歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」の第4部は、
「義経千本桜」から「川連法眼館」です。
忠信を演じる中村獅童は、なんと48歳にして初めて歌舞伎座初主演なんだそうです。
脇は、若いイケメン役者たち。
観る前からワクワクする舞台、11月8日に観劇した感想を書いていきます。
義経千本桜/川連法眼館(よしつねせんぼんざくら/かわつらほうがんやかた)とはどういう芝居?
義経千本桜は、歌舞伎三代名作の一つです。
通しでも、単独の幕でも見所が多い芝居なので、
上演されることも多いです。
今回は、全5段のうちの4段目の切りに当たる
「川連法眼館」の上演です。
義経に渡された初音の鼓と
義経の命で静御前に付き添ってきた佐藤忠信との関係、その秘密が
明らかになる感動的な場面が印象に残る人気の高い芝居です。
この芝居の見どころは、
やはり忠信2役の演じ分けと、
狐忠信が本性を表し親子の情愛を見せる場面です。
また、義経は気品があり大将としての格もあるものの、
兄頼朝に疎んじられ、肉親の愛に恵まれない悲運の将でもあります。
人も狐も親を思う気持ちに変わりなく、
物語全体を貫くテーマを最も象徴する場は
本当に感動的な作品なのです。
中村獅童さんは、
平成13年の11月に「平成中村座」の試演会で
1日だけこの役を務めたことが初めてだったそうです。
その際は、18代目中村勘三郎に厳しく稽古をつけられた甲斐あり、
演技後は褒められたのだそうです。
それから平成15年の浅草新春歌舞伎を経ての3回目、
歌舞伎座初の主演ということで気合いは十分だと思います。
義経千本桜/川連法眼館の配役とあらすじ
〈配役〉
佐藤忠信/源九郎狐 中村 獅童
源義経 市川 染五郎
駿河次郎 市川 團子
亀井六郎 澤村 國矢
静御前 中村 莟玉
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〈簡単なあらすじ・見どころ〉
義経千本桜の四の切です。
吉野山中の川連法眼の館に匿われている義経のところへ、
家臣の佐藤忠信が訪ねてきます。
母の看病で実家に戻っていたと言う忠信に、
義経は伏見稲荷で別れた静御前の様子を聞くが、
どうも要領を得ない様子。
そこへ、静御前が忠信を供に到着したとの知らせが入る。
怪しむ義経は二人の忠信のどちらが本物か、静に命じて確かめさせることにします。
静が初音の鼓を打つと、忠信が現れ、鼓に聞き惚れます。
怪しい様子に、静が問い質すと、
忠信は鼓の皮にされた夫婦狐の子で、親恋しさから人間に化けて
静に付き従ってきたのだと白状するのでした。
それを知った義経は、肉親の縁薄いわが身と比べて
狐を哀れに思って鼓を与えることにします。
狐忠信は喜び、鎌倉方に味方した僧たちが攻め寄せてくることを知らせ、
山へと帰ってゆくのでした。
全体通してのあらすじはこちらに書いてあります。
![](https://kabukist.com/wp-content/uploads/2020/02/ELFA1949DSC01315_TP_V4.jpg)
中村獅童、歌舞伎座で忠信と源九郎狐演じ「48歳にして夢がかないました」 : スポーツ報知 https://t.co/rx9ZZ18kTp
— kabukist (@kabukist1) November 9, 2020
義経千本桜/川連法眼館の感想(11月歌舞伎座)勝手にベスト3
11月吉例顔見世大歌舞伎第4部「義経千本桜/川連法眼館」を観て、
主に印象に残ったことを3つ紹介します。
ベスト3:若手イケメン役者にうっとり
この舞台は、どういう座組?
と思うほど、若手が一挙に集められています。
源義経に市川染五郎、静御前に中村莟玉。
舞台に現れた時の神々しいまでの美しさは、
彼らのニンなんだろうなあと思いました。
とはいえ、綺麗なだけではいけないわけで、
特に、義経は芝居全体を貫く影の主役でもあるので、
風格が欲しいところです。
静も綺麗だけどもうちょっと強さや艶を見せて欲しいところ。
駿河次郎は市川團子、顔が小さく華奢な体つき、
武将としての勇猛さがやはり欠けちゃうのは惜しいところ、
ここは、忠信をぐいっと見やる強さがないとね。
3名ともにこれからに期待、成長が見えるのが若手のいいところですね。
亀井六郎役の澤村國矢さんは、
堂々とした押し出しで芝居をしめていました。
獅童さんとともに、超歌舞伎のイメージが強いので、
古典でこの役を立派に見せてもらえるのは嬉しい限りでした。
ベスト2:義太夫、舞台など総合芸術の素晴らしさ
役者ではなく、舞台を彩る義太夫や舞台の作り、
あって当たり前だから、あまり特筆しないのですが、
今回は芝居を引き立てるものとしてまじまじと見てしまった感があります。
竹本愛太夫の語りは、ググッと迫るものがありました。
また、この芝居は狐忠信が見せる早変わりやケレンも見どころなのですが、
それに耐えうるセットの存在も重要なんですね。
歌舞伎が総合芸術と言われる所以、
役者だけでなく取り巻く全てが揃って、感動の芝居になるのだと
実感した一幕でもありました。
中村獅童、勘三郎から受け継いだ「義経千本桜」にすべてをぶつける https://t.co/UWLQwPzXPN @Sankei_newsより
— kabukist (@kabukist1) November 9, 2020
ベスト1:中村獅童の忠信2役が見事で泣けた
中村獅童さんの忠信が秀逸だと感じました。
忠信は2役ありまして、
前半は、人間の佐藤忠信。
こちらは、清々しく古風な型で見せてくれました。
どんと構えつつも、主人を敬い例を尽くさんとする
武将の姿勢に感心しました。
後半は狐忠信。
狐詞(きつねことば)や身体表現に狐らしさを見せつつも、
一番の見所は、鼓に対する執着と親を思う子の哀れさ。
初めて見る方にとっては、
人間からきつねへの早変わりや、
次から次へと場所を変え、
人間とは思えない動きをする、まさに狐の姿を
役者が見せるところでしょう。
それも期待しての観劇でしたけど、
心打たれたのが鼓の物語と親を慕う気持ちを訴える場面。
獅童さんの熱演にグイグイ引き込まれ、
計らずとも涙が出てきてしまいました。
この物語の太いテーマは親子愛だということを
実感した芝居でした。
なぜか、私には勘三郎さんが重なって見える場面もありました。
泥臭いというか、生臭いというか、
綺麗ではないのですが心に深々と刺さるような芝居、
それが見られたことに感激しています。
歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎の見方はこちら
![](https://kabukist.com/wp-content/uploads/2020/10/スクリーンショット-2020-10-10-19.00.31.png)
若手が多い芝居は、日が経つとまた熟れ具合も変わります。
もう一度見に来ようかなって思う芝居でした。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
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