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「俊寛/平家女護島」感想、中村吉右衛門の俊寛は見るべし!国立劇場11月歌舞伎公演2020

観劇レポート
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国立劇場の令和2年11月歌舞伎公演は、

11月2日(月)に初日が開けました。

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3日(祝)に観劇してきたので、感動の新しいうちに感想を書きます。

第1部は、12時開演、14時20分終演の

「俊寛/平家女護島(しゅんかん/へいけにょごのしま)」でした。

途中幕間が30分間入りましたが、序幕と二幕目を通して見ることができ、

この演目への興味が深まりました。

実は、私が初めて歌舞伎を観たのがこの「俊寛」。

当時はあまりこの芝居のよさはわからず、

約30年たってのリベンジです。




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「俊寛/平家女護島(しゅんかん/へいけにょごのしま)」とはどういう芝居?

歴史上の出来事として教科書にも載っている、

俊寛の島流し。

それを歌舞伎化したのがこのお芝居です。

平家物語を下敷きに、近松門左衛門が人形浄瑠璃の作品として

仕立てたもので、元々は5段にわたる物語だそうです。

本題が「平家女護島」で、平清盛に争う女性たちと

俊寛の悲劇が描かれているものです。

今、よく上演されている「俊寛」は、

5段のうちの2段目「鬼界ヶ島」にあたる幕なのだそうです。

海外でも絶賛されるというこのお芝居、

国立劇場では序幕の清盛館を描くことで、

俊寛の悲劇をより深く描いています。

絶海の孤島を実感させる舞台美術にも注目です。

内容は、あらすじに詳しく書いているので、

そちらをご覧くださいね。



「俊寛/平家女護島」の配役とあらすじ

〈配役〉

平相国入道清盛/俊寛僧都 中村 吉右衛門

海女千鳥         中村 雀右衛門

俊寛妻東屋/丹左衛門尉基康 尾上 菊之助

有王丸          中村 歌昇

菊王丸          中村 種之助

平判官康頼        中村 吉之丞

丹波少将成経       中村 錦之助

瀬尾太郎兼康       中村 又五郎

能登守教経        中村 歌六

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〈簡単なあらすじ〉

序幕  六波羅清盛館の場

平家一門の悪政に反乱を企てた罪で、

俊寛、丹波少将成経、平判官康頼は南海の孤島に流罪となりました。

京の六波羅にある平清盛の館に、

俊寛の妻である東屋が連れてこられ、

清盛の側室として使えるように命じられます。

しかし、東屋は、自分は俊寛の妻であるとして、

清盛の申し出をはねつけます。

常盤御前の例を出したり、

俊寛たちの命運をちらつかせたりと

家臣たちからも説得され悩む東屋でした。

そこへ、清盛の甥である能登守教経があらわれ、

清盛の言葉に背かず、夫への貞を貫く方法があると助言します。

その解を察した東屋は隠し持っていた短剣で自害します。

俊寛の従者の有王丸が館に押し入り暴れますが、

教経は東屋の首を託し、ここで犬死するなと館から退かせます。

二幕目 鬼界ヶ島の場

鬼界ヶ島に流罪にされた俊寛たちは悲嘆の中に暮らしていました。

ある日、丹波少将成経と海女千鳥が夫婦になる報告をしに俊寛の庵を訪れます。

束の間の幸せを味わうものの、

そこへ、都からの船が到着します。

清盛の娘徳子の安産祈願のために大赦が取りおこなわれることになったのです。

俊寛も含む3名に赦免状が出たことを知らされ喜ぶ俊寛たち。

でも乗せられるのは3名のみ、千鳥を船に乗せることは拒否されます。

上使の瀬尾にすがりなんとか乗せてくれるように頼みますが、

聞いてもらえません。

さらに、東屋が殺されたことを知ると、

俊寛は覚悟を決め、瀬尾の刀を奪い斬りつけます。

自らが咎人として島に残るので代わりに千鳥を船に乗せるよう懇願し、

俊寛を残して船は海に出ていきます。

覚悟はしたものの、去っていく船に向かい、思わず叫ぶ俊寛、

崖によじ登ると、海原に消えて行く船の姿をずっと見送るのでした。



「俊寛/平家女護島」の感想勝手にベスト3

30年前のリベンジなるか?

と中村吉右衛門さんの俊寛を見守った2時間。

やはり、初回に比べるとその時は気づかなかったことがたくさんあり、

このお芝居が名作と言われるのも納得しました。

今回は、序幕の清盛の館があったことで

お芝居の背景を理解しやすかったことと、

心情表現に長けた中村吉右衛門さんの演技で骨太な芝居を

堪能することができました。

ベスト3:清盛と俊寛の演じ分けが素晴らしい

初日を観劇した方達のツイッターで気になったことがありました。

それが、吉右衛門さんのエロ爺さん、という書き振り。

俊寛がなんで??

と思っていたのですが、これは平清盛のことでした。

中村吉右衛門さんは、序幕では平清盛、

二幕目では俊寛と、全く違った役を演じ分けていました。

この清盛が、本当に憎々しく、権力を見せつけ傍若無人な振る舞いをするのです。

さらに、美しい東屋(尾上菊之助さん、品がある美しさは絶品)に

妾になれと上から目線で言い寄るんですよ。

メイク、衣装も相まって、傲慢な好色坊主というキャラが際立っていました。

そしてボロボロの衣装を見にまとい悲壮感漂う俊寛。

丹波少将らが来ると、リーダーとしての格も見せ、

千鳥を慰める包容力ある義父の顔や、

覚悟を決めて瀬尾に斬りかかる闘士の顔など、

複雑な心情を持つ俊寛を味わい深く演じていました。

役のしどころをつかみ、自在に化ける

この方は役者として本当にすごい方だと思います。

ベスト2:配役がはまった好舞台

序幕、二幕目と登場人物の拵えがガラリと変わりますが、

主人公以外のお役も、みんな配役がよくてぴったりハマっていたなあと思いました。

「歌舞伎の楽しみは、役者を観ること」、というのが私の信条なので、

こんなにいい役者さんがみられるととても嬉しいです。

中村吉右衛門さんの娘婿である尾上菊之助さんは、

序幕の東屋と二幕目の丹左衛門の二役。

東屋の気品ある美しさは、菊之助さんにぴったりです。

操を貫いて自害するその最後まで一滴も余さず美しい、

エロ坊主と好対照です。

丹左衛門は、温情ある裁きが清々しく、

こちらは瀬尾と好対照。

その瀬尾太郎兼康を演じたのが、中村又五郎さん。

赤っ面の典型的な悪人、意地悪な役人という役どころなので、

憎ったらしいけど下品ではない、

所作が綺麗で、型も決まるのです。

表情からも「いかにも」感が滲み出ていて、

いい人ばかりの二幕目の中で悪1点を放っていると思いました。

中村雀右衛門さん演じる海女千鳥、

この方は本当に可愛らしく演じます。

目線や手の使い方、台詞回しに島の女らしいピュアさが

感じられました。

平判官康頼の中村吉之丞さんと、丹波少将成経の中村錦之助さんは、

身なりは粗末でも姿勢や表情、言葉の使い方に

凛とした都人らしさが感じられました。

序幕、有王丸と菊王丸を演じた中村歌昇さんと中村種之助さんはご兄弟です。

対になる衣装や化粧で見せる立ち回りは、

沈んだ舞台を引き上げる活気がありました。

場を収める能登守教経を演じた中村歌六さんは

さすがの貫禄です。

周囲の喧騒を物ともせず、淡々と筋を通す姿に

情のある武士の姿が見られました。

それぞれのお役がはっきりしていると物語も豊かになります。

そういうところもこのお芝居の魅力だなあと思います。



ベスト1:最後のシーンがぐっと胸に迫った

最後のシーンは、俊寛がさって行く船を見送る姿。

私は、お~いと叫んで涙するイメージがあったのですが、

そうではなかったです。誤った記憶かも。

実際は、叫んだ後、

茫然自失の表情で抜け殻のようにそこにいる俊寛の姿に、

グッと胸を掴まれるような思いがしました。

吉右衛門さんの言葉によると、

初代松本白鸚(実の父)から

「石になれ」と教わったのだそうです。

そうなんですよ、

崖の上に佇む俊寛には

感情も、思考も、生きているという印象も

すっかり消え去り、

本当に物のようにそこにある、という感じでした。

歌舞伎の凄さを思い知ったなあと

この最後の場面が胸に焼き付いています。

 

 

繰り返して言ってしつこいのですが、

人間国宝のリアルな「俊寛」は見逃すと損します。

他の役者さんも魅力的だし、上には書いていませんが義太夫も聞かせます。

是非是非観ていただきたい一幕だなあと思います。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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