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引窓・角力場〜双蝶々曲輪日記【歌舞伎演目】のあらすじ、登場人物、見どころ紹介

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引窓(ひきまど)・角力場(すもうば)は、世話狂言の名作として、

度々上演されている演目です。

この2つは、「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」という

通し狂言の二つの場を取り上げたものです。

本来は、もっと長いストーリーなのですが、

通しで上演されることはあまりなくて、

この人気の場面だけは、何回も上演されています。

それぞれのあらすじ・登場人物・見どころなど紹介します。

観劇のお役に立てれば、とっても嬉しいです。



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【歌舞伎】引き窓・角力場~双蝶々曲輪日記とは?

では、初めに「双蝶々曲輪日記」について説明しますね。

この漢字読みづらいですね。

歌舞伎の演目は、あて字が多いのですが、

この「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」も、

物語の登場人物や内容に由来した漢字を使っているのですよ。

このあと紹介する2段目の「角力場(すもうば)」に登場する

2人の相撲取りの名前が、

濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)と放駒長吉(はなれごまちょうきち)といい、ここに由来があるのです。。

長五郎、長吉と、2人とも「長」の文字がつくことから、

双(ふたりの)蝶々(長五郎と長吉)という題名になったそうです。

どっちも力士なので、可愛い蝶々のイメージには

ほど遠い気がしますけどね。

曲輪日記というのは、「引窓(ひきまど)」に登場する

南方十次兵衛(なんぽうじゅうじべえ)の女房お早が、

以前は廓の遊女だったというところからついたそうです。

物語の発端に、もう一人遊女が絡んでいることも、

関係あるようです。

それにしても、なんとなく、読みにくいわねえ、ってことから、

外題(げだい)として、「双蝶々」、「角力場」、「引窓」、

などと呼ばれることもあるようです。

この演目は、原作は九段目まであるのですが、

歌舞伎では、二段目の「角力場」、八段目の「引窓」が

好まれて、よく単独で上演されています。

私も、「引窓」は何回か観ていますが、

それ以外は観たことがありません。

あとで紹介しますけど、情景の描写や、

登場人物の優しさが、ほんわかさせてくれるお芝居なんですよ。

たまには、心が温まる芝居が見たいよね、

という時にぴったりな内容なんです。

主人公は濡髪長五郎という力士です。

これには、モデルになった人物がいたそうです。

四股名は荒石といったそうですが、

喧嘩の時に、水で湿らせた紙を額に当てて、その上から手ぬぐいを被り、

刀よけとしたことが、「濡れ紙」とあだ名をつけられていたそうです。

江戸の人って、喧嘩が好きだったのかしら、

って思っちゃうようなあだ名です。

ちなみに、歌舞伎の主人公は、「濡髪」です。

同じ「かみ」でも意味は違うようですね。



引窓・角力場~双蝶々曲輪日記【歌舞伎演目】のあらすじ、登場人物

それでは、二段目の「角力場」と八段目の「引窓」について

あらすじ(簡単な)と登場人物を紹介します。

【歌舞伎】引窓・角力場~双蝶々曲輪日記の簡単あらすじ

二段目「角力場」

大阪の、高麗橋にある相撲場で、人気力士の濡髪長五郎と放駒の長吉の取り組みがありました。

そこへ、若旦那の与五郎が、贔屓の濡髪を応援しにきます。

その父である与次兵衛は、聞こえよがしに意見をします。

さて大詰めの勝負、なぜか、濡髪があっさり負けてしまいます。

与五郎は、負けに納得できず文句タラタラでしたが、

長五郎に遊女吾妻の見受けを引き受けると言われ、

喜んで、吾妻の元へ向かいます。

与五郎は、吾妻と恋仲ですが、平岡という横恋慕をする侍がいました。

平岡は放駒の長吉を贔屓にしていたので、

長五郎は、わざと勝負に負け、その代わり吾妻から手を引いてもらう

考えでした。

しかし、それを頼んでも長吉は聞き入れません。

2人は睨み合い、再会を約束してその場をわかれます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(心の声)

真剣勝負と思いきや、、、義理を立てる濡髪のかっこよさ、

人の恩に報いる気持ちはわかるけど、

悪人には、その気持ちはなかなか伝わらないというのが

世の常ですね。

しかし、それ以上に理解できないのが与五郎ですよ。

ここには書いてありませんが、妻子ある身でありながら、

遊女に入れ上げるとはっ!!

ぼんぼんのやることには呆れてしまいます。

 

八段目「引窓(引き窓)」

(この段の前に、長五郎は平岡を殺し、追われる身となっている)

京に近い八幡の里に住む母のお幸の家に、長五郎が逃げてきます。

お幸は再婚し、その家には、夫の子南与兵衛(なんよへえ)と

その女房お早と一緒に住んでいました。

濡髪はお幸が再婚する前に、よそへ里子に出した実子でした。

再会を喜んだのもつかの間、

濡髪は殺人を犯し逃亡の身、とりあえずは家の2階で休むことにすします。

そこへ、与兵衛が帰ってきました。

与兵衛は、亡父の仕事だった郷代官に任じられ、

十次兵衛の名前もいただいてきます。

逃亡した濡髪の行方を探す初仕事を請け負ってきたのです。

その話を聞き、驚くお幸とお早。

ただし、その任務は夜更けから夜明けまでとのことでした。

十次兵衛が、庭の手水鉢に目をやると、

そこに二階から見下ろす濡れ髪の姿が映りました。

気づいたお早が慌てて引窓を締めます。

濡髪が、義母お幸の実の子であると察した十次兵衛、

それとなく、抜け道をつぶやき、

村を探索すると言って出て行くのでした。

濡髪は、十次兵衛のためにも捕らえられる覚悟をします。

それを止めるお幸とお早。

逃げ落ちてほしいと、目立つ濡髪の前髪と頰の黒子を

剃り落とそうとします。

前髪は落とせたけれど、黒子を剃ることが難しい。

と、そこへ戸の外から、金子が投げ込まれ、

それが濡髪の頰にあたり黒子を削り落とします。

金子は、十次兵衛が路銀にと用意したものでした。

濡髪は、一家の温情に感謝しつつも、

人の世の義理を大事と母を説き、

母は、泣く泣く、引窓の紐で濡髪を縛って十次兵衛へと

差し出すことにします。

しかし、十次兵衛は、その紐を切ります。

すると、引窓が開き、明るい月の光が差し込みました。

それを見た十次兵衛は、

「自分の役目は夜明けまで、今日は放生会(ほうじょうえ)」といい、

濡髪を逃すのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(心の声)

十次兵衛一家の温情と灯の効果抜群の引窓が、

温かく胸を打つストーリーですね。

みんな心の中には、お互いを思いやる気持ちがあり、

それでも罪を犯した長五郎を捕えなければならない十次兵衛。

義理と人情の板挟み、とはこういうことを言うのでしょう。

最後は、ほんわかした気持ちになれるのが

素敵なお芝居だなあと思っています。

 

引窓・角力場~双蝶々曲輪日記【歌舞伎演目】の登場人物

濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)二・八

人気力士、与五郎の恩に報いようと八百長勝負をする。その思いも虚しく、結果として、平岡を殺してしまうことになり、追われる身となる。実の母のお幸の家を訪ね、一家の温情を受ける。

南与兵衛 後に 南方十次兵衛(なんよへえ のちに なんぽうじゅうじべえ)八

遊女お早と駆け落ちして夫婦になる。八幡で亡父の職である郷代官を任されるが、初仕事が濡髪をとらえることになり、苦悩する。

お早(おはや)八

吾妻と同じ遊女出身、与兵衛と駆け落ちする。夫の出世を喜ぶが、お幸と濡髪の関係を知り苦悩する。

お幸(おこう)八

濡髪の実の母。里に養子に出してその後代官の与兵衛の父に嫁いだ。義理の息子と実の息子の間で板挟みとなる。

放駒長吉(なれごまちょうきち)二

素人相撲で人気になり、濡髪と対戦する。勝ったもののその裏を知り、濡髪と喧嘩するが、のちに和解し、濡髪を救おうとする。

山崎屋与五郎(やまざきやよごろう)二

濡髪を贔屓にしている若旦那。遊女吾妻と恋仲になり、妻子がいる身ながら駆け落ちしてしまう。後に平岡に捕らえられ、それが濡髪が人を殺めるきっかけとなる。

藤屋吾妻(ふじやあづま)二

遊女でありながら、与五郎と駆け落ちする。

平岡郷左衛門(ひらおかごうざえもん)二

吾妻に横恋慕をする悪い侍。放駒を贔屓にしている。後に悪巧みのため、濡れ髪に殺される。

二(二段目登場)・八(八段目登場)

 

それぞれの義理がうまく絡み合った人物構成だなあと思います。

物語を盛り上げる人物描写は作家の腕によりますね。

 



引窓・角力場~双蝶々曲輪日記【歌舞伎演目】の見どころは、母の存在感と江戸のお相撲事情

では、この2つのお芝居の見所を3つ紹介しますね。

見どころ1:江戸のお相撲事情を垣間見られる二段目描写

お相撲は、江戸時代に、歌舞伎と並ぶ庶民の楽しみだったそうです。

職業力士もいたとのこと、最上位は、大関で、

濡髪も大関ですから、とっても強い力士なのです。

しかし、放駒長吉は、プロではなく相撲が強い若者です。

ちょっと、非行少年ぽいところがあります。

その少年がプロ力士と勝負できるのは、

勧進相撲(かんじんずもう)という、非公式な場での草相撲。

神社などの寄付を集めるための興行だったそうです。

町の人が集まって、やいのやいのと声援する様子から、

庶民にとっての楽しい社交であり見世物でもあったことがうかがえますね。

濡髪長五郎の、言葉遣いや身体の使い方は、

当時の力士を表しているので、

それをじっくり見てみるのも面白いと思います。

見どころ2:芝居を引き立てる引窓の効果

八段目の外題となっている「引窓」

これは、舞台になった八幡の土地の名物だそうです。

なんでも、竹やぶが生い茂る鬱蒼とした土地だったということで、

日中でも屋内が薄暗く、天窓をつける家が多かったとのこと。

縄をつけて、自由に開閉できるようにしつらえてあり、

そこから「引窓」の名がついたということです。

その時代、その地域の風物を想像できる、

素敵な道具ですね。

劇中で閉める場と開ける場があるのですが、

そのさいの月明かりの明暗がくっきりとして、

非常に効果的に舞台を彩るのです。

季節は中秋の頃、

日本の自然を愛でる気持ちが込められた演出だなあと

感じます。

見どころ3:母の葛藤と、全て善人な人物の心情描写

この物語の主人公は、濡髪長五郎ですが、

引窓では、母のお幸の葛藤がお芝居の中心として描かれます。

実の息子と義理の息子の間に挟まれつつも、

実の息子濡髪を逃そうと必死になる。

そこには、里子に出した負い目もあったのでしょうか、と

母の心情を思いやります。

引窓に出てくる一家4人は、いずれも善人ばかりです。

罪を悪いと知りつつも、

その理由には同情し、

血はつながらずとも互いに思いやる心の優しい人たちです。

母の情愛と、互いに思いやる人々の優しさが

心にしみるお芝居だと思います。



まとめ

・「引窓」「角力場」は、通し狂言「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」の2つの場、人気があり単独で上演されることも多い。

・「角力場」は、江戸時代の相撲の様子や主人公濡髪長吉の義理から物語が始まるきっかけが見どころ。

・「引窓」は、田舎の情緒あふれる描写と、親子の温かな情愛が通い合う場面が見どころ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回は、通し狂言の一部でもありながら、

単独でも上演される機会が多い「引窓」「角力場」を紹介しました。

江戸時代の人々の娯楽や暮らしぶりも楽しめるお芝居ですよ。

ぜひ、一度ご覧くださいね。

2020年9月の歌舞伎座では、この演目を上演しています。

生のお芝居は格別ですよ。

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読んでくださり、ありがとう存じまする。



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