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松本幸四郎と鈴木英一の講演「『勧進帳』を解く― 幸四郎家畢生の大演目 ―」を聞いてきました!

観劇レポート
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「勧進帳」、歌舞伎十八番として、あまりにも有名な演目です。

2018年の襲名公演において、この「勧進帳」で弁慶を演じた十代目松本幸四郎、

その思いはいかようなものだったのでしょうか。

早稲田大学エクステンションセンターが主催する

サタデーレクチャー ~早稲田の杜の教養シリーズ~「『勧進帳』を解く― 幸四郎家畢生の大演目 ―」に

参加してお話を聞いてきました。



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サタデーレクチャー ~早稲田の杜の教養シリーズ~「『勧進帳』を解く― 幸四郎家畢生の大演目 ―」とは

早稲田大学エクステンションセンターとは、

“Extension”(=拡張、開放)の意味するとおり、

早稲田大学の研究・教育機能を広く社会に開放するための機関だそうです。

生涯学習の推進の取組の一環として、

エクステンションセンターでは、

早稲田大学の教授・名誉教授をはじめ、

第一線の学者・実務家等による公開講座を、

学ぶ意欲のある全ての方々に提供しているそうです。

その特別講座として開催されたのが、

歌舞伎役者十代目松本幸四郎と常磐津節太夫鈴木英一の対談による講演会、

「『勧進帳』を解く― 幸四郎家畢生の大演目 ―」です。

この講演会の主旨は、次のようなことでした。

2018年、歌舞伎界の大名跡である

十代目松本幸四郎の大事な襲名披露が行われました。

披露公演では、本人の思い入れ強い役々が選ばれました。

その中でも歌舞伎十八番「勧進帳」の弁慶役は、

松本幸四郎家に生を受けた人間として

心技体の充実を期してのぞまなければならない畢生の役であったそうです。

2019年9月歌舞伎座で上演された、

9月秀山祭歌舞伎では、

片岡仁左衛門と日替わりで弁慶役を、

中村錦之助と日替わりで冨樫役を、務めた松本幸四郎。

上演の度に進化を遂げる舞台を見る時、

どのように作品と役を解釈し、

藝(げい)を造形しているのかを、

鈴木英一が、代々の名優の演技にも触れながら、

いまその役に生き、生かされている一人の役者に問いながら、

その名作の魅力を解くというものでした。

講演会は、早稲田大学キャンパスの8号館の地下の教室で

約260名の参加者の熱気溢れる中、行われました。

大きな拍手の中、始まった講演は、

勧進帳という演目と松本幸四郎という役者の魅力を、

惜しみなく見せてくれた、密度の濃いものでした。



歌舞伎役者松本幸四郎について

十代目松本幸四郎のプロフィール

松本幸四郎 本名:藤間 照薫(ふじま てるまさ)

松本流三世家元:松本 錦升(まつもと きんしょう)

生年月日 1973年1月8日

出身地 東京

血液型 AB型

家系 父:二代目松本白鸚、母:藤間紀子、姉:松本紀保(女優)、妹:松たか子(女優)、

妻:藤間園子、子:八代目市川染五郎(本名:藤間斎)・松田美瑠(藤間薫子)

屋号 高麗屋

定紋 三ツ銀杏

身長 176cm 

趣味 野球

初舞台 三代目松本金太郎 1979年 「任客春秋笠」(歌舞伎座)

襲名  七代目市川染五郎 1981年 「仮名手本忠臣蔵」7段目 大星力弥役・他(歌舞伎座)

十代目松本幸四郎 2018年 「勧進帳」武蔵坊弁慶役・他(歌舞伎座)

当たり役 「勧進帳」 武蔵坊弁慶役

「恋飛脚大和往来」亀屋忠兵衛役

「東海道中膝栗毛」弥次郎兵衛 など

現代劇・映画 「アマデウス」モーツァルト役・「陰陽師」安倍晴明役 など

歌舞伎だけではなく、現代劇もドラマも映画も、幅広く役を演じている方です。

それも2枚目役が多く、色悪や悪党を演じたらかなりハマります。

幹部役者として大きな舞台の座頭も期待されます。

息子の八代目市川染五郎は今をときめくプリンスとして大人気です。

詳しくはこちらもご覧くださいね。

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常磐津節太夫鈴木英一について

鈴木 英一

生年月日 1964年9月3日

最終学歴 早稲田大学大学院博士課程満期退学

常磐津節太夫

歌舞伎研究家で、研究成果を生かした創作活動も行い、

創作に「(かぶき体操)いざやカブかん!」、補綴に「品川心中」等がある。

主著に『十代目松本幸四郎への軌跡』(演劇出版社)

現在は、早稲田大学演劇博物館招聘研究員、聖学院大学、宇都宮大学講師。



歌舞伎十八番「勧進帳」について

「勧進帳」はおそらく知らない人がいないのではないか?

というほど有名な演目です。

ストーリーは、

兄に疎まれ、山伏に姿を変え奥州をめざす源義経の一行、

安宅の関を守る武士冨樫に行く手を阻まれるのですが、

東大寺の再建のための寄付を募っている一行であると

嘘をついてその席を通り抜ける、

というものです(超ざっくり!)。

この演目で弁慶は、

通さんとする冨樫に対し、

勧進帳を読み上げたり、問答に応えたり、

危機を脱するための奮闘する姿に加え、

義経との主従の絆、

危機を脱した後のおおらかな舞や語りなど、

様々な姿を見せてくれます。

見せ所の多いこの役を演じられる役者を

弁慶役者ということもあり、

この役を演じたい、と思う役者も多いそうですよ。

中でも、十八番を定めた市川團十郎の成田屋、

最多演技数を持つ松本幸四郎の高麗屋をはじめ、

中村吉右衛門、片岡仁左衛門なども、

魅力的な弁慶を演じていて、

それぞれのお家の違いも楽しみな演目なんです。

「勧進帳」については、こちらに詳しく書いています。

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講演会で印象に残ったお話勝手にベスト3

「『勧進帳』を解く― 幸四郎家畢生の大演目 ―」。

歌舞伎研究家でもある鈴木英一さんは、

舞台の流れに沿いながら、

細かいことを一つ一つ松本幸四郎に問い、

それに対し、対談を進めていかれました。

「勧進帳」という演目について

改めてたくさんのことを教えていただき、

とても充実した会でした。

その中から、印象に残ったことを3つ紹介します。

その1:幸四郎が初弁慶を演じた時の思いは?

幸四郎が初めて勧進帳に出演したのは、

昭和57年の国立劇場。

初の役は、太刀持でした。

そこから、四天王、冨樫、義経、弁慶と

演じる役が変わっていきます。

幸四郎自身が、弁慶という役を意識したのは

いつ頃かははっきり覚えていないそうです。

1~2歳の時に、父の舞台の楽屋で、

弁慶ごっこをしている写真があるとか・・。

覚えてなくてもそんななので、

物心つく頃からは、

弁慶は幸四郎の頭にはあったようですね。

初めて弁慶を演じたのは

平成26年の歌舞伎座です。

当時の幸四郎は41歳、遅まきながらの弁慶デビューと言えるでしょう。

念願の「勧進帳」冨樫役が父である現松本白鸚、

義経役が叔父である中村吉右衛門、

幸四郎曰く、

「前の舞台には父がいて、後ろの花道には叔父がいて、

何かの罰ゲームだと思った」

そうです。

「私、本物ではありません、いつ帰ろう、って言おうかって・・・。」

はい、ここ笑いどころですよ!笑笑

想像し難いプレッシャーだったでしょうね。

2人とも弁慶役の第一人者と言える方々ですから。

その役を務めるにあたり、

父にも叔父にも学ぶことがあったそうです。

とはいえ、

父と叔父とは教え方が違う?

ということだそうです。

父親の松本白鸚の教え方は、

「役には型があるから、自分で勉強しなさい。

おかしいかおかしくないか(役として成立しているかということらしい)、

そこを見るから。」

というもの。

対して叔父の中村吉右衛門の教えは、

「自分が教わったことをそのまま細かく教える。」

というもの。

『全く違う教え方でも行き着くところは同じだった』と幸四郎。

この一言に、歌舞伎の役の奥深さを感じました。

解釈も、そこに近づく道も、

役者個々に違いながらも、

役の本質は同じ、、、ということ。

その深さに唸りました。



その2:勧進帳は破れない!?

幸四郎は、勧進帳を持参して見せてくれました。

こうやって、パッと開いて、

そうして、パッとこっちに返して、、と。

知らなかったけど、

パッとやると、本当にパンって音がするんですよ。

多分かなり力を入れて引っ張っているんだろうなって

感じました。

だから、勧進帳は消耗品なんだそうです。

公演中、パンパン引っ張られて破れないのかしら?

て思う前に一言。

「これは100%破れない作りになっています。」

紙と紙の間にNASAでも使われている特殊な素材が

入っている、、、、って、

真顔で言うのでびっくりしました。

さらにびっくりしたのは、

それは冗談じゃなくて本当だってことです。

同じく、舞台で振り回すお数珠も、

繋いでいる紐は特殊な素材のものだそうです。

伝統芸能の世界にもテクノロジーが生きているんですね。

そうそう、これ、お家によって色や紐の長さも違うらしいです。

次に勧進帳を見るときは、小道具も要チェック!



その3:幸四郎さん、9月は弁慶・冨樫役、大変じゃなかったの?

先にもチョロっと書きましたが、

2019年9月歌舞伎座秀山祭歌舞伎では、

松本幸四郎は、「勧進帳」で弁慶と冨樫を

日替わりで演じました。

私も見たんですけどね!

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このことについて「大変だったのでは?」

と言うと、

「大変だったんだそうです。」

その理由として、

・弁慶と冨樫では声の出し方、使い方が違うということ。

・弁慶は受ける役、富樫は問う役、と全く別の質の役であること。

・それぞれ役者が変わると、周りの衆も立ち位置など変わって大変。

などが挙げられていました。

おまけに、クライマックスの問答シーンでは、

どちらも淀みなくセリフが流れ、

息つく間も外せない緊張感です。

そりゃあ、神経使うだろうなあと想像するだけで、

私も疲れてしまいました。

そんな大変な思いをしながら、

9月は「沼津」のピンチヒッターもあったんだよね・・・。

すごいなあ、松本幸四郎って役者。

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1時間半の講演は、あっという間でした。

歴代弁慶の映像も見せていただき、

本当にお腹いっぱいのてんこ盛り盛り

大サービスの内容でした。

これから「勧進帳」を観るのも、

松本幸四郎を観るのも、

もっと楽しくなるなあと、

ウキウキな気分になる講演会でした。

貴重なお話を聞かせていただき、感謝申し上げます。

読んでくださり、ありがとう存じまする。



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