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蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)あらすじと感想 市川猿之助の五変化が魅せる!

観劇レポート
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「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」、読みづらい演目ですね。

これは市川猿之助さんの澤瀉屋のお家芸、

2020年11月に上演された時は、猿之助さんの早変わりと

一座のチームワークよいストーリー運びが人気となり、

満員御礼が続出した人気演目です。

2021年7月にも再び上演となりました。

その人気演目「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」のあらすじと、感想2回分をこちらに書いています。

 



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「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」とはどういう芝居?

市川猿之助さんが、この演目についてインタビューで語っていたことを引用しながら、

このお芝居について簡単に説明します。

このお芝居は、市川猿之助さんが、

5役を早変わりで務めるのが大きな見どころです。

通常は、「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」という題で

上演されることが多く、

昨年12月は片岡愛之助さんが、この5役を務めていました。

蜘蛛の精が色々な人物に化けて出て、病床の源頼光を狙うという筋立ては同じです。

猿之助さんも亀治郎時代の平成18年に初役を務めて以来、

何度か再演を重ねている得意の演目です。

しかし、今年は新型コロナの影響もあり、

普段通りの演出では難しいということから、

「蜘蛛の絲直噺(くものいとおよづめばなし)」として上演。

このスタイルは、先代の猿之助(猿翁)が演じたスタイルだそうで、

5役の中の太鼓持ちは初役なんですって。

物語をしながら舞う役なので、

その点の見所は嬉しいところです。

全体は40分と短めですが、

一幕の中の早変わりと澤瀉屋チームの息のあった芝居は

まさにエンターテイメントだと思いました。



「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」のあらすじ

 

源頼光の館では病床につく頼光の看病と警護のために、

家臣の坂田金時始め女房などが番を務めています。

おしゃべりな女房を諌めた、

坂田金時と碓井貞光が眠気覚ましに濃いお茶が欲しいと話しているところに、

お茶を持った女童熨斗美(のシミ)が現れます。

可愛い姿に慰み、遊んでいるうちに、

小姓の澤瀉が現れます。

手に持った薬を頼光に届けたいという澤瀉、

それを怪しいとにらんで阻む金時たち、

澤瀉は糸を撒きその場から姿を消します。

 

 

そこへ、番頭新造の八重里が傾城薄雲からの文を届けにやってきます。

しかしこれもやっぱり曲者、

糸を打ち投げ、逃げる八重里を金時・貞光が追いかけますが見失い、

主人の様子を案じ、頼光の様子を見に行きます。

 

不穏な様子を案じる、女房たちの前に姿を現したのは

太鼓持ちの彦平。

話をしてほしいと頼まれ、羅生門での渡辺綱の鬼退治について

舞いながら物語ります。

ふと気がつくと姿が見えない、

女房たちは、これももののけでは?と後を追います。

そうしているうちに、

頼光の寝所には、傾城薄雲の姿が現れるのです。

馴れ初めを語る薄雲ですが、

頼光はその正体を見破り、手に持った名刀「膝丸」で斬りつけます。

本性を表したもののけ、

それは、葛城山に住む女郎蜘蛛の精だったのです。

その野望は、日本を魔界にすること、

恐ろしい姿を現した蜘蛛に対し、

渡邊綱や卜部季武も助っ人に現れ、

皆で退治を試みます。

なかなかしぶとい蜘蛛に対し、

見舞いのため屋敷を訪れていた猛者平井保昌も参じます。

流石の蜘蛛の精も抵抗虚しく

頼光はじめ、家臣たちの手により、退治されるのでした。

 



 

「蜘蛛の絲宿直噺」(令和3年7月歌舞伎座)の感想

令和3年7月も、本作はノリノリです。

コロナ禍をもじったセリフは笑いを呼びます。

配役と内容は若干変わったものの、

主なストーリーは同じなので、昨年も観た方はリラックスして観られたのではないでしょうか。

私は、このお芝居を観る前に、テレビで真っ黒に日焼けした猿之助さんを見て、

あらら、お芝居大丈夫かしら?

って思っちゃいました。

でも白塗り効果は抜群で、黒さを微塵も感じさせませんでしたよ。

「蜘蛛の絲宿直噺」令和3年7月歌舞伎座の配役

女童熨斗美・小姓澤瀉・番新八重里・太鼓持彦平・傾城薄衣実は女郎蜘蛛の精

市川 猿之助の六変幻

平井保昌 尾上 松緑

坂田金時 坂東 亀蔵

碓井貞光 中村 福之助

卜部季武 市川 弘太郎

金時女房八重菊 市川 笑三郎

貞光女房桐の谷 市川 笑也

渡辺綱     市川 中車

源頼光     中村 梅玉

 

前回と違うのは、

頼光を演じるのが大ベテランの中村梅玉さんだということ。

猿之助一座の市川猿弥さんが出演していなくて、

平井保昌役で尾上松緑さんが出演していることですね。

もうちょっとあるけどね。

あと、配役にはないのですが、

黒子の人数が前回にも増していたような気がします。

もしかしたら、周りを見る余裕ができたせいかもしれませんけどね。

 

「蜘蛛の絲宿直噺」(令和3年7月歌舞伎座)の感想

改めて、前回の感想を読むと、

猿之助さんの早変わりと舞踊の素晴らしさ、

チームワークの良さ、

ユーモアたっぷりのセリフは

今回も健在で、うなずいてしまいます。

それに追加する形での感想、ダブっているところはお許しくださいね。

 

まずは猿之助さんについて書いていきます。

猿之助さんの早変わり、

お役は昨年11月とは変わりません。

そのせいか、早変わりがもっと早くなっている気がしました。

また、その変わり身もとてもスムーズです。

特に、小姓澤瀉から番新八重里への変換は、

瞬く間!

見た目だけではなく、振りも言葉遣いも

ガラッと役柄に合わせて変わります。

役のしどころが身についているからできることなんじゃないかと思います。

傾城薄雲ははんなりとした女性の華を醸し出していました。

衣装が昨年の赤から、ピンクを基調にした、

まさに薄雲といった風情を想像させるもので、

それもその演出にあっていたのかもしれないです。

上に羽織る薄衣の模様が、昆虫の羽根にも見えて、

視覚からもこの世のものではないかも、、という雰囲気でした。

正体がバレて蜘蛛として現れたときも、

怖いというよりも綺麗だなあというイメージが強かったです。

化け物なんだけど、誇り高く、潔さも感じられましたね。

花道でのくるくる回る動きとか、最後の見得とかも

ビジュアルの魅力を計算したかのように

美しいという言葉しか出てきませんでした。

 



 

続いて、

ニュースでも取り上げられている、

コロナ禍をいじったセリフについて。

前回も、このセリフで笑ったんですが、

今回はさらにパワーアップしていましたよ。

関連あるセリフを書き出してみました。

「変異株では・・」

「2年越しの感染症、そろそろ収束してもよいわいな。」

「飛沫感染」

「濃厚接触しないよう、距離をとって・・」

「緊急事態、、自粛」

「ワクチンよりも効く薬」

など、全部覚えていないのが情けないのですが、

主人である頼光が病に臥せっているという設定より、

この感染症ネタがセリフに次々入ってくるんでしょうね。

みなさん真面目なセリフの途中に

真面目な顔をして挟むので、余計に面白いんです。

この遊び心が、たまらなく、

お客様を喜ばせようというサービス精神だなって思います。

その心はクライマックスでも発揮されるんです。

さて蜘蛛の退治ももう少し、、、というところで、

平井保昌が登場します。

これは、尾上松緑さんが務めていました。

この人相が保昌というよりも

荒事の主人公、景清か鎌倉権五郎か、、という

車鬢の鬘で登場。

舞台に出るやいなや、

「先々月は俺が蜘蛛、そっちが倒す役」っていうから、

ここでも笑ってしまいました。

5月は土蜘蛛で、共演された尾上松緑さんと市川猿之助さん。

その時は、松緑さんが土蜘蛛で、猿之助さんが頼光でした。

そんな感じで、

最後まで楽しませてくれる、まさにエンターテイメントな舞台です。

なおかつ、役者の力で舞台の空気は壊さないというのもすごい。

チームの力を実感する歌舞伎の魅力がたっぷり詰まった舞台だったなって大満足です。

 



 

「蜘蛛の絲宿直噺」(令和2年11月歌舞伎座)の感想勝手にベスト3

こちらからは、令和2年11月の舞台について書いていきます。

なんと、第1部はチケット完売だったそうです。

お芝居の楽しさを満喫できる、とてもいい舞台でした。

久しぶりに筋書きも販売(1300円)されていて、

歌舞伎を観に来たなあって雰囲気にもなりました。

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「蜘蛛の絲宿直噺」令和2年11月歌舞伎座)の配役

女童熨斗美   市川 猿之助

小姓澤瀉

番新八重里

太鼓持彦平

傾城薄雲

源頼光     中村 隼人

碓井貞光    中村 福之助

金時女房八重菊 市川 笑三郎

貞光女房桐の谷 市川 笑也

坂田金時    市川 猿弥

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「蜘蛛の絲宿直噺」令和2年11月歌舞伎座)の感想ベスト3

上演時間は40分でした。

短いながらも、見どころたっぷりの楽しい舞台でしたよ。

久しぶりに澤瀉屋の面々が顔を揃え、

息がぴったりな舞踊を見せてくれました。

それでは、印象に残ったところ3点を紹介していきます。

ベスト3:久しぶりに笑也・笑三郎・猿弥が揃った!

8月に歌舞伎が再開してから、

猿之助さんと猿弥さんの舞台はそれぞれ拝見していました。

そして、この舞台で久しぶりに澤瀉屋の看板トリオ(と私は思ってる)の

共演がかないました。

トリオとは、市川笑也さん、市川笑三郎さん、市川猿弥さんのことです。

先代猿之助(現在の猿翁)の時代から、澤瀉屋の舞台を盛り上げてきた3人です。

各々活躍の場面はあったにしろ、

3人が揃うのが私はとっても嬉しいのです。

南座の「新版オグリ」がコロナのため上演かなわず無観客配信、

それ以来ではないでしょうか。

笑也さん、笑三郎さんは

幕開けからストーリーを語りつつ本筋へつなげるお役目。

二人の女房の世間話から、物語の世界へぐいっと引っ張られます。

続いて、猿弥さんの金時、、福之助(成駒屋)さんの貞光が、

おしゃべりを諌めつつ、もののけの出番を待ち受けます。

ドロドロ・・の太鼓の音とともに、

ばさっと幕が下りて女童に扮した猿之助さんが登場!!

要所要所でストーリーを展開するこのトリオの存在、

やっぱり嬉しいなあ~~って思いました。

心なしか、笑三郎さんのお化粧が濃かった気が・・・

あれは、閻魔大王夫人の魔力かしら!笑



ベスト2:猿之助の五変化、舞踊&表現力がすごい!

この芝居で、猿之助さんは5役を早変わりで勤めています。

始めは、お茶を持って現れる女童熨斗美。

おかっぱ頭と赤い着物が妙に可愛くて、

金時と貞光を翻弄します。

そのまま、舞台上で小姓澤瀉に早変わり。

可愛い女の子からの変容に客席もびっくり!

持っている薬(レムデシビルらしい)を頼光へと寝所にむかいますが、

それを阻まれると

蜘蛛の糸を撒き、花道から退場。

と思えば、今度は番頭新造の八重里に扮して登場、

傾城薄雲から文を預かってきたと、

優雅に文を読みながら舞います。

しかし、これももののけと見破られるとまたしても糸を撒き退散、

その後を追って貞光と金時がその場を去ると、

やってきた女房の前に、太鼓打彦平として現れる猿之助さん。

彦平は、鬼退治の話を情景たっぷりに舞って見せます。

踊りながら姿を消すと、

最後は傾城薄雲に扮して頼光の寝所のうちに現れます。

最後は雲の本性を見せて、蜘蛛の糸を吐きながら幕が下りました。

という風に、

くるくると姿を変えて現れ、舞う猿之助さん。

お役によって、表情も所作も変えての人物描写に唸ります。

身軽だし、表現豊かだし、テンポも良くて本当に魅せられます。

猿之助さんの舞踊を満喫できて楽しいです。

ベスト1:時事ネタもチームワークも魅せる、これぞ澤瀉屋!

この芝居を観て、歌舞伎は大衆のためのエンターテイメントだなあって

つくづく思いました。

冒頭のセリフが、まず時事ネタから。

「世界に広がったる、かの新型の病なるか」

「いつまで続くか感染症、そろそろ収束してよいコロナ」

「飛沫感染おきぬよう・・・」

などと、頼光の病を憂いつつのこのセリフ。

おまけに、先も書きましたけど、

小姓に化けた猿之助さんが

「頼光様へこのお薬、難病に効くレムデシビル・・」

と、ぶっ込んできますね~。

さらりとセリフに載せるところが、役者です。

舞台上のお役は、

猿之助さん、隼人さん、笑也さん、笑三郎さん、猿弥さん、福之助さん、ですが、

黒子、後見役もみな息を合わせてのこの一幕、

チームワークの良さが舞台を盛り上げることを実感しました。

ラストの立ち回り、動きは抑えていましたが、

蜘蛛の糸を効果的に使い、視覚効果もバッチリ!

最後まで見どころたっぷりです。

幕が下りてもずっと拍手が鳴り止みませんでした。

心に残るいい舞台でした。

 

初日は開けたばかり、

ぜひ、一度足をお運びくださいね。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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