歌舞伎演目でこれが人気!という作品を
15本一挙に紹介しちゃいます。
私は人から、よく、
「歌舞伎は何を見たらいい?」
と尋ねられます。
一言で伝統芸能とはいえ、
江戸時代から受け継がれている古典から、
最近新作として作られているものまで
千差万別の演目の中から、
何を観るのか選ぶのは
難しいのだろうなと思います。
そこで、この記事では歌舞伎演目の種類や
近年、よく上演されている人気演目までを
15本一気に紹介します。
ぜひ参考になさってくださいね。
- 歌舞伎演目の種類は?
- 歌舞伎演目、初心者は何を見たらいい?
- 歌舞伎演目、定番はこの3つ!
- 歌舞伎演目人気ランキング15
- 歌舞伎演目人気ランキング1 連獅子(れんじし)
- 歌舞伎演目人気ランキング2 勧進帳(かんじんちょう)
- 歌舞伎演目人気ランキング3 双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
- 歌舞伎演目人気ランキング4 寿曽我対面 工藤館の場(ことぶきそがのたいめん くどうやかたのば)
- 歌舞伎演目人気ランキング5 熊谷陣屋(くまがいじんや)
- 歌舞伎演目人気ランキング6 恋飛脚大和往来(こいのたよりやまとおうらい)
- 歌舞伎演目人気ランキング7 源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
- 歌舞伎演目人気ランキング8 弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
- 歌舞伎演目人気ランキング9 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
- 歌舞伎演目人気ランキング10 鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
- 歌舞伎演目人気ランキング11 新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)
- 歌舞伎演目人気ランキング12 与話情浮名横櫛(よわなさけうきよのよこぐし)
- 歌舞伎演目人気ランキング13 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
- 歌舞伎演目人気ランキング14 人情話文七元結(にんじょうはなしぶんしちもっとい)
- 歌舞伎演目人気ランキング15 神田祭・お祭(かんだまつり・おまつり)
- 歌舞伎演目人気ランキング特別賞 ヤマトタケル(やまとたける)
- 歌舞伎演目 歌舞伎十八番とは
歌舞伎演目の種類は?
まず初めに、歌舞伎演目の種類について解説します。
歌舞伎演目と言っても
その成立の背景や作品・演出の特徴によって
いくつかの種類に分けることができます。
厳密に決められているとも言い難いのですが
演目を知る手がかりとなると思います。
歌舞伎演目の種類:時代物
歌舞伎というと敷居が高い!
何を言ってるかわからない!
というお声をよく耳にしますが、
その場合、時代物の作品を指すことが多いと感じます。
時代物とは、
江戸時代の人たちにとって
以前の歴史的な出来事を題材にした演目のことです。
この中にも
飛鳥時代から平安時代までを描いた王朝物から、
源平、足利の時代を描いたもの、
江戸時代に起きたけど、
そのまま上演するのは幕府の手前まずかろうと
それ以前の時代にすり替えたものなどがあります。
衣装も重々しく、台詞回しも歴史がかっていることがあり、
わかりづらいと思われちゃうこともあるのです。
この時代ものにおいても、
義太夫狂言と言われる、
人形浄瑠璃を元にした作品と
純歌舞伎狂言と言われる、
歌舞伎のために創作された作品があります。
時代物の特徴の1つとして
知っておくといいことは、
江戸時代や徳川家に関わるお家騒動や事件を
時代を移し変えた作品に創作したものがあるということです。
その有名なものとして
「仮名手本忠臣蔵」があります。
これは、江戸の元禄期に実際に起きた
赤穂藩お取潰しに関する仇討ち事件を
室町時代の出来事として
人の名前や場面を変えて描いた作品です。
庶民や武士にとって、
仇討ちは心躍る内容だったと思うのですが、
この一件は幕府への不満も多かったこともあり、
そのまんま上演するのは問題と判断されたのでしょうね。
とはいえ、仇討ちには変わりなく
当時の大人気演目として度々上演された演目なのです。
歌舞伎演目の種類:世話物
世話物と言われる歌舞伎の演目は、
庶民の生活から発した出来事を描いた演目のことです。
まあ言うなれば、当時の現代劇やホームドラマ
みたいなものですね。
セリフもわかりやすく、
当時の人の生活の様子が描かれているので、
時代劇として楽しむのもいいと思います。
私の感想としては、
お芝居の中でも身分制度が描かれていることから、
ある意味、教育的な要素もあったのかと思う作品もあります。
それとは逆に、庶民がウサを晴らすのに
好まれたのではないかと思う作品もあります。
権力を振りかざす悪役と物分かりのいい殿様が
出てくるあたりは、
観客の好みに沿って作られたんじゃないかなって
思いながら観ています。
この世話物の中には、
京都や大阪などを舞台にした作品もあります。
和事と呼ばれる、関西独特のキャラ設定や演じ方があり、
同じ町民のドラマでも
江戸と関西を比べて観ると面白いと思います。
歌舞伎演目の種類:所作事・舞踊
歌舞伎演目の中で、
舞踊作品も人気があります。
中には、舞踊で魅せるストーリーの作品があります。
これは所作事と呼んでいます。
長くても1時間くらいなので、
物語の間に1つは上演されていますね。
この舞踊も音楽や成り立ちにより色々な種類があるのです。
長唄の伴奏に合わせたストーリー仕立てのものや、
能・狂言から素材を取り入れて舞踊化したもの、
変化ものと言われる、途中で登場人物が次々と変化するもの、
道行と呼ばれる長いストーリーの間に挟まれる一場面を表したもの
などがあります。
歌舞伎演目の種類:新歌舞伎
新歌舞伎という名前はあまり聞いたことがないかもしれません。
このあと解説する「新作歌舞伎」とは別のものです。
この演目は、歌舞伎の歴史に関係しています。
江戸幕府から、明治政府へと
社会が激変した時代、
古いものを切り捨てる風潮がありました。
歌舞伎もその候補として
演劇改良運動の洗礼を受けました。
しかし、天覧歌舞伎(天皇や政治・経済の有力者の前で歌舞伎公演を披露したこと)を
成功させたことを機に、
歌舞伎や歌舞伎役者の社会的地位を向上させることになったのです。
この激動の時代、
それまで、芝居小屋お抱えの作者が芝居の台本を書いていたのですが、
小屋とは関係のない、独立した個人が
歌舞伎の脚本を手がけるようになりました。
明治後半から昭和の初めにかけて
このような作家が書き下ろした作品のことを
新歌舞伎とよんで、
従来の歌舞伎狂言とは区別しているのです。
その個別の作家、どんな人がいたかを
数人紹介します。
・坪内逍遥:翻訳家、評論家 「沓手鳥孤城落月」
・小山内薫:編集者、劇評家 「息子」
・岡本綺堂:新聞記者、小説家 「修禅寺物語」
・真山青果:小説家、座付作者 「頼朝の死」
・泉鏡花:小説家 「天守物語」
・長谷川伸」新聞記者、劇評家 「一本刀土俵入」
この新歌舞伎のお芝居は、写実的な作風が特徴的です。
歌舞伎演目の種類:新作歌舞伎
第二次世界大戦以降に作られた歌舞伎の演目を
新作歌舞伎と呼んでいます。
これが、意外とありまして、
内容や特徴よりも時代で分けてしまったと考えて良いでしょう。
「風の谷のナウシカ」もそうですし、
超歌舞伎で括られる作品群も
乱暴ですがここに入ります。
特徴としては、
時代の流行に合うものを歌舞伎化したものが多いです。
原作は、小説に限らず、
漫画やゲームなどとても幅広いのです。
近年、歌舞伎役者の代替わりも行われており
その中で若手役者が、この新作歌舞伎において
主役を務めることが増えました。
ファンの中には、
新作もいいけど、古典ができる役者になってほしい、
という声も多いことを付け加えておきますね。
歌舞伎演目の種類:スーパー歌舞伎
戦後生まれた歌舞伎の中で
一世を風靡したのがこのスーパー歌舞伎です。
3代目市川猿之助(2世市川猿翁)が創案した、
歌舞伎の伝統様式を生かしながら
新しい音楽、演出を取り入れ、
わかりやすい言葉や筋書きで構成された
エンタメ感満載の歌舞伎のことを言います。
4代目市川猿之助に代替わりしてからは、
スーパー歌舞伎Ⅱと銘打っています。
新作とスーパーと超とどう違うのか、、といいたくなることもありますが、
歌舞伎の演目に大きな転換を呼び込んだ
3代目市川猿之助さんと澤瀉屋一門に敬意を表し、
彼らが上演する作品のみをスーパー歌舞伎と読んでいるのです。
ちなみに、4代目市川猿之助さんは、
新作歌舞伎にも意欲的ですが、
スーパー歌舞伎と新作歌舞伎を分けていることから
スーパー歌舞伎は特殊な地位にあるのではないかと思うところです。
歌舞伎演目、初心者は何を見たらいい?
歌舞伎演目は、ここまで説明した通り、
多様な種類、作品があります。
その中で、初心者は何を観たらいいの?
というのは、
とても悩むところですよね。
私が、初心者の方を誘う場合は、
次のことを気をつけています。
*歌舞伎らしさ
*わかりやすさ
*人気役者
の3つです。
私が、初めて観た歌舞伎は、
「俊寛」と「加賀見山旧錦絵」でした。
今であれば、
両方とも名作とわかるのですが、
初めて観た20代の私にとっては、
俊寛はボロボロの衣装に髭面でお〜いお〜いと
船を追う見すぼらしいおじさんのお話でした。
鏡山は、草履で打つ場面に、
いじめを想像して嫌な気分になりました。
なので、歌舞伎の良さを知る前に
歌舞伎はつまらないもの、と決めつけてしまったんです。
その後、観たのが「義経千本桜」。
これは、ストーリーはわからなかったけど、
出てくる人たちが綺麗なのと
印象的な演出や想像もつかない展開に
すっかり引き込まれてしまいました。
やはり、ビジュアルは大事です。
面白いと思わせる演出も大事です。
だから、ビジュアル的にインパクトがあり、
ストーリーは単純でも演出が面白い作品、
そして、名前を知っている役者さんが出ている作品、
これを選んでお勧めしています。
ですから、
あなたが初心者で、何を見ようか?
と思ったら、まず知っている役者さんが出ているお芝居を観てみて下さい。
そして、あまり時間が長くないもの、舞踊や所作ごともいいですね。
世話ものは、わかりやすいし、落語を題材にしているものもあるので、
笑えて楽しいと思います。
とはいえ、古典も見たいよなって場合は、
次に紹介する定番を観るのもいいですよ。
その他は、後述する人気ランキングの作品から
気になるものを選んで観てみるといいと思います。
歌舞伎演目、定番はこの3つ!
歌舞伎の演目には、長い歴史の中で
ずっと愛されてきた定番のお芝居があります。
3代名作と言われている定番の演目を
ここからは紹介しますね。
歌舞伎演目の定番:仮名手本忠臣蔵(かなてほんちゅうしんぐら)
「忠臣蔵」を上演すれば、お客さんが入った
と言われるほど、
歌舞伎にとって「忠臣蔵」は欠かせない演目です。
ここでは、
「仮名手本忠臣蔵」と言っていますが
それは、
「忠臣蔵」に関する演目が
とてもたくさんあるからなのです。
その中でも全11段あるこちらが、
ダントツの代表作、歌舞伎の忠臣蔵の御本家と言えるでしょう。
1700年の初めに起きた仇討ち事件を、
登場人物の名を変えて室町時代へと時代をうつし
上演されてきた「THE 歌舞伎」というべき演目です。
よく演目されるのは
「与一兵衛内勘平切腹」「祇園一力茶屋」です。
詳しい内容はこちらをお読み下さい。
歌舞伎演目の定番:義経千本桜(よしつねせんぼんさくら)
義経千本桜は、タイトルに義経の名を掲げてはいるものの、
義経が出る場面はわずかです。
兄の頼朝とお折り合いが悪くなった源義経が、
都から奈良の吉野へと落ちていく旅と
平知盛、いがみの権太、源九郎狐を主人公としたエピソードを
組み合わせて描かれた物語です。
どの場面を見ても、
心を動かされるし、エンタメ性豊かな見せ場も多いので
初心者から歌舞伎マニアまで楽しめる演目です。
詳しい内容はこちらをお読み下さい。
歌舞伎演目の定番:菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
歌舞伎演目「菅原伝授手習鑑」は、
舞台は平安時代、謀にあい、
太宰府へ流された菅丞相(モデルは菅原道真)と
縁ある三つ子やそれを取り巻く人々の物語です。
梅王丸、桜丸、松王丸の三つ子の、
それぞれの忠義に沿ったエピソードは
悲しい決断をすることになり涙なしには見られません。
菅丞相は、神にも近い人物ということで
この役を演じられる方は
その境地に近づくため身を清めて臨む
という慣習もあるほどです。
この中でもよく上演されるのは、
「車引」「寺子屋」の段です。
詳しい内容はこちらをお読み下さい。
歌舞伎演目人気ランキング15
歌舞伎人気演目をランキング形式で紹介します。
先に紹介した、定番の3作品はのぞいて、
歌舞伎の本興業で多く演じられている作品を調べ、
15位までのランクをつけました。
ちなみに、定番3作品「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」が、
上位3位を独占してました。
歌舞伎演目人気ランキング1 連獅子(れんじし)
歌舞伎を観たことがなくても
赤と白の頭をブンブン回す「連獅子」の姿をご存知の方が多いと思います。
連獅子は、非常に多く上演されているのですが
その中に親子や師弟が芸を通してぶつかり合う
歌舞伎役者にとってもやりたい人気演目ではないかと思っています。
最近では、子役の成長の舞台としても
注目されていますね。
全体で1時間程度、間に狂言が入る、舞踊です。
ストーリーがわからなくても楽しめるし、
なんといっても獅子になってからの毛ぶりは迫力満点なので、
初めて観る方にはおすすめしている演目でもあります。
詳しくはこちらもご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング2 勧進帳(かんじんちょう)
「勧進帳」は、松羽目ものの代表とも言われる
能舞台を背景に演じられる所作ごとです。
京を落ち延びる源義経一行が、
安宅の関の関守冨樫に行く手を阻まれるのですが、
弁慶の機転が効いた問答や主を思う忠義に、
関を無事に通り抜け落ちていくという物語です。
見どころは、いっぱいあるのですが、
迫力ある冨樫との問答や、
酒に酔った弁慶の舞、
主人義経とのやりとりなど、
主役である武蔵坊弁慶の見せ場も多く、
この役を熱望する歌舞伎役者も多いのです。
この演目も初心者にはおすすめです。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング3 双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
「双蝶々曲輪日記」は、原作は全9段の人形浄瑠璃の世話ものです。
通しでというよりも、2段目の「角力場(すもうば)」と
8段目の「引窓(ひきまど)」がよく上演されています。
主人公は、濡髪長五郎という相撲取りで、
自分を引き立ててくれる恩人を助けようとして
図らずも人を殺めてしまいます。
「角力場」ではその発端とやがて義兄弟の契りを結ぶ
放駒長吉とのやりとりが、
「引窓」では母と義理の兄弟である与兵衛との情のあるエピソードが
描かれています。
しみじみと心が温まる名作です。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング4 寿曽我対面 工藤館の場(ことぶきそがのたいめん くどうやかたのば)
曽我物というジャンルがあるほどに、
江戸時代の人たちは曽我兄弟の話がお気に入りだったようです。
曽我兄弟とは、鎌倉時代に父の仇をうって若い命を落とした兄弟のことなんです。
ですから、このお芝居も時代物に入るのですが、
一幕一場だけであることと、
お祝いの場が舞台で歌舞伎らしい華やかさがあること、
多様な登場人物が居並ぶことなどから、
時節を選ばす上演されています。
工藤館とはいえ、主人公は曽我五郎と曽我十郎の兄弟。
この二人の登場シーンと
工藤とのやりとりが見せ場となっています。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング5 熊谷陣屋(くまがいじんや)
「熊谷陣屋」は、源平合戦の一幕を描く時代物の名作です。
「熊谷陣屋」というと、忘れられない歌舞伎役者がいます。
それが、二代目中村吉右衛門さんです。
吉右衛門さんが描く熊谷からは
武将として親としての自分の葛藤や世の無情を強く感じられ
その姿に涙を抑えることができませんでした。
源氏の武将熊谷直実が、義経が札に託した隠れた意味を読み取り
我が子を犠牲にしてもその命を守る物語です。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング6 恋飛脚大和往来(こいのたよりやまとおうらい)
「恋飛脚大和往来」は大阪を舞台とした世話物で、
飛脚家の養子である忠兵衛と遊女梅川の身請けを巡って
繰り広げられる犯罪&逃亡がメインの物語です。
よく上演されるのが「封印切り」と「新口村」です。
「封印切り」では、和事という
関西独特のねちっこい人物描写が特徴的です。
私は、関東人なので、
ここに登場する人物たちへ共感しがたいのですが、
お芝居としての見せ場は魅力的です。
「新口村」は、逃亡する二人の姿がとても美しいので
ここは美男美女のカップルでやっている時を
狙ってみたいと思ってます。
詳しくはこちらもご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング7 源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
「源平布引滝」は、「平家物語」と「源平盛衰期」に材をとった
全5段の時代物で、人形浄瑠璃を原作としています。
歌舞伎のお芝居としてよく上演されているのが
2段目の「義賢最後」と3段目の「実盛物語」です。
「義賢最後」は義賢の壮絶な最後を描き、
その後、
「実盛物語」では、義賢の遺児をめぐって、
平家の武将と義賢の妻を匿う百姓の一家との関わりが
描かれています。
ダイナミックな演出が印象的で、
人気の高いお芝居です。
歌舞伎演目人気ランキング8 弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
「しらざあ言って聞かせやしょう」
とそれまでのお武家のお嬢様が一変、悪の顔に・・・
知っていても、この変わり身にはいつもワクワクさせられます。
白浪とは盗賊のこと、
数ある盗賊ものの中でもダントツ人気なのが
白浪五人男と呼ばれる、
日本駄衛門、南郷力丸、忠信利平、弁天小僧菊之助、赤星十三郎の5人組です。
彼らの活躍を描いたこのお芝居、
ストーリーは同じでも演じるお家によって
若干タイトルが変わります。
よく上演されるのは、
弁天小僧で有名な「浜松屋」と、
5人が傘を持ち口上を述べる「稲瀬川勢揃い」です。
初心者にも「浜松屋」はおすすめですね。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング9 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
「傾城反魂香」は、全3段の浄瑠璃が原作のお芝居です。
その中で、最もよく上演されるのが、
「土佐将監閑居の場」、通称「吃又(どもまた)」と呼ばれる一場です。
このランキングで調べた中でも、
この場の上演がほとんどでした。
主人公は、吃りのため世渡りや交渉が苦手な絵師又平と
朗らかでおしゃべりな妻のお徳です。
この夫婦が起こした奇跡がお芝居のクライマックスになります。
観終わった最後が清々しい気持ちになれます。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング10 鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
「鬼一法眼三略巻」は、義経記に材を得た、
全5段の時代物、原作は人形浄瑠璃です。
源平の最中、
武蔵坊弁慶の誕生と義経との出会いが描かれています。
しかし、実際に上演されているのは
そのうちの「菊畑」と「一条大蔵卿」です。
「菊畑」は、鬼一法眼の持つ兵書「六韜三略」のうちの「虎の巻」を
手に入れんとする物語です。
「一条大蔵卿」は、志村けんさんが馬鹿殿様のモデルにしたのでは、
と言われる作り阿呆の大蔵卿と牛若丸母の常盤御前が登場する物語。
平家方とされているが内心は源氏に心を寄せる人たちの
エピソードが印象的なお芝居です。
「一条大蔵卿」も初心者におすすめのお芝居です。
私は、このお芝居で18世中村勘三郎さんが演じた大蔵卿が
大好きでした。
*一条大蔵卿についてはこちらからご覧くださいね
歌舞伎演目人気ランキング11 新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)
「新皿屋舗月雨暈」の通称名は「魚屋宗五郎」です。
なんでこんなタイトル?と私も初めは思いました。
お皿を割った罪で殺されてしまった幽霊が
お皿を数える怪談、あの「皿屋敷」の世界が盛り込まれているということなんです。
明治初期に作られた世話物です。
主人公は魚屋の宗五郎、この宗五郎の妹お蔦が奉公先の殿様に
惨殺されたところから物語が始まります。
初めは、不義の罪を犯した、ということだったのですが、
実はお家騒動のとばっちりで無実だったということがわかり、
宗五郎はやめていた酒を浴びるように飲み、
殿様の屋敷に殴り込みに行く、という物語です。
この物語のポイントが、宗五郎が酒乱のため
お酒を絶っていたということなんです。
脚本を書いた河竹黙阿弥は、
5代目尾上菊五郎から「酒乱の役」を依頼され
このお芝居を創作したといいます。
ですから、お酒の酔いが回っていく様子を楽しんで見てほしいと思います。
歌舞伎演目人気ランキング12 与話情浮名横櫛(よわなさけうきよのよこぐし)
「いやさあお富 久しぶりだなあ」、
傷だらけのイケメンといえば切られ与三といわれる与三郎こと。
「与話情浮名横櫛」はちょっとワイルドなラブストーリーです。
身を持ち崩した大店の坊ちゃんが、
ヤクザのお妾さんとの密会を見つかり身体中を斬られて海に捨てられる。
それを知ったお富も海に身を投げるのですが、
和泉屋という商店の番頭である多左衛門に命を救われ、
家をあてがわれて暮らすことになります。
そこに、現れるのが傷だらけの与三郎、
冒頭のセリフは再会したお富への恨みの一言でもあります。
私はこのお芝居は、内容よりも
与三郎とお富を誰が演じるかに興味があります。
ビジュアルが美しいコンビで演じてほしいお芝居なのです。
*2023年、片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さんが演じたお芝居について、こちらに書きました。
歌舞伎演目人気ランキング13 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
「夏祭浪花鑑」は、1745年に大阪で人形浄瑠璃として上演され、
その後歌舞伎化された世話物です。
舞台は大阪で、実際にあった殺人事件を題材にしています。
全9段です通しでもよく上演されていますが、
その中でも
3段目の「鳥居前」、6段目の「釣船三婦内」、7段目「長町裏」は
単発でも上演されています。
どの場も見所があるのですが、
「鳥居前」では牢から放免された団七が床屋ですっきりとした姿で出てくる場面や、
一寸徳兵衛とのいざこざとそれを止めるお梶の活躍など、
短いけれどキリリとした気持ち良いお芝居が魅力です。
「釣船三婦内」では徳兵衛女房のお辰が
自分が立たないと顔に鉄串を当てる場面に痺れます。
「長町裏」は通称泥場ともいい、
舅の義兵次の挑発から揉み合いとなり、
斬り殺してしまう凄惨な場が
夏祭の音と相まって臨場感高まる見せ場となっています。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング14 人情話文七元結(にんじょうはなしぶんしちもっとい)
「人情話文七元結」は、三遊亭圓朝作の落語を
歌舞伎化した作品で、世話物に分類されます。
腕はいいが博打好きの長兵衛が、娘のお久の孝行心に改心し、
身持ちを建て直そうとするのですが、
そのお久が用立ててくれたお金を
身も知らずの、身投げしようとしていた男、
大事なお金を取られたという男にあげてしまう、という話です。
この男が文七というのですが、
結果として文七の元にお金が戻り、お久も帰ってきてハッピーエンドとなります。
貧乏長屋や夫婦の描き方がとてもリアルで
歌舞伎の華やかさは微塵もないのですが、
どこかコミカルなストーリーは
初心者でも楽しめる内容となっています。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目人気ランキング15 神田祭・お祭(かんだまつり・おまつり)
実は、「神田祭」「お祭り」は
別の演目です。
どちらも舞踊で、舞台は江戸の天下祭りと言われる神田明神や日枝神社のお祭り。
「お祭り」の方は、
大向こうの待ってました、に合わせるかのように
「待っていたとはありがてぇ」と
鳶頭が答えるのが大きな山場です。
「お祭り」は、粋な鳶頭が主人公、
女方が主役の時は、芸者が主人公になることもあります。
「神田祭」は、鳶頭と芸者2人が主役。
最後はめでたしめでたしとなるのが心くすぐります。
本来は別物なのですが、
どうしてもランキングに入れたくなっちゃって
2つの票を合わせてここに配置しました。
でも、本当に人気のある演目なので、
ぜひご覧くださいね。
詳しくはこちらにも書いています。
歌舞伎演目人気ランキング特別賞 ヤマトタケル(やまとたける)
「ヤマトタケル」は、スーパー歌舞伎第1作であり、
演者を変え、何度も上演されている
代表作でもあります。
題材は、大和国創建の頃で、
神話のエピソードがふんだんに盛り込まれた
スペクタクルな活劇として楽しめます。
冒険劇ですが、テーマは父と子です。
感動的なシーンも多く、
言葉も現代語なので歌舞伎の入り口には
いいと思います。
詳しくはこちらをご覧ください。
歌舞伎演目 歌舞伎十八番とは
歌舞伎演目ではないのですが、
「歌舞伎十八番」と呼ばれる演目があります。
これは、江戸歌舞伎で人気が高かった
7代目市川團十郎がお家芸に定めた
18このお芝居のことなんです。
「勧進帳」もその中の1つです。
ざっと並べるとこんな演目があります。
・『外郎売』(ういろううり)
・『嫐』(うわなり)
・『押戻』(おしもどし)
・『景清』(かげきよ)
・『鎌髭』(かまひげ)
・『関羽』(かんう)
・『勧進帳』(かんじんちょう)
・『解脱』(げだつ)
・『毛抜』(けぬき)
・『暫』(しばらく)
・『蛇柳』(じゃやなぎ)
・『助六』(すけろく)
・『象引』(ぞうひき)
・『七つ面』(ななつめん)
・『鳴神』(なるかみ)
・『不動』(ふどう)
・『不破』(ふわ)
・『矢の根』(やのね)
2022年に13代目市川團十郎白猿襲名披露公演が行われました。
2024年4月現在は、
国内の各地の劇場を回っての
襲名披露公演が続いています。
そこでは、
この中の演目が上演されています。
市川團十郎さん、成田屋さんが出演される公演では、
この中の演目が上演されることが多いので
それを狙ってご覧になるといいと思いますよ。
*歌舞伎十八番については
こちらに詳しく書きましたのでお読みくださいね。
歌舞伎の演目は、
古典から新作まで、多種多様な楽しみや見どころがあります。
1つだけ見て、
「歌舞伎ってこんなもんか」って決めるのではなく、
様々な演目を見て、歌舞伎の良さに触れていただけたら嬉しいです。
ぜひ、歌舞伎沼にハマってくださいませ。
ここまでお読みくださりありがとうぞんじまする。
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