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天衣紛上野初花/上:鶴亀・下:雪の石橋 国立劇場歌舞伎12月公演第2部の感想〜あらすじ・見どころも〜

観劇レポート
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令和2年12月の国立劇場歌舞伎公演第二部を観てきました。

「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」、幕間をはさんで、「上:鶴亀(つるかめ)・下:雪の石橋(ゆきのしゃっきょう)」です。

15時半開演で、17時55分終演でした。

それぞれの感想と、あらすじ・見どころをお伝えします。

「ば~か~め~~~」が聞けたのが、いちばん嬉しかった!!




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天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)の感想とあらすじ

第二部の前半は、「天衣紛上野初花」、

これは15時30分から16時50分までの上演でした。

二幕四場で1時間20分の演目です。

では、あらすじと感想です。

ネタバレありなので、ご注意くださいね。

天衣紛上野初花のあらすじ・登場人物

序幕 上州屋見世先の場

下谷にある質屋の上州屋に、河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)がやってくる。

宗俊は御数奇屋坊主で江戸城に務める幕府直参という身分、

しかし悪事にも長けている食えない男です。

この日も、値打ちのない小さな木刀を質草にして

50両を貸してくれと無理なことを言うのです。

しかし、この日は、奥が取り込み中でした。

女主人のおまきが、事情を話します。

それは、大名の松江出雲守に方向に出した娘のお藤が、

主人の出雲守から妾になるよう迫られているとのこと。

しかし、お藤には婿があり、それを理由に断ったところ、

屋敷に軟禁状態にされているとのことでした。

宗俊は、200両の金と引き換えに、

お藤の救出を申し出ますが、番頭がにべもなく断ります。

帰りかけた宗俊を、奥から出てきた後見人の和泉屋清兵衛が呼び止め、

自分が金を出すからと、お藤の救出を依頼する。

宗俊は金を受け取ると、意気揚々と帰っていきます。

二幕目 第一場 松江邸広間の場

松江候の屋敷では、腰元波路と名乗っているお藤に

出雲守が、妾になれと迫り、そうでなければ手討ちにすると大騒ぎです。

止めようとする宮崎数馬や家老の高木小左衛門の諫言も聞かず、

それを煽る北村大膳の口車に乗りわがまま放題。

そこへ、上野寛永寺の使僧(しそう)が来たとの知らせ。

病気のため会えないと嘘をついて奥に引っ込む出雲守。

同 第三場 同 書院の場

緋色の衣をまとった、北谷道海と名乗る僧、

実は、宗俊の変装でした。

家来衆が僧を丁重に迎えるが、

主人の出雲守は病気のため出られないと言われ、帰るそぶりを見せます。

そのため、署員に出雲守も出てきました。

人払いをした宗俊は、出雲守に浪路を家元に返すようにと

言い進めます。

しかし、出雲守は首を縦に降りません。

最後は、婿のある娘に執心し、妾にしようとしていることを、

老中に言いつけると言われ、渋々返すことに承知します。

してやったりの宗俊は、

運ばれてきたご馳走御膳には目もくれず、

「山吹のお茶」と案に金子を要求します。

その通り、扇子料の名目でまんまと金子を手に入れるのでした。

同 第三場  同 松江邸玄関先の場

屋敷を後にしようとする宗俊、

背後から呼びかけたのが北山大膳です。

大膳は、江戸城に出入りした時に宗俊の顔を見覚えていて、

「宗俊殿」と声をかけます。

他人のそら似としらばっくれる宗俊に、

左の頬の黒子を指摘されて、

態度を変えて居直ります。

そもそもは、主人の行いの悪さが原因であり、

そのことを幕府に密告するか、そのまま見逃し、使僧として帰すかを迫ります。

そこへ高木小左衛門もやってきて、家のためと宗俊を帰すことにします。

帰り道、悔しがる出雲守や大膳に「馬鹿め~」と一括し、屋敷を後にする宗俊でした。



天衣紛上野初花の登場人物

河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)

江戸城に務める御数奇屋坊主。幕府直参のみでありながら、悪巧みに長けているため、白無垢鉄火(表面は上品だけど内実は不良)と影で言われている。上州屋の依頼を受け、使僧北谷道海として松江邸に乗り込む。

和泉屋清兵衛 (いずみやせいべえ)

上州屋の後見役。お藤救出を宗俊に依頼する。

後家おまき(ごけおまき)

上州屋の女主人、お藤の母。

宮崎数馬(みやざきかずま)

松江出雲守に仕える近習頭、正義感の強い若武者。

腰元浪路(こしもとなみじ)

上州屋の娘お藤、腰元とし松江候に奉公しているが、妾になれと迫られ軟禁される。

北村大膳(きたむらだいぜん) 

松江出雲守に仕える重役。主君のわがままに追従している。使いの僧を早春と見破るが・・。

高木小左衛門(たかぎこざえもん)

松江出雲守に仕える家老。清廉な人柄で、松江候のわがままに諫言を呈する。

松江出雲守(まつえいずものかみ)

大名、松江家の当主。腰元の浪路に横恋慕し、妾にならないと斬り捨てるとわがままを言う。



天衣紛上野初花の感想と見どころ

主人公の河内山宗俊は、食えない悪党です。

それが、お金と引き換えに人を助けることになり、

大名相手に大芝居をうつんですよね。

だから、狡っからい奴ではありますが、

太々しく、豪胆なところを見せられる役者があう役だと思います。

そうなると、松本白鸚さんはハマり役で、品位はあるものの裏黒さを漂わせています。

対する松江出雲守は、中村梅玉さんが演じていました。

梅玉さんというと、私にとっては正義のイメージの方が強いんです。

だから、腰元に横恋慕し、騒ぎを引き起こすトラブルメーカーは

真逆のイメージです。

ただし、堂々とした品位は流石で、大名の風格はバッチリです。

わがままを通したいけど、使僧に、

「老中に言いつけるぞ」と脅され、

あっさり要求を飲んでしまうあたり、

家の格は保たねば・・という当主としての自覚はあるみたいです。

権力をかさに意地悪を言う大名に、

権力を見せかけに強請る不良坊主の対決は、

任のあった役者の演技で、見応えある場面となりました。

この芝居が書かれた時代は、

下々の者は、お上に文句や要求を言うことはできなかったから、

舞台の上で、不良坊主が「バカめ~~」と大名に啖呵をきる場面は

きっと爽快だったんだろうなあ~~。

この場面を見るだけでも、スカッとできるお芝居だなあと思いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、これから、観てみようかな?という方のために、このお芝居の見どころを3つ紹介します。



見どころその1:正体バレても居直る宗俊

感想のところにも書きましたが、

二幕目第三場の玄関先では、

宗俊は、正体を見破られるものの、大胆不敵に居直り、

逆に一同を脅します。

そして、ぐうの音も出ない松江候と家臣たちに

「バカめ~」と言い放って立ち去るのですが、

この場面は、やはり何度見ても小気味好く、スカッとする幕切れです。

黙阿弥らしい、キレのあるセリフも聞きどころ。

そもそも、御数奇屋坊主とは下級の役職ではありますが、

幕府直属の家来です。

坊主の外見で、将軍や大名の身近に控え、

雑事や茶道に携わっているため、

時には役職を利用して大名の弱みを握って得をする、

という者もいたそうです。

宗俊もその一人、脅す、強請るはお手の物なのでしょうね。

そんな背景も垣間見られる、玄関先の場は見どころ中の見どころです。

https://kabukist.com/hakuo-1771

見どころその2:勝手気儘な大名とへつらう家臣と諌める家臣

松江出雲守は、かなりの格の大名だとうかがえますが、

この物語では、腰元を妾にしようとする身勝手な振る舞いや、

家臣の諫言に耳を貸さない傍若無人な態度を見せます。

使僧に脅され、自分の不祥事がお上にバレるのを恐れるところからも

大名という器の大きさは見られませんね。

身分は高いが人間性はどうなのよ、という松江候。

その家臣が3名います。

へつらう大膳、正論を通す数馬、そして諌める小左衛門。

この3人がそれぞれキャラが違いすぎて、

松江候とのやりとりにその個性が表れているのも

面白いと思うところです。

二幕目第一場の松江邸広間の場では、

三者三様の主君との関わり方が見られます。

化粧も違うし、身につけている衣装や、醸し出す雰囲気も違います。

歌舞伎の様式は、こういうキャラの描き分けにもあるのだなあと

人物描写が楽しめる場面です。

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見どころその3:近習たちの一糸乱れぬ動き

松江候のお屋敷では、家臣の者たちが揃い、

一糸乱れぬ動きを見せてくれます。

殿様が入ってきて、頭を下げる時はもちろん、

御膳を運んでくるときの姿勢、持ち手の高さ、頭の角度まで、

見事にピシッと揃っています。

玄関先の場で、

初めは、使僧を見送りのためじっと頭を下げているのですが、

大膳が宗俊だと正体を暴露し、捕らえろ!と命令すると、

さっと体の向きを変え、宗俊に掴みかかろうとする姿勢、タイミングまで

揃っているところが、見ていて気持ちよいのです。

若手の役者さん、お弟子さんたちが務めることが多いのですが、

こういうお役で、武士の所作や姿勢を学ぶんだろうなって思いました。

セリフは少ないお役ですが、

その一糸乱れぬ動きもぜひ見ていただきたい見どころだとおもいます。

https://kabukist.com/tamatarow-796

第二部は、幕間をはさんで後半は舞踊が2演目ありました。

上が「鶴亀」下が「雪の石橋」です。

それぞれのあらすじと感想も次に紹介していきます。

 

舞踊「鶴亀」のあらすじと感想

鶴亀のあらすじ

皇帝の宮殿では新年の節会が行われています。

女帝は、鶴と亀に新年を祝った舞を所望します。

鶴と亀は、女帝の長寿を祝って舞い踊ります。

それを見て喜んだ女帝も自ら舞い始め、

鞨鼓をつけた鶴と亀もともに舞うのでした。

鶴亀の感想

女帝は、中村福助さんでした。

まだ、足と右腕は不自由なようですが、

左手と顔の向き、表情を使って、

優美な姿を見せてくれました。

昨年の4月には、腕を少し動かせるだけでしたが、

今回は、左手の動きがとても滑らかでお顔の表情と合わせ、

心情を表現するに充分でした。

美しい福助さんが戻っていらしたなあと

嬉しく思いました。

鶴と亀は中村福之助さんと中村歌之助さん。

福助さんには甥に当たります。

まだ若いお二人が軽やかに息をあわせて舞うと、

やっぱり綺麗だなって思います。

これから、活躍が期待される役者さんですね。

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舞踊「雪の石橋」のあらすじと感想

雪の石橋のあらすじ

清涼山の麓にある石橋に雪が降り積もっています。

そこに、文殊菩薩をお守りする獅子のせいが現れ、

毛をふりたてて勇壮な舞を見せるのでした。

雪の石橋の感想

獅子の精を市川染五郎さんが務めるということで、

とても楽しみにしていた演目です。

舞踊自体は、20分ほどと短いのですが、

力者との絡みもあるものの、

大部隊で、ほぼ独演状態の染五郎さん、

まだ10代で、この堂々たる舞踊は大スターの素質ありだなって思いました。

とにかく、染五郎さんの流れるような動きを追うのに夢中で時間が過ぎた感じがします。

2019年の10月に、お父さんの松本幸四郎さんと連獅子を披露していて、

ちょっと腰がぐらついていたその時よりも、

しっかりとした姿勢で踊っているのが印象的でした。

若い人は飲み込みも早いのでしょうね。

気振りの時は、もう少しなところもありましたが、

必死に振っている気迫は十分に伝わってきて、

場内は拍手喝采でした。

役を得るに従って、ますます成長を見せる青年役者です。

本当に、これからが楽しみな役者さんです。

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令和2年12月の国立劇場歌舞伎公演第二部の演目についてと感想でした。

この舞台も、見応えがありお勧めです!

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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