「傾城反魂香」、読み方が難しいですね。
「けいせいはんごんこう」と読みます。
歌舞伎では、三段構成の中の上の段に当たる
土佐将監閑居の場(とさしょうかんかんきょのば)がよく演じられる人気演目となっています。
その原作、あらすじ、見どころなどをお伝えします。
三月大歌舞伎
『傾城反魂香』ポスター pic.twitter.com/ZRrYmoIOX2— 市川笑三郎後援会 (@emisaburo56) February 18, 2019
傾城反魂香(けいせいはんごんこう)は?文楽・落語でも人気の演目
「傾城反魂香」は、三段構成の演目で、原作は近松門左衛門、
初演は人形浄瑠璃で1708年に大阪の竹本座で上演されたそうです。
絵師として有名な狩野元信の150回忌に当て、書かれたということですが、
まったくのフィクションということです。
元信と恋人銀杏の前の恋愛に、吃音だが正直者の絵師又平の逸話と名古屋山三と不破伴左衛門との争いから生じたお家騒動などが、
混ぜ込まれた物語だったということです。
だった、、というのは、現在繰り返し上演されているのが、
又平の逸話である土佐将監閑居の場だからです。
元は人形浄瑠璃の作品ですが、
1719年に大阪で歌舞伎化されました。
又平の人間像が当時の方にも魅力だったのでしょうね。
この場面への人気が高く、片岡仁左衛門のお家芸の一つにもなっているそうです。
主人公の「どもりがある絵師の又平」を縮めて「吃又(どもまた)」の名でもよく知られています。
題名の「反魂香(はんごんこう)」ですが、中国の故事に由来するとのこと、
お香を焚くと亡くなった恋しい人の姿が現れるというというものだそうです。
この部分は落語にも取り入れられていて、「高尾」「反魂香」という作品で
人気の演目だそうですよ。
歌舞伎、文楽、落語と見比べると、
どの部分が大事に描かれているかわかりそうですね。
傾城反魂香~土佐将監閑居の場(とさしょうかんかんきょのば)~の主な登場人物
ここからは、よく上演される土佐将監閑居の場について紹介していきます。
初めに、登場人物の紹介です。
浮世又平(うきよまたへい)
腕のいい絵師であるが、吃音を持っており、大津絵で生計を立てている。師匠に軽んじられ、絶望の末、ある奇跡を起こす。
又平女房おとく(またへいにょうぼうおとく)
又平の女房であり、口が達者で明るい女性。夫のことを心から思っている。
狩野雅楽之介(かのううたのすけ)
狩野元信の弟子。元信の危機を知らせにくる。
土佐修理之介(とさしゅりのすけ)
土佐将監の弟子。虎を消し褒美に土佐の名を許される。
将監北の方(しょうかんきたのかた)
将監の妻
土佐将監光信(とさしょうかんみつのぶ)
優れた絵師であり、又平、修理之介の師匠。
傾城反魂香~土佐将監閑居の場~の簡単なあらすじ
大和絵の一派、土佐派の総帥である土佐将監光信の邸の近くで、
虎が出没するという騒ぎが起きる。
ある日、近隣の百姓たちが、土佐将監のところまで、
藪の中に虎が逃げ込んだと訴えにきた。
こんなところに虎などいるわけはないと
弟子の修理之介がいうのだが、
将監、北の方の命令で近くの藪を探すこととする。
すると、虎がいるではないか、、、
しかし、将監はそれを、実物ではなく絵だと見破る。
狩野元信が書いた虎の絵から抜け出した虎であろうと。
絵であれば、消して見せると修理之介が、見事に虎の姿を消すことに成功する。
そのことに感心した将監は、修理之介に土佐の名字を名乗ることを許すのであった。
日暮れごろ、修理之介の兄弟子である浮世又平が、
女房おとくとともに、将監の元を訪れ、
自分にも土佐の名字をと懇願します。
生まれつき吃りのある又平は、思いをうまく伝えられないものの、
おとくの助けも借り身振り手振りでその思いを伝えるのです。
しかし、将監は又平の願いをはねつけ、
又平夫婦は悲嘆の涙に暮れます。
そこに、狩野元信の弟子である雅楽之介が現われ、
元信の姫の窮地を知らせ、助けを求めます。
自分をその助けに、、とも懇願する又平ですが、
その願いもはねつけられ、
絶望した夫婦は死を覚悟するのです。
この世の名残に、手水鉢に自画像を残そうと、
渾身の筆を振るう又平。
別れの水杯をすくおうとしたおとくは、
手水鉢の裏に通り抜けた自画像を発見して驚きます。
又平の執念が、起こした奇跡、
それを見た将監は、ようやく又平に名字を名乗ることを許すのでした。
そして、姫救出の一因にも加えられることとなり、
新しい着物と大小の刀も譲り受けます。
喜ぶ又平、
おとくが打つ鼓に合わせて出発の舞を舞います。
すると、又平の言葉もスルスルと出てきます。
又平、おとく、ともに喜ぶ中、又平は出発するのでした。
傾城反魂香~土佐将監閑居の場~の見どころ
では、劇場で観劇する際の見どころをお伝えします。
3つに絞ってお伝えしますね!
傾城反魂香の見どころその1:女房おとくの見せ場に注目
1つ目は、どもって思いをうまく伝えられない又平に変わって、
それを伝えようとするおとくの弁舌に注目したいです。
夫の思いを汲み取り、明るく、倍増しして語るおおとく、
今の時代でもいそうな奥さんです。
お客様とか、近所の村人ならそれでよかったかもしれませんが、
師匠に名前をくださいと頼み込むのは、
かなり勇気もいったでしょうね。
そんな心情をも想像しながら見たい場面です。
傾城反魂香の見どころその2:手水鉢の向こうに通り抜けた自画像
絶望のあまり、死のうとする又平、
その前に、この世の生の証として手水鉢に自画像を描きます。
その渾身の力作が、鉢の向こう側に通り抜けてしまうという
奇跡を起こすのです。
文章だけだと想像しづらいですよね~~。
解説によると、舞台でのこの演出は、
黒子さんのお働きによるものらしいです。
石を通り抜けた自画像とはどんな表現になるのか?
それを見た又平夫婦の驚き、
そして将監があっぱれと手柄を認める感動の場面を
見逃さないようにしたいですね。
傾城反魂香の見どころその3:立派な姿で舞う又平の変身ぶり
お芝居の終盤、名字を持つことを許され、
さらに、狩野元信の姫救出へも出立が命じられた又平、
とんとんと~~んと出世したイメージですね。
それを象徴するかのように新しくいただいた着物を身につけ、
鼓に合わせて舞う場面があります。
それまでは、吃りでうまく話せず、
ちょっと地味な又平が、
身なりを整え舞いながら、詞を語ります。
それまでの、吃りが消えて、
スラスラと詞が出てくる又平は、
全くの別人にさえ見えるのです。
このお芝居のクライマックス、ハッピーな幕切れにふさわしい
晴れやかな又平の姿も目に焼き付けたいなって思います。
この役は片岡仁左衛門さんも当たり役にしているとのこと、
こりゃかっこいいだろうな~~
「傾城反魂香~土佐将監閑居の場~」は、
度々上演されますので、公演情報をチェックして観に行ってくださいね。
又平とおとくの息のあった夫婦芸も注目の心温まる作品です。
読んでくださりありがとう存じまする。
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