歌舞伎 毛抜(けぬき)のあらすじ、登場人物、成田屋十八番の名作

歌舞伎演目「毛抜(けぬき)」は、市川海老蔵でおなじみの成田屋十八番の一つです。

奇想天外、ちょっとナンセンスなところもあって、なかなか見所の多いお芝居なんですよ。

どんな演目なのか、登場人物、あらすじも合わせて説明します!



歌舞伎十八番「毛抜」とは?

題名になっている「毛抜」ってなんのことだかわかりますか?

あの「毛抜き」です、日常生活でもよく使う、あれなんですよ。

その毛抜きが、磁石とともにストーリーの要であるという

奇想天外なストーリーで人気の演目です。

初演は1742年、大阪で上演されました。

その時に粂寺弾正を演じたのが2代目市川海老蔵です。

その後も4代目、5代目の市川海老蔵が演じたこともあり、

1832年に成田屋の歌舞伎十八番に入れられました。

しかし~~~、1850年を最後に、上演がプッツリと途絶えてしまったんだそうです。

それを復活上演を果たしたのが、2代目市川左團次だそうです。

1909年に59年ぶりの再演だったそうですが、

伝承されていたものはなかったそうで、

現存していた「鳴神不動北山桜」の脚本に岡鬼太郎が手を入れ、

その第三幕として新たに作り直したということです。

江戸時代の海老蔵が見たら、なんていうのかな?

そういうこともあり、現在の毛抜きは、

市川左團次家が演じる時と、市川團十郎家が演じる時とでは、

衣装が違うのだそうです。



歌舞伎 毛抜の登場人物は

粂寺弾正(くめでらだんじょう)

文屋家の家老。豪快な強さと知性を併せ持ち、使者として訪問した小野家のお家騒動を解決する

小野春道(おののはるみち)

公家で小野小町の子孫。国家転覆を狙う早雲王子の策略で苦境に陥る

小野春風(おののはるかぜ)

春道の子息。腰元恋外恋仲になる。家宝を持たせた恋その消息不明により、責任を取る覚悟をしている

錦の前(にしきのまえ)

小野春道の息女。原因不明の奇病のため、婚約者文屋豊秀との婚礼を先延ばしにしている。

秦民部(はたみんぶ)

忠義心が厚い小野家の家老。家宝の探索に力を注ぐ。

八剣玄蕃(やつるぎげんば)

小野家の家老だが、早雲王子と通じ、小野家の乗っ取りを画策する。

巻絹(まきぎぬ)

小野家の美しい腰元

小原万兵衛実は石原瀬平(おはらのまんべえじつはいしはらせへい)

小磯の兄を名乗るが、実は早雲も王子の家来。正体を弾正に見破られる。



歌舞伎 毛抜の簡単なあらすじ

朝廷では、小野家の家宝の「ことわりの短冊」を用いて、雨乞いの儀式をすることになった。

しかし、当の短冊が盗まれてしまいます。

小野家では、その責任を小野家の家老秦民部にと、八剣玄蕃らが言いがかりをつけ、

当主の春道がそれを収めようとしているところに、文屋家の使者が到着します。

使者としてつかわされたのが、文屋家家老の粂寺弾正でした。

主人の文屋豊秀は、小野春道の娘である錦の前と婚約しているのだが、

姫が病気という知らせのまま、話が進まないことを案じて、

様子を探るよう言いつかってきたのです。

姫に合わせて欲しいと弾正の頼みにより、薄衣を被った姫が姿を見せます。

姫の奇病とは、なんと髪の毛が逆立つというもの、

薄衣を被って入ればそれは治るというのを目の当たりにした弾正。

びっくりした弾正は春道にも面談を願い出ます。

取り次ぎの間、もてなしに来た、美しい小姓や腰元に色目を使おうとする弾正ですが、

ことごとく振られてしまいます。

そんな時、ふと床に置いた毛抜きが勝手に逆立って動き始めるのに気づき、

弾正は仰天します。

試しに、煙管、小柄(こづか)を置いたところ、キセルは動かないが、小柄は動く。

何かに気づく弾正、

そこに、小原万兵衛という百姓が、奉公していた妹の小磯が殺されたと押しかけてくる。

弾正は、死んだ妹を返せと詰め寄る万兵衛に、「妹を返してくれ」と書いた転害を渡すと、

閻魔大王に妹を返してもらえ、と言って斬り殺してしまいます。

非難する現場に対し、

本物の万兵衛は文屋家の領地におり、妹が殺され小野家からの預かりものを取られたと

訴えて来たことを明かします。

そして、死んだ万兵衛の懐からは、小野家の家宝の短冊が見つかります。

家宝を取り返してくれたお礼を述べる春道。

今度は、弾正は、錦の前に向かって、髪飾りを外すように持ちかけます。

姫が髪飾りを外すと、逆立っていた髪の毛が元通りに直ります。

病気の原因は、鉄でできた髪飾りだったのです。

弾正が、天井を槍で突くと、磁石を持った男が落ちて来ます。

男に誰の指図か問い詰めているときに、玄蕃が男を斬り殺してしまいます。

この一連の悪巧みは玄蕃が関わっていたのでした。

弾正は、現場を成敗すると、これで役目が済んだと意気揚々と文屋家へ帰っていくのでした。



歌舞伎 毛抜の見どころ

お家騒動を解決するヒーロー、粂寺弾正。

そのヒントは「逆立つ毛抜」という、奇想天外なストーリーと

おおらかな主人公が魅力的な演目です。

見どころも、その謎解きの部分と弾正のエピソードから紹介します。

毛抜の見どころ1:逆立つ毛抜きと髪の毛の謎

天井に隠し持っていた磁石によって、

髪の毛を逆立てる奇病を演出する悪者。

原因がわかってしまえばなんてことはありませんが、

そうでないと、奇病とした言いようのない症状に驚きますよね。

その謎のヒントとして使われる小道具が「毛抜き」。

鉄でできている毛抜きは、

磁石の力に吸い寄せられ、急に立ち上がって歩くような様子を見せます。

ナンセンスといえばナンセンスですが、

お芝居の演出としては、笑える楽しい場面です。

ここは、大げさに驚いて笑いたい場面ですね。

毛抜の見どころ2:小姓、腰元にちょっかい出す弾正

弾正は、ちょっと好色なところがあるようで、

男であろうと女であろうと、

美しいなあ、好みだなあと思うと言いよっちゃうんです。

主人からの使いできているにも関わらず、

小野家の小姓や腰元に言いより、

見事に振られてしまいます。

豪胆なヒーローが見せる、

そんな人間臭さもキャラクターの魅力を増しますね。

色ずきのおっさんには止まらず、

知的にも優れているところも見せてくれます。

磁石の策略を見破ったり、しゃれた手紙を書いたりと、

腕力一筋のヒーローとはちょっと違う

洒落っ気、知性も持ち合わせています。

両端な魅力を表現する役者にとっては、

演じがいがあるヒーローだなあって思います。

もちろん観る側にとっても、なかなか素敵なキャラクターですね。

毛抜の見どころ3:弾正の見得に注目

お芝居の所々に、弾正の見得の場面があります。

毛抜きが立ち上がって踊るのを見て驚く場面では、

刀、扇子、キセルなどの小道具を使った見得を見せます。

天井のくせ者を槍で突くときは、

「やっとこっちゃうんとこな」と掛け声をかけ、

気合いとともに突くのですが、

その時に見せるのが元禄見得というものです。

成田屋というと「荒事」のイメージがありますが、

弾正は隈取をしていません。

先の見得をはじめ、荒事の演出が見られるものの、

単なる荒事ではないんだよ、という様子もこの演目の特徴です。

成田屋といえば、今は團十郎襲名を控えた市川海老蔵が当主ですね。

市川海老蔵のお役で観たい気もしますね。

令和3年の新春に、海老蔵歌舞伎で上演されるそうですから、

ぜひ観にいきたいなって思います。

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読んでくださり、ありがとう存じまする。