2月大歌舞伎昼の部を観てきました!
おめあては、もちろん、
15代目片岡仁左衛門の菅丞相。
「神」降臨!!って胸が震えっぱなしの4時間でした。
「菅原伝授手習鑑」とは?ざっくりあらすじ
2月大歌舞伎の昼の部は、
通し狂言「菅原伝授手習鑑」のうちの前半、
加茂堤・筆法伝授・道明寺の3場を上演しました。
「菅原伝授手習鑑」の主人公は、菅丞相。
学問の神様で有名な菅原道真公がモデルとなっています。
政敵の企みで、
太宰府へ流されることになった菅丞相と
彼を取り巻く三つ子の物語を
六段七場を通じて描いています。
これをざあ~っくりまとめると、
右大臣菅原道真は、
養女刈谷姫と天皇の弟である斉世親王の駆け落ちを発端に、
政敵の企みにより、太宰府へ流罪となってしまいます。
更に、命をも狙う政敵により、
道真やその子菅秀才にも危機が迫りますが、
彼に恩を持つ三つ子の働きや仏の加護により、
その難を逃れます。
歴史上の人物として名高い菅原道真、
流罪先から都へ戻ることはなく、
生涯を閉じるのですが、
その物語を軸に忠義と人間愛のドラマが
展開する義太夫狂言の名作です。
詳しくはこちらに書いてますから、読んでみてください~。
片岡仁左衛門と松島屋について
上方の伝統を継承する名門松島屋
15代目片岡仁左衛門は、人気実力ともに備えた、
現在も大活躍中の名優です。
15代目片岡仁左衛門について
十五代目片岡仁左衛門:本名 片岡 孝夫(かたおか たかお)
生年月日 1944年3月14日(魚座)
家系 父:十三代目片岡仁左衛門、兄:五代目片岡我當、甥:片岡進之介、
兄:二代目片岡秀太郎、甥(養子):片岡愛之助、息子:片岡孝太郎、孫:片岡千之助
屋号 松嶋屋
定紋 七つ割丸に二引
芸歴 1949年「夏祭浪花鑑」市松役で片岡孝夫として初舞台(中座)
1998年 「菅原伝授手習鑑」松王丸役、「夕霧伊左衛門廓文章」藤屋伊左衛門役他で十五代目片岡仁左衛門襲名(歌舞伎座)
2015年 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定
当たり役 「女殺油地獄」与兵衛
「廓文章 吉田屋」藤屋伊左衛門
「花街模様薊色縫(十六夜清心)」鬼薊の清吉(清心)
「菅原伝授手習鑑」 菅丞相
すらりと長身で色気ある2枚目歌舞伎役者です。
2枚目の主人公もいいのですが、
私がしびれちゃうのは、色悪や甲斐性のないボンボン。
これらの役を演じさせたら天下一品、
この方の右に出る方はいないのではないでしょうか。
上方の名門「松島屋」について
仁左衛門の家が松島屋、
元々は上方のお家ですが、
現在は、東京に居点を移しています。
それでも、上方歌舞伎を大切にしていて、
毎年、大阪松竹座で「関西・歌舞伎を愛する会」を
上演しているお家です。
片岡仁左衛門は、片岡3兄弟の末っ子です。
兄2人とその子らが松島屋の主な役者として、
人気を博しています。
長兄が片岡我當、次兄が片岡秀太郎。
秀太郎は、2019年に人間国宝に認定されました。
息子が片岡孝太郎、女形して活躍中です。
その息子、孫にあたるのが片岡千之助。
今時のイケメン俳優として人気急上昇中です。
*片岡千之助についてはこちらに書いています。
甥にあたるのが、片岡新之介と片岡愛之助です。
*片岡進之介、片岡愛之助についてもこちらに書いています。
こう見ると、
松島屋はイケメンぞろいですね。
2月大歌舞伎は、仁左衛門らの父である、
13代目片岡仁左衛門の追善狂言ということもあり、
愛之助以外は全員出演しています。
ぜひ、松島屋の芝居も楽しんでいただきたいものです。
*松島屋のまとめ記事はこちらにありますよ。
2月大歌舞伎昼の部の感想ベスト3
では、昼の部の感想、勝手にベスト3を作りました。
ベスト1:片岡仁左衛門の菅丞相が神々しすぎる
「神」としか言いようがない、片岡仁左衛門の菅丞相です。
姿を現してから、最後花道を去っていくまで、
微塵も揺るぐことなく「神」なんです。
というのも、菅原道真は現在でも
天神様と信仰の対象になっていらっしゃる方、
この役を演じるために、
仁左衛門が、インタビューで語っているのが
「これ以上洗練しようもないほど少ない動きで4階席のお客様の心をつかむことができるのか。
当ててやろうということは、一切してはならないし、技巧や技術ではどうなるものでもありません。
全て忘れて丞相様になりきれるか、それが勝負なんです。」
ということ。
菅丞相を演じる時は、食べ物や習慣など、
ストイックなほどに規制を課していることは有名です。
神になりきるために全てを打ち込んでいる仁左衛門の魂が、
菅丞相の姿にシンクロして見えるんでしょうね。
具体的には、感情や動作は限りなく抑え、
ちょっとした目線や口調、身の振りだけで、
菅丞相の心情が豊かに伝わってくるんです。
道成寺という場では、その少ない身体表現で、
木像と人間も演じ分けるんです。
微細な違いが、こんなにも大きく違って見えるので
息をするのも申し訳ないほど真剣に、
舞台を見入っちゃいましたよ。
最後、花道の引っ込みでは、
様々な思いを込めた表情、
そのお顔には涙涙が・・・・。
心をガシッと掴まれた瞬間でした。
ベスト2:坂東玉三郎の覚寿に女形の貫禄
大好きな玉三郎さまは、覚寿のお役。
これは、菅丞相の叔母であり、
刈谷姫の実母でもあります。
歌舞伎の役の中では三婆の一つと言われる、
しどころの難しいお役でもあるそうです。
養女にやった実の娘のスキャンダルで、
甥である道真の未来を台無しにしてしまった、、、
その口惜しさ、母・叔母としての情愛が、
如実に伝わってきました。
とても品があり、厳しく折檻する場面や、
娘の仇を討つ場面は、かなり強い感情を見せるのですが、
その格を崩さない姿に芯の強さも見てとれま感銘を受けました。
佇まいの美しさは玉三郎ならではなのでしょうかね。
神となる菅丞相と並んでも劣らない、
気高く美しい覚寿でした。
*坂東玉三郎はこちらにも書いています。
ベスト3:全ての場に見逃せない見どころあり
舞台の中心が仁左衛門の神「菅丞相」だからなのか、
どの場面もとても緊張感があり、
品があり、研ぎ澄まされた表現がありました。
全てが、菅丞相に導かれるように、
高尚な場へと高められていったようにも思えました
「加茂堤の場」では、初々しい千之助の刈谷姫と中村米吉の斉世親王の姿が、
この世のものとは思えない美しさを放っていました。
片岡孝太郎の八重の甲斐甲斐しさも可愛かった。
「筆法伝授の場」では、片岡秀太郎の園生の前と
中村梅玉演じる武部源蔵、中村時蔵演じる戸浪とのやりとりに
温かな情愛が感じられ、ホッとしました。
憎まれ役の左中弁希世(橘太郎)も、
おかしみがあるんだけど、
下品にならず、
源蔵や菅丞相に絡んでいました。
勘当された主人菅丞相と、
忠義を誓う源蔵とのやりとりは
緊張感とちょっとの悲しさがあったけど、
それもやむを得ない事情からの苦渋の決断というのも、
空気から伝わってきました。
「道明寺」は、
菅丞相を亡き者にしようとする者と、
それを守ろうとする者の攻防が、
静かな進行の中で描かれていきました。
前述の菅丞相、覚寿は言うまでもなく、
悲劇に見舞われる立田の前(孝太郎)もその無念さが伝わりました。
この場は、
仁左衛門、孝太郎、千之助の3代共演も観られるっていう、
本筋とはちょっと離れるけど、
それも見どころだったなあって思いました。
父と共にNew York Times紙の
日本版「T Japan」にて
今月の舞台「菅原伝授手習鑑」
についてインタビュー記事
を載せていただきました。https://t.co/JSiWt7tkSA pic.twitter.com/bWs3ThSEVd— 片岡千之助 (@Sennosuke0301) February 9, 2020
と、ベスト3って言いつつ、
全てがベストなんだなあって思ったすごい舞台でした。
おまけ:イヤホンガイドは3兄弟のインタビュー
今回、イヤホンガイドも借りました。
舞台について初めて知ることも多く、
使ってみて良かったです。
幕間の3兄弟のインタビューも嬉しいし。
そこからうかがえる
13代目片岡仁左衛門は、
家でも歌舞伎の話ばかりだったということに、
改めて感慨を受けたところです。
一つの道をやり遂げた人と時代を超えて
出会えた気持ちになりました。
こちらもオススメですよ。
長々となりましたが、
2月大歌舞伎、見ないと後悔する素晴らしい舞台です。
多分、長く語り継がれる舞台になると思います。
絶賛、オススメです。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
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