国立劇場1月初春歌舞伎公演(2023)「遠山桜天保日記〜遠山の金さん」の感想、あらすじも

国立劇場さよなら公演の一環として開催された

令和5年初春歌舞伎公演「遠山桜天保日記(とおやまざくらてんぽうにっき)~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」を

1月22日に観劇してきました。

毎年恒例の、音羽屋の初春歌舞伎公演も、

国立劇場改修により来年以降が見えません。

だからなのか?歌舞伎の恩人?

久しぶりに5時間ほどの長丁場、最後まで見飽きず堪能しました。

こちらでは、その感想や見どころをお伝えします。




令和5年国立劇場1月歌舞伎公演は「遠山桜天保日記(とおやまざくらてんぽうにっき)~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」について

国立劇場では、毎年1月は音羽屋、萬屋の古典復活歌舞伎狂言でスタートしています。

通し狂言なので、初めて観る方に物語として見られるので

オススメの公演です。

令和5年の演目が、「遠山桜天保日記(とおやまざくらてんぽうにっき)~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」。

時代劇で「遠山の金さん」の名前を聞いたことがありますか?

なんと、歌舞伎を救った恩人だったということなんです。

この天保の時代は飢饉もあり、節約、倹約が美徳とされた時代、

美徳ならいいけど、派手なことはご法度で、

お芝居なんか贅沢だって、お上が制限をかけていたらしいのですね。

それを、当時の猿若町(今でいう浅草)に劇場を移転して

存続できるように尽力したのが金さんなんですって。

だから、国立劇場の一時閉鎖(改修)と移転(まだ決まっていない)を

反映するかのような演目設定だなあと思いました。

中心になるのが、人間国宝の尾上菊五郎さんです。

菊五郎さんというと、音羽屋ですね。

音羽屋の役者さんたち、尾上松緑さん、坂東彦三郎さんなども

毎年ここの舞台に立ちます。

さらに菊五郎劇団という大人数のお弟子さんたちも

活躍の場がもらえる大舞台です。

音羽屋に加えて参加する、中村時蔵さんの萬屋も恒例です。

さらに、音羽屋、萬屋のちびっ子スターの共演もあり

賑やかで華々しくて、心がほんわかする素敵なお芝居です。

初春にふさわしい演目、顔ぶれなのです。

1月3日(水)~27日(金)までの上演です。



「遠山桜天保日記(とおやまざくらてんぽうにっき)~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」の配役と簡単なあらすじ

では、お芝居の配役と見どころをお伝えします。

【配役】

遠山金四郎:            尾 上 菊五郎(音羽屋)

角太夫女房おもと/河原崎座役者:  中 村 時 蔵(萬屋)女方

生田角太夫/河原崎座役者   :  尾 上 松 緑(音羽屋)

尾花屋小三郎後ニ羅漢小僧小吉/河原崎座役者:尾 上 菊之助(音羽屋)

佐島天学/河原崎座役者:      坂 東 彦三郎(音羽屋)

遠山家用人 樋口善之助/与力 大里忠平/河原崎座役者:坂 東 亀 蔵(音羽屋)

政五郎養女おわか/河原崎座役者:  中 村 梅 枝(萬屋)女方

若太夫 河原崎権三郎/八州廻り 咲島千介/河原崎座役者:中 村 萬太郎(萬屋)

捕手頭 佐藤清介:          市 村 竹 松(橘屋)

待乳山のおえん/河原崎座役者:    尾 上 右 近(音羽屋)女方

楽屋番紋助:            市 村   光(橘屋)

八州廻り 宮森源八/河原崎座役者:  尾 上 左 近(音羽屋)

河原崎座役者:           坂 東 亀三郎(音羽屋)子役

尾花屋丁稚 辰吉/河原崎座役者:   尾 上 丑之助(音羽屋)子役

河原崎座役者:           寺 嶋 眞 秀(音羽屋)子役

河原崎座役者:           小 川 大 晴(音羽屋)子役

笛方 六郷新三郎/旅の一座の座頭:  市 村 橘太郎(橘屋)

尾花屋番頭 清六:          片 岡 亀 蔵(松島屋)

須之崎の政五郎/座元 河原崎権之助: 河原崎 権十郎(山崎屋)

行形亭女将お滋:          市 村 萬次郎(橘屋)女方

遠山家家老 簑浦甚兵衛:       坂 東 楽 善(音羽屋)

羅漢尊者:             市 川 左團次(高島屋)

【簡単なあらすじ】

通し狂言なので、序幕から大詰めまであります。

序幕第一場:河原崎座楽屋の場

・河原崎座の楽屋で起こった揉め事を、常連客の金さんが収めます。

そこへ、遠山奉行に任じられたという書状を家来が持ってきます。

序幕第2場第二場:花川戸須之崎政五郎内稽古所の場

・侠客須之崎政五郎の養女おわかは清元の師匠で、尾花屋の若旦那小三郎といい仲です。

しかし、体裁を気にした小三郎の親の頼みで、政五郎は2人の縁を切るようにいいます。

序幕第三場:隅田川三囲堤の場

・縁切りを迫られた小三郎とおわかは心中を決意、隅田川に入水します。

その後、現れた佐島天学は吉原に通う金を盗賊角太夫に奪われ、

短筒強盗の濡れ衣を着せられ、捕手に捕まります。



二幕目:安房国山中の場

・死に損なった小三郎は、羅漢小僧小吉と名を変え盗人になっていました。

そこへ、牢を抜け出した天学と角太夫が居合わせ、盗賊3人が義兄弟となります。

3人は、角太夫の呼びかけで、佐渡金山の御用金を狙うことにします。

三幕目:第一場  花川戸須之崎政五郎内の場

・政五郎の家に、小三郎(現小吉)が来て、おわかの供養金をねだります。

政五郎は50両を手渡し、両親を安心させろと説きます。

小吉は帰ろうとして、尾花屋の丁稚辰吉の姿を見かけ身を隠します。

辰吉は、自分が目を離したから若旦那が心中したと後悔しています。

それを知った小吉は何かを考えます。

あん摩の電庵(実は角太夫)が通りかかり、政五郎が招き入れます。

そこに角太郎の女房おもともやって来て、角太夫の借金で生活が苦しいことを話します。

おもとは、電庵の顔を見て、何かに気づいた様子を見せますが、そのまま去ります。

政五郎から、おわか(角太夫とおもとの実子)の最期やおもとの現状を聞いた電庵は、

動揺しつつも去っていきます。

三幕目:第二場  山の宿尾花屋の場

・尾花屋の裏で、電庵と天学が会います。

切り戸から番頭の清六が出て来ます。

清六は心中から生き残ったおわかが花魁になっているのを知り、

店の金をくすねて会いに行こうとしていました。

しかし、電庵と天学からそのお金を奪われます。

通りかかった小吉はここは自分の実家と言い、鍵を清六の首にかけ、盗人の共犯に仕立てます。

天学と小吉を先に帰らせた電庵、そこにおもとがやって来て

改心してくれるように頼みます。

もみ合いになった電庵はおもとの首を絞めて殺してしまうのです。

三幕目:第三場 大川橋六地蔵河岸の場

・両国へ向かう小吉と天学、

天学は角太夫に濡れ衣を着せられた恨みがあり、

御用金を手に入れたら、角太夫を殺して山分けしようと持ちかけます。

断った小吉に天学が斬りつけます。

助けに入ったのが、殿様金次と名乗る侠客。

天学はその場を逃げ出します。



四幕目:第一場 新潟行形亭座敷の場

・新潟の茶屋行形程の座敷で、

変装した角太夫と天学が客としてくつろいでいます。

御用金強奪にむけた前祝いをしているのです。

宴の余興に旅の一座が現れますが、

それは捕り方の一団でした。

四幕目:第二場 同庭先の場

・捕り方から逃げた角太夫に天学が銛で襲いかかります。

争いの末、角太夫は海へと落ちていきます。

恨みを果たして高笑いする転学ですが、

捕り方の咲島と宮森に捕らえられます。

五幕目:北町奉行所白洲の場

・白州の場に天学が引き出され角太夫殺しの詮議が始まります。

天学は短筒強盗の濡れ衣を着せられたことを訴えます。

小吉も引き立てられますが、小吉は転学に殺されかけたと訴え、

加えて姿を現した花魁若紫(おわか)も天学に吉原に売られたと訴えます。

濡れ衣と言い争う天学と小吉たち。

そこへ北奉行遠山金四郎が登場し、

2人の諍いを一括、さらには生きていた角太夫も召し出します。

金四郎は、おもと、辰吉も呼び出して対面させ、

命は助けるから改心するように諭す。

情けあるさばきに感動する一同でした。

大 詰:河原崎座初芝居の場

・遠山金四郎は、とりつぶしの危機にあった

江戸三座の存続を図り、禁止令を解くことに尽力もした。

芝居小屋の役者は、遠山に感謝を述べ喜びの舞を披露するのでした。



国立劇場1月歌舞伎公演(2023)「遠山桜天保日記(とおやまざくらてんぽうにっき)~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」の感想

久しぶりに5時間ほどの長丁場、

通し狂言「遠山桜天保日記~歌舞伎の恩人遠山の金さん~」でしたが、

ちっとも飽きることなく最後まで楽しめました。

ストーリーがわかりやすいことと

全てハッピーエンドで丸く収まる終わり方が

観劇後の幸福感をいや増しました。

特に印象に残ったことを3つほど感想としてあげます。

国立劇場初春歌舞伎公演感想1:全てがハッピーだった!

今までのお芝居は、誰かが死んだり、不幸になったり、ということが多かったですが、

このお芝居は、途中不幸な場面もありましたが、

登場人物は全て根は善人という設定。

だから,よく振り返ってみたら

盗賊が3人も出てくるのに

大したお金は盗んでいないんです。

盗賊になったきっかけも

・心中に失敗して生き残ってしまったから

・武士だったのに扶持を取り上げられたから

・僧だったのに濡れ衣着せられて牢に入れられたから

というなんとも不幸な巡り合わせによるもの。

人を殺めてしまっても、心中しても

なぜか全員生き延びているから

結局大きな罪には問われないという結果です。

ただ、そこに至るまでのエピソードが

わかりやすく簡潔に綴られていくから

登場人物にちょっと感情移入しちゃったりします。

キーパーソンの遠山の金さんは、

途中は、金次という名の侠客で、

最後のお白州ではお奉行様として、

悪を見逃さないだけではなく、

その背景をも見通して弱いものを助けようという

情け深さを持ち合わせた方。

おまけに劇場の球場まで救っちゃうって、

本当に神様のような人でした。

菊五郎さんの桜吹雪はやっぱり尊かったです。



国立劇場初春歌舞伎公演感想2:子役が可愛すぎた

このお芝居には、4人の子役が登場します。

尾上丑之助さんは、お芝居の重要な役、

小三郎を改心させる辰吉という丁稚さん。

可愛すぎて、何かを言うと、客席から笑い声が上がっちゃうんだけど

一つ一つのセリフに心を込めて演技する姿が

とても健気に映りました。

他の、寺島眞秀さん、坂東亀三郎さん、小川大晴さんは

河原崎座という芝居小屋の役者として

大詰めで可愛い舞踊を見せてくれました。

ちょっとだけの出番ですが、

一生懸命に舞う姿は

それぞれの個性が見られて微笑ましかったです。

私は、後ろに座っているパパたちの視線が

熱く注がれているところにクスリとしました。

これからの活躍を期待したい子役さんたちです。

国立劇場初春歌舞伎公演感想3:お約束の風物詩が楽しかった

国立劇場の初春歌舞伎公演には、

お約束が2つあります。

1つは、幕切れに役者さんたちからの手ぬぐいのご祝儀。

コロナで2年ほど中止していたものが復活。

それも盛り上がった一つでした。

もう一つのお約束が、

前年に話題になったことがお芝居に取り入れられるというものです。

今までにも、縄跳びダンスやワンチームというかけ声などが

取り上げられていました。

今年は2つ

「ブラボー!」というかけ声と

「狐ダンス」ならぬ「うさぎダンス」が

取り入れられていました。

堅苦しいと思われている歌舞伎ですが

元は庶民の娯楽です。

こういう風物詩が取り上げられることは

江戸時代にもあったんじゃないかしら。

毎年、何が出てくるのかなって楽しみにしている方も多く、

この場面は拍手がひときわ大きく盛り上がっていました。

新春から心温まる楽しい観劇でした。

今年でこの劇場で観られるのは最後、、ということで

かなり感傷的にもなりました。

公演は27日までです。

間に合う方は観に行ってくださいね。

読んでくださりありがとう存じまする。