歌舞伎初心者にもおすすめの演目「熊谷陣屋」、そのあらすじ、見どころは?

歌舞伎初心者でもおすすめの演目「熊谷陣屋」を紹介します。

こちらは、本来は「一谷嫩軍記」という、全5段からなる長~いお話なのですが、

3段目の切りに当たる「熊谷陣屋」だけが切り取られ、

なんども上演を重ねている名作です。

全体で1時間10分ほどですが、

歌舞伎ならではの見せ場も多いし、上演機会も多いので、

ぜひ一度ご覧になることをおすすめします。

ここでは、あらすじや見どころを中心に紹介します。

「熊谷陣屋」とはどういう演目なのか?

歌舞伎の中でも義太夫狂言という部類に入ります。

初演が1752年、人形浄瑠璃の作品として世に出ました。

それを歌舞伎用に脚色しているものです。

切々と語るようなセリフと感情をえぐるような仕掛けが特徴です。

作者は、並木大輔。

ただし、この作者が3段目まで書いてお亡くなりになったため、

その後の2段を他の作者が引き継いで完成させています。

歌舞伎には源平のお話が多いのですが、

こちらは平家物語から来ているそうです。

本題を「一谷嫩軍記」といい、全部で5段の構成となっています。

キラ星のように栄えていた平家一族の末路が筋になっているため、

平家側からの視点で描かれている物語と思っておくと、

この「熊谷陣屋」のストーリーの要素がなるほど~と思えます。

「熊谷陣屋」という演目は、

全体の中の3段目の後半に当たる一場面であり、

熊谷直実という源氏方の武将の陣での出来事を描いています。

前の2段目の「組討」の場も併せて上演されることがあります。

両方を見ると、この「熊谷陣屋」のストーリーの重さを

ひしひしと感じることができるので、

通し上演があればご覧になるといいと思います。

「熊谷陣屋」のあらすじは?

1場面ではありますが、流れとしては次の6つのエピソードがあります。


1184年、源平合戦の頃のお話。

源氏方の武将、熊谷次郎直実の陣屋前に見事な桜の若木があります。

ここに、建てられている制札には、

「一枝を切る(盗む)ものは、一指を斬る」と書かれています。


そこに、熊谷の正妻である相模の方が家来とともにやって来ます。

息子小次郎の様子を知りたいと、熊谷に内緒で訪ねてきたのです。

そして、もう一人の客が現れます。

それは、かつて相模の方が使えていた、藤の方という平家方の奥方です。

熊谷と相模の方が満ちならぬ恋におちたことを許した、二人にとっては恩人でもあります。

この藤の方は、息子の敦盛を熊谷が斬ったと聞き、復讐しようとしています


そこに熊谷が帰ってきます。

相模を叱ったり、藤の方の攻撃を抑えたりした後、

戦での小次郎の活躍や、敦盛の最後について2人に語ります。


そこへ源氏大将である源義経がやってきます。

熊谷が討った、敦盛の首実検に訪れるのです。

桶から出して、義経に見せた首をチラ見た相模は驚きの声をあげます。

それは、敦盛ではなく、息子小次郎の首だったからです。

しかし、義経はそれを吟味して、

「よくやった、これぞ敦盛の首」と言うのです。

実は、敦盛の本当の父親は後白河院でした。

そのため、皇族の血を絶やさんとする義経は、

制札を持って、敦盛の命を助けるように熊谷に暗に伝えたのでした。

「その首を縁のあるものに見せて惜しませよ」との義経の命を受け、

熊谷は、相模にその役を命じます。

相模は、我が子の首を我が子ということができないままに、

その意味を悟り、涙にくれながら藤の方に見せるのです。

藤の方は、双方の思いを知り、やはり哀れに涙にくれます。


これを盗み見た 梶原平次景高が幕府に言いつけようと、

その場を離れようとした時に、

石屋が投げた鑿に打たれます。

この石屋は、源氏兄弟が幼い時に命を救ったもの平家の武将でした。

この武将は、自分の行為が平家の滅亡を招いたと

後悔していたのです。

その石屋に、熊谷は敦盛の鎧櫃を渡します。

その中には、生き延びた敦盛の姿がありました。


武将としての命を全うしたものの、

世の中の無常に打ちひしがれる熊谷に義経が暇を出します。

それを受け、出家の道を選んだ熊谷は、

「16年は一昔、夢だった」

と呟き、去っていくのでした。

「熊谷陣屋」のここだけは!という見どころは?

伏線が張り巡らされたストーリーが、

悲劇のうちに収まるという展開に見応えを感じる演目です。

途中からは、涙涙・・・

客席からもすすり泣く声が聞こえてきます。

ストーリー以外のこの演目の見どころとして次の2つを紹介します。

その1:制札の見得を見逃すな!

歌舞伎といえば、ググッと力を入れた見得のポーズ。

「熊谷陣屋」では「制札の見得」というものがあります。

それは、

首桶から首を出した時に、

よく見ようと駆け寄る相模と藤の方を、

制札と全身を使って動きを封じるときのポーズです。

事態が山場を迎えるときに、

見得は大きくストップモーションのような働きをして、

緊迫した一瞬をかたち作るります。

制札の見得は、自らの判断の可否を義経に仰ぐ直実の心をあらわす、

大きな見せ場なのです。

その2:芝翫型と團十郎型によって終末が違う

このお芝居の終わり方は、4台目中村芝翫が演じた芝翫型と、七代目市川團十郎が演じた團十郎型があります。

大きく違うのは、

芝翫型は、髷を切った有髪の僧の扮装をしています。そして、「16年一昔・・・」の台詞も、

舞台上で自嘲的につぶやくのだそうです。

現在多く見られているのは、團十郎型です。

笠をとった頭は剃り上げられ、花道で「16年ひと昔・・・」と現世を憂い、嘆きながら退場します。

どちらがいいかはわかりませんが、2月の歌舞伎座では、

登場人物の内面が如実に伝わる團十郎型が見られました。

「熊谷陣屋」歌舞伎初心者はここをチェック!!

長くなりましたが、このお芝居に興味を持っていただけましたか?

まとめとして、初心者にとってのチェックポイントを4つあげて終わりにします。

①主な登場人物を演技に注目

(熊谷・相模・藤の方・義経)

②首実検~制札の見得の場面

③首を挟んだ相模と藤の方のやりとり

④引っ込みのセリフ「16年一昔・・・」

今日も読んでくださり、ありがとう存じまする。