7月大歌舞伎(歌舞伎座)夜の部「星合世十三團(ほしあわせ13だん)」感想、見どころ&勝手にベスト3、市川海老蔵の熱演と一体感溢れる素晴らしい舞台

市川海老蔵が、復帰した7月19日。

夜の部「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」を観劇しました。

その感想をお伝えします。



市川海老蔵13役早変わり「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」の主な配役とあらすじ、見どころ

「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」とはどんな演目?

「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」は、

義太夫狂言の名作、「義経千本桜」を基に、

娯楽性の高い演出や新たな趣向を取り入れ、

仕立てた通し狂言です。

市川海老蔵が、十三役を早変わりで勤めることが

話題にもなっています。

義経千本桜で主役と言われる役は、

平知盛、いがみの権太、佐藤忠信(源九郎狐)ですが、

この他の主要人物を加えての十三役、

この数は、来年襲名が決定した十三代目市川團十郎の

十三にかけたとも言います。

さて、夜の部通して行われたこの芝居、

簡単ですが配役、あらすじ、見どころを紹介します。

*市川海老蔵についてはこちらに詳しく書きました。よかったらお読みくださいね。

十一代目市川海老蔵、 日本人であれば、 その名を知らぬ方はいないんじゃないだろうか? と思える大スターです。 今日は...



「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」の主な配役

通し狂言星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)

成田千本桜

左大臣藤原朝方 市川海老蔵(以下13役全て)

卿の君

川越太郎

武蔵坊弁慶

渡海屋銀平実は新中納言知盛

入江丹蔵

主馬小金吾

いがみの権太

鮨屋弥左衛門

弥助実は三位中将維盛

佐藤忠信

佐藤忠信実は源九郎狐

横川覚範実は能登守教経

源義経    中村 梅玉

梶原平蔵景時 市川 左團次

静御前    中村 雀右衛門

相模五郎   市川 右團次

若葉の内侍/小せん 中村 児太郎

お米     市川 斎入

尼妙林    市村 萬次郎

お柳実は典侍の局 中村 魁春

片岡八郎   大谷 廣松

駿河次郎   市川 九團次

伊勢三郎   市川 男寅

亀井六郎   中村 鷹之助

舞台が始まる前に、人形が配役を読み上げる趣向も面白かった!



「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」のあらすじと見どころ

〈発端・除幕〉

壇ノ浦で死んだと思われていた、

平知盛、維盛、教経はそれぞれ姿を変え、

時節を待っていました。

兄頼朝と不仲になった、源義経は、

藤原朝臣朝方より、初音の鼓を拝領しますが、

そこには「頼朝を討て」という院宣が込められていました。

屋敷に戻った義経のところに、

謀反の確認のため、頼朝の家臣川越太郎がやってきます。

義経の窮地を救おうと、

正室・卿の君は自害します。

鎌倉型の追っ手が現れる中、

義経一行は都を出る決意をします。

物語の発端、平家が滅びていないこと、

初音の鼓の秘密、

藤原朝臣朝方の陰謀が

物語を大きな流れへと動かしていく場面です。

早変わりは冒頭から出てくるので、

目を皿のようにして、お楽しみいただけると思います。

一つ一つのエピソードが、

大きな流れにいずれつながっていくことを

暗示する発端です。

〈二幕目〉

都を落ち延びる義経一行は、

追ってきた静御前に初音の鼓を渡し、

佐藤忠信にその身を預けます。

九州へ向かった義経一行は、

大物浦で船の出港を待ちます。

この渡海屋の主人銀平は、実は平清盛。

幽霊に姿を変え、義経を討たんと策略しますが、

それを見破られ返り討ちにあいます。

自分の娘として育ててきた帝を

義経が守ることを約束し、

それを見届けた後、碇を身にくくりつけ

海中に姿を消すのです。

この幕の大きな見所は2つです。

静を救う佐藤忠信の働き、

この様子をよ~~く見ていて下さい。

あろから明かされる本性がうかがえる

特徴的な所作に注目です。

もう一つは、知盛の最期。

「昨日の仇は今日の味方」と、

怨念を希望に変え、自らの生に終止符を打ちます。

この幕だけでも名作と言われる、

様々な仕掛けや芸が見ものです。

購入した舞台写真:平知盛です

〈三幕目〉

平維盛に使える主馬小金吾が、

維盛の妻子を救うために壮絶な最期を遂げます。

そこに立ち寄り小金吾を発見するのが、

すし屋の弥左衛門、

意趣ありげにその首を持ち帰ります。

途中、維盛の妻子が立ち寄った茶屋で、

いがみの権太の強請りにあいます。

権太は、父不在をいいことに、

母お米からお金をせしめようとします。

そこへ戻ってきた父と奉公人弥助とのやりとりから、

弥助が平維盛であることに気づき、

金儲けの機会と妹が止めるのも聞かずに家を出て行きます。

そこへ平家の残党をかくまっていないか

確認に来た梶原平蔵景時。

権太は、維盛の首が入った桶と妻子を引き連れ、

景時に突き出します。

連れ去られた後、父弥左衛門に刺される権太、

苦しい息の下から真実を話すのです。

この場面も、「すし屋」として

繰り返し上演されている名場面です。

権太の憎々しさとふと見せる情愛が、

悲劇的な結末を一層強く彩ります。

この場面も早変わりはありますが、

それ以上に小さなかけ違えから悲劇へと

発展していく歌舞伎ならではの展開と、

権太という人物をじっくり見ていただくといいと思います。

〈大詰〉

川連方眼の館に匿われている義経のところに

佐藤忠信が現れます。

しかし、どうやら様子がおかしい、

義経が不審に思っているところへ、

静がやってきます。

義経は静に、忠信の異変を伝え、

詮議をするよう、命じます。

初音の鼓を打つと現れた忠信。

しかし彼の正体は、狐でした。

鼓は彼の親、そのため狐は鼓の側にいたいと

佐藤忠信の姿に化けて現れたのでした。

そのことを知った義経は、

鼓を狐に返します。

喜んだ狐は、今夜鎌倉型の襲撃があることを告げて去って行きます。

その晩、襲ってきた敵と戦う義経一行、

狐の力を借りて無事に敵を撃退するのです。

この場面も「川連方眼屋敷」の名で、

演じられることがある名場面。

私は、この狐忠信が大好きです。

狐としての所作が可愛くて、

その気持ちに心がじ~んとしてくるのです。

海老蔵演じる狐と、

圧巻の最後の大立ち回り。

瞬時に姿を変え現れる海老蔵と、

派手なアクションは見ていてスカッとしますよ。

狐になった海老蔵の宙乗りにも注目です。



市川海老蔵が演じた13役の紹介

ここで、海老蔵が演じた13の役を紹介します。

名前の後の数字は、出てくる幕です。

左大臣藤原朝方:後白河院に使える公家で陰謀の黒幕。①④

卿の君:義経の正妻。嫌疑を晴らすために自害する。①

川越太郎:源頼朝の使者、卿の君の実の親で、娘の最後を見届ける。①

武蔵坊弁慶:源義経の一番の家来①②④

渡海屋銀平実は新中納言知盛:大物浦で船問屋を営む男、実は平知盛。①②

入江丹蔵:知盛の部下。お柳に知盛の計略が敗れたことを知らせる。②

主馬小金吾:平維盛の家臣。妻子を救うために討ち死にする。③

いがみの権太:弥左衛門に勘当同然にされている息子。ゆすりたかりを働く小悪党だが・・。③

鮨屋弥左衛門:すし屋の主人、平重盛に恩義があり、維盛を匿う。権太の父。③

弥助実は三位中将維盛:身を隠して弥左衛門に匿われているが、権太の策略で・・・③

佐藤忠信:源義経の家来、母の病で国に帰っていた。。。④

佐藤忠信実は源九郎狐:初音の鼓の皮にされた狐の子、忠信の姿に変えて現れる。②④

横川覚範実は能登守教経:吉野山の客僧、実は平教経。①④

さあ、あなたはどの海老蔵がお好きかな?

松竹の予告動画には、この13役が現れます。チェックしてみてはいかがでしょう。



「星合世十三團(ほしあわせ13だん)成田千本桜」勝手にベスト3

圧巻のエンターテイメント性!

初めから終わりまで、

とにかく楽しませていただきました。

その中で、勝手にベスト3を紹介します。

ベスト1:早変わりが楽しい!

早変わりは、本当に早変わりでした。

同じ舞台の上で、

ストーリーを止めることなく、

次から次へと早変わり。

斬りかかった海老蔵に、斬られる海老蔵。

あれ?

舞台の奥に消えたと思ったら、花道から出てくる。

あれ?

年老いた父が、息子になってる。

あれ?

よし、来るぞ来るぞー、

と思ってるけど、やっぱり楽しい。

ベスト2:テンポよくて飽きる暇がない!

原作の「義経千本桜」は、五段まであり、

通しだと1日かけて行われる長さです。

名場面として取り上げられる幕も多く、

本当に名作だと思っています。

それを夜の部だけで行うのですから、

半分くらいに書き換えていると考えられます。

その分、次から次へと、

場面が転換し、ボ~ッとしている間がありません。

もちろん演じる方は大変でしょうが、

観ている方もずっと力が入りっぱなしです。

常に覚醒している感じ・・・笑

ベスト3:源九郎狐が好き

この原作「義経千本桜」が大好きです。

中でも、狐忠信の場面は、

いつ観ても楽しいし、心が温かくなります。

この場面だけでもかなりの動きがあり、

魅せ場も多いから、

早変わりの上にこの役というのは、

本当に大変だぞって思います。

それでも、

狐の情愛や特徴的な動きを

きちんと描いて見せてくれたことが嬉しかったです。

最後の宙乗りも、

見ていてハッピーになれる場面でした。

おまけ:一体感がひしひしと伝わる舞台

体調不良のため休演、公演中止。

座頭として、とても苦しい思いをしていただろう海老蔵。

初めにそんな挨拶もありました。

元々が、この舞台自体が大きなチャレンジです。

ちょっとでも何かが狂ったら、

舞台はバラバラになりかねません。

それだけの緊張感ある舞台を、

自然に楽しく観劇できたのは、

この舞台に関わる全ての役者やスタッフが

一体となって作り上げた賜物ではないかと思います。

息を詰め見守り、大きく拍手する観客も、

その舞台の一部です。

終わってしみじみ思ったのが、

あの場は一つの世界だったということ。

その中で皆が一つになり、物語を楽しめたということ。

こういう経験は滅多にできないので、

本当に観てよかった舞台だと思いました。



市川海老蔵は、

まだ体は本調子ではないご様子。

それでも、身体を張って私たちを幸せにしてくれたこの舞台は、

これからの歌舞伎や、成田屋の未来に向け、

大事なステップになると思います。

千秋楽は28日でした。

終演後も拍手が鳴り止まず、

海老蔵本人(衣装は着替えて化粧はしたまま)と、

勸玄君、麗禾ちゃんが一緒に

舞台に姿を見せたそうです。

大勢のファンは大喜びでした。

読んでくださり、ありがとう存じまする。

*7月大歌舞伎昼の部の感想レポートも書きました。よかったらお読みくださいね。

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*市川海老蔵休演については、こちらにも書いています。よかったらお読みくださいね。

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