国立劇場「新皿屋敷月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)」「太刀盗人(たちぬすびと)」観劇感想!令和2年10月第二部

国立劇場の令和2年10月公演、第2部も観劇してきました。

今回のおめあては、尾上菊五郎さんとお孫さんの丑之助くんの共演、

音羽屋や萬屋の役者の皆さんを久しぶりに拝見すること。

どちらも、叶いました~~

久しぶりの舞台とは思えぬ安定のお芝居、

とっても満足しましたので、

第2部「新皿屋敷月雨暈」と「太刀盗人」の感想をお伝えしますね!

上演期間は、10月4日(日)~27日(火)までで、15日(木)は休演です。

国立劇場の様子、幕間も含めたコロナ感染対策について、

第1部「ひらかな盛衰記 源太勘当(ひらかなせいすいき げんたかんどう)」と「幸希芝居遊(さちねがうしばいごっこ)」については、

こちらにまとめています。

国立劇場は、令和2年1月以来の歌舞伎公演が開幕しました。 国立ならではの、丁寧に作った芝居を懐かしく観劇してきました。 幕間が3...



第2部「新皿屋敷月雨暈~魚屋宗五郎~」観劇感想

それでは、第2部のお芝居を観た感想を書いていきますね。

はじめに、「新皿屋敷月雨暈~魚屋宗五郎~」です。

上演時間は、15時半~16時45分でした。

あらすじは、こちらの記事に書いています。

10月は、歌舞伎公演が複数の劇場で上演されることが決まりました。 東京は歌舞伎座、国立劇場、名古屋の御園座、大阪の松竹座(トークライブ...

これは、めちゃめちゃオススメのお芝居です。

涙あり、笑いあり、

まだ封建制度が強く、庶民の身分が低く見られていたという時代背景、

庶民にとっては、このストーリーは共感し、スカッとする内容だったのでしょう。

そのオススメどころを3点紹介しますね。

ベスト3:黙阿弥のセリフで江戸の風情を味わえる

この芝居の原作は、河竹黙阿弥です。

黙阿弥は、七五調でリズムよく情景や心情を描くセリフが

特徴的な芝居を書いている作家です。

この芝居でも、その台詞回しの妙に聞き入りました。

冒頭は、妹お蔦の非業の死を悲しむ、

宗五郎一家の嘆きの場面。

そこにいる全員が生き生きと胸の内を語るやりとりに

引き込まれます。

何気なく使う小道具や所作なども、

江戸時代の風情が現れていて、市井の人の日常をのぞいているかのように思えました。

会話が多いのですが、

それぞれのセリフのキレがいいので、

しっかり聞き取れるし、意味もわかりやすい。

リズムに乗って、芝居の世界に入り込むような感覚で

観ることができました。

ベスト2:尾上菊五郎、圧巻の宗五郎

世話物といえば、尾上菊五郎。

これは、私の脳内で勝手に変換されてしまうくらい、

菊五郎さんの世話物芝居が大好きです。

だからというのではないのですが、

贔屓目に見ても菊五郎さんが演じる宗五郎さんは、

宗五郎さんに見えるのです。

筋道を立て、道理をわきまえた普段の宗五郎さんと、

酒を飲み干し、心の底にある感情を全て吐き出す宗五郎さん、

どちらも自然で、その巧みな演じ分けに見入ってしまいます。

この役を演じたばかりの頃は、

「計算しながら酔っている」と言われたそうですが、

今は、どこに計算があるのかわからないほどです。

何百回と演じたでしょうこのお役、

逆に、あと何回見られるんだろうと思うと、

絶対に見ておかなきゃリストに入る芝居です。

観る前から楽しみでしたが、観てなお大満足、

やっぱり菊五郎さんの世話物狂言は素晴らしいです。

歌舞伎役者尾上菊五郎は、歌舞伎界の大御所のひとりです。 梨園でも名門と言われる音羽屋を率い、血筋、弟子筋で 多くの人気役者も抱え...

お孫さんの丑之助くんも共演していました!

ベスト1:出演者のチームワークぴったり!

令和2年1月の国立劇場は、

通し狂言『菊一座令和仇討(きくいちざれいわのあだうち)』、

菊五郎劇団勢揃いのお芝居でした。

その時の忘れられない一言が「ワンチーム」。

音羽屋、萬屋の面々のチームワークを見せつけられました。

その再現とばかりに、このお芝居です。

確かに、音羽屋、萬屋にとって、

この10月の歌舞伎も新しい年の始まりの舞台、といった思いがありそうですね。

このチームワークの良さを実感したのが、

一幕目の「片門前魚屋宗五郎内の場」です。

妹お蔦が、不義のためにお手打ちになったという話を聞き、

打ちひしがれる一同。

それが、女中おなぎの登場で事実が発覚し、

宗五郎が酒を飲んで徐々に酔い、本音を吐露する場です。

飲む宗五郎、止めるおはまやおなぎ、

暴れる宗五郎、収めようとするおはまと三吉、

このくだりはリアルなやり取りを見ているかのように、

役者さんたちの息がぴったり合っていて、

感情移入がしやすかったんです。

初めは一緒に泣いちゃったし、

途中からはハラハラしちゃったし、

舞台の上の世界を一緒に体験した気分になりました。

まさに、チームワークの妙と言えると思いました。

1月の作品はこちらです。

国立劇場の今年の新春歌舞伎は、 通し狂言『菊一座令和仇討(きくいちざれいわのあだうち)』です。 1月12日に観劇してきたので、そ...

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第2部「太刀盗人」観劇感想

第2部の幕間後は、「太刀盗人」。

こちらの上演時間は、17時15分~18時でした。

狂言を元にした松羽目物の小品ですが、

とても面白く、楽しい気持ちで観ることができました。

それでは、印象に残ったことベスト3を紹介します。

ベスト3:松羽目物の魅力を知れる

この芝居は、狂言を元にしている松羽目物と言われる演目です。

舞台も能舞台を模し、動きも狂言のそれに近い演出となっています。

歌舞伎の中には、能や狂言を歌舞伎化して、

舞や囃子が入り、セリフも混ぜ込み、

更にわかりやすく見られるようにした作品が

数多くあります。

有名どころでは、「勧進帳」、「身替座禅」などがあり、

歌舞伎の演目としておなじみとなっています。

これも歌舞伎なのです。

「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」など、

通し狂言のような長時間の作品もあれば、

1幕だけの時代物狂言、世話物狂言など、

様々なスタイルの作品があるのです。

それらとの違いを知り、松羽目物の魅力を感じられると、

もっと歌舞伎への関心も高まるんじゃないかなって

こういうわかりやすくて面白い作品を国立劇場で見られるのは嬉しいです。

ベスト2:長唄囃子が賑やかで楽しい

舞台にずらりと並んだ長唄連中、

笛、三味線、大小の鳴物が奏でる音楽は、

賑やかで楽しい気持ちにさせてくれます。

コロナ期間は、こういう音楽を聴くこともできず、

老舗の和楽器やさんが廃業の危機にも陥りました。

作る人も演奏する人も、いなくなってしまったら、

日本の音楽も消えてしまいます。

その危機がとても怖かった、、、、だからこそ、

久しぶりに、この音楽を聴ける場があることも嬉しいです。

それそれが控えめに主張し合い、調和を作っていく邦楽の魅力も

楽しめるのが松羽目物の魅力だと思っています。

ベスト1:すっぱと田舎者が、はまり役!

すっぱとは、スリのこと。

この憎めない小悪党を尾上松緑が演じています。

朴訥な田舎者は、坂東亀蔵が演じています。

そして、ちょっと人のいい仲裁役を片岡亀蔵、

その家来を尾上菊伸が演じています。

この配役が見事にハマっていて、

見ているだけでおかしくなってくるのです。

例えば、人混みに揉まれながらも店屋で土産物見繕う様子、

いるよなあ、こんな隙だらけの田舎者。

相手の言い分をカンニングし、いけしゃあしゃあと答える小悪党、

バカバカしくて笑っちゃう。

見どころは、太刀の持ち主を詮議するやり取りと、

途中に挟まれた舞踊です。

すっぱが、田舎者の言動を見ながら必死に真似っこするそのアンサンブルが、

面白いのです。

微妙なタイミングのズレをお貸し身を見せながら表現する松緑さん、

このずらし具合がうまいんですよ。

ぴったり一緒でもなく、ちょっと遅いでもなく、

紙一枚を挟んだくらいの本当に微妙なタイミング、

そういう視点で見るのも面白いお芝居でした。

役者がうまいと、芝居がより楽しめます。

そんな幸せを味わえる作品だと思います。

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国立劇場、令和2年10月の歌舞伎公演第二部は、

世話物狂言を見たい方、狂言で笑いたい方にはぴったりです。

あ、音楽好き、綺麗な女性好きもいいかも~~。

コスパもいいので、ぜひ足を運べる方はご覧いただきたいなあって思います。

11月公演が気になる方は、こちらも参考になさってくださいね。

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読んでくださり、ありがとう存じまする。