8月1日に歌舞伎座の公演が5ヶ月ぶりに再開しました。
初日に行きましたが、そのコロナ対策が徹底していて感激しました。
5日に関係者の体調不良を受け、第3部を救援するも、
他の芝居に影響はありませんでした。
そのすごい対策と持っていくといい物、入場の手順など、お伝えします。
歌舞伎座のすごいコロナ対策、4部構成、座席や館内消毒の配慮に感激
歌舞伎公演が休演になったとき、
松本幸四郎の言葉が胸を打ちました。
「歌舞伎は役者だけではできない。」
歌舞伎役者が舞台に立つには、衣装、床山、化粧が必要で、
その舞台を回すには、下座音楽やお囃子、語りも必要で、
大道具、小道具なども必須の条件となります。
その前提からすると、
新型コロナウイルスの感染防止の点からは、
密も飛沫も発生し、感染のリスクが高い公演ということができます。
しかし、歌舞伎の底力はすごかった。
感染リスクを最小限に下対策の徹底を打ち出し、
8月公演を実現させています。
前置きが長くなりましたが、そういう演劇形態の歌舞伎が
コロナ対策として何をしたのかを紹介します。
歌舞伎座のコロナ対策その1:4部構成
まず、すごいと思ったのが、
花形歌舞伎の演目構成です。
約1時間程度の演目4つから、4部構成にしたこと。
演目を見ると、
第1部「連獅子」、第2部「棒しばり」、第3部「吉野山」、第4部「与話情浮名横櫛」。
このうち、第1~3部は、舞踊劇です。
しかも一度に舞台に上がる人数は少ないものです。
演者同士も間を保ちながら演技できるものであり、
セリフが少ない演目でもあります。
第4部は芝居ですが、
これも登場人物は少なく、セリフはあるものの、
空間をたっぷりとっている演出になっていました。
歌舞伎は、通し狂言など長いものでは、
1日かかって見る芝居もあります。
登場人物やお囃子がずらりと舞台に並ぶ
壮観な演目も多いです。
しかし、今回の演目のように、
少人数構成で短時間でも満足できる演目もあるのです。
今までも、一場面だけの上演ということが多々あるので、
このような演目構成が可能である、
それは歌舞伎の持つ力だと感じました。
舞踊では、お囃子や義太夫も登場しますが、
みなさん黒い布マスクを垂らしており、
飛沫対策ができていると思いました。
マスクをしても、声が届くのも芸の力なんですね。
この構成で、部ごとに総入れ替えにすることも
可能にしたのだろうと思います。
1部ごとの演目を4回行うことで、
芝居を上演しお客さまに届けることができる、
かつ、ウイルス拡大リスクを最小限に抑えることができる、
この知恵が素晴らしいと思います。
また、歌舞伎を見るのが初めてという方にとっても、
1時間でチケットの金額もお安い、とあれば
行きやすいのではないでしょうか。
初めて観る方にも優しい攻勢だなあと思います。
ぜひご覧になってみてください!!
歌舞伎座のコロナ対策その2:館内の密を避ける
歌舞伎座の総座席数は、約2000席です。
それを半数以下の823席にしての上演です。
前後左右を空け、観客同士の密を防ぎます。
花道横も2列空いています。
はじめこの帯は何?
と思ったのですが、座れない座席の目印と
わかりました。
この色、歌舞伎座の色とマッチしているんです。
だから、邪魔にならないし、インテリア?の一種として
見ることもできます。
それにね、歌舞伎座さんには申し訳ないんですけど、
前後左右が空いていると、
かなりゆったりとお芝居が見られます。
前の人の頭も気にならないしね!
ロビーの椅子も、隣り合わせの席は、
座れないようにしてあります。
席があると、つい座っちゃいますから、
この表示はわかりやすいです。
歌舞伎座には、外国の方もいらっしゃるから、
文字だけではなく、ピクトグラムを使った表示が
今回目立つと思いました。
入退場時も混み合わないように、
開場は開演の40分前から始め、
退場時は、係員の指示に従って座席順に
退場することになっています。
お土産やさんも閉まっており、
買い物などで人が集まることも避けています。
通常の半数以下の客席は、
寂しい気もするのですが、
安心して観劇できるよさもありました。
舞台で演じる場も、
通常より奥でということもあるそうです。
最前列の観客への配慮が感じられます。
歌舞伎座のコロナ対策その3:消毒を徹底する
1部終わるごとに、役者も、裏方もスタッフも総入れ替え、
次の開場までの時間も1時間近くとっており、
その間に劇場内を消毒しているということです。
劇場内のあちこちに、手指消毒用のアルコールも設置してあります。
元々換気システムも作動していますが、
今は桟敷席の後ろの扉を開け、
上演中も換気をしているとのこと。
空調が強すぎると感じる点もありますが、
これも空気を清浄に保つためとあれば
致し方ないというところです。
換気のためとはいえ、結構冷えるので、
歌舞伎座にお越しの際は、
上に羽織るものと、足元にかけるものがあるといいと思います。
今は、ブランケット等の貸し出しはしていないのです。
歌舞伎座のコロナ対策その4:観客へ理解を求める
歌舞伎座からのお願いとして、
かなり多くの協力依頼もされています。
手指消毒、マスク着用、飲食の禁止(水分補給のみ可)、大向こうやかけ声も禁止です。
掲示物や係員からの指示もそうですが、
開演前に、出演役者からのアナウンスで、
感染防止のための行動へ協力をお願いされています。
役者さんの声が柔らかく、綺麗な言葉で話すため、
これも芝居の一部?と思って
みなさんじっくり聞いています。
今まで歌舞伎ができない、見られない、
そういう思いを共有してきたからこそ、
このアナウンスも好意的に聞いているのだと思います。
中には、マスク拒否をした客もいたそうです。
気持ちがわからなくもありませんが、
このガイドラインを観客も守ることで保たれている上演です。
それは、毅然とした態度で対応してもいいのではと、
いう声も多かったです。
歌舞伎座のすごいコロナ対策、観劇する時に持っていくといい物、入場する時の手順紹介
歌舞伎座観劇に持っていくといい物は?
今までの歌舞伎座観劇で貸し出されていたものが、
今はコロナ対策のため、貸し出しされていません。
換気のため、場内の空気も低めです。
それを踏まえ、観劇の時に私が持っていってよかったものを
紹介します。
①マスク
これがないと、入れません。
歌舞伎座地下の木挽町広場で、
和風のマスクもありますので、そこで購入するのもいいですね。
②上に羽織るものや膝にかけるもの
今までは、ブランケットの貸し出しがありましたが、
現在はありません。
そして、人数も少ないせいか、かなり寒い印象を受けました。
初日は羽織ものを持って行きましたが、
足元がスースーして冷えてしまいました。
ですから、上半身、下半身共に冷やしたくない人は、
羽織ものや、かけるものを持っていくことをお勧めします。
私は、折りたためるカーディガンと薄いショールを持って行き、
重宝しました。
③オペラグラス
オペラグラスの貸し出しもありません。
役者の表情を見たい方はこちらもあるといいです。
④お飲物
場内での飲食は、最低限の水分補給のみとなっています。
売店も1階で飲み物の販売のみです。
約1時間ですが、心配な方は、お飲物を用意するといいと思います。
⑤エコバッグ類
巷では、買い物をする際、袋が有料になっていますね。
木挽町広場では、お土産を買うこともできますので、
買い物したい方はお持ちになるといいと思います。
歌舞伎座に入場する手順は?
初日に歌舞伎座に行った時のレポートにも書きましたが、
入場する手順も徹底していました。
開演40分前に開場となり、粛々と人が中に入っていきます。
入り口は、3列に分かれていて、入場時の密を避けるため、
足元に立ち位置のマークがありました。
入り口前には、歌舞伎座入場時の注意事項も書いてあります。
待っている間も、ソーシャルディスタンスを
心がけましょう。
入場時の手順は
①手指の消毒(自分で)
②サーモグラフィーで体温チェック(スタッフが)
③チケットを見せる
④チケットをもぎって指定の箱へ入れる(自分で)
⑤台の上の無料パンフを取る(自分で)
↓
こちらが、以下のように変更になったそうです。
①サーモグラフィーで体温チェック(スタッフが)
②チケットを見せる
③チケットをもぎって指定の箱へ入れる(自分で)
④手指の消毒(自分で)
⑤台の上の無料パンフを取る(自分で)
という順番です。
私が見る限りは、
整然としており、問題なく入場できたと思います。
初日は、チケットを手に消毒したので、
チケットが汚れるというハプニングもありました。
新しい順番なら、それもなさそうですよ。
気づいたら配慮、徹底しているなあと思いました。
歌舞伎座8月公演を4部制にした意味とは?
4部制にし、座席を半数以下に減らし、
その分チケット料金も通常より半額以下の値段です。
それでもメリットがあると、
歌舞伎座の橋本芳孝支配人は語っているそうです。
8月5日に配信されたYahoo!ニュース(記事ネタはAERAdot)に、
そのメリットについて書かれていました。
1部に約300人ものスタッフが携わる、
通常の昼夜2部制ではなく、
4部制にして各部スタッフを最小限にする。
演目の選定も、登場人物の数や内容などからも吟味したのだそうです。
出演者と裏方も各部で完全入れ替えることにより、
万が一、どこかの部で感染者が出ても、
他の部の公演を続行できる余地を残したということです。
役者、スタッフは、楽屋でも検温、消毒、マスク着用などの注意を払い、
恒例の関係者同士の「あいさつまわり」も禁止したそうです。
負担も大きいそうですが、舞台再開に向け、
関係者が一致団結して取り組んでいるとのことです。
「まずは舞台を開けたい。お客様に見ていただきたいという気持ちが一番。でも、8月の再開はあくまで第一歩。万が一何かあれば次の歌舞伎の興行や、日本の演劇そのものへの影響も大きいことを肝に銘じています」
とも支配人はおっしゃっています。
興行側の収益面はやはり厳しいのだそうですが、
歌舞伎の伝承のために、この方法を選択したのだそうです。
400年続いている歌舞伎は、
舞台を開け、そこで演じることで伝承されていくものでもあります。
興行が途絶えるということは、その伝承も途絶えるということ。
歌舞伎役者やそれを支えるスタッフは、
皆特殊な技を持った人たちです。
彼らの技を消さないためにも、舞台を再開する意義があるということでした。
「歌舞伎」だからこそできたこの形態、
そのことを実感させられた支配人の心に感動しました。
歌舞伎座8月5日第3部を急遽休演、6日には再開、猿之助の心意気に涙
それだけのコロナ感染対策を図ってきた歌舞伎座に
驚くニュースが流れたのが8月5日です。
第3部関係者の一人が微熱を訴えたということで、
急遽公演が中止となりました。
このニュースで驚いたのは、
当日の約2時間くらい前の発表だったということと、
1名の体調不良で公演をまるっと中止しちゃうってこと。
さらに、4部総入れ替えのため、
第4部は通常通り実施できたということです。
ニュースによると、
該当の関係者の健康観察とPCR検査をして
様子を見たとのこと、
それは、歌舞伎座新型コロナウイルス安全対策ガイドラインに則っての対応でした。
私は、この前日に第3部「吉野山」を観劇しました。
あまりの素晴らしさに感動して、興奮覚めやらぬまに
帰ってきたのです。
それが、休演???
どうなっちゃうかなって心配でしたが、
幸いなことに検査は陰性で6日から公演は再開しています。
先に説明した4部構成は、こういう事態も想定してのことでした。
この件について、
第3部「吉野山」に出演していた市川猿之助が、
インスタグラムで次のような発言をしました。
しかし、一人でも観に来て下さるお客様がいるのであれば、我々には、舞台をやり続ける覚悟がある。
なぜなら、その人は、歌舞伎再開を待ってた人だから。
損得も大事。でも、今は、損得なんかじゃない。
我々が大切にしたいのは、心意気だ。
この心意気は、コロナにも潰せまい。
すみません、少し引用してしまいました。
でも、このコメントは大勢の方に読んでいただきたい。
歌舞伎座支配人のコメントからも感じ取れました、
再開に向けた心意気です。
私も、観客としての心意気を持って
観劇していきたいと感じました。
どれだけ対策しても、ウイルスはどこから入り込んでくるか
防ぎきるのは難しいでしょう。
それでも舞台を開ける準備を怠らない歌舞伎座と役者たちを
応援したいと思いました。
私も体調を整えで劇場へ行きたいと思います。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
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