彦山権現誓助剣〜毛谷村〜/文売り/三社祭の感想!仁左衛門がいい!梅枝長男初お目見え!

国立劇場の令和2年歌舞伎公演第二部は、

「彦山権現誓助剣~毛谷村~」「文売り」「三社祭」の

嬉しい三本立てでした。

前半16時30分~18時までが「毛谷村」、30分間の幕間を挟んで、

18時30分~19時までが舞踊「文売り」と「三社祭」を続けて上演。

気持ちがほっこりする素敵な舞台でした。



「彦山権現誓助剣~毛谷村~(ひこさんごんげんちかいのすけだち~けやむら~)」とはどういう芝居?

このお芝居は、250年ほど前の時代に、

人形浄瑠璃の芝居として初上映されたものの歌舞伎化作品です。

初めは大阪で上演されていたものが人気となり、

江戸でも上演されるようになったそうですよ。

物語の舞台が九州、福岡県にある英彦山神宮(ひこさんじんぐう)に近い山里です。

主人公の六助が、剣術の師匠の敵討ちをするストーリーですが、

六助の人物設定が面白いのです。

この地域には、怪力の大男の伝説があるそうで、

六助もその影響を受け創られたキャラクターと言われています。

宮本武蔵の人物像が一部かぶるところもあるんだとか。

仁左衛門さんが演じるのですから、

長身の2枚目という点は間違い無いですね。

また、六助の許嫁であるお園を片岡孝太郎さんが演じていますが、

この女性もなかなかのキャラ設定です。

美しく、怪力で武芸にも秀でているというこのお園、

この方の活躍も見どころの一つです。

通常は、2幕目の六助住処の場が上演されているとのことですが、

今回は、序幕の物語の発端を描くことで、

より、六助たちが仇討ちにかける思いを

リアルに感じることができました。

このお芝居を一言で言うと、

魅力的な主人公カップルが、卑怯な仇を討つ決意する、

というものです。

それを、取り巻く登場人物やのどかな山村の描写が

いっそうお芝居を楽しく見せる工夫となっていると感じました。



「彦山権現誓助剣~毛谷村~(ひこさんごんげんちかいのすけだち~けやむら~)」の配役とあらすじ

それでは、このお芝居の配役、あらすじを紹介します。

〈配役〉

毛谷村六助   片岡 仁左衛門

一味斎娘お園  片岡 孝太郎

杣人斧右衛門      坂東 彦三郎

一味斎孫弥三松 小川 大晴

微塵弾正実ハ京極内匠  坂東 彌十郎

一味斎後室お幸 中村 東蔵

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〈簡単なあらすじ・見どころ〉

第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場

毛谷村に住む六助は、いまは百姓だが、

かつては剣術を吉岡一味斎に学んだ武芸の達人です。

その腕にも関わらず、

以前師と交わした「自分より強いものにあったら仕官する」

という約束を守って、

領主からの仕官の申し出を断り続けていました。

そこで、領主からは、

六助に勝った者は仕官を許すとお触れが出されるしまつです。

当の六助は、母を亡くしたばかりで、

母の墓前で葬いを務めていました。

そんな六助の前に、

老婆を連れた浪人微塵弾正という男が現れます。

弾正は、母のためにも仕官を願い、

剣術の試合に勝たせて欲しいと頼みます。

それを承知した六助、

しばらくすると、その場に幼子を連れた男が現れます。

しかし、その男は追ってきた山賊に殺されてしまいます。

男が大事そうに庇っていた男の子を六助は家に連れて帰ることにします。

第二場 同  毛谷村六助住家の場

六助の住処では、剣術の試合が行われ、

約束どおり、勝利を譲った微塵弾正は仕官を許されます。

帰り際、六助に暴言を吐き扇子で額を割る暴挙にも、

取り合わず、仕官を喜ぶ六助でした。

そこへ旅の老婆が現れ、休憩させて欲しいと頼みます。

家に招き入れた六助に対し、老婆は、

「親子になろう」と言い出します。

怪しげな風情の老婆ではありますが、

とりあえず奥の部屋で休んでもらうことにします。

六助の家の前には、

預かった男の子の着物を干してあります。

探しに来た目印にしているのですが、

まだ、誰も男の子を探しに来ません。

男の子は、遊びから帰ると母を慕って泣き寝入りしてしまいます。

六助が子を寝かしつけていると、

虚無僧が家の前を通りかかります。

その虚無僧は、追いかけて来た山賊たちを追い払うのですが、

その様子を見て六助が、

「偽虚無僧」と呼びかけます。

虚無僧の正体は女性でした。

それも、男の子の叔母であり、

六助の剣術の師匠一味斎の娘のお園だったのです。

お園の話から、

その一味斎が、京極内匠に殺されてしまい、

六助の許婚であるお園始め、娘たちが仇打ちに出たことを知ります。

男の子は、お園の妹お菊の息子の弥三松でした。

当のお菊は返り討ちにあったとのこと、

また、お園は一味斎から

六助こそは許嫁と聞いていたため、

恥じらいながらも会えた喜びを語ります。

先に奥に通した老婆は、

実は一味斎の妻のお幸だったことがわかり、

その母の計らいで、六助はお園と祝言をあげます。

そこへ、

杣人斧右衛門らが老母の死骸を担いで、

六助の家に現れ、仇を討ってほしいと訴えます。

見ると老母は、先に弾正が釣れていた老女でした。

仕官のため、自分のことを騙し、その口封じで老女が殺されたと知り、

怒る六助。

さらに詳しい状況を知ると、弾正こそが一味斎を討った京極内匠であるとわかります。

六助は、お園、お幸の励ましを受け

敵討ちを決意するのでした。

 

「彦山権現誓助剣~毛谷村~」の見どころ勝手にベスト3

このお芝居の見どころを3点紹介します。

ベスト3:小川大晴くん堂々の初お目見え

このお芝居で、中村梅枝さんのご長男である

小川大晴(ひろはる)くんが弥三松役で、

初お目見えを果たしています。

年齢は5歳とのこと。

これが、とっても堂々と立派な演技なのですよ。

台詞も多いし、見せどころも多い。

六助の家で遊ぶ姿や母が恋しくて泣き寝入りする姿は、

いるだけで自然で可愛らしかったです。

ちゃんと見得もできるんですよ。

この弥三松というお役は、

仁左衛門さん、孝太郎さんも演じていらっしゃる

思い出のお役なんだそうです。

最後は、仁左衛門に抱きかかえられての見得、

よくぞ長時間の舞台を務め上げたなあと感心感心です。

初お目見えは、一回しかないのでまだの方見てあげてくださいね。

ベスト2:魅力ある登場人物を孝太郎、東蔵、彌十郎らが固める

このお芝居の肝は、主役もですがそれ以外の配役に妙がある

と、筋書きのどこかに書いてありました。

お芝居を観て、本当にそうだ!って思いました。

気のいい青年六助の師匠の仇討ちを

ドラマティックに魅せるためにも、

周りの登場人物像が重要なんだと感じました。

悪役の京極内匠(微塵弾正)は、序幕と2幕目の態度が正反対、

それが逆に憎々しい。

女性だけど怪力で武芸に秀でているという設定のお園、

孝太郎は身体的には大きくないのですが、

忍んでくる悪人を難なく追い返す様は女ながらに武芸者です。

加えて、許嫁の前で急にしおらしくなってしまう場面などがあり

六助の人間的魅力が引き立ちます。

東蔵さんが演じる義母お幸は、なんだか怪しいの。

素性がわからない、飄々とした老婆の演技は絶品ですね。

嶋之じょう(漢字が出ない)演じる老婆も、

やゑ亮さん演じる忍びの者も、一癖あって見ていて面白かったです。

一人だけちょっと道化っぽいのが

彦三郎さん演じる杣人斧右衛門 でした。

力が入りすぎそうな場面をほわっと緩めていただいた、

そんな気持ちで見ていました。

役者がいい舞台は本当に面白いですね。

ベスト1:仁左衛門の六助は清々しく頼もしいいい男だ

そして片岡仁左衛門さんは、主人公六助にぴったり。

爽やかな男らしさ、力強さ、包容力が

滲み出てくる六助だったと思います。

この方の笑顔は本当に素敵ですね~。

ニコッとするとそこからキラキラと星屑が飛び散流のが見えるんです。

(すみません、贔屓すぎです)

それは言い過ぎかもしれないですけど、

おそらくこの役はそれだけ人間味が大きな役だと思うのです。

誰かを助けるときや非道を耳にしたときは、

キッと強い表情になるのですが、

それ以外は終始笑顔で、のどかな村人といった風情。

正体不明のお婆さんや

母を恋しがる幼子や、

急に現れる女虚無僧、

そんなの滅多にないですよね。

それらを包み込む鷹揚さに感じ入る素敵な人物です。

なんども演じているお役ということですが、

今回もベストな演技を見せてくれていると思えます。

観た後もしみじみ味わえる余韻のあるお芝居だなあといまだに感慨にふけっています。

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舞踊:上「文売り(ふみうり)」/下「三社祭(さんじゃまつり)」の配役と見どころ

第二部の後半は、舞踊が2種類です。

まとめて紹介していきます。

〈配役〉

文売り   中村 梅枝

悪玉    中村 鷹之資

善玉    片岡 千之助

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〈簡単なあらすじ〉

文売りは清元の舞踊劇です。

ストーリーは、

良縁を売るという恋文を商う文売りが、

梅の枝にたくさんの文をつけて歩きながら、

二人の遊女が一人の男を奪い合う恋物語を語りながら踊ります。

中村梅枝のおっとりと美しい舞が見られるのが見どころです。

三社祭も清元の舞踊です。

2人の漁師が浅草寺近くの川で漁をしていると、

暗雲立ち込め、悪玉と善玉の玉が降りてきて、

漁師が悪玉と善玉となって踊り始めます。

それらの作用から解き放たれると、

2人はまた櫂を持って舟に乗り込むのでした



舞踊:上「文売り/下「三社祭」の感想

舞踊2種は短い時間でしたが、

趣の違う2曲を楽しく見ることができました。

文売りは、中村梅枝さん、

この方、古典的な美しさ、と言われている方ですが、

本当にお綺麗なんですよね。

凛としたちょっと近寄りがたさも感じる時があるのですが、

この舞踊では、物語に合わせて、

色々な場面を踊り分けるので

その場面を想像する楽しさもありました。

花道を引っ込む時、

お顔を見ていたらかなりの汗をかいていらして、

舞踊って肉体労働なんだよなあってことを

改めて思い出しました。

それでも優美に見えるというのが、

梅枝さんの踊りの見どころだなと思いました。

三社祭は、なんだか可愛いの!

片岡千之助さん、中村鷹之資さんの仲良しコンビ、

今日も二人でえいえいおーってやってきたのかな?

って考えるだけで、

がんばれ~と声をかけたくなってしまいます。

この「三社祭」を、お二人は昨年の12月に京都南座の顔見世で披露していて、

その時の映像をテレビで拝見しているのですが、

その時よりものびのびとキレよく踊っているように見られました。

踊り自体が楽しいので、

見ているだけでニコニコ笑顔になってしまいました。

締めの舞台が「三社祭」だと、

帰るときまで楽しい気持ちで終われますね。

いつまでも見ていたい、

そんな若々しくて溌剌とした二人の踊りでした。

国立劇場令和2年の11月歌舞伎公演第二部は、

彦山権現誓助剣~毛谷村~/文売り/三社祭と通して、

楽しい気持ちで観られて大満足でした。

2時間半でこれだけ楽しめるのはお得です。

また観にいきたいなあって思っています。

読んでくださり、ありがとう存じまする。

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