6月4日に歌舞伎座で、
6月大歌舞伎夜の部「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」を
観てきました。
三谷幸喜氏演出の、新作歌舞伎ということで、
初日前から話題がつきませんでした。
楽しみにしていた、この日の観劇レポートです。
「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」のあらすじと見どころ主な配役
まずはこの作品について、あらすじと主な配役を紹介します。
「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」のあらすじと見どころ
鎖国によって外国との交流が厳しく制限される江戸時代後期。
大黒屋の息子光太夫は、商船神昌丸の船頭(ふながしら)として伊勢を出帆します。
しかし江戸に向かう途中で激しい嵐に見舞われて帆は折れ、大海原を漂流することになるのでした。
まず、幕が開く前に登場するのが、教授に扮した尾上松也。
客席とのやりとりをしながら、
時代背景を語り、物語の場面へと誘います。
【第1幕】
海をさまよう神昌丸には17人の乗組員たち。
嵐によって、頼みの帆を切り倒し、ただただ流されるだけの毎日。
光太夫はくじけそうになる乗組員を必死で奮い立たせ、
再び故郷の伊勢へ戻るため、方角もわからない海の上で陸地を探し求めます。
漂流中なので、登場人物の身なりはボロボロで、
髪もほどいてざんばら頭。
食べ物は、積荷の米で作った塩にぎりのみ。
17人の船員たちの気持ちをまとめ、希望を見せる船頭の奮闘と、
口は悪いもののお互いに思いやる船員たちの姿から、
過酷な状況をなんとか生き延びようとする、
漂流記の始まりが丁寧に描かれています。
気づかないうちに、私も18人目の船員として、
この船に乗り込んでしまったようです。
【第2幕】
漂流を始めて8カ月─。
ようやく発見した陸地に上陸しますが、
そこは日本ではなく、なんとロシア領のアリューシャン列島アムチトカ島。
異国の言葉と文化に戸惑いながらも、島での生活を始めるのです。
厳しい暮らしの中で次々と仲間を失いながらも、
光太夫らは力を合わせ、日本への帰国の道を探るのでした。
上陸してからも過酷な状況は変わりません。
光太夫らは、日本へ帰るために、
アムチトカ島→カムチャッカ→オホーツク→ヤクーツク→イルクーツクへ
出会った人々の助けも借りながら、ロシアの大地を、奥へ奥へと進んで行きます。
その過程でどんどん仲間を失っていきます。
帰国願いを出しても出しても受理されない光太夫、
辛い状況でも希望を捨てない姿に強い信念が感じられます。
皮肉屋の新蔵と情が豊かな庄蔵が、
頼りなさげなリーダーをさりげなく支えているのも心憎い。
絶対に折れない信念と、お互いに思い合う仲間、
それがこの芝居を支える太い軸なんだと思いました。
【第3幕】
やっと辿り着いたイルクーツクでは、宿屋に住まい、
日本から来た異国人として、地元の人に興味を持たれながらも、
落ち着いた日を過ごせるようになります。
17人いた仲間は、6人となっていました。
しかし、日本に帰りたいという気持ちは変わらず、
帰国願いを出し続けます。
しかし、度重なる拒絶を受け、業を煮やした光太夫は、
ラックスマンの助けを借りて、サンクトペテルブルグへ行き、
エカテリーナ女帝へ直接嘆願をするのです。
この時点で9年以上もの月日が流れています。
そして・・・。
これ以上はネタバレになるので書きませんが、
イルクーツクではそれまでの極寒の原野での苦しい生活とは
違う生活をしている様子が描かれます。
ポスターに見られる洋装は、この幕になってやっと見られる姿です。
ロシアに来た日本人として珍しがられ、
日本語教師の職も示され、ロシアで生きる選択肢を与えられます。
日本には返さない、ロシアで生きろという圧力、
そこで光太夫らはどのような決断をするのか、
そして、日本に帰りつくことができるのか、
ラストシーンは胸が熱くなりました。
「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」の主な配役
大黒屋光太夫 松本 幸四郎
庄蔵/エカテリーナ 市川 猿之助
新蔵 片岡 愛之助
口上 尾上 松也
マリアンナ 坂東 新吾
藤助 大谷 廣太郎
磯吉 市川 染五郎
与惣松 中村 種之助
キリル・ラックスマン/アダム・ラックスマン 八嶋 智斗
小市 男女蔵
アグリッピーナ 高麗蔵
九右衛門 坂東 彌十郎
三五郎/ポチョムキン 松本 白鴎
友情出演?シベリアンハスキー
「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」感想&勝手にベスト3
ここでは、私が勝手にベスト3(順不同)を作ったのでそれを紹介します。
あくまでも、私見ということでお許しくださいね~。
その1 常に笑いが舞台を救う
物語自体は、とてもとても重苦しいです。
だだっ広い海、そして極寒の地、
それを命を削りながら旅をする約10年間を描いているのです。
仲間も一人、また一人、と失います。
辛いし苦しい、そういうストーリーに「笑い」を混ぜ込むことで、
物語の厚みが増すように思いました。
これは、三谷幸喜氏の脚本・演出の腕もさりながら、
その感情の襞を演じ切った役者さんたちのお手柄とも言えると思います。
その2 熱演シベリアンハスキー
わかる人はわかる!
見ないとこのベスト感はわからないかもしれません。
旅の途中、登場するシベリアンハスキー。
彼らの演技(?)が本当に素晴らしい。
本物の犬を見紛う装束もですが、
ここでも演出と演技力が際立っているのを感じます。
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その3 ラストシーンの感動とカーテンコールとスタンディングオベーション
これも見れば絶対にわかる名シーンだと思います。
ただ、涙。涙。涙。
日本に帰るという信念と仲間を思う光太夫だから、
描くことができたラストシーンだと思います。
そしてその後、2度のカーテンコール。
2度目は、私の周りは総立ちでした。
拍手拍手拍手・・・惜しみない拍手を舞台に捧げました。
おまけ BGMも素晴らしかった
今までにない楽曲と謳、シーンを盛り上げた音の力にも拍手。
「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」幸四郎、猿之助、愛之助、松也、染五郎、彌十郎、男女蔵、種之助、、、役者と一緒に旅した3幕
約10年に渡る漂流記、
ある意味、ロードムービーといえる芝居なのではないかと思います。
主役は光太夫ですが、
一緒に旅する仲間たちもそれぞれ自分の旅の中では主人公です。
ということで、気になった役者さんを紹介します。
★光太夫を演じた松本幸四郎。
頼りなげだけど、信念を曲げない。仲間をひたすら思う。
希望を捨てずに動く人を、軽妙なセリフ回しと直線的な動きが
その人物像を醸し出していたと思います。
*松本幸四郎についてはこちらの記事もありますよ。
★仲間内ではよく喋り、場を盛り上げ、感情豊かな男、庄蔵は、
市川猿之助がはまり役でしょう。
ハイからローまで、幅広い表現が魅力でした。
光太夫と庄蔵の絡みは、ストーリー上大事なシーンが多かった。
*市川猿之助についてはこちらの記事もありますよ。
★皮肉屋で自己中の男、新造を演じたのは片岡愛之助。
きっと実物も女性にモテるイケメンだったのかな?
したたかさを持ちつつもさりげなく仲間に見せる気遣いが
印象的な一人でした。
*片岡愛之助についてはこちらの記事もありますよ。
★ただ一人、スーツで登場。口上役の尾上松也。
喋りがとてもうまかった。
これはセリフかアドリブか?どちらかわからないほど、
物語と現実の間を自然につなげてくれました。
*尾上松也についてはこちらの記事もありますよ。
★若干14歳だっけ?
その見目麗しさで大注目の市川染五郎が演じたのは磯吉です。
はじめは、使えないお坊ちゃんだったのが、
いつしか光太夫の片腕として才能を発揮していました。
劇中の成長ぶりも見事に演じていらっしゃいました。
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*市川染五郎についてはこちらの記事もありますよ。
★しぶとく、粘り強く、旅を生き抜いたご老体、
久右衛門は坂東彌十郎が演じました。
頑固だけど憎めないおじいちゃんは、
仲間内のアイドルのような存在だったなあと思いました。
★アクシデントで頭を打って、ボ~ッとしている小市は、
市川男女蔵が演じました。
演技っぽく見えなかったあの風体。
濃ゆい物語をいい具合に中和する役柄だなあと思いました。
★ひたすら気が良くて健気な与惣松を演じた中村種之助。
期待の若手の一人、物語でも愛され役でした。
暗いストーリーの中でも、
彼が出てくるシーンはふわっと明るくなったんですよね。
不思議な存在感がある役者だと思いました。
歌舞伎なのか歌舞伎じゃないのか?
その点はまだよくわかりませんが、
とにかく、見応えがあって感動する素晴らしい舞台だったと思います。
読んでくださり、ありがとう存じまする。
追記:6月16日より、歌舞伎座において公演写真と写真入り筋書きが販売となりました。
筋書きは、歌舞伎座内の他、地下のチケット売り場でも購入できるそうです。
私も、これから買いに行きます!!
*6月大歌舞伎についてはこちらからもお読みいただけます。
千秋楽後の三谷幸喜、市川染五郎、八嶋智人などのつぶやきから、この芝居を振り返る記事を書きました。
こちらも一緒にお楽しみください!
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