の意気込みを簡単に紹介します。
中村七之助(中村屋)
「祖父も父も大好きだったお役。
お岩にかける熱意や思いは、体に、細胞にしみ込んでいます」
と語る七之助。
監修の坂東玉三郎から、みっちり稽古を受け、
この舞台に臨みます。
*中村七之助については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みくださいね。
https://kabukist.com/shitinosuke-329
片岡愛之助(松嶋屋)
「(民谷伊右衛門は)色悪代表のようなもの。非常に難しい。
生々しい人間の思いというのが描かれた、南北の独特のキャラクター、
楽しみながら演じたい。」
と語る愛之助。
南北独特のセリフをどう聞かせてくれるのかも期待です。
*片岡愛之助については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みくださいね。
https://kabukist.com/post-73-73
市川中車(澤瀉屋)
「『四谷怪談』をまだ見たことのない方には、
怖い印象だと思いますが、
怖さの奥にある歌舞伎特有の息遣い、
そのすごさを見ていただけたら」と語ります。
映像とは違う生の迫力をどう見せてくれるでしょうか。
*市川中車については、こちらにも書いていますので、よかったらお読みくださいね。
南座九月花形歌舞伎「東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)」初日は大入り満員!
9月2日の初日は、午前中は学校の貸切公演だったそうです。
大入り満員で盛況だった様子です。
この日を迎えるにあたり、
東京・陽運寺では、
中村七之助と中村壱太郎が、
京都・南座新開場記念・九月花形大歌舞伎「東海道四谷怪談」
の安全祈願を行ったそうです。
千穐楽まで無事に皆さまお務められますように。
そして、盛況のうちに終えられることをお祈りします。
初南座観劇!感想勝手にベスト5
さて、この「東海道四谷怪談」を24日に観劇してきたので、
その感想として印象に残ったことを追記します。
その1:幽霊になっても品格のあるお岩、七之助熱演!
七之助のお岩、武家の娘としての品格が漂う女性です。
伊右衛門に酷い仕打ちを受けても、宅悦に言い寄られても、
さらには幽霊になっても、
その凛とした品を落とすことがなかったお岩さま。
所作や表情、言葉遣い等、細部にいたり丁寧に演じ、
そこに愛する人に裏切られた哀れさや悲しさが
にじみ出ていました。
その2:人間臭い悪人、愛之助の伊右衛門と中車の直助・権兵衛
伊右衛門も直助・権兵衛も、とんでもない悪いやつなのですが、
どこかで、憎みきれないところがあります。
伊右衛門は身を立てられない不満、
直助は好きな女性への恋慕、
悪事の根は、人間臭い悩みなんですよね。
結局思いは果たせないし、二人とも。
そこが、冷酷、非道とは言い切れない様を好演していたと思います。
その3:お袖とお梅、一途な娘が悪い男も引き立てる
若手女形の中村壱太郎と、中村鶴松の可憐さも光りました。
どちらも、恋する人を一途に思い詰め、
そのためなら手段を選ばない強さもあります。
この2人も添い遂げることが叶わない、悲しい運命なのですが、
それだけにその一途さが印象に残りました。
その4:芝居小屋の雰囲気を醸し出す狂言回し
芝居の始まりと途中に、舞台番助造が登場。
ストーリー展開を助ける狂言回しです。
片岡亀蔵がこの役を務めたのですが、
この語りが芝居らしさを醸し出していたと思いました。
その5:按摩宅悦を好演、片岡千次郎
第2幕、お岩や伊右衛門に仕えている按摩の宅悦。
甲斐甲斐しく、世話を焼くだけでなく、
伊右衛門からは悪事の片棒をかつぐよう言われ、
オロオロする場面もありました。
お岩が薬を飲んで面相が変わる場面や、
髪梳き、そして命を落とす場面など、
宅悦との絡みが重要です。
片岡千次郎の熱演でした。
憧れの南座で「東海道四谷怪談」。
とても心に残る舞台となりました。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
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