桜姫で仁左衛門と玉三郎の歌舞伎の耽美に酔う:感想(4月歌舞伎座公演)

超話題の4月歌舞伎公演第三部「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」の感想です。

36年ぶりという坂東玉三郎と片岡仁左衛門(当時は孝夫)の共演、

今、脂がのりきった人間国宝コンビの演技は、

当時よりも若々しく、美しく、そして芸の深みがあります。

これ、見に行かないでどうする?

4月歌舞伎座公演第三部「桜姫東文章」は、

18時開演(と中19時35分~19時50分まで休憩)20時23分終演です。



桜姫とは歌舞伎演目「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」のこと

「桜姫」、あるいは「清玄桜姫」とも呼ばれるのが

歌舞伎演目「桜姫東文章」です。

4世鶴屋南北の手による、

耽美でちょっと奇怪で現実離れした展開の物語です。

簡単に説明すると、

お家とりつぶしの憂き目にあった美しい姫君桜姫と、

前世の恋人であった僧清玄、

姫を手込めにし、赤子まで成した悪党釣鐘権助との

3つ巴の恋愛模様と、

お家騒動を絡めた愛と欲と人の業を描いた作品。

と言っていいのかなと思います。

歌舞伎公演として、これまでも、

様々な役者が演じてきた人気演目です。

中でも36年前に、

当時の片岡孝夫と坂東玉三郎が演じ、

この妖艶な芝居をスッキリと美しく表現したとのことで、

T&T応援団なるものも出没した、、という伝説もあるそうで、

令和3年4月の歌舞伎座は、大いに沸き立っているのです。

原作は七幕九場のものらしいですが、

最近は発端から大詰めまで五幕で上演されることが多いようです。

4月の歌舞伎公演は、そのうちの前編を上演します。

発端から、序幕で休憩を挟んで、

二幕目まででした。

初日に、6月に後半を上演するという発表があり、

またしてもT&Tフィーバーが巻き起こりそうな勢いなのです。

*詳しいあらすじや見所はこちらをお読みくださいね。

「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」は、 4世鶴屋南北の手による歌舞伎の人気演目です。 美しい桜姫にまつわる輪廻の糸、悪...



桜姫東文章、仁左衛門と玉三郎の他のキャストも知りたい

4月歌舞伎座を飾る「桜姫東文章」のポスターが

あまりにも妖艶過ぎて美し過ぎて、

目にした時にクラクラしました。

お二人はともに70代、

世間一般ではおじいちゃんの分類に入るのでしょうが、

歌舞伎舞台では、超美的カップルなのです。

ということで4月歌舞伎座第三部の配役も紹介しちゃいます

桜姫/白菊丸  坂東玉三郎

清玄/釣鐘権助 片岡仁左衛門

残月 中村歌六

入間悪太郎 中村鴈治郎

粟津七郎 中村錦之助

局長浦 上村吉弥

奴軍助 中村福之助

松若 片岡千之助

松井源吾 片岡松之助

脇を固める方々も、皆芝居上手です。

鴈治郎さんの悪太郎は、嫌な感じの悪。

歌六さんの残月、吉弥さんの長浦も

色欲まみれの小悪人。

そして、松若役の千之助さんと、

軍助役の福之助さんが

期待以上によい感じです。

千之助さんはキリッとした若武者ぶりが似合っていたし、

福之助さんの奴も力強くてかっこよかった。

若手がきっちり務めているのを観ると

今後が楽しみになってきます。

6月の下巻も同じ配役ということなので

嬉しいですね。



桜姫東文章(4月歌舞伎公演)の感想

さて、それでは感想です。

だらだら書いちゃうと読みづらいと思うので、

個人的に良かったことを3つに絞って書いていきますね。

桜姫東文章感想:仁左衛門、玉三郎の尊いばかりの美しさ

発端は江ノ島稚児ケ淵、

心中をしようと花道から登場する清玄と稚児白菊丸。

この2人の若いこと、可愛らしいこと。

短いシーンなんですけどね、

胸ドッキュンポイントとして、

玉さまの前髪つき稚児姿があげられます。

素直に、かわゆいです、必見!!

さりげなく手をつないで歩く姿もキャって感じ。

心中を決意し、ひしっと抱き合う姿がまた素敵。

この場面ではやはり2人とも設定通り若気の至りが

プンプンしているんです。

この後、2人はまた別の場面でもコンビで出てくるんですけど、

その場面、背景によって

その色にしっかり染まったリアリティが見られるのです。

同じ役をやっていても場面では全く別の設定として演じられる、

そこがこのお二人のすごいところだと思います。

ただ美しいだけじゃないです。

次に登場するのが、新清水。

17歳の桜姫は輝くばかりの美しさですけど出家を決意しています。

そこへ、寺の高僧となった清玄阿闍梨がやってきます。

ここでは、出家を願う姫を哀れに思って念仏を唱える偉いお坊さんの清玄は、

あくまでも尊く品もあり、立派です。

ここでの2人は錦絵のようです。

他にも登場人物がずらりといるのですが、

やっぱり二人がピッカピカに光っています。

その次は、桜姫の草庵。

権助が手紙を持って桜姫を訪ねてきます。

この時の仁左衛門さんは、目つきも言葉もまさに悪党。

そしてここはこのお芝居の最大の目玉シーンが続きます。

出家すると剃髪の用意をする桜姫に、

色々と軽口をいう権助なのですが、

話の佳境に思わず片肌を脱いで見せた腕にある刺青、

これを見た瞬間の桜姫の表情がガラリと変わるんです。

それまでの高貴な表情が一転、

淫靡なギラつきを目に宿らせる

その一瞬の変容に目が奪われました。

そして、1年前に手込めにされ、子まで生むことになった顛末と

忘れられない思いを吐露するんですよね~。

もちろん悪人権助は、

待ってましたと抱き寄せて

あ~~~~~って

子どもが見ちゃいけないような2人の絡みに目が釘付け。

結局それが原因となり巻き添えを食った清玄と桜姫は追放されるんですよ。

(なんで巻き添えかというとあらすじ編をご確認くださいね)

ここからが、美しくて輝いていた2人が

どんどん、どす黒い世界へと落ちていくのです。

前半は二幕目二場の三囲の場までなのですが、

桜姫の赤子を抱いて彷徨う清玄と

色あせた振袖の上に蓑を羽織った桜姫が、

すれ違うのですが、

直接は絡まないのに同じ空間に佇む2人が

すっかり落ちぶれているのだけど

そこに業剥き出しと言いたくなる思いが

じわじわと伝わってくるのでした。

劇場内の空気も重苦しく感じるほど

2人の姿が圧巻過ぎる幕引きでした。

にざたまコンビは、耽美で退廃的だけど、

凛とした芯も感じます。

約2時間の舞台、目を離すことができませんでした。

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桜姫東文章感想:鶴屋南北の人間の業が怖すぎる

鶴屋南北の芝居には、

人間が持つ欲や本能を暴き出し、

ドロドロした物語の凄みが感じられます。

桜姫東文章も、えぐいと思いませんか?

僧と寺に使える稚児が許されるぬ恋ゆえに心中、

しかも男は死に損なって高い位の僧になるのですが、

その罪深さから、稚児の生まれ変わりである姫に執着します。

姫は姫で、自分を手込めにした男が忘れられず、

その男のために非人、女郎まで落ちぶれます。

そして僧は殺され幽霊となって姫につきまとい、

そこから姫のお家の乗っ取りの真相が暴かれ、

姫は実は仇であった恋しい男を討ち取るというストーリーです。

ヒョエ~、そんなことあるの~?

物語だから成立するのかもしれませんが、

やっぱり奇怪なストーリー展開だと思います。

それを知って見ている私は、

その物語に翻弄され、胸の中をかきむしられるような思いをするのです。

こんな世界を作り出した鶴屋南北は本当にすごいです。

桜姫東文章感想:役者が適役ぞろい、若手もいい

こんな波乱万丈の物語ですから、

出てくる人物達も曲者ぞろいです。

そして主役以外の登場人物を演じる役者さん達も、

あまりにも適役で感動しました。

まず、清玄を陥れようとする僧残月。

欲深い生臭坊主は歌六さんがちょっとユーモラス感を漂わせながら演じていました。

そのお相手の長浦は、姫のお付きのお局ですが、

悪人と手を組む色好みの年増女という設定。

これは上村吉弥さんがめちゃハマっていました。

もう一人どハマり!と言いたいのが

入間悪太郎を演じた中村鴈治郎さん。

鴈治郎さんは、色男役が多いと思っていましたが、

この悪役ぶりもよかったです。

姫とお家に執着するマムシのような男でした。

奴軍介の中村福之助さん、弟松若の片岡千之助さんという

2人の若手もしっかり役を務めていると感じました。

ドロドロストーリーの中で清涼剤のような2人の若々しさは、

ホッと一息つける貴重な存在でした。

感想というよりも、褒めまくりですね。

丁寧に作られた芝居では、

役者さんの持つ味が十分に引き出されていて

より観劇が楽しくなります。

そんな満足感が残る舞台でした。

令和3年4月歌舞伎座公演第三部「桜姫東文章」は

絶対見るべきオススメの舞台です。

読んでくださり、ありがとう存じまする。